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銀河を越えて。  作者: 五目御飯
8/12

第8話 虹に掛けた思い

俺はいつもの土手で思い出に浸っていた、

そして気づいたらいつのまにか日が暮れていた。

ボーッと暗く染まった河を眺めてると

背後から足音が近づいてきた。

「やっぱいたわね。」

「ホントにいたな。」

秋川と鮫洲だった。

「なんだお前ら、こんな時間に。」

「学校サボったことで反省文書かされてたのよ。

そんなことよりあんた今から自転車出せる?」

「え?」

「今からアタシ達でゼイダス落下地点に行くの、あんたにも付いてきて欲しい。」

「ゼイダス…そうだ!俺も試したいことがあったんだよ!」

「それならちょうどよかった、アタシ達はここで待ってるから早く自転車乗って来なさいね。」

「おう。」


数十分後

ゼイダス落下地点にて


「拝島、あんたが試したかったことを先に済ませなさい。」

「なんで?」

「アタシ達がやろうとしていることが成功したらこの宇宙船がどうなるかわからないからよ。」

「……わかった。」

俺は宇宙船を囲む柱のうちの一つに近づいた。

「お前らは茂みに隠れて目を守ってくれ。」

「え!?ちょっとあんた何する気!?」

「個人的に引っかかる事があってな。」

「……わかったわ。」

秋川はそれ以上何も言わず、鮫洲とともに茂みに隠れた。

「スーーーッ…」

俺は深く深呼吸をした。

そして全身に力を込めた!!

「うおりゃぁ!!だりゃぁ!!とりゃあ!!!」

俺は全力で柱を殴ったり蹴ったりした、

すると…!

バチバチッ

「よし!」

「拝島!あんた今なにしたの!?」

「もう少しでわかるさ。」

そして俺は林から葉っぱを一枚ちぎり、

ポケットから昼間拾ったライターを取り出した。

「行くぜ!」

俺はライターで葉っぱを燃やした、

すると…!!

ビヂッ……ビジジジジ

「来る……!!!」

俺は燃えかけの葉っぱをその辺に捨て、

ダッシュで茂みの方に飛び込んだ。

「お前ら、目をつぶって耳を塞いだ方がいいぜ。」

秋川は目を閉じ、耳を塞いだ。

鮫洲はちょっと後ろを気にしながら遅れ気味に目を瞑って耳を塞いだ。


バチバチバチバチバチバチバチバチ!!

バチバチバチバチバチバチバチバチ!!


目を瞑っても明るさは激しく、

耳を塞いでいてもうるさかった。

そう、俺はAK現象を起こした。


結構長い時間現象は続いた。

5分くらいするとやっと現象は収まった。

俺達は茂みから出てきて再び宇宙船の前に立った。

「拝島、これどういう事?」

「先週の月曜日に巨大なAK現象が起きたわけがわかったんだよ。」

「詳しく聞かせてもらおうじゃない。」

「結論から言えば、お前があの日の夜中に見かけた急いでいた人物、あれは府中だ。」

「……」

秋川は黙って俺の目をじっと見ていた。

「数学の岡村が言ってたろ、生徒数名が飲酒と喫煙で逮捕されたって、先週4組の生徒がちょっと少なかっただろ?おそらく捕まった奴らは府中の仲間だったんだよ。それで府中は話し相手がいなくなって機嫌が悪くなってたってわけ。そしてなぜ府中の仲間は捕まったのに府中本人だけ捕まらなかったのか、それは府中が警察から逃げきったからだよ。こっから府中が取ったと思われる行動を振り返ってみようか。


まず、府中とその仲間達はどこかでいつものように町で飲酒とか喫煙とかをして楽しんでいた、そこで多分警察か近所の大人とかに犯行現場を見られたわけだ、当然見つかったら逃げるよな?犯人達は一斉に逃げたが抵抗むなしく捕まってしまった、府中を除いてな。府中だけは村の方に逃げたから逃げ切ることができた、グループでの犯行だったし捕まえた大人も人数を細かく記憶してなくて捕まえた奴が全員だと思ったんだろう。まあそのあと逃げてる府中と秋川は偶然すれ違った、秋川はそいつが急いでいたって言っていたよな、それもそのはず、警察から逃げてんだもん。それから村に着いた府中はサエが林の枝をへし折って作った道を見つけた、山に続いてる道だからそこを使えば追っ手は来ないと考えたんだろうな、その道を通り府中はこの場所へたどり着いた、そんで目の前にちょうどいい柱が何本も立っていたからそのうちの一つに八つ当たりをして蹴ったり殴ったりした、そのあと気分を落ち着かせるために府中はタバコを吸おうとタバコに火をつけた、すると…


