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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第四章 『城の中は……』
97/165

97=『リリアとラデン様とルーシー』 (1)

少し長文です。

     ☆ ★ ☆ (20)


 私はひとりでシンシア様の庭の椅子に座り、ラデン様に話す内容を反復していたけど、やはり、サガート様に女の編み紐として何か提げる物をお願いしようと思った。


 彼はルーシーに子供の話題はしてないような気がし、ほかの人から情報としてもルーシーは得てないような雰囲気なので、この機会を利用し、ラデン様がルーシー話しやすい状況を作り一石五鳥くらいの結果を得たいと思い、夜中にトントン屋敷や南の森まで行けるかもしれない、とも思った。


 城から南の森までは遠くて、夜バージョンだけでは時間が厳しい。アートクの市場からだと可能だと思う。サガート様やラデン様の配下のフィードとも個人的に話しがしたいと思っていた。


     ☆ ★ ☆


「シンシア様、ラデン様がいらっしゃいました」

 パーレットがそう言う。


「パーレット、今日はリリアが話しがあると言っていたから庭の方に案内して」

「かしこまりました」


     ☆ ★ ☆


「リリア様、遅くなりました」

 彼が私の目の前にきてから挨拶をしたので、

「いつもお忙しいのに呼び出しして大変申し訳ありません。こちらへお座りください」


 私は立ちあがってからそう言い、対面の椅子に座ってもらう。彼の背中のその向こう側にはカーラの生い茂る緑色の葉模様がゆで卵を半分に切ったような形で丸みを帯び、今日はここでも風がやや緩やかに、時折左側の奥の石畳から私へ向かってすーっと直撃するかのように吹いていたので、その丸みを帯びた葉の塊が、風の勢いでわさわさと揺れているような気がする。何から話し出そうかと先ほどから考えていたが、彼の顔を見ていた私の視線がふと向こうのカーラへ移動する。


「先日は部屋を用意していただき、ありがとうございました」


 彼から最初にそう言われたけど、城の外でゆっくりと落ち着いて話せるように、ホーリーに頼んでいつものごとく部屋を用意したのだ。


「いえ。たくさんお話しができましたか」

「はい。色んなことを話し合いました。彼女から聞かれましたか」

「少し聞きました。よかったですね。私も安心しました」

「ありがとうございました。それ以外に言葉はありません」

「二人で同じような気持ちになったので、バルソン様に報告しようと思います」

「よろしくお願いします」


 彼はそう言って首をやや前に傾けて、私の意図を汲み取ってくれたみたいだ。


「今日は別の大事な話しがあります。私はバルソン様が作った男の編み紐の制度のことを聞き、女だけでもその制度を作れるのではないか、とシンシア様に相談しました」

「えっ、そういうことを相談されたのですか」

「はい。男は編み紐ですが女は違う物にしようと思いました。そういう訳でシンシア様と一緒に王様に話しを聞いていただきました」

「許可はいただけたのですか」

「まだです。今度の話し合いで、私が皆さまの前で説明することになりました」

「素晴らしいですね。頑張ってください」

「ありがとうございます。私はその編み紐に変わるものをサガート様に考えていただきたいと思い、ルーシーとマーヤを連れてアートクの市場に行こうと思います。サガート様の名前は王様にも話してないので秘密でお願いします」


 私は二人の馴れ初めの話しを聞く前に、彼の名前を出しこの場の趣旨を話したつもりだ。


「承知しました。ルーシーも行くのですね」

「二人は私のそばにいつもいますから、私が単独では動けません」


「……そうですね。マーリストン様がお出かけになるときと同じですね」

「意味を理解していただけましたか」


「……子供たちのことですね。サガート様と話せば……その……私の話題も少しは出ると思います。今もってルーシーには話していません」


 彼は話しづらそうではあったが、間をおきながもはっきりそう伝えてくれる。


「……それを確認したかったです」

「私も話さなくてはいけないと思います。ルーシーが私を好きになったと話してくれ、自分もそう思えるようになり、隠そうとは思いませんが責任を持って話します」


 ラデン様は少しゆがめた顔付きでそう言ったけど、私がそうしてもらいたいがためにこの席を設けたのだから、三人で話しがちぐはぐしてはいけない。私を含めた三角関係ではないけど難しいよな。


「私がサガート様にお願いしたい理由は、私たちの目の届かない場所で偽物を作られては困るからです。それを理由に立場を強調して悪事を働かれては困るからです。これは男の編み紐も同じことだと思います。そういう話しは聞いていませんが考えられることです。今後のために……そういう理由で内密にサガート様に作っていただきたいと思いました」


 私はそう説明したけど、最初からのそことを話そうと思い、後は彼の食いつきで話題を小まめに出そうと考えている。


「……分かりました。出かける前に話しましょう。ルーシーが向こうで話しを聞く前に私が説明します。彼女の気持ちを考えると……心苦しいのと同時に……彼女を失うかもしれませんね」


