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銀河を越えて。  作者: 五目御飯
6/12

第6話 紙と傷と

数分前


「秋川ー、あれ、まだ来てないか…

…ん?まさかあれって……」


「やっぱ秋川のノートだ…

なんでこんなビリビリに……」

スッ

「おい…てめぇは関係ないだろ…

さっさと出てけよ……」

「府中…これ、お前がやったんだな?」

「うっせぇ、黙って出てかねぇと

お前のこのダッセぇカチューシャカチ割るぞ。」

「て、てめぇいつの間に!?」

「へへっ」

「てめぇ、それ離せよ、早く離せよ。」

「黙って出てけと言ったよな?」

バギィッッ!!

「…………………」

「ほら、泣けよ、おら、悔しいか?」

「…………………」

「お前が悪いんだバカヤロー、

わかったら早く出て行き…」

ボガッッ!!

「…怒りの炎で涙も蒸発するぜこりゃ…

てめぇは俺がぶっ殺す!!!!」

ドガッ!!

「チッ…オラァ!!」

ボゴォッッ!!

「キャァァァァァ!!」


現在


「もう…早くあいつらの喧嘩止めなきゃ!!」

「やめた方がいい、巻き添え食らうぞ!!」

「デカイ体のあんたが何言ってんのよ!?

空手はボクシングじゃないから大丈夫よ!」

「俺の頬の傷を見てくれ!!!!」

「えっ…どういう事?」

「おーーいみんなーー!!

先生来たぞーー!!ほらーどいたどいたー!」


この大喧嘩は大問題になり、

放課後急遽学年集会が行われたわ、

ホントめんどくさい文化よね。


「全く最近はみんなたるんでいる!!

生徒数名は未成年飲酒と喫煙で逮捕されるし!こんな喧嘩は起きるし!!

一人一人が意識すればこうはならなかったはずだ!!」

ざわ…ざわ…

「ほら、お前ら二人みんなに謝れ!!」

拝島と府中が体育館の舞台で晒し者にされていた。

「で、でも、これは府中が…!!」

「うるせぇ!!」

ボゴォッッ!!

教師(一応)の岡村が今の時代で生徒の拝島を殴りつけた、

拝島は右ストレートを左頬に思いっきりくらい、舞台の床に叩きつけられた。

ストォン!っと、まるで聞いたこともないが故に余計に痛々しく聞こえるその音は、体育館内にいる2年生とその先生達の注目を集めた。

「拝島ぁ、お前のその態度、前々から気に食わなかったんだよ。お前から手を出したくせに言い訳をするな!」

そんな…昭島は拝島を優しい人だと言っていた、昭島は嘘なんてつかないし、拝島だって、きっと意味もなく暴力を振るうような事はしない気がする…何か理由が、もしかしてアタシのノートのため…?とにかくアタシは叫び声無しにいられなかった。

「はっ…拝島ァ!!!!」

「くそ…こんちくしょお!!!」

見ていられなくなったアタシと鮫洲は舞台に向かって思いっきり走った。

「岡村!!あんた何やったかおわかり!?」

「あぁ!?貴様まで楯突くつもりか!?」

「いくらなんでもこれはやりすぎよ!!」

「ぅっ…そ、そうだそうだ!!」

鮫洲が申し訳程度に便乗した。

「鮫洲、拝島連れて逃げるわよ!!」

拝島は喧嘩の疲れに右ストレートを綺麗にくらったせいで完全に気絶していた。

鮫洲は拝島をお姫様抱っこして体育館の出口に急いだ、アタシも後を続くように走ると…

「おい!!秋川待て!!

お前まで反抗するつもりなのか?

お前は2年の中でも優秀だと思ってたんだがな。」

岡村に思いっきり右腕を握られた。

「こ、これだけはやりたくなかったわ…」

左手で眼鏡を素早く外して、

思いっきり叫んだ。

「秋川ブリザァァァァァド!!!」

「うぐっ…」

やった!!上手くいった!!!

アタシ、男子の間では目つきが怖いって有名だし、人間突然睨まれて大声出されたら一瞬ビビる者よ。まあ上手く行く自信はなかったけど、上手く振りほどけたわ。

「たるんでんのはてめぇだ岡村!