巨大なAK現象が起きてしまった。府中は自分らの犯行が見つかった日に町中で噂の流れるような事をしてしまい自分の足がつかないか怯えて機嫌が悪くなっていた。そんな中俺と秋川の会話を府中は聞いちまったんだ、同じクラスだから秋川の頭の良さはよく理解していたんだろう、現象が起きる原因をもし秋川が気づいたら自分も犯罪をやっていたことがバレてしまう、そう考えている矢先に秋川は金曜日にノートを学校に忘れていた、それを良いことに府中はノートをビリビリに破いて秋川の研究を台無しにして自分に足がつかないようにしたかった。


というわけで俺はさっき府中が行なったと思われる言動を擬似的に再現したわけ、AK現象は宇宙人の攻撃でもなんでもない、ゼイダス自身が自分が破壊されるのを嫌がって起こしていた現象だったんじゃないかな。まあこれがここ1週間で起きた一連の事件の真相じゃないかと俺は思う。」

秋川はしばらく黙り込んだあと、もう一度俺の目を熱い眼差しでじっと見てきて、口を開いた。

「確かに、それなら辻褄が合うわね。

本人に確認していない以上断定はできないけど。」

鮫洲も後に続くように俺にこう言ってきた。

「もし…その話が本当だとしたら、お前は府中を通報するのか?」

「いや、そんなつもりはない。

もう終わった事だ、これ以上掘り返してもお互い気分悪くするだけだと思う。」

「そうか…」

「拝島、あんたなかなかやるじゃない。

アタシはあんたのその推理真実だと思うわ。

八つ当たりする事と葉っぱを燃やした事で自身が破壊される可能性があると判断してゼイダス放電現象を起こした、磁石以外で現象を起こす方法を見つけるなんてお手柄じゃない!でもそうだとすると一つ疑問が残るわね…それが正しければ磁石を近づける事も破壊活動と見なしていることになるわ、暴力や放火ならわかるけど、磁力にそんなに敏感に反応する必要ってあるのかしらね。」

「まあ、その事はこれを作ったどっかの宇宙人さんにしかわからないな。」

「そうなるとますますこの宇宙船の出所が気になるわ!!」

秋川は目を輝かせてそう言った。

すると鮫洲が何やら焦った様子で秋川に話しかけた。

「ねえ秋川、そろそろあれやっちゃおうよ、早く帰らないと母さんが怖いんだよ…」

「そうね。

拝島、今度はアタシ達がここへ来た目的を話すわ。

それはね、この柱の謎が解けるかもしれないのよ!」

「柱の謎…?もしかしてこの柱の幾何学模様のこと?」

「そうよ!!」

すると秋川はぴょこぴょこ歩いて近くにある柱の模様をいくつか確認した。

「うん…やっぱり!!」

「どうきたの?」

「あんたらちょっとここの模様を見て。

そして覚えて。」

「……………覚えた。」

「そしたら隣のその柱を観察してみて。」

「うーん…??」

「どう?」

「あ!!反対側に同じ模様がある!」

秋川が言った模様が反転した形の模様が隣の柱にあった。

「ここの柱についてる模様にはおそらく全部ペアがあるのよ、柱を回転させてこの模様のペアを合わせれば何かが起きるんじゃないかってアタシはさっき反省文書かされてる時に思いついたわけ!拝島はこないだパズルゲームのブロックがこの柱に似ているって言ってたでしょ?あれは正解だったのよ!この柱もパズルなんだわ!だからあんたら手伝いなさい!!アタシがこのパズルを解くから指示に従ってあんたらは柱を回転させなさい!!!」


こうして秋川が柱のパズルを解いて、俺と鮫洲で指示通りに柱を回転させた。

「ここをこの向きに揃えてちょうだい。」

「わかった、行くぞ鮫洲!!」

「おう!!せーーのっ!!」

「「はぁぁぁぁ!!!」」

「あ、ごめんなさい。

間違えてたわ、やっぱ戻して。」

「「うわぁぁぁ!!」」

俺達の力を合わせても柱はかなり重く、めちゃくちゃ辛い作業だったが、急いでパズルを解く秋川も大変だっただろう。

時々間違えてたとはいえ秋川の解くスピードは凄まじく1時間くらいでほとんど揃えてしまい、ついに最後の一本となった。


「これで、最後の一本ね。」

「はぁ…はぁ…」

「ぐっ…拝島、ラストスパートだ!!」

「おう!せぇーーーのっっ」

「「だりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

ズズズズズズズ…

俺と鮫洲の腕は限界を迎えていたが、最後の力を振り絞り、気合いで柱を回転させた。

そして…とうとう…!!