 彼がそう言ったので驚いてしまい、失うかもしれない、という言葉を使うほどの感情を……出会いから短時間で築いたのだ。それほど、彼女のことを好きになってしまったのだ。ルーシーの気持ちも少しは聞いたけど、この手の話しは聞きづらいし話しづらい。あまり突っ込めなかったのよね。


「私が何気なく正室と側室の話しをしてもよろしいですか。シンシア様の父親のことも知っていると思います。それがラデン様にも存在することは理解できると思います。私にも責任がありますので、こういうことになって申し訳ありません」


 私はそう言って謝る。例えが正室と側室の話ししか思いつかなくて、愛人とか二号さんとか(めかけ)とか側妻(そばめ)とか、この時代にはない言葉のような気がしたけど、そういう言葉の存在をほかの人には聞けないよね。


「彼女はリリア様を信じています。話さない方がいいと思います。私が話したことは隠しておいてください。その方がお互いのためです。リリア様には話してないことを含めて必ず説明します」


 彼はそう言ってくれたけど、彼もそのことを気にしていたのかな。だんだんと気にするようになったのかな。ここでの恋愛感情というのはどうなっているのだろうか。ここでは今まで個人的に人との付き合いが極力少なかった。隠れ潜んでいたので女子会とかそういう雰囲気もなく、私の周りにいる数少ない人たちから得られる情報が少ないのよね。


「分かりました。私たちが出かける前に話していただかないと、そのことを向こうでルーシーが知ってしまうと、私もその事実を知っていたと思われます。ルーシーは私のことをよく理解していますからね」


 私はやや強引にそう言って、彼の口から直接伝えてもらいたい旨を話したつもりだ。


()しんば、ルーシーが直にリリア様に何か聞けば正直に話してください。私がそう話したと言ってください。リリア様にはご迷惑はかけられません。これは私たちの問題です。私がリリア様には何も話してないと言います」


「……分かりました。ルーシーは私には直接聞かないと思います。よろしくお願いします」


 彼女の控え目の性格を考えてそう言ったけど、直接聞かれないことを願うのみだ。


「分かりました。今度はそのようなことを考えられたのですか」


 彼が話題を変えてきたので、彼が了解してくれたと思うことにする。


「城の中での女の立場を考えました。シンシア様は剣客ですから彼女を中心に考えました。男の方に比べると女は立場的に力が弱いとは思いますが、剣客と呼ばれている女性を一箇所に集めたいと思いました」


 前にシンシア様と王様にも女は力が弱いと説明したけど、着る物で隠されているが筋骨である肉体美を持ち合わせた力強い女性、男勝りである逞しい女性が、この時代にも少なからず存在しているとは思うが、女性を一段低く話しておいた方がいいような気がしている。


「私はシンシア様には申し訳ないですが、リリア様が中心に考えてもいいと思います」


 彼から意外な言葉が飛び出し驚く。自惚れではないが自分でもそう思ったけど、ここでは権力者の立ち位置が必要な気がする。


「私は城に入って日が浅いです。ほかの方たちに分かってもらえないと思います。彼女を中心に考えた方が何かと都合がいいと思います。二人で一緒でもいいと王様がおっしゃいましたが、シンシア様の位置づけが必要です」


 私は彼の言葉をやんわりと逸らすために、位置づけの言葉を使ってしまったけど、シンシア様とはお互いに持ちつ持たれつで協力してもらいたいな。


「確かに位置づけは必要ですね。私もそう思います。私は城に戻ってから日が浅いですが、できる限りの手助けをしたいと思います」

「ありがとうございます。男の編み紐の偽物の存在は聞かれたことがありますか」


 彼は立場的に物事を熟知しているだろうと思い、この場を借りて聞いてみる。


「……それはバルソン様にお聞きください。立場的に答えられません」


 答えられない言われてしまったが、やっぱりね。そういうこともあるんだろうな。


「分かりました。悪いやつらは悪用しますから、それを防ぐために身元のしっかりしたサガート様にお願いしたいと考えました。この城の近くでは考えてないです。少しは距離があった方がいいです。彼でしたら必ず秘密にしていただけると思います」


 私はそう言って、サガート様は隠し事のできる人だと思い、そのことを重要視していることを伝えたつもりだ。


「私もそう思います。私もいつ戻れるか分かりませんが、リリア様からそのような話しを聞いたと伝えます」

「よろしくお願いします。私もいつ行けるか分かりません。日が決まり次第に連絡します。私はラデン様の子供たちに会いたいと思いました。可愛いでしょうね」


 今度の私は子供たちの話題に振り替えたけど、自分の子供たちに会って元気をもらいないな、今度はいつ行けるかな、と私の視線はカーラにまた向いてそう思ってしまい、頭の中では二人の顔がふと浮かんだけど、コーリンの顔は浮かばなかったのよね、ごめんね。


