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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第四章 『城の中は……』
84/165

84=〈右手のブレスの存在〉

     ☆ ★ ☆ (1)


 私がマーリストン様と南の森で出会い八年近くの歳月が過ぎ去り、私の妊婦期間からリズの赤い実を市場で売ることを中止し、ゴードン様とケルトンが採りに行ったが、それはゴードン様の知り合いの二ヶ所の屋敷に百個ずつと、バルソン様の屋敷に五十個ずつ届け、彼からシンシア様にも回してもらっていた。


 私の時代の言葉でいうと『ジャム』に作り替え子供たちにも食べさせ、自分たちの分だけでも採りに行きたいけど、城に入った今年の冬場は無理だろうな。


 マーリストン様は十八歳になりやっと王子様と認められ、四月一日の剣の勝ち抜き戦でマーリストン様と私がこの南の城に入ることができてからは、予想外の展開がめまぐるしく起こり、五月一日の王子様の祝賀会も盛大に行われ終了した。


 バミス様はこの祝賀会でマーリストン様の側近としてやっと帰城することができ、このブランクはとても長かったけど、感慨無量の気持ちでとても嬉しくて、私たちは久しぶりに城の外で会うことができた。バミス様は八月で三十三歳、私は六月で二十六歳になるけど、向こうの世界では二十九歳の実年齢だ。


 ゴードン様は今まで私に直接話してくれなかったけど、少なくともこの城の内情をよくご存じのようで、一度は縁が切れた城とのつながりが復活し、彼はマーリストン様の仲間作りと、この城の物資の取引などをバルソン様と相談して運営していた事実を知ることができたのだ。


 すべては剣の勝ち抜き戦でこの城に入ってから、次の段階が新しく動き出したようだと思い、何かしなくてはいけない。具体的な新たな考えが思いつかずに毎日何かしら忙しくて時間だけが過ぎていくようだ。


 東西の屋敷の人たちが親しくなるには、正室と側室のそば仕えの人たちが仲良くなることを考えようと思い、そこから情報を発信し下々の人たちにも私のことを理解してもらいたいと考え、この城の内情をよく知らないので、少しずつでも学ばなければ始まらないし、何をすればそういうことができるのだろうか。


 リストン様がこの城に入るまでに何か考えなくてはいけない。立場的に位置づけの高い人たちと知り合いになりたい。城の外回りはゴードン様が管理をしているので、私はこの城の中の人たちと接触をしたい。最初はそのことから始めようと思い、何ごとにもシンシア様の立場を利用しなくてはいけないことがもどかしい。



     ☆ ★ ☆ (2)


『ソーシャル、私は聞きたいことがあるのよ。その前に子供たちは元気にしているの?』

『もう少しでコーリンの誕生日ですね。三人とも元気いっぱいですよ』

『コーリンはやっと一歳になるのね。いつもありがとうございます。私は考えたのだけど、私とルーシーが心の言葉で話せるなら、ラデン様とルーシーも話せると思ったのよ。明日はシシア様の庭で試そうと思うけど、そういうことをしても大丈夫なの?』


 私はこの前からずっとそのことを考えていたので、今日は思いきって聞いてみることにする。ルーシーにも私以外の人と話しをさせてあげたい。ラデン様と話せれば何かと便利だと思う。バルソン様ではあまりにもかけ離れている。彼は忙しそうで時間もないと思う、と考えていたのだ。


『そのことをいつかリリアから聞かれると思っていました。ここも祝賀会が終わって落ち着いたのでいいと思います。ルーシーと子供たちのブレスは送受信可能ですが、ラデン様は受信のみです。リリアやルーシーが話した言葉が彼の頭の中で響きます。誰かが見ていると変に思われないように、その方がどこにいても違和感がないと思います。そのように話しを進めてください』


 ソーシャルがそう言ったから、音声の送受信ということが今一理解できないけど、私やマーリストン様の言葉及び、ルーシーの心の言葉がラデン様にも聞こえると言っているのよね。


 子供たちのブレス自体も彼女が作った物だから、『ミーバ』のこともあるし、ルーシーの会話のことも知っている。私が聞けばソーシャルは答えてくれるのだ。


 私がケルトンに会話は質問と答えだと言ったけど、私が聞かなくては教えてくれないシステムなのだろうか。それとなく彼女から言うことはできないのだろうか。


『これは向こうで属にいうコンピュータの類と同じなの?』

『説明はできませんがそう思ってください』


 ソーシャルはそうはっきりと教えてくれたから、説明されても理解できないと思う。ブレスのあり方だけでも教えてもらえればそれでいい。


『それでは、私がルーシーと話す心の言葉はラデン様にも聞こえるということね』

『最初にルーシーと言えばルーシーだけしか聞こえません。リリアは最初に相手の名前を必ず言ってください。そうすればその人だけにしか聞こえません。そうしなければ大変です。リズの『風の音』のようになりますよ』


