表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
吉井とみきとみきと吉井
55/168

第55話 コミュニティ見学編(外は石で中は木)

 

 広場から出た吉井とミナトロンはそのまま道なりに進み、数分後に3階建ての石造りの建物が2棟並んでいる場所に着いた。

 ミナトロンは2棟を交互に見て一瞬迷った後、こっちだな。と独り言のように呟きながら右側の建物に向かって歩き出した。


 しかし団地感がすごいな。吉井は一瞬立ち止まり逃走ルート確保のため周りを見渡す。


 2棟の周辺は等間隔で木が植えられ、また広場と同様にベンチが所々に置いてあり、そのいくつかには兵士と思われる人間がミナトロンに背を向けて座っていた。


 うーん、全然逃走ルートが見えない。とりあえずここにいる人達はミナトロンと関わりたくないってことはわかったけど。


 吉井は近くのベンチに座っている兵士に、ミナトロンのどういう所が君たちをそうさせるのか。と聞いてみたい衝動に駆られたが、本音を言ってくれる感じが無く、また兵士に迷惑も掛かりそうなので止め、ミナトロンが入っていった建物の入り口に向かった。



 この間口の広い感じは学校に近いな。何がいいとこかわからないけど、団地とのいいとこどりっぽい。


 吉井が下駄箱の無い学校の入り口のような場所に入ると、ミナトロンは真剣な表情で天井付近を見ており、はいはい。たまに来るから整備状況が気になるのね。吉井はミナトロンを一瞥した後、首を左右に振り廊下と並んでいるドアを確認した。


 教室の代わりに人が住む部屋があるって感じか。機能としては団地だけど、建物の中身としては学校寄りだよな。


 吉井が総合的に見てこの建物を人に伝える時、学校もしくは団地のどちらで例えたらいいかを考えていると、「上に部屋があるんだ。そこで話そう」天井の確認を終えたミナトロンが定型の笑顔で吉井に言った。


「上って。その階段で?」

 吉井は目の前にあった、学校寄りの大きな踊り場がある階段を見た。


「そう。1階と2階は居住スペースなんだ」

 ミナトロンは反響音を響かせながら階段を登り始める。


 かっつんかっつん鳴り過ぎだろ。どんな素材使ってんだよ、その靴。吉井は気持ち音を出さないよう気を付けながらミナトロンの後を追った。



 階段を登った吉井が辺りを見渡すと、2階も同じように居住スペースとなっており、おそらく中央に位置すると思われる階段の位置からは、左右に10部屋程度確認できた。


 ほうほう。1階と同じ感じね、って上かよ。ミナトロンは立ち止まらず階段を登り始め、吉井は再びそれを追った。



 3階に上がったミナトロンは迷わず奥に進んでいったが、明らかにフロアの感じがこれまでと違ったため吉井は立ち止まった。


 なにこれ。3階は居住スペースじゃないのか。ミナトロンは背を向けているが、あんまりじろじろ見るとミナトロンには気づかれそうだ、と吉井は階段横の部屋を横目で視界に入れる。


 その部屋は入り口に扉が無く、また外側の壁の枠は空いているものの窓が無かった。気になった吉井は振り返って後方の部屋を見たが、同じように扉は設置されていないようだった。


 なにこの階、というかなにこの部屋? 窓と扉のない教室サイズの部屋って。外から丸見えだし、雨風も思いっきり入るぞ。


「おおい、こっちだよ」

 先に奥側の部屋の前に着いたミナトロンは手招きしながら吉井を呼んだ。


「ええ、ああ。はい」

 吉井は軽くミナトロンに会釈し、自分の足元を見る。


 2階まではさ、外壁は石だけど、室内の天井や床は木だったよな。言ってみれば外はカリっと、中はふわっ、ふわではないか。サクっとか。


 でもこのフロアは全面コンクリート打ちっぱなしっていうか、もろに石が丸出しだよ。


「あれ、どうしたんだい?」

 ミナトロンは室内に体を半分入れた状態で言った。


「あ、すいません。ちょっと立ち眩みで」

 吉井は壁に手を付きながらしゃがみ込む。


 かなりきつめの時間稼ぎだが仕方あるまい。この状況はちゃんと考えておかないとまずいことになりそうだ。ええと、とりあえず3階の石が丸出しと、1階、2階が兵士の居住スペースになっていることだな。あいつが関わっているという前提で考えると、無駄を省いたか、そうする必要があったか。このどっちかだと思う。


 で、ぱっと見。ほんとぱっと見で。これまでの経験、まあ経験と言っても紙やモニターを観ていただけだけど。それを踏まえて総合的に現状を判断すると。


 

 おれ、ここで殺されるやつじゃ。



 思いっきり選択ミスってる感じするし、大体この世界でおれは主要人物なんだろうか。確かにおれの思考はおれだけの物だから特別なのはそうなんだけどさ。結局おれがここで死んでも物語は進んでいく、そういうもんだろ。


 吉井はふらつきながら立ち上がる。


 例えばミナトロンがおれを殺して能力を吸収してより強くなるとしよう。すでに結構な権力者っぽいけど、さらに盤石になるよな。で、みきは数日は待つかもしれないけど、おれがいつまでたっても帰ってこないのはおかしいってなる。まあすぐ気づくだろ。おれが死んでるっていうのと、それはミナトロンのせいだと。


 で、そうだな。例えばイイマ食堂のやつらと協力して研究所でも作ってだ。そこであいつの発明が成功してまあまあの金を得ると。その後、みき自体は弱いけど現代知識とこちらで得た巨額の資金を生かして、いつかミナトロンを追い詰めるんだ。時間は掛かるかもしれないけど、あいつならやれそうなんだよなあ。しかし、成功しそうな発明ってなにかな、とりあえず確かなのはそろばんではないってことだけだ。


 やべえ、おれがいなくなった世界も気持ちいいな。もっとくれよ、それ。


 吉井は自分が笑っていることに気付き、そのままミナトロンがいる部屋に近づいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