地獄で解の公式解いてやがれ!」

捨てゼリフを言ったアタシは体育館を全速力で出て行った。


アタシと鮫洲は上履きのまま学校から走り去った。

「とりあえず安全な場所に行こう!!」

鮫洲がそういうので鮫洲について行った。


土手


「よっし、ここなら安全だろ。」

「ゼェ…ゼェ…鮫洲…あんた速すぎ…」

「ご、ごめん。

とりあえず拝島はこのベンチに寝かせておこう…」

「いいえ、貸して。」

アタシは拝島の頭を掴み、

顔を川の中に突っ込んだ。

危険だから読者のあなた達はマネしないでね。

「…………〜〜〜〜〜!!!?!?」

ゴボッ!!ゴボッ!!

「よし起きた。」

ガバッッ!!

「ゲッホ…ゲッホ…な、何すんだ!!?」

「気絶してたから起こしたかったのよ。」

「はぁ…?」

「鮫洲が気絶したあんたをここまで連れてきたのよ。」

「お、あ、ありがとう、でもなんで…」

アタシは拝島の耳元で、小声で言った。

「五日市の前であんな姿見せらんないでしょ。」

「た、たしかに…あ、ありがとう。」

「拝島…俺は心配したぜ…」

「ごめんな。」

「……?」

拝島は鮫洲の左頬の傷を見ていた。

「そ、その、何があったか話してくれないかな?」

「……それはさっき学年集会で聞いてただろ、俺から府中を殴ったんだ。」

「あんたが意味も無く殴るはずないわ、あんたの足の指の間はそんなに狭くないはずよ。」

「なんだよその言い回し…」

「その、正直に話して欲しいの…」

「うっせぇ!!もう尋問や説教はこりごりだ!!」

ドン

「ふ、は、拝島…!!!」

拝島はダッシュでどこかへ行ってしまった。

「……今はそっとしといてあげましょうか。」

「……そうだな。」

「あのさ、答えたくなければ良いんだけど、

拝島と府中の間に何があったの?

なんか前々から突っかかられてたみたいだけど。」

「…さっき話そうと思ってたんだ、

それは俺の顔の傷に関係している。」

「あー、確かにそれちょっと気になってた、結構深いわよね…」

「少し長くなるけど…いいか?」

「どうぞ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


それじゃあ話そう、

それは1年前、俺達が1年生の頃。

拝島は1組、俺は5組、府中は6組、

3人とも違うクラスだったが、

みんな同じ空手部に入った事が、俺達の出会いのきっかけになったんだ。


「……なぁ、お前1年?」

「…そうだけど?」

「俺達も1年なんだ!!

