Li:再び始める異世界生活 8.可愛いければ精神男でも好きになってくれますか?
こうして、この世界のシステム、オレの名前など、チュートリアルが終了した。長いチュートリアルだった。もう陽が傾いてきており、石畳の街はオレンジ色に包まれている。
オレとミズナミがいる部屋も薄暗くなり始め、オレンジ色の光が差し込んできている。
いよいよ明日からオレのこの異世界での冒険が始まるのだ。前世や前前世のような失態は許されない。失態を犯すとまた死亡してしまうからな。もう金輪際死にたくはない、痛いし怖いし。クールな俺でも、さすがに死の瞬間はチビっちゃった。てへぺろッ♪
まずはミズナミと行動を共にすることにしよう。死にそうになっていたオレを助けてくれたという恩もあるし、始めに出逢った者と行動を共にするのは異世界転移モノだけではなくあらゆる物語で当然のことだろうからな。
「ミズナミ……」
「こら! 『お姉ちゃん』でしょ!」
ミズナミはオレの話を叫った。よほど『お姉ちゃん』と呼ばれたいらしい。ややこしいやつだ。
「お姉ちゃん……」
「お姉ちゃん……お姉ちゃん……はあ、可愛い娘にお姉ちゃんって呼ばれるなんて……なんて素晴らしいのかしら!?」
はあ…コイツ、ガチだ。ガチのロリ婚だ。
「どうしてお前はオレを奴隷として買ったんだ?」
これがわからない限り物語は進まない。
「……」
一瞬の沈黙の後,ミズナミは口を開いた。
「そ,それはあなたを妹にしたかったからよ!?」
ミズナミの目は泳いでいた。
「……」
何か深い事情があるのかもしれない.でもまともに聞いても答えてくれないだろう。そこは俺の華麗なる気遣いで掘り下げないようにしよう。
「お前はこの世界で何をしているんだ?」
「剣士よ?」
剣士か。服装が和服だから、和服剣士といったところだろうか。だがしかし、変だな……窓の外かあ眺めた世界には和風姿の人間はいなかった。
なぜミズナミだけが和風なのか。気になるな。この世界のどこかにもミズナミと同じ和服の人間がいるのだろうか?
「ならばオレも仕事についていこう。心配だからな。」
「そうね、ついてきてもらおうかしら。子供に一緒に冒険させるなんてちょっと心配だけど……。」
「オレは子供じゃない。三十代だ。」
「え~っ!!!!!!!!」
「じ、じゃあ可愛い女の子好きのあたしはどうしたらいいの~!」
知らんわそんなん。
「おかしい、おかしいわよ! その見た目で、三十代なんて!」
「おかしいのはロリコンだ。」
ロリコンがおかしい奴ななら、俺もおかしいという理論が成り立つ特大ブーメラン。
「お前何歳だ?」
「まだ二十代よ。」
「それなら、オレよりも年下だな。」
「うそでしょ? そんな見た目で……でもあなたがそれを言うのならあたしはあなたのことを信じられるわ。」