 ソーシャルはこういうことまで教えてくれ、前に裏事情ができたと話していたから、前もって何か考えてくれたのだろう。


『それでは、マーリストン様や私が子供たちと話すときも同じなのね。相手の名前を言えばその人だけにしか聞こえないのね』


 私はしっかりと確認するためにそう聞いてみる。相手の名前を言えばその人だけに反応するということになるから、意味が理解できないけど、子供たちにはそうやって話してみようと思う。

 

『そのように作り替えました。三人の子供たちのブレスも送受信が可能ですが、お互いに相手の名前を最初に言ってからの会話です。ブレスの能力はリリアが親になりマーリストン様が子供です。子供たちとルーシーは孫だと思ってください。バルソン様とラデン様も孫の立場ですね。左右の手首にブレスがあればソードが出ます。そのことは私とリリアが理解してればいいことです』


 彼女がそう説明してくれたから、確かにソードのことは内緒にした方がいいとは思ったが、子供たちは何も知らない。今の所はマーリストン様と私だけしかソードは出ない。


 右手だけでは会話のみなのだと思い、ブレスの能力の意味も分からないが、ソーシャルは新しいブレスも作れるのだと思うと、この八年の間でいろいろ試行錯誤をしたのだろうか。


『私だけがすべて聞こえるということなのね』

『はい。そういう理由でこれ以上のブレスは出せません』


『……だから、シューマンにはもらえなかったのね……その意味がよく分かりました』

 私は少なからず納得してそう言ってしまう。


『あの時は説明できませんでしたが、バルソン様とバミス様の会話を偶然に聞きました。シューマンがバルミンだと分かり、シンシア様の双子の王子であると聞いてしまい、私はマーリストン様のためにも渡さない方がいいと判断しました。片方にブレスがあれば私の判断でいつでも聞くことができます。ゴードン様のネックレスは二つなので確実に聞くことができます。彼は今でもその存在を知りませんが、リリアみたいに切ることはできません』


 彼女がまた説明してくれたので、ケルトンのときにも片方のブレストとネックレスで百パーセント確実になる、と話していたことを思いだす。


 ブレスが片方だけだと、ソーシャルが聞こうと思えば聞くことができることは知っていたが、彼女はこの城の内情は私以上に詳しい。私の情報源になるとは思っているけど、私が聞かなくては答えてくれない。どこまで聞いていいのか判断がし難しい。

 

『それはソーシャルが管理すればいいことだから、私が知らなくてもいいことだけど、今回のことで話したくないことまで聞かせてもらい、ソーシャルに感謝します』

『いえ、リリアは正しい心を持っているので、私たちの誤解を解くためにも意味を理解してもらうためにも、私はリリアに話せてよかったです』


 ソーシャルはそう言ったけど、やはりシューマンのことは気にしていたのだ。あの時はすぐに会話が終わったからね。私もあの後は眠れずにいろいろ考えたものね。


『ありがとうございます。子供たちがお互いに話すことはずっと先になると思うけど、そのことは彼らのソードがしっかり教えてくれるのでしょう?』

『そうさせるつもりです』

『よろしくお願いします。私はそのことも確認したかったのよ。三人で話す機会は少ないと思うけど、ルーシーにそのことを伝えた方がいいのかしら?』

 ルーシーにも話すつもりだったからそう聞いてみる。


『ルーシーがラデン様と気軽に話すためには、リリアはルーシーの会話は聞こえないと話した方がいいと思います』

『そうよね。でもルーシーはそのことを信じると思う?』

『リリアが話せばルーシーは信じると思いますよ』


『……分かりました。マーリストン様や私がシンシア様と話すと二人は近くにいるから話せるのね。私が反応しないようにすることは何だか難しそうね』

『他の人と話すことに集中して、リリアは聞かないようにした方がいいと思います』

『前にも聞いたけど、私の頭の中で考えている言葉はソーシャルにほんとうに聞こえないのよね』

『前にも話しましたが、ソードも含めてそのためのブレスです』

 彼女がまたそう言ったから、私はそれを信じるしかないと思う。


『……そうよね。今までは気にしてなかったけど、ラデン様にそのことを話そうと思って真剣に考えたのよ。私の話しはソーシャルに聞かれても別にいいけど、普通はその場で話す言葉以外は聞こえないことだからね。他の人が何を話しているかは気になるけどさ。それを知ったらよけいなことを考えて、自分の頭が変になっちゃうかもね』


