第1話
「敵機体が大量に張り付いています!
エネルギーを貯めるのに時間がかかりすぎます!!」
「隊長!!僕にできる事はないのか!!」
「無理です…我々はこれで………
完全に追い詰められてます………」
「いや!まだだ!お前達……………………………………
……………………………よく聞け……………………………
銀河を越えて。
第1話 夜空かける想い
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………体にすっと魂を押し込まれた感覚がした。
・・・・あぁ、俺が眠りから覚めただけだ。
だけどさ、起きる時ってそんな感じしない?
ただ、現時点で大切なのはそこじゃない、
さぁて・・現在時刻を確認しよう。
俺は体を起こし、目を開け、時計を確認する。
3時2分!6限目終了まで、あと3分だ!!
お察しの通り俺は居眠りをしていた。
「クスクスッ」
「ヒソヒソヒソッ」
ん?なんだか周囲がうるさいなぁ。
この俺が起きるのがそんなに変か?
そんな頻繁に寝てるつもりないぞ。
俺が前を向くと、先生が何か言いたげな顔をしていた。
「はい、じゃあ今日はここまでだ・・チッ」
おい、なんだよその舌打ち。
ただ、これで今週はもう自由だぜ。
教科書類は見てるだけでも気分が悪いので、
急いで机に押し込める。
しかし詰め込みすぎてなかなか入らない。
「ねぇねぇねぇ、ねーえっ」
ツンツンツンツン
俺の肩を、細くて柔らかい指がつっついてくる。
「ん?どうした?」
「あのさ、今日このあと暇?」
美しく透き通った天使の竪琴のような声が
俺の鼓膜を弾いてくる。
放課後の予定に対しての大天使さんの問いに対して
俺が出した答えは無論
「暇だぜ。」
当たり前だよな?
スフィンクスだってこう答えるに決まってる。
「あのさあのさ、
村の方に隕石が落ちたって話知ってる?」
「他の奴が話してるのを盗み聞きした程度なら」
「あとで見にいこうよ!!」
「いいけど、ちょっと遠くないか?」
「どうせ明日休みじゃん!
キミ部活やってないでしょ」
「・・・そうだな、暇だしいいかな。」
ガァーーーーーーーー
教室のドアから担任が入ってきた。
「あぁ、先生来ちゃったね・・んじゃあとでね!」
そう言うと彼女は自席に向かうために
体を90°回転させた。
茶色っぽいサラサラのボブヘアーが回転に合わせて揺れる、
これがまたとてつもなく美しく、
ついつい見とれてしまった。
そう、俺は彼女に恋をしている。
それから5分くらい経過した、
ホームルームが終了してから
俺達はすぐに正門まで来た。
「ねぇねぇレイア、この後どうする?」
「このまま自転車で向かおうや。」
「自転車置きに帰らないの?」
「村へのバスって2時間に一回とかじゃなかった?
自転車で向かう方が早いぜ。」
「じゃあ私自転車無いから後ろ乗せて!」
「よっしゃ任せろ!じゃあ取って来るから
ここで待ってて。」
今いるこの町から自転車で40分くらいの所に村がある、
その村の方向に向かっておとといの真夜中に
そこそこデカイなにかが落ちていったらしい。
この噂はすぐに町中に広がり、
この2日間町中この話題が止まない。
町の外じゃあまり知られてないようだけど。
今日も学校で3回くらい耳にした、
年頃の高校生でもそこそこ気になるみたい。
学校では隕石って呼んでる人が多いが
目撃者の中にはUFOだったと主張する者も多い。
ちなみに俺は見てない、夜10時には寝ちゃうから、うふ。
俺は自転車置き場へ向かった。
急いで自転車の鍵を開けた。
なぜ急ぐのかって?
どの辺に隕石とやらが落ちたかわからないし
早く行くに越した事ないからだ。
なんたって二人乗りも待ってるし。
急いで自転車を引きずり出し
素早く自転車に乗って正門へ向かおうとすると
目の前をガタイの良い男が立ちはだかった。
「わ!!拝島じゃん!!!何急いでるの?」
「ちょ、鮫洲!詳しい説明は今度だ!