俺は府中、そしてこいつは鮫洲。」

「俺は拝島、よろしくな。」


空手部に入った1年は3人だけだった、

2年は5人、3年生は2人と、

人数の少ない部活だった。


「おい1年!!そんなんで試合に出れると思ってんのか!!ちゃんと自主練もしろ!!」

「「「はいっ!!」」」


部活は火曜日、水曜日、そして木曜日の、

週3回で、自主練サボるとすぐにボロが出た。


とある帰り道


「って行っても、練習ってどうする?」

府中は少し面倒気味に言った。

「俺ゲームやりてーしなー。」

拝島もやはり少し面倒気味だった。

そこで俺が提案した。

「そうだ!土日の朝にあそこの土手で、3人で型の練習とかしようぜ!!」

「……めんどくせぇけど、まあいいよ。」

「俺もいいよ、まあ暇だし。」

「じゃあ5時に土手集合な!」


最初は2人共、乗り気ではなかった。

でも最初の朝練当日。


「あーわりーわりー、遅刻しちゃって。」

府中は45分も遅刻してきた。

「おい府中!!!!」

「なんだよ拝島。」

「朝日を浴びながら練習するの、案外楽しいぞ!!お前もやってみろよ!!」

「………え?」

「とりあえず俺と組手やろうぜ。」

「お、おう。」


「確かに、気持ちいいかもしれねぇ、

なんかもっとやりたくなってきた。」

「次は川に入って付きとかの練習しようぜ。」

「いいじゃん!やろうぜ。」

拝島は俺の提案にすぐ乗ってくれた。

「え、川に入る意味ある…?」

府中は少し嫌そうだった。


なんだかんだで、俺達は土日に朝練を続け少しずつ実力に繋がっていった。

たまーに拝島か府中が寝坊することもあったが、

最初乗り気じゃなかった府中も結構練習を楽しんでいて次第に3人の関係は良くなっていったように思えたよ。

しかし…


「お前ら体力なさすぎだぞ!さらに上を目指すなら技だけじゃなく、ランニングもしろ!!」

「「「はい!!」」」


「……つってもさ、ランニングなんてどこですればいいんだ?この辺車の通りもそこそこあるし迷惑にならない?」

府中は練習が増えるのに乗り気じゃなかった。

「こういう時はGPSの地図アプリ使おうぜ!」

拝島が言った。

「おい見ろ!村の方にこんな道があるぞ!」

「は!?」

府中は驚いた。

「で、でもよ、これ誰かの私道だったりするんじゃねぇの?別荘へ続く道だとか。」

「でもこの道に特にそれらしい建物は何もないぞ?」

「いいじゃんいいじゃん!

俺は拝島に賛成だな、ここでランニングしようぜ。」

俺は拝島の意見を肯定した。

「……、チ仕方ねぇな。」

府中は微妙に舌打ちをしていた。


そしてその週の土曜、

土手で一通りの練習を終えた俺達は村にある謎の道へ向かった。


「なんだよ…なんもねぇじゃねぇかここ。」

府中はちょっとホッとしたように見えた。

「確かに、地図は間違ってたのかな…」

拝島はちょっと悲しそうだった。

「あ、おい!なんか見えるぞ!」

俺は木と木の間から何かが見えている事に気付いた。

「お、ほんとだ!この木なんか掻き分けられるぞ、行ってみようぜ!!」

「おっしゃー!」

「………………チッ」


「ここに丁度いい岩がある、机みたいに平らだ、1往復ごとにここにその辺の石ころ置いてカウンターの代わりにしようぜ、まあ今日は最初だし、一番奥まで軽く行って戻ってくるだけ、今日の感覚や時間で何往復するか今日明日で決める事にしよう。」

俺は拝島の提案はいいと思った

「賛成!!」

俺は賛成したが

「……おう。」

府中は不満そうだった。

「よっしゃ、それじゃあ出発!!」

「「おーー」」


しかし次の週から府中は来なくなってしまい、

川での練習やランニングは俺と拝島だけになってしまった。


ある日のランニング中。


「なあ鮫洲。」

「ん?」

「お前さぁ…気になる人いる?」

「うっ、な、なに!?なんだよ急にぃ!?」

「俺はいる。」

「あ、自分語り?」

「クラスにすっげぇかわいい子がいるんだよ。入学当初からちょっと気になってたんだけどさ、こないだ俺がファイルに挟んだプリント落とした時に一緒に拾ってくれたんだよ!」

