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泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
吉井とみきとみきと吉井
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第45話 ミナトロンのやらざるを得ない説明の話

 

 6年前、国の財務部門からコミュニティに派遣されることが決まった夜、ミナトロンはススリゴの家に寄り近くの食堂へと連れ出した。


「で、どうだ?希望通りの所で働ける気分は」

 ひとしきり近況を話しながら2人は料理が来る前に果実酒を1本空け、2本目を注文していた。


「ああ、最高だね。今のところも面白かったが、今度からは自分で金を稼げるんだ。これ以上に楽しいことはないよ」


 やっと君に追いついたという実感もあるしね。ミナトロンは2本目を持ってきた店員に、もう1本同じのを。と追加で注文する。


「追いついた?比べ物にならないだろ。お前は国の役人でおれはその辺にいる単なる金貸しだ」

「自分の力で金を増やす。なあ、実際それだけで大したもんなんだよ。わたしは与えられた金を横に動かしてただけだからね」


 それはまた別の話だと思うがな。ススリゴはミナトロンのコップに果実酒を注いだ。


「今は資料を見ている段階だけど、なかなか興味深いね。あの規模でこの内情っていうのは。特に金と人の流れがめちゃくちゃだよ」

「どんな場所でも外から見たら粗が見えるもんさ。でも今度からやりやすくなるな、回収業務の外注もお前に直接頼めばいいんだろ?」

「まあ、そうなんだが」

 ミナトロンはコップに入った果実酒を一口飲んだ。


「何度も言って申し訳ないんだけどね。こういう機会だし改めて言うが、これからは一緒にやらないか?お前の嫌う国の役人でもなくなったんだ」

「そうはいっても結局国と繋がってるんだろ?おれは関わりたくないんだ。客として使わせては貰うが」

「そう、か。まあ気が変わったら言ってくれ」


 料理が運ばれた後は、食事をしながらミナトロンがコミュニティ内部の構造についてススリゴに詳しく説明し始めた。


「そんなところまで言っていいのか?」

「ああ、構わないよ。なんなら他で言ってもいい」

 ミナトロンはコップに入った果実酒を揺らす。


「お前がよくてもだな」

 ススリゴは肉を切り口に運んだ。


「今言ったのはもう使わなくなるシステムだからな。明後日、いやその次だったかな。定例の会議があるんだよ。そこで全部変えるから」

「なるほどな。でも大丈夫なのか?いきなりそんな」


 大丈夫、なぜだ?ミナトロンは笑いながらススリゴを見た。


「ああ、それならいい」

 こいつはやるといったらやるからな。学校に行っていた頃からそういうやつだったよ。大体おれには関係のない話だ。食事を終えたススリゴはナプキンで口を拭いた後、コップに残っていた果実酒を飲み欲した。




 2日後、コミュニティの定例会議に初めて参加したミナトロンが、会議の最初に兵の効率的な振り分けと名称の変更の提案をすると、高級料理店を貸し切って行われていた会議の弛緩していた雰囲気は一変した。


 当時のコミュニティは業務内容ではなく、実力者2名がそれぞれグループを作っておおよその人数で兵士を割り振りしており、また2つのグループの名称は当時の2人の名前を使っていたこともあって、実力者2名以外その場にいた6名の参加者から口々に伝統が無い、味気ない等という声が上がった。


 事前に国から話を聞いていた実力者2人は互いに顔を見合わせた後、無言で成り行きを見守っており、実力者の1人は担当者からの話を思い出していた。




 わかるよ、急にこんなことになって。君たちの立場もあるだろう。うん、そうだね。集団での、そう。それもわかる。が、国は基本的にミナトロンを支持する。知ってるだろ?君たちは国から独立しているつもりでも結局は一部だよ。行き場所の無い兵士をまとめて首輪をつけているだけだ。

 いや、違うな。時間はあったはずだし、こちらからも何度も催促したはずだ。上がってくる金と実際の収益の差がありすぎる。もう上は君たち2人には無理だって判断したってことだよ。ミナトロンはそれを管理できる人間だ。