「私はアーリアと話して子供から力をもらいました。私が三月の終わりにこちらに来るときは話しもできて、私のことを忘れないように、彼女にはしっかりお願いしました。私は市場ではいろいろ動き回って屋敷にはなかなか戻れずに、いつも子供のそばにいませんでした。子供は母親のそばで育てた方がいいと思います。私のことを子供たちにいつも話してくれとアーリスに頼みました。母親や周りの人たちが私の存在を拒否すれば、子供たちも私を忘れてしまいます。サガート様にもお願いして父親の存在を認めていただきました。それだけが心の救いですね」


 彼は笑みを浮かべてそう説明してくれる。子供の話しになると顔がほころんでくるよね。いつの世でも色んな父親像があるけれど、彼の話しを聞いていると子煩悩でいいお父さんなのだな、とか思ってしまい、何だか悪いことをしたような気がして、そういう話しを聞くとルーシーに対して自分の気持ちが落ち込むよね。


「ほんとうですね。私にも子供が産まれると一緒にいたいですね。そうは言ってもここにいると叶いません。それよりも相手がいないのが問題ですけど……可愛いでしょうね」

「私は離れましたから、生まれた日くらいは顔を見たいですね」


 彼がそう言ったから、これは私の力で協力しなくてはいけない、と俄然力が入る。


「マーリストン様にお話しして、その日前後は戻れるようにお願いしてみます。彼も理解していただけると思います。私がしっかり説明しますからね」

「ありがとうございます」

「バミス様とシューマンがそばにいるので大丈夫です。マーリストン様から王様に話していただき、その許可を出していただくようにしますからね」


 私は意気揚々にそう言ってしまう。それくらいの手伝いはできそうな気がする。


「よろしくお願いします」と、彼はやや目を輝かしほんとうに喜んでいるようだ。


「ラデン様にはマーリストン様を守っていただいてますから、それくらいは当然のことです。八月には顔が見られますよ」

「ありがとうございます。そうなれば暑いときと寒いときには戻れますね。楽しみです」

「私に任せてください。ルーシーのこともよろしくお願いします」


 私は彼女のことも口にしてしまう。子供たちのためにもルーシーのためにも、私はバルソン様にもお願いするから、と直説彼に言えないことは心苦しいけど、彼のためにお休みをください、とお願いできる立場であることが、自分としては少し誇らしく、この城に入ってから私の性格が少し変わったみたいだな……ソーシャルから何か言われそうだけどね。


「私たちは二人で話すことにも慣れました」

「よかったですね。これからもたくさん話してください。楽しいと思うことがいちばんです。二人で話すことは不思議な会話ですけど、私を含めて誰も気づかないことです」

「はい。皆さまをお守りするときに、二人で役に立つと話し合いました」

「ほんとうですね。私もルーシーと話せることは、シンシア様を守るときに利用できますね。そういう状況が起こらないことがいちばんですけどね」

「確かに、しかしながら、必ず有益に働けると思います。内緒で特別な仕事ができそうですね」


 彼がそう言ったから、特別な仕事か……これが応用されれば赤の編み紐に昇進するチャンスだ、と私は閃いたので、バルソン様にも伝えなくてはいけない。


「ほんとうに特別な仕事ができますね。シンシア様はご存知なので彼女と相談してみます。素晴らしい閃きですね。私は今まで隠すことばかりを考えてました。そういうことは考えてもなかったです。バルソンに報告するときには、必ずラデン様が特別な仕事ができることを考えたと話します」

「ありがとうございます」

「何ができるか二人で考えてみてください。素晴らしいですね」

「二人で考えて見ましょう」

「私も何か考えてみます。一緒のこともあるかもしれませんが合わせて考えてもいいと思います。バルソン様に報告する前に話し合いたいですね」


 私はそう言ったけど、今までこの会話の存在は隠すことばかり、知られてはいけないことばかりを考えていたが、魔法の存在のような特殊な手法であると考えられるよ。


「私たちにしかできない仕事ですから、他の人を驚かすかもしれませんね」

「そこを驚かさないようにすることが大事だと思います」


 私はそう言ったけど、何をしても仲間がいれば驚かせないで隠せる。隠し通せるだけの信頼のおける仲間を作らなくてはいけない。


「確かにそうですね。そこが私たちの腕の見せ所ですね」

「ほんとうですね。位置づけは特別職の仕事の話しになるように頑張りましょうね」

「はい。ルーシーと二人で考えてみます」

「ルーシーには子供たちのことは何も話していません。あさってこの前と同じ部屋で会えるようにしてもよろしいですか」


 私は子供の話しを強調するようにそう言ってしまったけど、そのことは前もって考えていたことだ。


「あさってですね。マーリストン様に伺ってみます。今度から代金は私がその場で支払います」

「部屋を頼むとき前もって支払うようになっています。今回までは私が出します」


 私はそう言ってしまう。一回目は私からお願いしたことだから支払ったけど、二回目はサガート様と同じように『大おまけの大奮発だよ』と心の中で呟いたけど、いつの日かこの言葉を皆の前で笑い話しとして話したいな。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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