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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第四章 『城の中は……』
86/165

86=『ラデン様とルーシー』 (2)

長文です。

     ☆ ★ ☆ (6)


「リリア様、ルーシーは喜んでいましたね。私もよかったです。私は向こうが長かったですからここでは知り合いが少ない状態です。マーリストン様の側にいると話すよりも聞く方が多いですから、シンシア様やリリア様のお付きの人たちとも話す機会は少ないですけど、何というか……そうですね。二人で話せると楽しみというか、息抜きになりますね。増して誰にも聞かれませんし」


 彼は少し言葉を考えたみたいにそう言っているようで、この城では彼女や友達がいないと言っているのかな? 会話をするという第一印象はよかったのかな?


 ルーシーが下の者から上の者への話しかけは控えた方がいい、と前に話していたので、私も周りの者たちには気を付けて話しているし、彼もルーシーも同じ状態なのだ。口は災いの元だからね!


「私もよかったです。ルーシーの心の言葉をたくさん聞いてください。やはり、二人の会話は私には聞こえませんね。ラデン様も私とルーシーが話している言葉は聞こえないでしょう?」

「私もお二人の会話は聞こえませんでした」

「心の言葉では三人では同時に話せないと確認が取れました。先ほどこのことをラデン様に話そうと思いましたが確信が持てませんでした。私も三人で話したことなかったからです。私はラデン様の気持ちも考えないで、ほんとうに差しでがましいことをしましたが、私の周りの者たちが幸せになってもらいたいと考えています。ルーシーは特に他の人とは話しができません。ラデン様と話すことができて安心しました。二人でよく話し合ってください」


 私が長々とそう言いながら彼の目を見ていると、一重まぶたでまつげが長い! さっきまで気付かなかった、というよりも、今まで私の視覚がそこまで見ていないのだ。何だろう。忙しすぎて眼中に入ってなかったのかしら?


「リリア様のご期待に添えないかもしれませんがよく考えてみます」


 彼がそう言ったから、私の気持ちを理解してくれたと思い、最初にラデン様に話したからよかったのだろうか。彼に少しでも考える時間をあげたから、彼に心の余裕ができたのだろうか。


 ルーシーはとても喜んでいた。最初は不安と驚きの意味深長な顔をしていたけど、だんだんと顔つきにこやかに変わり、ほか人と話すとことはコミュニケーションの第一歩だからね。うまくいけばいいけどな。


「ありがとうございます。それでもう一つ私の話しを聞いていただけますか」

「何でしょうか」

「バミス様のことです」

 私がもう一つの話題を切り出す。


「えっ、バミス様のことですか」

 彼から即座にそう言われたけど、今はルーシーのことは頭の中から外してもらいたい。


「バミス様がマーリストン様から外されることも考えられます。そうすると、ラデン様に赤の編み紐を目指していただきたいということです」


「……私が赤の編み紐ですか」

「ラデン様も目標ができ、気持ちに励みが出ると思いませんか」


「……私も外されるかもしれないと話されているのですか」


 見開いた目で驚いたような顔つきで尋ねられ、リストン様のことは話せないし、この二つの話題は言葉に詰まるのよね。ブレスの話しみたいに期間を限定するならば、リストン様がこの城に迎え入れられるのは後四年ほど先の話しなので、彼を信じるとか信じないとかではなくて、その時間的配分は話せないよな。気が滅入るよな。


 ブレスのこともマーリストン様のこともリストン様のことも、私たちは周りの人たちに隠すことばかりで、私の心の奥底に積み重ねられてストレスは耐えきれるだろうか。


 今まで八年ほど隠し通していたことが、これから先は半分の四年間になることを思えば、今後は剣の勝ち抜き戦みたいな重圧感はないと思う。何が起こるか分からない。油断は禁物だ。


「……これから先のことは私にも分かりません。色んな状況を前もって考えた方がいいと思います。ラデン様が赤の編み紐を目指していることは私も考えました。私は今まで先々のことを考えて行動してきました。すべてマーリストン様のためです。ラデン様にはマーリストン様を守っていただきたいです。シンシア様もバルソン様も同じ考えだと思います。ぜひ赤の編紐を手に入れてください」


