80=〈各々の会話〉 (4)
今回は、今までになく短めの文章です。
☆★☆『リリアとソーシャル』(49)
『ソーシャル、ゴードン様の考えを初めて聞いたわね。この城は貧乏なお城なの? 城の中は大変なのね。ソーシャルはゴードン様の会話は聞けているからそのことを知っていたのね。私に負担がかからないように話さなかったの?』
私は自分の部屋へ戻ってからそう話し始める。
『リリアの生きていた時代でもここでも経済活動は同じです。金銭が動きます』
ソーシャルはそう言ったけど、金持ちなのか貧乏なのかは答えてくれない。
『私は金貨を手に入れたからそこまで頭が回らなかったのね。笑えるけど宝くじに当選したみたいだと思っていたのよ。このことを濡れ手で粟というのね』
私は前にも言ったことがあったかもしれないけど、あの金貨のことはそう思っていた。私たちにはあの金貨があったからこそ、質素ではあったが収入を得なくても生活はできていた。私は崖から飛び降りた大学三年生まで、親からお小遣いをもらいバイトもしたことがなかったので、働いてお金を得るという現実の厳しさである金銭感覚に疎かったようだ。
この時代の経済状況までは考えてもなかった。ソーシャルは私が聞かないと話してくれない。私が聞かなくてはいけなかったのだろうか。何だかよく分からないし、どこそこの市場とか屋敷とか言葉としては聞いていたけど、社会的に人間としての派閥みたいな組織があるのだろうか。
『リリアがそう思えばそれが正しいです』
『バルソン様はバルミンに編み紐の制度、バルカンにはほかの仕事だと別けて、マーリストン様が王になった暁には、自分の仕事を引き継ぎさせようと考えているみたいね。すべてはシンシア様のためにこの南の城を守ろうと考えているみたいね。私はそう強く思ったけどね』
私はそうは言ったけど、子供たちも自分の考えがあるもしれないし、私の考えが合っているかどうかも分からない。
『リリアがそう思えばそれが正しいです』
ソーシャルはそれしか言わないから、彼女はほんとうに何も聞いていないかもしれない。
ソーシャルがその言葉を聞いていたとしても、バルソン様の頭の中では違うことを考えているかもしれない。ソーシャルが話したことを私が信じてしまうかもしれないので、彼女が何も言えないことも分かるけど、情報は多いほど色んなことを考えられる、と今の私にはそれしか方法が思いつかない。
『バルソン様はほんとうにすごいのね。マーリストン様が私のことをたまにすごいというけど、私はソーシャルがいるからでありバルソン様の凄さは違うと思う。王様もバルソン様もこの南の城のことをほんとうに考えているのね』
『リリアがそう思えばそれが正しいです』
王様やセミル様やシンシア様は、必ず城内外に関しての情報ネットワークは押さえていると思うので、私にはルーシーとマーヤしかそばにいないけど、彼女たちは元を正せばシンシア様の配下であり、彼女たちをどこまで信じていいのか分からない。
『……前にバルソン様が自分は見栄や意地が強いと話したけど、それくらいの根性がなくてはこの南の城は守り通せないわね』
『リリアがそう思えばそれが正しいです』
城を守るという行為は、必然的にシンシア様を守り通すという言葉に変えてもおかしくないほどの信念であり、上からの命令がいちばんなので、それをはね返すほどの地位を保っていなければ、私も地位向上を最優先に考えなくては、私がリストン様を守ることはできないような気がする。何かいい方法はないのだろうか。
『バルソン様が自分は正直な男はない、と前に言っていたけど、金銭が動くことはいつの時代も同じだと思います』
私はそう言ったけど、不正をしようとは思わないけど、何ごとも臨機応変にやらないと馬鹿正直だけでは生きていけない。人間は独りでは何もできないと思い、私を助けてくれる人脈を城の中で見つけなくてはいけないのだ。何をすればいいのだろうか。
『リリアがそう思えばそれが正しいです』
『……それ以外の言葉はないの?』
私はソーシャルが何度も同じ言葉を使っているからそう言うと、
『私を大いに利用してください。リリアが利用すればいいのです』
『……今度は直接バルソン様とゆっくり話しがしてみたい』
『私を大いに利用してください。リリアが利用すればいいのです』
『……私は王様ともう一度話しがしてみたい』
『私を大いに利用してください。リリアが利用すればいいのです』
ソーシャルは同じ言葉を繰り返す。私の話した言葉の裏側を自分で考えなくてはいけないのかしら。ソーシャルを利用するということは、この城の情報を手っ取り早く手に入れられることなのだろうか。今までの自分の信念を切り替えなくてはいけないのだろうか。
『……ソーシャル、私の力でこの南の城が変わって行くと思いますか』
私が思いを込めてそう尋ねると、
『私を大いに利用してください。私は変わると思います』
ソーシャルにそう言われたので、私はその言葉を信じで最大限に利用しようと思う。
『ソーシャル、ここまで来る道のりは長かったね』
『そのようですね。私を大いに利用してください』
未来の歴史が変わっても仕方がない。私は自分の子供を二人も残してしまったし、大好きなバミス様との子供もほしい。自分の子孫のためなら何でもしてするぞ、と思ったけど、何をすればいいのか? と疑問符とともに考えすぎて力が抜けた。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。