 ん?ミナトロンか?ああ、持ってるよ。名家の出だしね。ただ、そうだな。これは外で言うなよ。はっきり言って、単純に数値化するとしたら君たちよりは持ってない。うん、そうだ。2人共だ。ただ、それは限定的で。そうだな、見渡す限りなにもない平原で1対1でやり合った場合、君たち2人はどちらも確実にミナトロンを殺せる。そういう意味では君たちより持ってはいない。が、そういう状況には絶対にならないと思うよ。

 それとこれはわたしの印象だが、今言った平原の状況で2対1、君たち2人対ミナトロン1人だな。そうなると君たちは殺されるよ。なぜか?だから言っただろ、根拠はないよ、単なる印象だ。2人で戦うほうが不利なんだよ、あいつとは。

 そうそう、わかってるな。そういうことだ。しばらくはおとなしくしてろ。お前らの貢献は理解してるつもりだ。こっちも悪いようにはしないよ。ああ、しつこいようだが他には言うなよ。




 ミナトロンは反対する意見に対して合理的に説明していたが、聞く耳を持たない集団との対話を諦め、横に座っていた書記の肩を軽く叩いた。


「これまでの会話内容は書けてる?」

「は、はい。問題ありません」

 書記はペンを止めて答える。


「よし、じゃあこの議題に関しては全員了承したとし、次回から会議はコミュニティ内で行うことを追加。それで終わりでいいよ」


 会計部門の説明まで行うつもりだったんだけど、しょうがない後で処理することにしよう。ここにいる人間は目の前の映像以外は見えないようだ。ミナトロンはテーブルに座っている顔を確認した後、じゃあ今日はここまでとしますので、この後は食事を楽しんで下さい。そう言い残し席を立つと、

「おい、終わったとはどういうことだ?何もわかっていない新人が!」

 歩き始めたミナトロンの肩を、コミュニティ内で古参の男が掴む。


 ミナトロンが無表情でその男の顔を見て、もう終わった話ですよ。と言った瞬間、肩を掴んでいた男の手指が5本共に根本から床に落ち、服の裾を直したミナトロンは悲鳴を背に店を出た。



 味気ない、なるほど。名称に味がねえ。それはそれで面白いな、しかし。道を歩きながらミナトロンは以前から何度も想像していたことを思い浮かべる。


 いらない人間をその場で処分できればいいんだが。それでどれだけ物事が効率よく進むか。こんな力があるから、こんなものがあるから、国は建前上は管理しなくてはならないし、それにどれだけの労力が使われているか。大体別に人を殺すのに力なんて必要ない、やり方なんていくらでもある。


 いらないんだよ、こんな力は。これさえなければ、より良い世界になっているはずなのに。


 その足でミナトロンはコミュニティの自室に戻り、会議のため中断していた名簿を整理する作業を再開し、翌日から再編を始めた。



 会議から2週間後、コミュニティは請け負う仕事の内容から、都市、個人とグループの名称を変更し兵士を再編。また都市、個人のグループはそれぞれ仕事の範囲によって1から13までを設定し、またこれまで金銭については個人が管理し一定の金額になったときに報告するという形態であったが、ミナトロンは会計専門の部門を作りすべての収支を一括して管理して、そこから個人の業績に応じて支払うというやり方に変更した。


 会計部門の設立は、人員の再編成以上に兵士からの反対が根強く、当初ミナトロンの会計部門がそういった兵士の対応をしていたが、手が足りなく会計処理に遅れが出始めたため、ミナトロンはコミュニティ内で不要だと判断した兵士を集めて、反対兵士を対応するための部門を作った。


 報酬を弾んだこともあってか、不要だと思われた兵士達が思わぬ活躍をし、反対する兵士の抑え込みがミナトロンの予想より早期に解決した後、ミナトロンは反対していた兵士、その対応をするための部門の兵士達を、国が正式に兵士を処理する第1師団にまとめて送った。


 そして新しい編成が軌道に乗った頃、以前の管理者だった実力者2人のうち1人は他と同じく第1師団に送り込んだが、もう1人は単独ではあったが計画的にミナトロンのみの生命のみを狙った抵抗をしたため、極めて例外であったがその場の判断でミナトロンが直接殺し(国では持っている者を殺すのは普通の殺人より重罪とされていたため、ミナトロンは弁明の場の設置、また根回しのため個人資産の4/5程度にあたる7,000万トロンを失うこととなった)それ以降はミナトロンがほぼすべての権限を持つ現在の体制が形成された。

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