 どういう条件で上位の編み紐に挑戦するのか分からないけど、バルソン様に何気なく聞いてみようかな。ルーシーのこともあるし、何か協力できるようなことはないだろうか。


「……ありがとうございます。頑張ります」

 彼がそう言ったから、将来的には赤色の編み紐を狙っているのだと思い、ここまでくれば当然だよね。


「ルーシーのこともお願いして申し訳ありません。マーリストン様が王になれるかは分かりませんが、皆でマーリストン様の子供たちも守っていただきたいです」

「マーリストン様の子供ですか」


 先ほども驚いてはいたが、今度は将来的な現実の話しを切り出すと、彼の声の響きは今回の方がより一層驚いているように聞こえる。

 

「はい。いずれ王子様や姫様が産まれると思います。その子供達も守っていただきたいです」

「リリア様はそのような先のことまで考えられたのですか」


 彼からそう言われてしまい、こうやって彼と話しをしていると、相手の気持ちや心情も考えてくれそうな気がして、彼はいい人なのだ。私は自分の子供の将来のために考えたのよ。対策として二人のことが最初なんだよ、と言いたかったけど、それは口にして言えないから辛いのよね。昔話としていつかは話してあげようと思う。


「……詳しくは話せませんが、このことは二人だけの秘密にしていただけますか。ルーシーにも話さないでください。彼を守っている人たちの子供たちにも、これから産まれる彼の子供たちを守っていただきたいと考えました。私は王様にもお話しして、ドーラン様にも誰か好きな人がいれば、そのことを伝えたいと思います」


 私はラデン様だけではなく、具体的にドーラン様の名前も出してそう説明することで、私の意気込みを理解してもらいたいものだ。


「ドーラン様のことまで考えられたのですか」

「シンシア様にもまだ話していませんが、今日はラデン様と話す機会がありましたので、ルーシーのことと一緒にお話ししようと思いました」

「マーリストン様の子供のことは考えたこともありませんでした」

「男の方たちには考えられないかもしれませんが、女としては考えられることです」


 私はそう言ったけど、子供が二人もいる彼であれば、私たちの子供の存在は考えられるかもしれない。そのことで逆に私を脅かしたりしないよね。彼を信じるしかないけど、話しをスムーズに進めるために子供たちのことを話すか話さないか悩む所だけど、彼だったらいいのかな。先にソーシャルやマーリストン様に相談した方がいいよね。


「確かにそうですね。アーリスも一人娘で跡取りですから、私もそのことは考えました。サガート様もそのことをお話しになり、私が父親であることは認めていただきました。子供達にも私の存在を話してくれると約束していただきました」


「……あの、もう一つお聞きしてもよろしいですか」

「はい。何でしょうか」

「サガート様の名前はどこかで聞いたことがありますけど、何の商売をされている方ですか」

「アートクの市場で装飾品の店を営んでいます。首飾りや髪留めや指輪などを売っています。布で作られた小物もあります。そういう物がたくさん売られています。あの市場では地位や名誉もある方です。私もアーリスのことだけではなく、個人的にも大変お世話になりました」

 彼がそう言ったから、一気に私の意識があの店に飛んでしまう。


「ラデン様が最初に私たちと会ってから、彼に私たちのことを話しましたか」

「あっ、はい、大変申し訳ありません。バルソン様の話しお聞きしてから少し話しました。ケルトン様が翡翠の指輪を三つも買われたと後からお聞きして、値切られたそうですね。大奮発をしたと笑って話していましたよ」


 最初のラデン様は申し訳なさそうな表情でそう言ったけど、その後は表情が変わって笑みを浮かべたようで、私はやはりと思ったけど驚く。


 彼は紫の編み紐の存在は二人しか知らないと言っていた。

 娘のアーリスと自分だけだとそう言っていたのだ。

 ケルトンがマーリストン様かもしれないと気付いたのだ。

 知っていたのは三人だけで、ずっと隠し通してくれたのだ。


 ゴードン様の知り合いはほとんど商売人だから、彼のことを何も話さないということは、自分の立場を有利にするための『担保』とか考えたかもしれないな。私にはそういう駆け引きは分からないけどね。


「そう言えば、その方は祝賀会にもいらしてましたね」

「はい。私は祝賀会で久しぶりに話しました。少ししか話せませんでしたがアーリスと子供たちのことを聞きました。彼はゴードン様と親しいそうですよ」

「うそっ、サガート様が最初に紫の編み紐に気づいたのよ。あの方でしたか。私たちは隠れていましたから、私たちが直接お会いした人は少ないです。私たちも色んな話しをゴードン様から聞きましたけど、市場の名前と人とのつながりを覚え切れていません。その方たちはゴードン様とつながりがある方たちですからね」


