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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第三章 『出会いから、八年ほど過ぎて……』
79/165

79=〈各々の会話〉 (3)

やや長文です。

 ☆★☆『リリアとゴードン様』(48)


 バタバタと日が過ぎて行き、私は子供たちに会いたいと思い、シンシア様に許可していただき、午後の訓練を休んでゴードン様の屋敷へ行くことができた。


 屋敷の客間というよりも、今では子供たちの部屋になってしまったけど、私が引き戸を開けると子供たちが私の顔を見て、ペットの犬や猫のように、三人が突撃してそばに来たので、それを受け止めるのも大変だったけど、子供たちは私の顔を忘れずに嬉しくて、夕食の時間まで三人を相手に遊んだ。


 リストン様とリンリンを中庭に連れ出したくさん歩かせて遊ばせたけど、二人とも前よりは上手に歩けるようになり、コーリンはまだ歩けないので、コーミンが背負ったり座らせたりしながらも、三人で一緒にいたり離れたりしながらと遊んでいた。


 リストン様はおとなしいが、今日もリンリンの方が単独行動で元気いっぱいで、リストン様よりも彼女の方が運動神経はよさそうだな、とまた思い、この時代にあるような木製の玩具でも、また内緒で『ミーバ』から取り出したいような気がした。


 私は小さいころは静かなおとなしい子供だったそうで、父が続けていた剣道を習わせた、ということを思い出し、リストン様は私に似ているような気がしたけど、マーリストン様もどちらかというと静かなタイプで、口元以外は何となくシンシア様に似ていたが、リンリンはシンシア様が元気いっぱいな子供であり、彼女に似たのだろうか、とまた考えてしまった。早く話せるようになってほしい。


 ゴードン様は夕食後に自分の仕事部屋に入るので、子供たちを寝かしつけてゴードン様の仕事部屋に入る。


「ゴードン様、子供たちの世話をいつもありがとうございます」

「俺は自分の子供は育ててないからな。二人がいなくなって上手に歩きだしたぞ。三人もいると毎日が大変だな。俺も若返ったようだ。俺は夕食が済めば明るいうちは仕事部屋に入ることにしている。ここには子供たちは入れさせないから心配しなくてもいい」

 ゴードン様はそう説明してくれたから、

「ありがとうございます」

「マーリストン様も忙しそうだな? まだ一度も来ない」

「マーリストン様はシューマンがそばにいるので、なかなか来る時間が取れないそうです。夜にもこっそり来られないみたいですよ。私たちもカーラの上で一度しか話していません。王様がこのまま隠し通せるかとおっしゃったので、彼はここに来ないと言いました」

「あれからそういう話しなったのか」

「はい。だから、私も隠し通せると話そうと思います」

「よく分かった」


 ゴードン様がそう言ってくれたから安心する。 隠し通してくれるのは、私たちではなくこの屋敷の人たちだ。ゴードン様の意見も聞かなくてはいけないし、私たち及び城の中の状況も説明しなくてはいけない。


「この前ここに来た次の日に、シンシア様のご両親にお会いました。その場に王様もいらして、そばの者を外して私たちだけで話しました。今度はシンシア様とルーシーとマーシーの四人で、シンシア様の屋敷に三日も泊まることを許していただきました」


 私はあの時の状況を説明する。王様の態度は二人で会ったときよりも、リラックスをしていたような気がして、縛り付けられた自分の立場をよく理解しているような気がして、それが普通なのかもしれないけど、考える次元の違いなのだろうか。


 日本人としての立場、市場の人間としての立場、ここでの立場と、私はころころと切り替えしなくてはいけないのかしら? こうやって城の外に出るとホッとするのよね。


「マーランド様もりっぱになられたのだな」

「マーランド様は家臣の前と私たちだけでは話し方が違います」

「なるほどな。彼と二人で話すときは気兼ねしなくていいのだな」

「そうだと思います。セミル様やシンシア様と話すときもそういう感じなのでしょうね。この前も思いましたが想像していた王様とは違いました。セミル様もそうです。お二人の身近にいる人たちは心配ないようですが、他の者たちには気をつけようと思います」


 私はそう説明したが、人が多ければ派閥が存在する。向こうでもここでも上司の命令は必須なのだ。私ってシンシア様を中心にする側室派ってことなの?