俺を信じるならばそこをどいてくれ!!!!」
「おう!!」
鮫洲はデカい体を即座に左へずらした。
「サンキュー!!うおおおおおおりゃぁぁぁ!」
俺は必死で正門で待つサエの元へ向かった。
「サエ!!!早く乗るんだ!!!」
「ちょ、せ、せかさないでよ・・・うわぁ」
サエはバランスを崩し、地面にコケた。
「す、すいません、ゆっくり乗ってね、ゆっくり。」
サエが後ろに乗ると、
すごくゆっくりめに道路へ駆け出した。
10分くらいで町を抜け、
村へ続くただ一つの道路の上で
俺はただひたすらに自転車をこいでいる。
俺の心のプリンセスエンジェルを乗せて。
「あ、そういえば、サエは隕石を見たの?」
「私は寝てて見逃しちゃったよ。
でも、ちょうどそれくらいの時間にすごい音がしたの、
ギュゥィイイイイイン!!って感じのうるさい音。」
「そんなの聞こえなかったなぁ。」
それにサエが言うとうるさく聞こえない。
「それもそうかもね、
レイアは隕石よりもうるさい先生に怒鳴られようが、
全く起きる気配無いもんね、6限目もそうだったし。」
「え、マジかよ!?怒鳴られてたの俺!?」
「うん、みんなそれ見て笑ってたよ。」
「全然聞こえなかった・・・」
俺が起きた時に周囲が笑ってたのはそのせいか・・・
40過ぎのおっさんの怒鳴り声など、
俺の魂に届くはずなかろう。
「次何かあったら私が起こしてあげようか?」
「え???」
サエの席は一番窓側の列の一番後ろ。
俺の席は一番廊下側の列の一番後ろ。
間に4つの席を挟むので
授業中に起こすのは不可能だ。どういうことだろうか。
「特別に私が起こしてあげよう。」
それから20分くらい
俺達は雑談を楽しみながら山道を進んでいった。
時々横を通り過ぎる車やバイクの音のせいで
度々サエの言葉を聞き逃してしまった。
サエのカバンに大量に付いているストラップも
チャリチャリうるさかった。
村へ着くと、特に目立って変な様子は感じなかった。
しばらくサエとあたりを見回すと、
どこかからか煙が上がっているのが見えた。
近くに来ないとわからないくらいに細々しい煙が。
「多分あれかな?結構近くみたいだね。」
サエはそう言うと自転車から飛び降りた。
「行ってみよ。」
俺は自転車を邪魔にならなさそうな所に停めると、
サエと共にケムリが上がっている方へ向かった。
「多分この先だよね・・
木や林ばかりで道がないな・・」
「大丈夫、私に付いてきて。」
サエは俺の前に立つと、
凄い勢いで林をかき分けて進みはじめた。
ベッキベキに枝をへし折って進むから
後をつけやすかった。
サエは普段大人しいが、意外とタフな面もある。
そういうところがすごく良い。
2〜3分くらいの間進み続けると
先頭を切って進むサエの後ろ姿が光始めた。
「レイア!!!これで終わりだよ!!」
出口の光が差し込んできただけだったようだ。
足が枝に引っかかるのに注意しながら、
俺は森を抜けた………………
「おぉぉ・・・・」
俺は言葉を失った。
なぜなら目に飛び込んできた風景は、
想像とははるかに違うものだったから。
隕石と言われてたから
巨大な岩が地面にクレーターを作ってるのを想像していた。
しかし実物はそんなものではなかった。
どうやらUFO説の方が合っていたようだ。
半径100mくらいの空間の真ん中に、
形も大きさも車に似た何かが地面に突き刺さっており
その周りには丸や四角っぽい模様が刻まれた
縦3mの円柱形の太い棒が何本か規則的に地面に垂直に刺さっていた。
車のようなものや柱のようなものは
銀色に輝いていて、
すごく綺麗で神秘的な景色を作り出していた。
あまりに綺麗だったので
俺は固まってその景色をつい呆然と見つめてしまった。
30秒くらいすると魂が引き込まれるように意識が戻った。
俺がボーッとしていてもサエは何も言ってこなかったので
様子が気になりサエの方を見てみると、
この子とは1年くらいの仲だが
これまでに見た事のない程のマヌケヅラで空を見つめていた。
ボーッとしている人に向かって
宇宙と交信しているって言うじゃん。
まさにそんな顔だった。
目的の物体は前方にあるのに
何故上を見ているのかもよくわからない。
「・・・はっっ!ごめんね、少し意識飛んでた。」
「かなり飛んでた。」
「うーん、来たのはいいけど
まずどこから調べようかな?このデカイ棒とか?」
「待て、うかつに近づかない方がいい。
触ると何が起こるかわからない」
俺はさっき足をひっかけそうになった枝を引きちぎり、
その枝で柱みたいなものをつついた。
「・・・触っても平気みたいだな。」
安全を確認した俺は、柱のような棒に手を触れてみる。
「うっわ!冷た!!」
「ホントだ、すごく冷たい、
大気圏突入時とか暖められなかったのかな?