「お、おう、そうか!」

ごめん…反応に困る…

「いやー、あの綺麗な茶髪いいよねぇ。」

「……え?茶髪…?1組の茶髪って五日市?」

「あ、知ってんの?そうそう五日市さん!」

「確かに綺麗な顔立ちしてるよなぁ、でもあの人結構地味じゃない?静かだし。」

「え、そ、そうかな?」

「うん。あ!もう頂上だ!少し休もうぜ。」


「くっはぁー!!やっぱ拝島の作る塩にぎりは絶品だぜ!塩加減がちょうどいいんだよ!」

「……………」

「お、おい拝島聞いてんのか?」

「あ、ごめん、さっきあそこでなんかやっこさんみたいなのが見えてさ。」

「ん?あ、凧揚げ?」

「そう。」

「今11月だぞ?そういう時期じゃないだろ。」

「んー、確かに。

ごめんさっきお前何言ってたんだ?」

「だからさぁ!お前が最近作って来てくれる塩にぎり!この塩加減がちょうどいいんだよ!米と喧嘩しない感じ!白銀比に適ってるのかな、府中にも食わしてやりたいぜ。」

「やだよ。」

「え?」

「あいつには食わせたくねぇや。」

「まあ練習にいきなり来なくなったのは寂しいけどよ、あいつも部活で上達してるしあいつのペースでやってからいいじゃん?」

「そうか、鮫洲はあいつと仲良いんだな。」

「え?」


あいつが練習に来なくなっても、俺と府中の関係は良好だったから、この時はあんな事が起きるなんて思いもしなかった、府中からは拝島とも仲良いって聞いてたし。

本当の事を知ったのは1月になってからだったんだ。


1月のある日のこと、この日は部活がなかった。


「鮫洲!今日一緒に帰ろうぜ!」

「いいよ!」

「おい、拝島、鮫洲は俺と帰るんだよ、お前は一人で帰れ。なぁーー鮫洲!!」

「う、うん…いつも府中と帰ってるからさ…」

「………お、わかった、じゃあな。」


この事は本当に悪かったと思っている、府中の顔がなんだか怖くて何も言えなかったんだ……


だから次の日の朝、俺はメールで拝島を誘って一緒に学校に行くことにした。


「拝島!!昨日はごめんな……俺何も言えなくて……」

「昨日の事はいいって、お前には関係ないし、な?」


拝島は簡単に許してくれた。

それから学校に着くまでは楽しく会話した、学校に着くまでは……


「おい拝島……お前なにしてんだ?」

「……んだよ、なんか用かよ。」

「鮫洲と話してんじゃねーよ。」

「あぁ!?」


この時確信した、俺が知らない間に拝島と府中はかなり悪い関係になっていた事を。


「お、おい府中、そ、そうやって拝島につっかかんのやめろよ!」

「………チッ。」


府中は素直に去って行った、俺はこの時一安心していたが、本当の問題はここからだった。


その日の放課後、部室に行っても拝島と府中の姿がなかった。部活が始まる寸前になっても2人は来なかった、すごい胸騒ぎを感じて俺は道着姿のまま部室を飛び出して学校中を探し回った、すると普段の授業では使わない1階のとある廊下にたどり着いた。そこには拝島と府中の姿があった。

俺は拝島の左後ろにいた。

「………………」

「………………」

二人はすごい緊迫した感じで見つめ合っていた。

拝島は棒立ちをしていたが、府中の様子は何かおかしかった。


スッ!!!!


すると急に府中から一歩飛び出した……!!


「や、やめろぉぉぉ!!!!」


俺はつい二人の間に飛び出した。


ザグッ!!!!


「あ、あわぁ……」


俺は情けない声を出してしまった、

熱い、左頬が熱い。

兄弟もいないし一度も喧嘩したことのない俺には今まで感じたこともない感覚だ。

左腕を見てみると、少し黄ばんだ道着の左の袖の一部が真っ赤に染まっていた。


「あわわわわわ………」

俺は動揺を押されられなかった。

「さ、鮫洲!!!」

拝島がこれまで聞いたこともない声で俺の名を叫んできた。

拝島の声は右から聴こえる。

左を見てみると誰もいなかった。

「く、くそ!!府中の野郎逃げやがった…!!

もう今はどうでもいい!鮫洲!目はやられてないか?大丈夫か!?なぁ………


俺はショックで気絶してしまい、拝島が俺を保健室まで運んでくれたらしい。

それから翌日に府中は特別指導を食らいそのまま強制退部になって一週間くらい自宅謹慎になった、拝島も気まずさから部活をやめしまった。俺はよく補習に呼び出されて部活に行けない事があり、その時によく部活内で拝島と府中は喧嘩をしていたらしい。

拝島と府中とはそれ以来ほとんど話さなくなってしまった。なぜか拝島は退部前に俺の家まで謝りに来てくれたがそれっきりだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「でもこないだ久々に拝島と話せてさ、結構嬉しかったよ。」

「つまり拝島と府中は元々ギスギスしてたのね。」

「そういうこと、でも俺は二人のこと嫌いじゃないし複雑な気分だよ。」

「はぁー…今日は散々ね、こないだ忘れたノートはビリビリになってるし。」

「え、ノート?」

「ほら、隕石の噂あるじゃない?あの噂について色々まとめたノートだったんだけど、先週の金曜日に忘れちゃって、今日見てみたらこの有様よ。」

「これは酷いな…」

「これ、府中がやったのかしら。分厚いノートを丸ごとビリビリにできる人間って結構限られると思うのよ。」

「確かに府中の力なら可能だよ、でもなんのためにそんな…」

「思春期の男子ってよくわかんないわね。」

「それは俺も思う。」

「そいえば明日どうやって学校行こうかしら…?

きっとアタシ達ただじゃ済まないわよね…」

「俺はサボるわ…」

「じゃあアタシも。」

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