「……城の中には色んな人間がいるからな。リリアは敵を作らないように気をつけてくれ」

「はい。ゴードン様は辞めさせられたと聞きましたが、何が原因だったのですか」


 自分で辞めたのか辞めさせられたのかでは意味合いが違うと思い、ここで思いきって聞いてみる。


「そういうことは今さら言っても仕方がない。俺が城に嫌気がさしただけだ。リリアもリストンを城に入れるのはいいが、毛嫌いする前にさっさとここに戻って来なさい」

 ゴードン様からそう言われてしまう。


「分かりました。ありがとうございます」

「リリアがそばにいなくても、リストンは城の者が大事に育ててくれる。バミスがそばにいればなおさら安心だ。大人になれば自分で考えられる。子供はそうやって大人になってくと思う。俺はリンリンやコーリンは城には入れたくない。コーミンはマーリストン様のことを好きだから仕方ないが、自分のことは何でもできると思うが城の中は窮屈だぞ。こことは違うからよく考えた方がいいな。ここで幸せに暮らした方がいいと思うけどな」


 そう言った彼の奥底で考えられたような言葉を初めて聞いたけど、年齢的な積み重ねられた知識と経験は侮れないと思う。その現状をしっかりと聞きたいけど、彼の生きた時代は先代王の時世だと思うし、時が経ち世の中がよくなったのか悪くなったのかも分からない。これから自分で感じとることになるだろう。


「ゴードン様はそういうことを考えていたのですか。私はリストン様の立場を考えひとりでは城には入れられません。マーリストン様の子供として産まれましたから、シンシア様の子供として産まれたマーリストン様の立場と同じだと思います。リストン様は南の城の王族に産まれてしまったからです」

「リストンは王子様の立場になるからいいが、俺の考えも知ってもらいたかっただけだ。リリアとマーリストン様が二人で考えればいい」

「ありがとうございます。マーリストン様にもそのように伝えます。まだ先の話ですから私たちもよく考えます。ゴードン様の考えを聞けてよかったです」


 私がそう言ってしまったけど、リストン様をひとりで城の中に入れることはできない。


 リンリンやコーリンがいるからこそ、たまに会ったり話題にしたりして、バミス様が上手に彼の気持ちを紛らわせてくれると思うけど、それでリストン様は頑張れるような気がする。シンシア様のことを思うと……私が彼と話す機会がたくさんあるのだろうか。

 

「……人それぞれに立場があり考え方は違うと思うが、今までも大変だったがこれからも深刻な問題も出てくる。しかし、二人ともよく勝ち残れたな。言うのを忘れていたが、リンリンが勝った、勝ったと叫んでいたから驚いたぞ。時間的にリリアのことだと思ったけどな。子供の力はすごいものだな。俺もミーネやコーミンには感謝している。リリアの考えた通りにすればいいと思う」


 ゴードン様がそう話してくれたが、さすがリンリン、その話しをソーシャルに聞くのを忘れていた。


 シンシア様も試練が待ち受けているという言葉を使ったけど、どこに住んでいてもトラブルは起こるよな。身近な問題を回避しつつ布石を施して、将来的な天望を望めないだろうか。すべては自分の子供のためである。


「ありがとうございます。バミス様のこともよろしくお願いします」

「それもリリアが自分で考えればいい。城から出てバミスと一緒に暮らしてもいいと思うが、二人でここに住んでも俺は構わない。ミーネにもそのことは話してある」

「ありがとうございます。リストン様が大人になり自分で考えることができるようになるまで……私は城にいようと思います。その後のことはまだ何も考えていません」

「俺みたいに歳をとると静かに暮らしたいものだ。ケルトンと出逢い色んなことが起こりすぎたな。俺も励みにもなったし昔の知り合いにも会えたが、これからどうなるか分からない。今まで楽しかったぞ。子供たちが城に入る前に山の家に一度は連れていきたい。トントン屋敷にも連れていきたいと思っている」