 私は少し慌てて話して意識が向こうに飛んでしまい、胸に提げてある指輪を触ろうとしていた右手をスルーさせて少し腕を上に伸ばし、自分の右耳の上の髪を触ってごまかしてしまう。


 マーリストン様とのつながりを説明しなくてはいけなかったのに、ゴードン様のことばかりを話してしまい、今さら言うことでもないけど、しまった、と思ってしまいました。


「リリア様はお忙しそうで、サガート様はリリア様とは話しができなかったと言われました。私が話したときに顔に見覚えがあると言っていましたよ」


「……そういうことになっていたなんて、ラデン様の立場をぜひ報告してください。話しができなくて残念でしたともお伝えください。いつか必ず会いに行きますとも伝えてください。でも……ルーシーのことは内緒でお願いします。そのような方とは知らずに心苦しいです」


 私はそう言ったけど、サガート様は穏和そうな人に見えていたけど、たくましい商売根性のある父親であり孫に優しいお爺ちゃんなのだ。彼にとっては家族じゃないのよ、参ったな。


「そのことを先にご存じでしたら、ルーシーのことは話されなかったのですか」


「……分かりません。ルーシーに好きな人がいても会話ができないことは致命傷です。相手の方がルーシーのことを理解して好きになってくれればいいですけど、シンシア様や私のそばにいつもいてはそういう時間もないと思います。私の考えはラデン様に話しましたからよろしくお願いします。子供たちのことをルーシーに話す、話さないはラデン様の考えたことで構いません。私は直接ルーシーに話すつもりはありません」


 私は一気に裏側の本題である内容も話してしまい、もうひと裏あるけどこれは彼には言えないよな。ルーシーがそのことに気付けばいいけどな。


「……分かりました。その状況になれば自分で考えて話したいと思います」

 彼がそう言ってくれたから、ほんとうによかったと思い、彼女と話した第一印象はよかったのかしら?


「ルーシーのことはよろしくお願いします。ラデン様の存在は子供たちにはすごいことですよ。父親がこの南の城の王子様の側近です。将来は王様の側近になるかもしれないのです。子供たちに大いばりしなくてはいけませんね。ラデン様の人望の賜物です」


 私は彼に対して最大限の褒め言葉を使ってしまう。バミス様がリストン様の教育係のそば仕えに変われば、マーリストン様から外れるので、その後はラデン様とシューマンでがっちり守ってもらわなくてはいけない。


「リリア様の考えることはすごいですね。すべてにおいて私をその気にさせてくれました。シンシア様やバルソン様やバミス様が、リリア様を尊敬している意味が理解できました。最初にお会いしたときのケルトン様の言葉は偽りではなかったのですね。それで、マーリストン様を隠し通せたのですね。リリア様と話してそう思いましたよ」


 彼がそう言ってくれてよかった、と思うのと同時にとても嬉しい。あなたたちもマーリストン様のことを隠してくれ、言葉が悪いけど同罪というのか感謝以外に言葉はない、と私は言いたい。


「それはラデン様が考えることです。いい方に考えていただきありがとうございます。マーリストン様や彼の子供たちをよろしくお願いします」

「リリア様は私の立場も考え、この城の行く末も考えてお話しになったと思います。そのようなことを私に話していただき、ほんとうにありがとうございました」


 彼のそう言った言葉は本心なのだろうか。その言葉の中にルーシーのことも入っているといいんだけどな。



     ☆ ★ ☆ (7)


『ソーシャル、ラデン様にはこういう説明になったのよ。私はルーシーのことを真っ先に考えたのよ。ほかの人とうまく話せないことはダメージが大きいと思う。マーシーが友達と楽しく話していると自分も話したいと思うよね。自分の意見もはっきりと言えないから辛いよね。私はそう思うけど違うのかな? マーシーとは話せるからもう慣れちゃったのかな?』


 私がおしゃべりだから、自分勝手な考えかもしれないけどそう思って言ってしまう。自分が突然出し抜けに、病気や事故で声が聞こえないとか話しができなくなると、その人はどうなるのだろうか。今の私には考えられないけど、いつの時代でもそういう人は必ずいるよね。


『リリアが視覚として見ている物を、私が見たいと思うことと同じでしょうね。音で判断することには慣れましたが、その……私はリリアの顔を見てみたいです』


 ソーシャルから意外な言葉を聞いておったまげる。私は彼女の顔とか今まで考えたこともなかったけど、私がこの時代にはまり込んだように、彼女は視覚という言葉を使うほどに、人間の世界にどっぷりとのめり込んでしまったのだろうか。


