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泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
吉井とみきとみきと吉井
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第44話 コミュニティ壊滅編(当日の午前と前夜のその後)

 

 数人の話し声で目覚めた吉井は、トイレに行きたいが面倒という毎朝思ってる感覚を持ちつつ下に降りた。


「あ、吉井さん。起きたんですか」

「ああ、うん」

 

 暖炉を見ると昨日と同様に片手鍋が置いてあったので、吉井は持っていたコップにお茶を入れテーブルに座った。


 テーブルにはみきとススリゴ、そしてもう1人知らない男が座っており、吉井は「この人は?」とススリゴに訊いた。


「ああ、ミナトロンといっておれの昔からの知り合いだ。たまに仕事で使うコミュニティとの仲介をして貰ってる。オーステインに行く際もこいつに兵を頼んだんだよ」

「ほ、ほう……」

 吉井は動揺を悟られないよう、ゆっくりとコップを傾ける。


 ススリゴと同年代、40~50代ってとこね。とりあえずハゲてないから、みきが会ったハゲの人とは違うか。思ったより出てこないな、そろそろ来るかとずっと待ってるんだけど。あ、やばい。おれもハゲの人って呼んじゃったよ。そういえば、何て言ってたっけ、統一することにしたんだよな。だめだ、最初のハゲのイメージが強すぎて思い出せない……。この人の話題はみきから出るのを待とう。おれから止めようって言っといて思い出せないのはまずいからな。


 しかし、この人って。吉井は改めてススリゴの知り合いだという男を見た。わざわざコミュニティ側が朝一で来るってどういうことなんだろう。


 吉井がなぜここにいるか聞いてみようと口を開きかけたとき、「突然すまないね。昨日のこと聞いたよ。君だろ? うちの兵士と食堂で揉めたんだって」ミナトロンは吉井に微笑みかけながら言った。


「まあ揉めたっていうか。うーん、何て聞いてます?」


 やべえ、昨日のテンションが戻って来ねえ。一晩経って思いっきりリセットされてるよ。でもこれおれのいいところでもあるんだよなあ。会社で嫌なことあって引きずらないっていう。忘れてるわけじゃないよ、むかついたのを。でも大体通勤とか通学途中にものによっては再燃するんだけど、朝一で言われるとちょっとむかつく準備っていうか、その辺の調整が。


「きみに不意を突かれて1万トロンを奪われた。しかし、それでも納得できないきみが今日またコミュニティの本部に来る。って感じかな」

「あー、その辺については言いたいことが多少」

「大丈夫ですよ! わたしがバチンと説明しておきましたから!」

 みきはそう言って吉井に向けて親指を立てる。


「ちょっとすいません」

 吉井はみきの手を取って立ち上がり2人で台所に向かった。


「なあ、なんて言ったの。すごく気になるんだけど」

「ちょっと吉井さん。まさかわたしが天然っぽい感じで変なことを伝えたと思ってるんですか?」

「わかってる、きみは天然じゃない。だから内容だけ教えてくれればいいんだ」

「そのままですよ。何か吉井さんと175cmの人が店にいたら、190cmの4人が金を貸せって175cmに絡んでて、それを見た吉井さんが4人をぼこぼこにしてその過程で壊れた店の備品の修理代として1万貰った。で、190cmが捨て台詞で、こっちは巨大組織なんだぞ! おれらに手を出して無事で済むと思ってんのか! って言われたから、吉井さんが、巨大組織? なんぼのもんじゃい! そこまで言うなら明日行ってやるよ! となって今日に至るっていう」


 うんうん。吉井は何度か頷いた。


「大体合ってるな」

「でしょう? だってそのまま言いましたもん」

「ごめん。一応ね話の流れとして確認しておきたかったんだ」

「はいはい、わかりましたよ」

 吉井とみきはテーブルに戻って席に着いた。



「すいません。で、どうしてわざわざここに?」

「ああ、話は分かってるつもりだよ。多分この子が言ってたことが正しいんだろうと。それで」

 

 ミナトロンは真剣な表情になりまっすぐ吉井の目を見た。


「君は本当に来るの?」


 あれ、この人。なんかまずい感じが。吉井は自分が緊張していることに気付いた。




 昨日、夕食を終えたミナトロンがコミュニティ敷地内にある自室に戻ると、机の上に先月末の収益の書類が用意されており、ミナトロンは持ち帰った飲み物を机に置いて椅子に座った。

