#8 Li:再び始める異世界生活 1.Li:再び始まる異世界生活
目が覚める。
俺は二子玉川太郎、またの名をクロノス・転生者だ。この名前を思い出すことで、ほかの俺に関することも思い出す。
そうだ、俺はレッドマン・マリモに全残機を奪われて殺されたしたんだ…。
だが、おれは今現在…現に生きている。
なぜだ…? さすがに俺は死に戻りのスキルはもっていない。とりあえず周りを見回す。俺が最後に見た光景と世界が変わっておる。
ここはどこなんだ…?
・・・
暗闇に目が慣れてくる。俺の目の前には檻がある。そして俺はその折に囲まれた小さなスペースにいる。
どうやら俺は牢獄の中にとじこ込められているようだ。
・・・
どういうことだ?
せっかく異世界転移したのに俺は一年余りでゲームオーバーしてしまったはずだ。じゃあここはどこなんだ?
俺は必死に考える。
まさかマリモが俺の知らないスキルを持っていたのか…? そしてその未知のスキルで俺は蘇生させられて今ここにいるのだろうか?
とりあえず今はそうだと仮定しよう。現に俺は牢の中に閉じ込められている。俺はマリモのスキルで蘇生させられてその後に牢に閉じ込められた。その仮定が自然だろう。
だがしかし、面倒なことになった。俺はマリモによって牢獄に閉じ込められている。簡単に脱出できるのだろうか? しかし、俺が生前プレイした限りではマリモはそんな技を使っていなかった。俺がプログラムを改編したときに予期せぬ原因で新たに発生してしまった新スキルなのだろうか?
これくらいの鉄製の棒数本なら俺のエターナルフォースブリザード!で簡単に破壊できるだろう。しかし、問題はそのあとだ。すぐにマリモに見つかってしまエヴァ元も子もない。今の俺ではマリモに勝てないのは明白な事実だ。
どうする?
せっかく命はたっすかっったのだ。脱獄を図ってもし見つかったらどうするのか。今度こそ真のゲームオーバーになってしまうかもしれない。
・・・
俺は十分ほど胡坐を組んで考えた。
よし、行こう。
俺は脱獄を決意した。善は急げだ。俺は利き手の手のひらを檻を構成する数本の鉄製の棒に向けた。
「エターナルフォースブリザード!」
・・・
「は…? 何も起こらない? 変化なしか?」
檻の鉄棒は平然としていた。
「変化なしなんてそれはないでしょう!」
俺はつい叫んでいた。俺の声はむなしく牢内にこだましていった。牢内に響いた声が俺の耳にも入ってくる。
…? おかしい。これは本当に俺の声なのか? 静かな牢内にこだました俺の声は『二子玉川太郎』としてのものでも、『クロノス』としてのものでもなかった。それはまるで子供、そう少女のやうな声だった。
俺の身体に何が起こったのだ!?
エターナルフォースブリザード!が使用できないのはMPが少ないからだろう。一週間もすれば俺の最終秘奥義・エターナルフォースブリブリザード!一回分のMPは回復するだろ。今はそれは置いておこう。
今全力で考えるべきは俺の声だ。どうしておれのイケボが子供の声になってしまっているんだ。
・・・
今までの俺の過程がすべて正しければこれもマリモのせいだろう。俺が脱獄しこのゲームの管理者権限を回復すればまた元のイケボに戻せるだろう。チッ、忌々しいマリモめ・・・俺が無事脱獄を完了した暁には倍返しだ!
一週間後――
この一週間、俺は牢獄の中に閉じ込められたままだった。マリモは俺の前に来ず、わけのわからないちょっといかつい顔つきのひげ面のおっさんが牢獄に質素なご飯を待ってきた。それだけだ。
ついにその時が訪れた。俺はこの一週間エターナルフォースブリザード!を打ちたくてうずうずしていた。とっとと脱獄を始めよう。
俺は鉄棒に利き手の手のひらを向けた。
「エターナルフォースブリザード!」
少女の声は牢獄にこだました。




