7.県立病院へ 前編
正直へとへとだった。
大量出血が続き、市立病院でハードな内診をうけ、筋腫だの手術だのいわれ、あげくに2時間近くもかけて県立病院にいかねばならなず、心身ともにへとへと。
それでも予約とられてるし行かなきゃいけない。予約は9時半。紹介状のあるひとは9時10分までに受け付けしてくれともらった用紙にかかれている。
この日は天気が悪く、7時前に家を出た。うまくいけば1時間半くらいでつけるはず。
が、……つかない。雨のせいで渋滞しているせいだろう。運転担当の母にも焦りの色が見えるが、なんとかほんっとにギリギリに到着。受付を済ます。
はじめてきた病院だし大きいし、昨日からずっと緊張しっぱなしだしで、かなりしんどい。
産婦人科の窓口へ行くといつものアレ。
「問診票書いてください」
「……はい」
何度目だよ……こういう情報も開示してくれよ。サインなんのためにしたんだよ。ダメなのかよ?
そして案の定あるあの質問。
性交渉の(以下略)
でもここの問診票は婦人科M医院より、市立病院より、多少厳しめというか、詳しく書かなきゃいけない感じだった。中絶経験はありますか、とかあったし。ないよ!!
問診票を埋め受け付けに持っていく。スケジュール票と書かれた紙の入ったクリアファイルを受けとる。
「まずは口頭で経緯を詳しく問診しますので、○○番の部屋の前でお待ちください。受け付け番号が出たら入ってくださいね」
とのことでおとなしくいうことを聞く。
待ったのは10分程度か、受け付け番号が出たのでなかに入る。
「よろしくお願いします」
マスクをした医師がいる。
「きょうまでのことを詳しく聞かせてください」
というので、また去年の夏から話す。……しんどい。情報開示はどうなってるん? とか思うが、この医師、聞き上手なのかとても感じがよくて内心「このひとが主治医なのかな? だったら感じよさそうだし、よかったー(ホッ」とか思っていた。
あれこれ質問を受けたり、訂正したり、思い出したりしながら、またまた20分~30分ほどかけて話してやっと終わる。ふぅ。
「じゃ、MRI撮って来てほしいんだけど」
「あ、あの……狭いところ苦手で」
「んー、どうしてもってときは鎮静剤とか使うんだけど。看護師もいるし、ちゃんと専門のひともついてるから大丈夫!」
「あ、実は昔パニック障害になったことがあってはじめての場所とか苦手で」
「あー、うんうん。そっか、……じゃとりあえず見に行ってみて、雰囲気だけでも」
とかなんとかいわれて、しぶしぶ承諾。
ちなみにわたしはパニック障害→不眠症→うつ病のお手本のようなコンボを決めたことがあり、どこかでどうにかならなかったのか!? といまだに思っている次第。
「血液検査するところに行って、受け付けしてもらってね」
そう、また血液検査である。
採血受付をする。ここで採血してからMRIで打つ造影剤用の針もいれます、とのこと。
え? ってことは拒否権ないってこと?
そう、ありませんでした!
造影剤の針(実際、正しくは針ではないんだけど針っていわれたし針ってかいています)を入れたまま自分の番まで小一時間待つ。MRIは1回の時間が長いのだ。外にいても音が聞こえる。これはかなり音大きそうだなと、不安と恐怖に怯えながら待ち、とうとう自分の番。
MRIの部屋に入るとさらに音は大きかった。でっかい入れ物に耳栓がたくさん入っている。
入れ墨やペースメーカー、金属? などがからだに入っていないか、アレルギーはないか等訊かれる。
「じゃこちらで下だけ着替えてください。ブラジャーはしていたらはずしてくださいね」
と看護師さん。
「あの、狭いところ苦手なんですけど大丈夫でしょうか」
「あ、そうなんですか? んー……とりあえず用意してもらってなか見てください。大丈夫だとは思いますけど」
なんというか、みんな「大丈夫!」って思ってるのちょっと怖いんですけど。
とりあえず下に履くジャージを渡される。狭い着替え室があってそこで着替え、ロッカーに持ち物や着ていたスカートを入れて鍵をかける。上はブラトップなのではずすものはない。ブラトップを発明したひと、ありがとう。ごそごそブラジャーを外すの面倒だし、そもそも腕には針入ってるから動かすの怖いし、何よりラクだし。心で拝む。
「着替えたらそこの耳栓をつけてこちらへどうぞー」
耳栓を取り耳に突っ込んで機械のある部屋に入る。
ちょっと年上くらいのしっかりした感じの男性と少年のような若い男性がいる。
「よ、よろしくお願いします。あの、狭いところ怖いんですけど大丈夫でしょうか(怯)」
「あ、そうなんですか。大丈夫ですよ、昨日も筋腫で撮影のひとで狭いところ苦手っていってましたけど大丈夫でしたし」
「そ、そっか」
いや、わたしはどうかわからんがな。
と、思うがもうどうしようもないので機械に乗っかり上向きに寝る。ナースコールのボタンが渡される。
「どうしてももう無理ってなったらナースコールおしてください!」
少年よ、ありがとう。押すかもしれんわ。
「はい、ありがとうございます」
ナースコールのボタンをしっかり握る。
「じゃ、ちょっとどれくらい入るか試してみましょうか」
しっかりマンがいうのでうんうんとうなずく。
下の台?が動いて狭いトンネルに入る。……うっ、怖い。
けど、撮影場所が下半身なせいかちょっと視線を上にすれば外が見えるではないか。つまり閉塞感はそれほどない。
「どうですかー?」
「あ、大丈夫みたいです。外見えるし」
ということで、撮影開始。
噂に聞くとおりすごい音。ガンガン鳴ったり、止まったりを繰り返す。
この間ずーっと緊張してどきどきしていた。寝てるだけなのに……。
ちょっと落ち着いてきた頃、すーっと台が動いて外に。
ん? 終わり?
「造影剤いれますねー」
なるほど。
少年が現れる。
「もうあと3分くらいで終わるんで! いい感じです!!」
ふふっ。
なぜだろう、「いい感じです!!」という語彙力のなさにわたしはものすごく安心感を得たのである。ほんと、不思議。
残り3分はあっという間に終わり、針も抜いて、やっと初MRI終了!
耳栓を捨て、着替えて、さあ、戻るかと思ってふっと別のMRIを見たら(この部屋には2台あった)、頭を固定され今まさに入っていこうとする患者の姿が! ひぇー、あれはわたしは無理かもしれん……どうか上半身が悪くなりませんように。そんな気持ちでこの場をあとにした。
ふたたび産婦人科に戻る。
正直、心身ともに疲労がすごくて、これからまた内診するのかと思うとげんなりした。