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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第四章 『城の中は……』
94/165

94=〈ソーシャルの時空の旅〉

文章が少なめです。

     ☆ ★ ☆ (17)


『ソーシャル、私のしたことに間違いないよね。ドーラン様とラデン様のこともよ。それに女の編み紐のこともね。最後の四人で話し合うことには驚いたけど、私は四人では話したくない。話していいことと悪いことがある。私が言葉を選ぶことが大変になる。三人だったら少しはいいけど、二人で相手のことをたくさん考えて話すことがいちばん理想よね』

『確かにそうですね。私もその意味は理解できます。言葉選びは大変です。リリアの話し方はこの時代の言葉を巧みに使っていますね。たまにとんでもない言葉が飛び出すとは思いますが、映画や日本の時代劇チャンネルが好きだったのですか』

『えっ、何でその言葉を知っているの?』

『えっ?』

『ソーシャル、どういうことなの?』

『……』

『ソーシャル、どういうことなの?』


『……参りました』

『ソーシャル、どういうことなの?』


 私の声は自分の頭の中でだんだんと大きく響いていく。


『リリアの住んでいた時代を探し出すために何度か時空の旅に出かけました。でも……リリアから聞いた情報が少なくて……リリアを見つけることはできませんでした。私は訪れた時代の過去の情報を検索しつつ……ついその時代の情報に取り憑かれてしまい……前にも話しましたが、このソードの世界も裏事情ができました』


 彼女がこういうことを話したので驚いてしまう。


『私を捜しつつコンピュータの電子頭脳の素晴らしさに目覚めたの?』


『……リリアに子供が産まれてからは行っていません。私のソードも落ち着きました。それ以上は聞かないでください。私の基本姿勢は変わりません。私はリリアには命令はできません。私はソードです』


 彼女は淡々とした言葉でそういうのだ。


『そういうことをいいつつも私を捜してだしてくれたのね。だからケルトンと二人でアートクの市場に行く前にあの言葉を使ったのね。私は自分の考えたことが正しいと思っているからね。私を見つけてくれたのね』


 私は力を込めてそう言う。私が向こうの世界に戻ろうと思うと戻れるのね、と聞くと『はい』と彼女ははっきりと一言で答えたけど、その時代の前後に戻れたとしても、逆にこの時代には百パーセント戻れません、とも言っていたから、彼女は私を見つけてくれたのだ。


『リリアが考えたことが正しいです。私はそれ以外に話せません』

『ソーシャルがいつも言っているように、ソーシャルも正しい心を持っているのね。私のことを調べてくれたのね。そして……私をここまで導いてくれたのね』


『……それは違います。リリアが自分で考えたことです』

『ソーシャル、ここは寝ているときに見る夢の世界とは違うよね。現実だよね』

『ここは紛れもなく現実の世界です』


 彼女ははっきりそう言ったけど、自分の子供を大変な思いをして産み育てたのだから、夢の世界であるはずはないとは思ってはいたけど、思わず自分で見極めようとついその言葉が出てしまう。


『たまに夢の世界であってほしいと願うのよ。私の生きていた時代のことをここの人たちに話しても理解できない。シンシア様にも説明ができない。私はこの城に入ることができたのはよかったけど、私のことを分からないと話してくれながらも信じてもらい、バルソン様に対する本音も聞かせてもらい、私はシンシア様と話しているとほんとうに心苦しい。バミス様と一緒にいても辛いのよ。これから先はどうしたらいいのかしら? 私の気持ちをソーシャルに話すことだけが唯一の慰めなのよ』


 私はつい弱気な言葉を使ってしまう。隠すことも必要だけど、何かをしなくてはいけないと思いつつも、結果がすぐ現れることではない。リストン様が城に入る前までどうしたらいいのか、と焦っている自分の気持ちを彼女に話せて肩の荷が少しだけ軽くなったけど、聞かされる彼女に不安を与えたかもしれない。

 

『私のご主人様がすべてを考えてください』

『またご主人様の言葉を使うのね』

『私を大いに利用してください。私はリリアには命令はできません』

『またこの言葉も使うのね。両方とも気に入っている言葉だけど、私にも休息日が必要ね。彼女がバルソン様に会いたいと言ったときに、私はバミス様に会いたいと思ったからね。マーリストン様にそれなりに聞いてみる』


 私はそう言ってしまう。今日は朝からずっと話しをしていたからとても疲れ、疲れが焦りを増長しているかのごとく襲いかかってくるようだ。


『分かりました。私もそれなりにトントンに話しておきます。前にも話しましたが私はソードです。何もできません。リリアは何でもできます。私を大いに利用してください。私はリリアの話しは切られない限りすべて聞きますから、自分自身でよく考えてください。私はリリアに命令はできません。私にはこの言葉しかありません』


 さっきの言葉もそうだけど、彼女にしては珍しく一気に話している。


『……今まで気づかなかったけどさ、私はソーシャルも驚かせているの?』

『私はリリアの考えたことに大変驚いていいます』

『ほんとうに?』

『これは少し大げさな言葉ですが、確かに今回も驚きました。しかしリリアの考えたことがほんとうに正しいですから、もう話しが済んでしまったことは覆すことはできません。シンシア様もリリアの話し方に似てきたのでは、突然に人を驚かすことですよ』


『……何を言われても命令なんて一度も考えたことはなかったけど、ソーシャルの頑固な考え方なのね。私はマーリストン様に二回命令しちゃったけどね。シンシア様も二度した。マーリストン様は……それだけ言葉の意味が重要だと感じたと思います』


 シンシア様は私とバルソン様を大事にしなさい、と命令をしていたが、二度目は私を側室にすることを禁止する、と命令をしていたのだ。私の最初の命令は、城の中でどんなに試練があっても必ず乗り越えてください、と言ったけど、そうしなければ『王の立場』は勝ち取れないと思ったからだ。二回目の命令は、剣の勝ち抜き戦に最後まで勝ち残ってください、とそう言ったのだ。

 

『リリアの導いたマーリストン様は、リリアが思っている以上に理解していますよ』

『ソーシャルがそういうから信じるからね。比較する次元が違うけど、バルソン様の精神力もすごいと思う。でもソーシャルの考え方の方が上ですね。何と言っても言い伝えの存在です。ほんとうにありがとうございました』


 私は初めて言い伝えについて、はっきりとお礼が言えたような気がするが、直接彼女から言葉として聞いたことはないけど間違いないと思う。

 

『私を大いに利用してください。リリアには命令はできません』

『分かっているわよ。子供たちのために蝶や鳥のように飛び跳ねればいいのよね。私もこの言葉以外には考えられないかな』

『そのようですね。今までみたいに飛び跳ねてください。皆はその飛び跳ね方に期待していますよ』


 彼女はそう言われてしまう。その言葉は彼女の聞き及んだ情報を総まとめにして発しているように思えるけど、バルソン様が王様やゴードン様と話した内容から考えられているのだと想像できる。彼女は毎回細かいことまで話さないので、私もその方がいいと思っていた。


 私の飛び跳ね方ね。自分ではよく分からないけど何かをすればいいのかな? 最初は女の編み紐のことを考え、次はリストン様がここに入るまでにバミス様の子供を産んで、そうすれば少なからず子供たちのそばにいることができる。その後はリストン様が城に入った後から考えることにしようかな。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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