 時間通りだな、それに先月言った通りの位置になっている。ミナトロンがその書類の確認作業に入ったとき、失礼します。と兵士が1人入ってきた。


 ふう。書類を置いてため息をついたミナトロンは入った来た男を見る。顔はわかる。『個人』の兵士だ、しかしどの程度の立場だったか。


「知らなかったら気にしなくていい、今理解してくれ。わたしは毎月この書類を見るのを割と楽しみにしてるんだ。だから月初めの夜は誰も来るなと言ってあるんだが」

「それ、は知っていますが。先程あったことの報告とその対策を」

「所属は?」

「個人2-7です」

「立場は?」

「2-7の所属長です」

 男は緊張した面持ちで質問に答える。


 『個人』か。今余ってるのはいたかな。ミナトロンは名簿を確認するため机に入っている書類を取り出しながら、それで? と訊いた。


「先程2-7の所属の部下3名から報告がありました。2-2の所属の者と計4名で食堂に行ったところ、一般人と4人が相対することとなったんですが。一瞬で」

「一瞬でなんだ?」

 ミナトロンは目の前にいる男に対する興味を完全に無くした。


「気が付いたら体の複数の部分を殴打され4名共に床に倒れていた、と」

「それが?」

「ある程度、持っている人間だと思われます。2-7の3人は否定しましたが、2-2の1人が後でわたしに言いにきました」

「なぜそれをわざわざ報告に?」

「個人2の管理者が不在だったのと、こちらの、主に2-7の3名が煽ったようで、それに応じる形で一般人が明日ここに来るそうです」

「なるほど。あ、君はもういいよ」


 男とのやり取りに限界を感じたミナトロンは、手で払うような仕草をして、部屋から退出するように告げ、同席していた2-2の兵士を呼ぶように伝えた。


「え、な、なぜ?」

 男が震えながら訊くと、ミナトロンは一瞬険しい表情になった後、笑った。


「君とはもう関わる機会がないからね。説明して成長を促す必要もない」

 そう言ってミナトロンは書類に目を落とす。


 あ、あの。と男は口だけを動かした後、失礼します。と言って振り返り部屋を出た。


 

 そして数分後、190cm程度の男がドアを開け室内に入った。


「失礼します。個人所属2-2のアガです」

「ちょっと注文があるんだよ。端的かつ客観的で無駄な会話のやり取りをしないようなやり方で、さっきあったことを教えてくれないか?」


「はい、わかりました」

 アガは緊張した表情を浮かべながら話し出す。


「先程2-7の3名それとわたしの計4名でギルド近くの食堂に行った際、その場にいた一般人に金を出せと脅しましたが、拒否されたため暴行を加えました。それを見ていた別の一般人が立ち上がったところまでは確認していますが、次に気が付いたときは4人とも殴打され1名は意識を消失しました。その後、2-7の2名がコミュニティの名前を出し脅しましたがその一般人には通じず、明日の午後改めてこちらに来ることとなりました。また店の修理代としてこちらは1万トロン請求され支払っています」

「わかった、それでいいんだよ。しかし君たち外で何してんの? どうしようもないね」

「はい……。それについては」

 アガは深々と頭を下げる。


「で、明日来る一般人はどこの?」

「他の集団には属していないようで、金貸しのススリゴの所で働いてるということは確認しています」


 ススリゴ? なぜここでススリゴが出てくるんだ。ミナトロンは書類を置き、顔に手を当てて笑いを堪える。


「ああ、すまない。で、その情報はどうやって?」

「最初こちらが脅した男、ラゴという者がその一般人と知り合いだったようで。その者は現在コミュニティ内で確保しています」

「なるほど。そのラゴ? は生きてる?」

 ミナトロンは鋭い目つきでアガをにらんだ。


「生きてはいます、今のところは。ただ聞き方が雑だったようで……」

「わかった。じゃあ今日の2-7の3名、それと2-7の所属長、そしてその男を明日第1師団に連れて行って。話通しておくから。で、体感としてはどうなの? その一般人」

「そう、ですね」

 アガは少し俯いた。


「こういう言い方は失礼かと思いますが、所属長では対応は難しいのではと」

「へえ。その上では? 番号の方だとどう?」

「わたしが見たことがあるのは個人1、個人6の管理者の方ですが。そうですね。難しい、と思います」

 消え入りそうな声でアガは答えた。


「そうか。そんなのがどこにも属さずにいきなりススリゴの所にね」


 オーステインから連れてきたのか? いや、それにしても。ミナトロンは、「あ、もういいよ」とアガに退席を言い渡すと、アガは慌てて頭を下げてから部屋から出た。


 ススリゴか、戻って来てからは会ってないな。ちょうどいい、明日行ってみよう。そう思った後、ミナトロンは再び書類の文字を追い始めた。


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