「シンシア様に話してしばらく日にちをいただきます。彼らが城に入る前に、アートクの市場とトントン屋敷に連れていきます。その帰り道に山の家にも寄りましょう。マーリストン様はいけないと思いますが、それでいかがですか」

「まぁそう思っただけで、俺がこういうことも考えたと思ってくれればいいがな」

「はい。覚えておきます。子供たちがしっかり歩けるようにならないと大変ですから、四歳頃にはいけると思います。私もそのつもりでいますから、シンシア様にもそのことを話します。バミス様のこともありますが私も楽しみにしています」

「分かった。俺も楽しみに待っているぞ」


 ゴードン様は今まで私の顔をまじまじと見ながら話していたが、にこやかな顔付きでそう言う。


「はい。話しは変わりますが、祝賀会にはマーリストン様の仲間は何人ほどいらっしゃるのですか」

「この前バルソン様と話したが、シンシア様が二人で会ったことのある人がいいと話されたそうだ。だから十人ほど選んだ。俺の立場もあるから選ぶのは難しかったな。まぁここでは内緒にしておこう。その顔ぶれを祝賀会で見てくれ」


 会ってからのお楽しみだ、と言わんばかりに苦笑いをしているようで、そう話してくれる。


「私も楽しみです。マーリストン様にも伝えておきます」

「こんな機会がなければ俺も王様とは会えないと思い、俺も城に行くことにした。コーミンのことを聞いてみようと思った」


 親としては相手の親と話すのは当然のことだとは思うけど、相手が相手だけにゴードン様も大変だと思う。一度くらいは二人で会わせてやりたいと思ったけど、何か切っ掛けがないとゴードン様が城には入れないような気がする。私にはその現状が分からない。シンシア様とバルソン様が考えてくれると思う。

 

「コーミンのことは王様と二人で話した方がいいと思います。私が話す機会があればそうしてもらえるように伝えます」

「そうだな。突然そういう機会は訪れないと思うからな。俺は若い頃には色んな市場に出かけたから知り合いが多くなったが、俺の知り合いはあちこちの市場でも名のある人間になった。そいつらが金持ちになって人を動かす。信じられない話しだな」

「ゴードン様にはほんとうに感謝しています」

「そいつらとバルソン様が仲立ちになり、城に必要なものを買ってもらえるようにもなり、お互いに仕事がうまく運んでいるそうだ。マーリストン様が王子様だと認めてもらえたから、バルソン様の立場がよりいっそう高くなったそうだぞ。剣の勝ち抜き戦の翌日にはそのことが伝えられたと聞いたぞ」

「そういうことになっているのですか。私は今まで知りませんでした」


 私はそう言ったけど、あの日は自分のことしか考えてなかった。セミル様に会い王様とも話しシンシア様とも会話しをして、三人の信じられないような対話を目の前にして、その状況を思い出す。極めつけはシンシア様のベッドで一緒に眠ったことだ。


「市場で売るよりも城で買ってもらえた方が、確実に大量に売ることができる。最近リリアとは鹿の干し肉のことを話してなったが、この前バルソン様がとても喜んでいたぞ。あれを作り始めて五年ほど経ったな。城では二、三日かけて五人ほどで色んな市場や里を視察に行く。外に出かける者に持たせているそうだ。城でも家臣の食材に利用しているから、城の財源が助かっていると聞いたぞ」

 ゴードン様がそう説明してくれたから、

「ほんとうですか。あれを思いついてよかったです。まずは日持ちがいいことがいちばんですね。出かけるときに一本ずつ持たせると持ち運びに便利です。少しずつ食べれば腹持ちがよくなりますね」

「俺がフィーサスの店で話したことがこういうことになるとはな。うまく考えたものだな」

「ありがとうございました」


 お礼の言葉しか言えないけど、ケルトンが大好きだったビーフジャーキーのことは話せないしね。


「南の城の管轄の市場はたくさんあるけど城の中にも人が多い。毎日食べなくはいけないから金貨もたくさん使う。前の王様はあまり考えてなかったが、マーランド様は食事や着るものなどの贅沢を禁止している」

「そういうことは知りませんでした」


 私はそう言ったけど、王様はこの城のために色んなことをしていたのだ。バルソン様もその手伝いをしていたのだ。私はまったく知らなかった。


「色んな市場の売上げの一部が城の取り分になっているが、バルソン様のお陰で青の編み紐を持った配下の者があちこち置かれるようになり、市場での取り決めがしっかりしてきたそうだ。城でいちばん金貨を使うのは、毎日のことだから食べる物だったらしい。城の財源にも限度がある。バルソン様はそれを今まで改善してきたそうだ」


 ゴードン様がそう言うから、私はまた驚く。


 城の中はそういうことになっていたのだ。

 財源の確保は確かに必要だけど、この城は貧乏なのかしら?