『私の顔を見てみたいの? 私もソーシャルに顔があって人間のようにボディーがあったら見てみたいよ。私は一人っ子だったからね。ソーシャルは私のお姉さんになるのかな?』


 私は彼女の言葉に対してこういうことしか言えない。ルーシーの会話もソーシャルの視覚も、お互いに叶わぬ事実だけど、ルーシーは人間だからソーシャルとは違うと思う。


 前にソーシャルが『私は何でもできません。リリアの方が何でもできます。私は人間ではないです。私はソードです』と言われたことがあったけど、ソーシャルにも悩みがあるのね。


『リリアは妹ではなくて友達ですよね。ケルトンによく話していましたね』

 彼女からそう言われてしまう。


『ルーシーとマーシーのように言葉的に友達より姉妹、その方が絆が強いと思うけどね。憎しみ合う家族もいるかもしれないけど、最後の最後には家族の存在がいちばん大事だと思うよ』

『そのようですね』

『私の浅はかな考えかもしれないけど、ルーシーとラデン様に恋愛感情が芽生え子供が産まれると、私たちの子供を守ってくれるかもしれないと考えたのよ。先の長い話しかもしれないけどね。二人がうまくいくことを願っているのよ。私の考えは間違ってないよね』

 私はそう説明したけど、もう話し終えてしまったので、不安もたくさんあるけど何もしないよりはいいと思う。


『私のご主人様が考えたことですから間違いはないと思います』

『そのご主人様の言葉は気になるけど、ソーシャルにそう言ってもらって安心した』

『これは前にも話しましたが、一パーセントの望みですね』

『そうよね。未来のことは分からないけど十分に理解しています』

『後はお互いの気持ちの問題ですが、ラデン様の子供たちの存在を知ったときのルーシーのフォローが大変ですね。それをはっきりとリリアに伝えてくれればいいですけど、二人の立場の違いもありますからね』

『この時代の考え方があるのかもしれないけど、男より女の方が大変だろうな? そうなればラデン様の考えをよく聞いルーシーには乗り越えてもらいたい。お互いに子供の存在があれば埋められると信じています』


 私はそう言ったけど、子供ができない人もいるし、私みたいに一回だけでできしまう人もいる。仕事をしていると女は不利のような気もするが、市場の人たちを見てもそれなりに生きているような気もする。自分の境遇を受け入れて生きていくのは仕方のないことだ。苦境の中でも楽しいことや嬉しいことが少しでもあれば励みになると思う。


『そうですね。シンシア様とリリアの話しを聞いていると、何をおいても子供のパワーはすごいと思いますよ。私には理解できない領域です』


 ソーシャルが子供たちのソードの親分なのだから、親とか姉弟とか自分の子供とか、愛情やつながりを考えてもらいたいものだ。私は子供たちとたくさん話してスキンシップを取りたいと思っているのに、マーラとアーサはいつでも子供たちと直に会話ができると思うと、羨ましいよな。


『ソーシャルに子育てをしてもらわないと、子供のパワーを感じてもらわないと、そして近辺警護や警備もしてもらわないと困るよ。言葉の触れあいも大事だよ。私はそう思っているからね。これからもよろしくお願いします』


 私はそう言ったけど会話はとても大事だよね。色んな言葉を聞いて感情という個性が出てくる。自分の子供の存在を考えるとほかに例えることができない。


『そのようですね。自分の子供たちだと思わなくてはいけませんね。私も望んだことですが自分が子育てをする状況になるとは、どう考えてもいちばんの不思議ですね』

『私が生きている間はよろしくお願いします。その先のことは私には分かりません』

『私も分かりません。ご主人様が考えた通りになりますよ』

『子供たちのためにも長生きしたいけどね。私が年寄りになって身動きできなくなるころには、子供たちは自分で何でも考えられるようになる。今はその先のことまで考えられないよ』


 私はそう言ったけど、向こうの知識や考え方を子供たちに押しつけてもいいのだろうか。子供たちのためにさり気なくやんわりと、ソーシャルも大いに利用したいけど、『ミーバ』の存在もソーシャル以上に大いに利用したいと思い、私たちや子供たちやこの城の身近な人たちを、仲間の連係プレーを駆使して守りたいとも思った。


 バルソン様が考えた編み紐制度は男だけなのかしら、女性にも何か組織みたいなものはあるのかしら?


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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