なんか不自然なくらいにひんやりしてるね、
ここ最近カラッカラに晴れてるのに。」
「これ多分地球で作られた物じゃないよな。」
「見るからにそうだよ、絶対そう。」
特に確実なる根拠は無いが、俺達は本能的に理解した。
UFOとかってテレビで観たりしてもどこか嘘っぽく感じるが、
本物を目の前にして見ると地球外の物だと簡単にわかる。
スマートフォンとかリニアモーターカーとか、
身近にある技術とは見た目からして明らかに違うからだ。
「見に来たはいいけど、これからどうする?」
「とりあえずあの真ん中にある乗り物を調べようよ!」
そういうとサエは中心部の車のような物体へ走って行った。
俺も後を追うようにそっちへ向かう。
「レイア・・やっぱこれも冷たいよ・・・」
俺がサエと反対側を調べてると・・
「うわ!!あっつい!!!あっつい!!!!」
「え、ちょっと、どうしたの!?」
サエは俺のいる裏側に回ってきた。
「見てくれ!煙の原因がわかったぞ!!」
「んー・・?ぐぁ!!あちっ!」
「この地面と物体の間に何か挟まっていて、
その挟まっている何かが熱されてるみたいなんだ。」
「ホントだ、でも熱で真っ赤になってて
何が熱されてるのかわからないね。」
その「何か」は、10円玉くらいの大きさに見えた、
しかし奥にハマってるのであまりよく見えなかった。
「私の考えだけど、冷たいのはコンピューターか何かが
意図的にやってることじゃないのかな?
状況に応じて表面の温度が変わるのかもしれないね。
一つの物体でも熱いのはこっち側だけみたいだし。」
「そうだとすると熱されてるものがなんなのか、
ますます気になるな。」
「木と人間は平気みたいだね。
・・・・・・・あ、そいえば今何時かな?」
サエがスマホを取り出すと、
ビリッッ!!!
「ぎゃぁ!!なに!!?」
すごく細いイナズマがサエの携帯に放たれた。
「うわぁ、スマホは近づけちゃダメみたい、しまうわ。」
サエの顔が少し青ざめていた。
「わ、私は大丈夫だよ!そんな目で見ないでってば。
日が少し傾いてきたけどもうちょっとだけ調べよ!」
サエは舐め回すように物体を触り始めた。
俺はやる事が無く、周りの景色を眺める、
すると、ふと疑問が浮かんだ。
「なんでこんなとこに落ちたんだ?
このへん山しか見えないし、
そもそもこれは何のためのものなんだろう。」
「うーーん・・いくら調べても
出入口的なものが見つからないなぁ。
これ乗り物じゃなかったのだろうか。」
「それなら宇宙人はどうして
乗り物じゃないものをわざわざ落としたんだ?」
「この模様も何か意味があるの?」
「周りの棒は全部で50本みたいだな、
何でこんなにたくさんあるんだ?
噂では隕石は一つじゃなかったのか?」
「なんでスマホに反応したのかな、
電子機器に反応するとか?」
「そこの挟まってる熱されてるヤツは電子機器って事か?
大きさ的に腕時計とかだろうか、
仮に腕時計だとしよう、
だとしてもこんなとこに挟まってる理由が説明できないな」
「そのようだね・・・」
俺もサエも、考えれば考えるほど疑問を感じた。
謎は深まるばかりだった。
しばらくの間疑問を互いに投げ合ったが、
だんだんと両者ともなにも言わなくなった。
疑問ばかり言っていても不毛だし、
互いに何を言えばいいかわからないため
この場で話す事がなくなったからだ。
俺が熱烈に物体を調べるサエの姿を黙って見つめていると、
日が本格的に沈んでいることに気づいた。
何故ならサエの髪の毛が空の夕焼けにつられて
黄金色に輝いていたからだ、
夕日に照らされている熱心な横顔も相まって美しい。
俺が数分サエの横顔を眺めていると、
サエは太陽が落ちてる事に気がつき、口を開いた。
「うわ、もうそろ帰らないと帰り道が暗くて危険だね。」
「そうだな、今日はこれくらいにしよう、
帰りに車に轢かれでもしたら嫌だし。」
帰り道にて
「とりあえず隕石じゃないって事はわかったね。」
「あれをどう見れば隕石に見えるんだろうな。」
日はまだ完全に暮れてなく、
周辺に生えている木々の枝と枝との間から黄金の光が差し込んでいたため、
いくつもの光の柱が道路一面に並んでいた。
「サエは土日ひまなの?」
「私が忙しいわけないじゃん。」
「休日は普段何してるの?」
「えっと、sっ…散・・・歩。」
「散歩?どこを?」
「うーん、じゃあこの土日私を探してごらん、
見つけられたら何か言うこと聞いてあげよう。」
「えっ・・?」
「言葉通りだよ、
私はキミ達には届かないような場所から
美しい景色を眺めるのが大好きなのさ、
だからついつい散歩するの。」
「その場所、俺には行けないのかよ。」
「キミが眺めたいのは景色じゃなくて私だろう?」
「・・え?何か見たい景色があるの?」
しまった・・また横切る車のせいで聞き逃した・・
「あるって言ったら連れて行ってくれるのかな?」
「あ、当たり前だ!
今日だってこうして連れて行っただろ?
俺は学校以外じゃひまだし、
銀河の果てにだって連れて行くよ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ねぇ。」
「どうした?」
「後ろから大型トラック接近中、
ほらもっと端によるんだ。」