2.貧血
おかしい、なんだか今年の夏はやたら夜中に目が覚める。
婦人科のがん検査の結果を電話で聞いて、大丈夫だったとのこと、血液検査(ホルモン値)も特にひっかかってないとのことでほっとしていたのに、なぜだろう、なにかがおかしい。
なんとなく慢性的に体調が悪い。うーん。
と、思っていたら夜中に自分の息切れの声で目が覚めた。
「っ」
目が覚めてすぐ、心臓がものすごくばくばくいう。
心臓を押さえて、なんだこれ、と思いながらもまた眠りにつく。
翌朝目が覚めて、そういえば夜中にものすごく体調が悪かったような?と思い出す。
いつだったか、母が「朝方ぜえぜえいってたよ」ってにやにやしがならいってきたことがあった。たぶん、わたしがエロい夢でも見てると思ったんだろう。残念! 見てません!!
やっぱりどこか悪いのでは?
こんな感じで、おかしい? でもなにがおかしいのかわからない、という日々を送り、
8月ももう終わろうかというころ。
わたしは亀を飼っていて、毎朝の水換えをルーティンにしているのですが、この日ももちろんレッツ水換え!……が、
……え、なにこれ
ちょっと動いただけでものすごい動悸、息切れ、めまい。
いつもなら10分ほどで終わる水換えが30分以上かかってしまう。なんせちょっと動くだけで動悸、息切れ、めまいで手で心臓あたりをおさえ、座り込み、を繰り返してしまうので、そりゃ時間がかかる。
ほうほうの体で水換えを終わらせると母が仕事の研修でどこぞまで行かなくてはいけないんだけど、場所がわからないので下見に行きたい、ついてこい、という。
のろのろ用意し、ついていく。母が運転、わたしは後部座席で座っているだけ、なのになぜかやっぱり心臓がおかしいような。
1時間ほどで到着し、車を止め、母が入り口を探してうろうろ。ついていこうと車を降りるが、ちょっと歩いただけでやっぱり動悸、息切れ、めまい。
暑いせいで熱中症になったのかもしれない。帰りに食事をしたがっていた母には悪いがわたしは病院に行きたい、なのでそそくさと帰宅。午後から病院に行くことにした。
介護福祉士の母がよく通院介助で行くといっていた個人病院のK医院に行った。
土曜午後、そんなに混んではいない。受け付けで保険証を出して、またも問診票を書く。
こっちの問診票はいたって普通なのですらすらと。
書き終わって受け付けに提出、呼ばれるのを待つ。
30分くらい待って呼ばれ、診察室に入るとそこには結構尊大な感じの白髪の年配目のごついお医者さん。
「よろしくお願いします」
「はい、どうしました」
「ちょっと前からなんとなく体調が悪い日が続いていて、きょう、朝からちょっと動いただけで動悸息切れめまいがあってすぐ疲れてしまいます」
「ふん、ふん、じゃちょっと雑な血液検査するから。あと、尿検査、とってきて」
雑な? よくわかんないけどとりあえず採血して、尿を取りにトイレへ。トイレのなかに受け付け窓?みたいなのがあって、採尿したカップをおく。
待合室で待機して、すこししてまた呼ばれ診察室に入る。
「あ、お願いします」
診察室に入るときの挨拶がいまいちわからない。あってるのか……
椅子に座ると、なにやらレシートのようなものを見つめる医師。
「ヘモグロビンが7.7しかないねぇ」
「?」
「11以上が正常値なんだけど」
え!?
「ちょっとそこに寝て」
ベッドに横になる。
いわゆるエコー検査。結構ぐいぐいやられて、なんか気持ち悪い。
「んー、すい臓とか肝臓は大丈夫だねぇ」(医師の台詞をはっきり覚えてないけど確かこんな感じでいってたと思う)
再び椅子に座る。
「どこか消火器系統から出血してるかもしれないから、胃カメラね」
「えっ!!!」
「出血元がわからないと治療できないから」
がーーーーーん。
胃カメラ? え、マジで?
イヤなんですけど!! 怖いんですけど!!!
「あ、あと検便2日分」
「胃カメラって絶対やらなきゃダメですか……」
無駄な抵抗を試みるも、医師は、
「最低でこの2つは検査しないとダメ」
そっすか……
と、看護師さんが予約表を持って現れた。
「いつにする? 最短で月曜いけるよ!」
え……そんなすぐ? 心の準備が……
でも体調ものすごく悪いし、早く治療して欲しい。
「あ、じゃあ月曜で……」
「鼻からと口から、どっちにする?」
「どっちが辛くないですか?」
「んー、先生うまいからどっちでも大丈夫だよ、でも鼻からするなら機械の都合があるから早くいってね」
と、胃カメラについての説明書? のようなものを見たら口からだと鎮静剤ありになっているが鼻からはなしになっている。
「これ、鎮静剤ありのほうで」
「じゃ、口からね」
予約表に名前が書かれる。
ああ、もう逃げられない……。