 私はそう言ってしまう。私一人がこの時代に存在するだけでは大して未来は変わらないと思うが、私に子供が産まれてしまった。その子孫がこの時代に参加すればどんどん未来が変わってしまう。よけいことを聞いて未来がもっと変わったら大変だ。


『私はリリアに必要以外なことは話してないと思います。前にリリアが『知っていたのでしょう』と言われても、知っていても知らなくてもリリアが考えることが正しい、と何度も言いましたね。そのことを覚えていますか』

『覚えています。私がそうだと思ったことがほんとうに正しいのよね。あれこれ詮索するのは人間の欲望と過失です。その場の状況は自分で判断しすれば自分の責任だから、その結果は自分で責任を取らなくてはいけないことはよく分かっています。今まではそのつもりで頑張ってきたのよ。今まで色んなことが起こったけど、これから何が起こるか分からないけどね。私はソーシャルの話しは信じているからね。これからもよろしくお願いします』

『ありがとうございます。会話のことはトントンに話してマーリストン様にも伝えてもらいます』

『お願いね。私はソーシャルのことはほんとうに信じているからね。おやすみなさい』


 私はそう言ったけど、彼女を信じるしかないとほんとうにそう思ってしまう。ここまで来ればなるようにしかならないよね。そこまで責任は取れないよ。



     ☆ ★ ☆ (3)


 過去を振り返れば、ケルトンは十歳のときにソードの存在を知ってしまったが、ずっと私がそばで管理をしていた。彼は色んな状況を考える力を子供ながらに持ち合わせていたのだ。


 洞窟の生活の中でバルソン様の教えをしっかり考える時間があった。まったく違った環境の中で彼の心がだんだんと目覚めていったのだ、と思っていた。


 彼は城では自由がなかったと言っていたが、当時はその意味を深く考えたことがなかったけど、こうやって城の内情を少しでも身近に感じられると、子供時代の情景が目に浮かぶようだ。


 ずっと城の中にいたのではいつかは爆発していたのかもしれない。その炸裂音が小さくても大きくても周りの者は従わなくてはいけない。それを抑制できるのは今の王様しかいない。


 彼と話した限りでは、そういうことがスパッとできる性格ではないような気がするけどな。シンシア様の方がバシッと言えそうな気がする。マーランド様の子供時代もマーリストン様と同じような状況だったのだろうか。


 私はやるせない気持ちになった。子供たちにはそういう思いを絶対にさせたくない。そのことが言えるような立場を作らなくてはいけない。リストン様が五歳になるまでまだ時間がある。私は何をすればいいのだろうか。


 子供たちのソードの存在はもっと大きくならいと教えるつもりはないし、乗れることも剣になることもだ。でも乗れることは教えてもいいけどな。私は今までとても楽しかったけどな。いやいや、そういう考えは捨てなくてはいけない。不幸になることもあるし、一生涯知らずに済めば越したことはない。


 子供たちは彼らのソードが守ってくれるし、守りばかりではなく子供たちの性格も備わってくる。楽しみだけど考えるとストレスも堪ってくるが、あの子たちはどのような大人になっていくのだろうか、と考えていると今夜も眠れそうもないな。


 誰だか知らないけど、彼を連れ出して殺せと命令した人間がいたからこそマーリストン様と出会ったのだから、元を正せばその人間は身から出たさびで、彼が王様になったあかつきには自縄自縛に陥るのだ。


 私がパソコンの電源を入れればそこにある情報が手に入るように、ソーシャルがスイッチを入れれば、バルソン様とラデン様とルーシーの会話は聞くことができる。私とケルトンは自分自身で二度触れ合わせてスイッチを入れなくては、ソーシャルは私たちの会話を聞くことができない。


 バルソン様はいつも忙しそうであちこちと移動しているみたいだから、そのこともソーシャルは知っていると思う。身辺警護をするためにソーシャルはいつもスイッチを入れっぱなしのような気がする。


 そう思えば、ソーシャルの城での情報収集は完璧なような気がするが、私が聞けば答えてくれると思うけど、私の心がそれを聞いてはいけない、と自分の心を制御しているみたいな気がする。すべては自分で考えろ、と私の心は叫んでいるようだ、とそういうことを考えていると、だんだんと頭の中がボーッとしてきた。


 ソーシャル、今夜は眠られそうだよ……私は信じてい…………寝た。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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