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泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
吉井とみきとみきと吉井
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第68話 持っておきたい時もある

 

 登録した翌日、午前中の仕事が終わり早めの昼食を摂っている時に吉井がみきをギルドに誘うと、「確認だけなら吉井さん1人でいいんじゃないですか? 理由としては正直に言いますよ。わたしは、今、ここでは嘘をつきません。面倒だからです」とみきに言われたため、吉井は1人でギルドに向かった。


 ギルドに着いた吉井はいつも通り正面の入口から入り、空いている窓口の職員に掲示板の場所を確認すると、ここから直接行けないので一旦建物の外に出て迂回して欲しい。と言われ、吉井は礼を言って外に出た。


 見た感じ窓口の奥からは直接行けそうなんだよなあ。でも人を入れるのは色々大変なのか。吉井は建物を囲むように植えられている木を眺めつつ、のんびりと歩き後方に向かうと、壁の色が違うことから後に増築されたと思われる体育館程度の建物が見えてきた。


 ほー、なるほど。後ろってこうなってたんだなあ。入り口を見つけた吉井が中に入ると、眠っていると思われる中年男性が1人椅子に座っており、横にあるテーブルには総合受付と書いたプレートが乗っている。

 吉井が遠慮がちに昨日依頼を出した者だと伝えると、一番近くのボードを指差して、あの辺にあるので勝手に見てくれ。と言い再び下を向いて目を閉じた。


 吉井は『お客様の声を届ける意見箱(店長直通)』のようなものを探したが見つからなかったので、言われた方向のボードの前に移動した。


 おおー、こういう感じね。やっぱりこっちでも犬は探すんだな。吉井はボードに貼られた依頼を一つひとつ興味深く眺めていると自分が出した依頼を見つけた。


 おお、あった! なんかうれしいな。こっちの人が書いた自分の名前見るって。


 A4程度の大きさの紙の上部に吉井が依頼した業務内容と支払金額、下には希望者と依頼者が書く欄がそれぞれ線で仕切られており、吉井がこれまで見た雰囲気では、希望者が氏名住所と実施日の希望や受け渡しの相談等を書き、依頼者がそれに答えるという形式で、中には依頼の金額の交渉もあり(1,000→1,500なら受ける等)吉井は金額面についてはある程度譲歩するもりではいたので、とりあえず誰かが書いてくれることを祈りつつ、掲示板スペースの横にある受注及び報告所を見学することにした。


 数十人の人が並び、あちこちで怒号が飛び交う受注及び報告所の前に立った吉井は、窓口近くの張り紙に書いてあった利用方法と手数料を見て、すぐに掲示板エリアに戻った。


 あれは無理だ、無駄なことを聞ける雰囲気じゃない。しかし手数料かあ。そうだよな、ここ運営していくにも金掛かるもんな。しかし1割~3割って。~の意味がよくわからないんだけど。って、おい書いてるじゃん!


 自分の依頼に書き込みがあったことを確認した吉井は、慌てて内容を確認した。


 希望者:上記内容で了承。実施日等の詳細は改めて別の場所で希望(できれば夜、ギルド近辺が望ましい。日程は明日から3日以内なら可)


 そうかそうか。なるほどね。筆記用具を持っていなかった吉井は総合受付で万年筆のようなものを借りて戻り、返信を書き始めたがすぐにペンが止まる。


 ええと、じゃあ明日にイイマ食堂で。ってあれか、イイマ食堂で通じないか。店の名前ないと面倒だなあ。うーん、どうすっか。吉井はしばらく考えた後、


 依頼者:では明日の夜、ギルド正面から出て大通りを進み、茶色の建物がある場所で右に曲がった後、一本目を左に入り数分歩くと、井戸がある大きな家があるので、そこを右に曲がってすぐ左手側に見える食堂で待っています(イイマ食堂と言う人もいます)


 これでいい、のか? これ以外なかったのか?


 自分が書いた紙を見ていると、失敗したんじゃ。という後悔で思考が埋め尽くされそうになった吉井は、総合受付でペンを返した後足早に建物から出た。



 あ、返しあった!昼休憩から仕事に戻る前、掲示板に寄ったサエランは吉井が書いた返信を見つけ、急いで内容を読んだ後、眉をひそめつつもう1度確認のため読み直した。


 なにこれ……?全然頭に入ってこないし、イイマ食堂って言われても大体食堂に名前なんて。


 でも、なんとかしてここに行くしかない。サエランは吉井が書いた食堂までの行き方を自分のメモに書き写し始めた。



 昨日、吉井とみきの異常行動に窓越しで遭遇した後、どういう依頼を個人に出したのか気になったサエランは、仕事の合間に吉井が出した依頼表を探し出した。

 内容自体は自分が受けたものを個人に回すというよく見る形式であったが、その報酬が元々受け取る額の半分であることにサエランは少し驚いた。


 良くて人数均等割り、大抵はそれ以下なんだけど。しかも1,600トロン、この依頼で1,600トロン。それがあればあの本が買える……。


 最近気になっていた本があったが現在の手持ちでは買えず、月ごとに支払われる給料まで期間があったので、売れてしまわないか悶々としていたサエランにとってその依頼内容と金額は魅力的に見えた。



 職員の冒険者登録及び依頼請負いは基本的に禁止されているが、一旦個人を介したもので、かつそれが少額であればある程度黙認されている。だが窓口業務をしていて様々なトラブルを見てきたサエランは、自分がそういったものに巻き込まれるのが嫌でこれまで依頼を受けたことはなかった。

 しかし、昨日吉井達の行動を直接見て、当初は恐れに近い感情を抱いていたサエランであったが、時間が経過するにつれ本が欲しいという欲求が徐々にそれを上回り始める。


 そうだ。よく考えればあの人達から問題を起こしたわけではない。どう見たってあの2人が悪い。それにあれだけの能力があれば危険なことがあっても問題ないし、今はあの人達の力が知られてないが、広まれば一緒にやりたいという登録者も増えるだろう。それを踏まえると最初に一緒にやっておけば、次も本が買えなくて困っているとき依頼を受けられるかもしれない。大体あの本は人気作だ。図書館は1冊は確保するだろうから、残り2冊。最初10冊あったのにもう残り2冊。図書館に行けば読めるけど、でもあれは手に持っていたい種類。そういう本っていうのはある。それにあの依頼内容で1,600トロンはけっこういい方だ。まずい、早くしないと。


 その日、仕事を終えたサエランは急ぎ足で受注及び報告所に向かったが、まだ処理が終わってないのか掲示されておらず、今朝になってさらに焦り始めたサエランは無いとわかっていながらも、通常より早くギルドに出勤し再び掲示板を探した。

 しかし昨日の夜になかったものが、業務を行っていない朝の段階であるはずもなく、すでに絶対にやると決めていたサエランは、午前の仕事中に無理やり用事を作って何度か確認に行き、2回目でようやく掲示されていた依頼を見つけ急いで希望者の欄に記入した。


 そして書いてからは返事が来ているかどうかが気になってサエランは昼休み中に3回確認に行き、最後に吉井の返事を見つけた。



 心配だからこの待ち合わせ場所のイイマ食堂? 今日の仕事終わりに確認のため行って見よう。サエランは吉井のメモを何度も口に出して読みながら、職員用通路を通って受注及び報告所から自分の窓口に戻った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] サラエンはじめてのしたうけ(笑) [気になる点] 慣れないことはやるもんじゃない。 建物の窓から見てるのと 地べた暮らしは違うんだ。 かんたんなおしごとは たいへんなんだ。 どんな本より…
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