「あんたら、よくやってくれたわね、

これで完成よ!!!」

全部揃えてしばらくすると、全ての柱が虹色に光り始めた。

「なんだ…!!」

「もう一度一旦茂みに隠れましょう。」


俺達は茂みに隠れて様子を見てみた、

全ての柱が虹色にしばらく光ると、

全ての柱から中心の本体に向かってビームのようなものが発射された。

そして…

「うほっ…」

「うおわ…」

俺と鮫洲はつい声を出してしまった、

なぜならすごく綺麗だったからだ。

本体から虹色の光の柱が空に向かって、

てっぺんが見えないくらいに伸びていたからだ。

そして何かオルゴールのような心地よい音がなんとなく光の柱から聴こえてくる。

「……これはきっと、ビーコンね。」

「なんだよそれ?」

「こんな感じに光の柱を作って位置の目印にするのよ。」

「じゃあこいつは誰かに何か伝えようとしてるのかな?」

「この宇宙船はきっと人を傷つけに来たわけじゃないんだわ、ここって人の電波届かないでしょ?

おそらく何かのセンサーを使って電波の飛んでいないところを感知して、電波が飛んでいないところは人がいないところって判断してここに落ちてきたんだわ。

そして拝島の言う通り、誰かに何かを伝えるためにここにきた。」

「これが?一体何を伝えてるんだろう。」

「それはアタシにもわからないわ、

もしかしたらこの村かあんたらの住む町にこの宇宙船を作った宇宙人に取って重要な何かがあるんじゃないかしら。」

「マジで…俺達の町にそんな秘密が?」

「宇宙人が大昔に残した遺跡があるとか、宇宙人の末裔が住んでるとか。」

「まああの町なら都会にも行けるし自然もすぐそばだし宇宙人には住みやすいかもな。」

「あの、2人で盛り上がってるとこ悪いけど、俺、そろそろ帰るね。マジで母さんが怖いからさ…秋川は拝島の自転車に乗せてもらって帰ってくれ。」

鮫洲はそう言い残して帰った。


「なあ秋川…」

「何よ。」

「これからどうするんだ?」

「どう言う意味よ。」

「だって宇宙船の謎、解けちゃったじゃん。」

「そうね…もう直接調べられる事はなくなったけど、まだまだアタシなりに色々こういう超常現象を追うわ。

というか元々アタシ色んな怪奇スポットに行ったりするのは趣味なのよ、アタシの調査が終わる時、それはアタシの身に何かあった時だわ。」

「うぉ…」

「あんたこそこれからどうするの?」

「え…うーん…サエと…けっこん…」

「ずいぶん飛ぶわね。」

「だって他に浮かばねーし。」

「…まあ、いいんじゃない?」

「サエもこれ、見てるのかな?」

「あの子なら、きっと見てくれてると思うわ。」

「そうかな…寝てないかな…」

「だってこの光にはあんたの思いも乗ってるもの。」

「そうなの?」

「あんたと鮫洲が頑張って柱を回転させたからこそこの光が見えたんじゃない、だからあんた達の思いがこの虹を掛けたのよ。五日市がそれを見逃すわけないわ。」

「お…おお…!!」

「……それじゃ、アタシ達もそろそろ帰りましょ、気をつけて運転しなさいよ。」

「……おう。」


帰り道、俺は秋川を後ろの荷台に座らせて自転車を漕いでいた。

「…なぁ秋川、お前って好きな人とかいるの?」

「男なんか興味ないわ。」

「そっか…」

「何よ、どうかしたの?」

「聞きたいことがあって。」

「言いなさいよ。」

「男にあーんとかする?」

「は?今なんて言った?」

「だから、あーんってする?」

「あーんって、ご飯食べさせるアレ?」

「そう、ご飯食べさせるアレ。」

「そんな事するわけないでしょ。」

「だよな…」

「どうしたのよ。」

「実はさ…さっきの話なんだけど、

サエにそのご飯食べさせるアレをやられた。」

「………はぁ!?それほんとなの!?」

「うん…どう思う?」

「どう思うもなにも…!!

それもう脈アリでしょ!?」

「やっぱり?」

「逆にそれで違ったらそっちの方がヤバイわよ。」

「脈アリか…マジか。」

「なんてゆーか…青春ね。」

「そうか…やばい手が震えてきた。」

「え、ちょ。」

ブゥーーーーー!!!

トラックのクラクションを鳴らされた、

ちょっと轢かれかけた。

「拝島!!ちゃんと運転しなさい!!」

「ご、ごめん…」

「もう、死んだら五日市と結婚できないわよ。」

「気をつけます…」

「宇宙船の謎は解けたけど、何かあったらいつでも相談してちょうだいね。」

「…おう。」


あれからAK現象が起きることはもうなくなり、村や町の人達を困らせていた電波障害も治まった。

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