 売り上げの一部は税金になるのだろうか。

 税金のような言葉は聞いたことがない。

 家臣の給料も支払わなくてはいけない。

 そのことで私に期待をしているのだろうか。

 もう少し具体的に話しを聞きたい。

 この城の内情が理解できない。


「……だから……シンシア様のそばから外さなかったのですね」

「そこを王様もよく理解しているのだな。リリアはマーリストン様のことで大変だから、そのことは話さないでくれと言われだが、この前はその話しでいろいろ話しが弾んだぞ」

「バルソン様はそういう仕事もしているのですか」

「バルソン様は王様に許可を取り、俺の知り合いの者と取引をしてこの城に必要な食材や品物を安く仕入れている。だから王様にも信任が厚い。話しを聞くとバルソン様もいろいろ動き回って大変だそうだな。あれは城の財源の立て直しに役立っているそうだぞ」


 そう言ったゴードン様の話しを聞いていると、私はそういうこと考えたこともなかったけど、食材の確保は生きていく上には大事なことだよね。


「やはり、私は知らないことがたくさんあるのですね」

「マーリストン様のことはリリアに任せておけば心配ないと思っていたそうだぞ。シンシア様もそういうことを話しはしてないだろう。リリアはマーリストン様のことだけを考えればいいと思い、少しでもリリアの負担を軽くするために話さないと相談したそうだ」

「そういう話しになっていたなんて、私も食材が必要な意味は理解できます」

「リリアはそういうことを考えたことはなかっただろう。リリアは今までマーリストン様のことで大変だったからな。今度はそのことで何か閃かないか意見を聞きたいと言っていたぞ」

 ゴードン様がそう言ったから、

「私は今まで考えたこともありませんでした。何かお役に立ちたいとは思いますが、その現状を自分の目で確認したいです。そうしたら何か閃くかもしれません」


 私はそう言ったけど、リストン様だけを守ろうとこの城に入ったのに、どうなっているのだろうか。


「分かった。城の裏では大変な状況だ。家臣の家族も守らなくてはいけない。市場の者よりも名のある屋敷も者が城の家臣になることは分かる。強者を集めて配下にする意味も分かる。俺は色んなことをすべて考えると城にいることが嫌になった。しかし、マーリストン様と出会ってまた城とは縁が切れなくなった。コーミンが城に入って王子様が産まれると、マーリストン様やリストンみたいになってしまう。この俺が王族の人間の父親になる。俺は城に嫌気がさして退いたのにまた戻ってしまった。リズの樹の前でマーリストン様とリリアに出会ったことが、俺の運命だったとつくづく思ったよ」


 ゴードン様はそう説明してくれたから、今まで何も話してなかったのに、彼はそこまでこの私に話してくれたのだ。マーリストン様が王子様と認められたから、バルソン様だけではなくて、ゴードン様の未来も変わってしまったのだろうか、私がそういうことまで関与してよかったのだろうか。


「それは私の運命と同じですね。私が赤い実を見つけてゴードン様に出合い、リズと話しができるようになり、マーリストン様が王子様だと認められました」

「人との出会いは不思議なものだな。あいつらと知り合いになったのは、成り行きで偶然だったと思ったが、こういう時に役立つとは信じられないな。自分の運命はどう変わるか分からないな」


 ゴードン様は私の瞳の奥深くを見つめながらそう言ったのだ。


「私もそう思います」


 私はそう返事をしたけど、お互いに過去の世界に記憶が飛んで行ったような雰囲気で、しばらく会話が止まってしまった。


「それでは自分の部屋に行きます。おやすみなさい」

 私の方から言葉を切り出す。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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