Li:再び始める異世界生活 2.奴隷って、それはないでしょう!
少女の声は牢獄にこだました。
牢獄の鉄棒はびくともしていなかった。おかしい、俺の持ちネタ、十八番・エターナルフォースブリザードがつかえなくなっているなんて…
もう俺にはなすすべは見つからなかった。
「なんでだよ!」
俺はさけんだ。
「声がロリ化するし、ころされてろうごくにとらわれるわ、エターナルフォースブリザード!が使えないわ、いったい何なんだよッ!」
俺はこぶしを思いっきり鉄の牢にぶつけた。当然そんなもんで鉄の棒をぶっ壊せるわけない。こぶしには激痛が走った。
「ッ!」
俺のこぶしは真っ赤に染まり、腫れあがった。
「なんだ? なにがなにがおっこた!」
わけのわからないちょっといかつい顔つきのひげ面のおっさんが俺が収容されている独房の前に駆け付けた。
「クソッ!」
俺はそんなことにかまわずに頭を牢にぶつけた。頭の中に大きな音と衝撃が響く。痛い、スゲー痛え。もちろん牢は壊れない。俺は何度でも牢に頭をぶつける。頭に血が滲み出し、ゆっくりタラタラと血が垂れ落ちる。
「なんだお前! ここから逃げ出すつもりかコノヤロー!」
オッサンは大きな声で叫んだ。
「お前ら奴隷にはじゆうなんてねえんだよ!」
奴隷…? 俺が…? よく見ると周りの牢にも何かしらの生物の気配がする。だが、途轍もなくおとなしく、まるで気配がしない。怒り狂うオッサンと牢に頭をぶつける俺の姿を見てびくびくと震えているだけだ。
どういうことだよ? 俺はマリモに囚われたんじゃなくて、『奴隷』として売り飛ばされてしまったのかよ。
「すいませんねえ、姉さん。いつもはこんな奴じゃないんですけどねえ。」
オッサンが振り返る。そこには高身長の美人が立っていた。和風の装いだ。
「いいわよ。あたし、この子にする。」
美心は俺を指刺した。まあるでペットショップの犬や猫、そしてハムスターの気分だ。
「すいませんねえ、おみぐるしいところをおみせしてしまったんでおみぐるしいところをおみせしてしまったんで、半額にしておきますぜ。」
「そう? それは助かるわ~!」
女は俺と対照的に上機嫌だった。
は? なんなんだよ? 俺はペットとしてこのままこの女に買われるのかよ。
「出て濃いやー!」
オッサンが牢の扉を開けて、俺の耳をつかんで引きずり出す。おいおい、ちょっと待てよ。オッサンは俺の頭から生えている耳を強引に引っ張った。普通の人間は頭の上に耳なんて生えていない。俺が転生したうんこキノコだって耳は生えていない。
俺、一ッ対何になってしまったんだYO.
引きずり出された俺はそのまま美人な女に引き渡され、女はおっさんに金を渡した。
「おら、行ってこい、奴隷に大事なことを二つ教えてやる。まず一つ目だ。気合いだ、気合いだ、気合いだ、気合いだ、気合いだ、気合いだ、気合いだ、気合いだ~ッ! そしてもう一つ、二つ目だ。それは、元気があれば何でもできる! 1・2・3ダーッ!」
オッサンの大きな声が牢にぶつけた衝撃と衝撃の事実で混乱した頭に響いて痛みが増す。コイツ、ただののうきんだ。
……
俺は女に連れられ、牢獄を後にした。




