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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第三章 『出会いから、八年ほど過ぎて……』
73/165

73=『シンシア様とリリア』 (1)

やや長文です。

     ☆ ★ ☆ (39)


 私はシンシア様の部屋へ戻る間にソーシャルと話しをした。


『ソーシャル、やはりこの言い伝えはソーシャルが考えたのね。ソーシャルがいつかはこうなると思って過去に遡ったのでしょう?」

『リリアがそう思うのならそれが正しいです』

『私をこの城の王族の中に入るようにしたかったのね』


 ソーシャルは私を王族の中に入れたかったのだ。この前に側室の話しは直に聞いた。王族の中に入り何をしろと言っているのだろうか。そのことを聞いてもいいのだろうか。また、自分で考えるようにと言われてしまいそうだ。


『リリアがそう思うのならそれが正しいです』

『私にマーリストン様の子供が先に産まれたのは想定外だったのね』


 私はそう言ったけど、生理が来なかった時は信じられなくて、肩すかしを食らったみたいで、考えてもなかったことでビックリしてしまい、この時代の医療技術のことを考えると、ひょっとしたら子供も自分も死んでしまうのではないか、と最初のころは心配で心配でどうしようもなく、ミーネ様とソーシャルの言葉で精神的に救われ、『ミーバ』から聴診器を取りだし、一パーセントの望みが二百パーセントになり双子が産まれてしまった。


『リリアがそう思うのならそれが正しいです』

『前に彼の側室になるようにソーシャルが話したでしょう。それから子供が産まれればいちばんよかったのね。でもリストン様は王子様と認められた。双子の存在も想定外だったのよね。リンリンの存在があったからこそリストン様は認めてもらえたけど、もう後戻りはできません。バミス様の言葉の意味がよく分かりました』


 バミス様が何を考えていたのか、私がこれから何を考えなくてはいけないのか、マーリストン様ばかりによく考えてと言っている場合ではない。王様の言葉を聞いて真剣に真面目に本気で、リストン様のことばかりではなく、王族の意味を強く考えなくてはいけないと思う。

 

『リリアのことを王様が気に入ったことは事実です。リリアのソードを見てから、よけいにリリアの考えを理解してくれたのではないですか』


 当然に色んなことは考えてはいたけど、王様と直に話すことができソードも見せることもでき、真っ向からリストン様のことも認めてくれたことには感謝をしなくてはいけないことだけど、何か引っかかるのよね。


『今までこの城の王族のことなんて深く考えたことはなかったのよ。リストン様の立場がそういうことに深く関係するなら、私は城には入れたくないな。マーリストン様は王子だからいいかもしれないけどね。これから私はどうすればいいの?』


 私がソーシャルに聞いても、お互いが納得する返事はもらえそうにもないが、シンシア様の考えも聞かなくてはいけない。私は何を信じていいのか分からない。


『私のご主人様に難問が訪れましたね』

『これは最大のピンチです。でもね、さっきは何も閃かなかったのよ。そう考えると、五歳まではゴードン様の屋敷で育ててもいいと思ったのよね』


 この五歳という年齢はシンシア様がマーリストン様から引き離された歳である。私はそういう決まり事がある歳を短縮して一歳で離れてしまい、子供たちが起きている昼間に会いに行けるのだろうか。そのことが心配なのよね。

 

『リリアはゴードン様の屋敷の前の屋敷のことを知っていますか』

『えっ、両隣の家のことも何も知らないけど、必要以外は外に出てなかったからね』


 とは言ったものの、近所づきあいは余程何かの縁がなければ、増して、この状況では隠す一方であった。


 町内会でも何丁目とか変わると、顔は見たことがあっても家までは知らない。幼稚園とか小学校の友達がいても、町内にまばらに住んでいるから家族の顔とか知らない。近所で何かのイベントがあれば、たくさんの人とお近づきになれるのにね。


『大家が王様かシンシア様かバルソン様かは知りませんが、屋敷の者が入れ替わりました』

『うそっ、ゴードン様の屋敷を守っているということなの?』

『そうだと思います』

『ゴードン様は知っているの?』

『知らないと思います』

『ソーシャルから教えてもらったけど、私が気づいたことは内緒にした方がいいのね』

『向こうも密かに動き回っているようです』


 セミル様の話しも王様の言葉もソーシャルとの会話も、頭の中がかき氷の粒のように混ぜくられて、飲み込んでしまえば一つの結果として、私の胃の中に溜まるのだろうか。こういう話しになるなんて、訳が分からない。


 最後になぜマーランド様の名前を使ったのか、と自分でも不思議に思い、王様にも名前があるのだと考えていると、ついこの名前が口から飛び出したのだ。


 私が考えた王様とはまったく雰囲気が違い、この城の行く末をほんとうに考えているとも思い、セミル様とシンシア様をほんとうに好きなのだと、私は心からそう思ってしまう。私のことも好きになってしまったのだろうか、と色んなことを考えていると、シンシア様の部屋へたどり着いたようだ。


     ☆ ★ ☆ (40)


「シンシア様、リリア様が戻られました」


 パーレットのそう言った声が聞こえ、夢想の世界から目の前の現実の匂いの変化に私の頭が切り替わったようで、脳内の一次感染が自分と相手の視覚という二次感染に広がらないように、そうしなくてはいけないな。


「シンシア様、リリア様をお連れしました」

「ご苦労さまでした。ドーラン様が直々に送っていただけとは信じられません。ありがとうございました。王様によろしくお伝えください」


 シンシア様はやや驚いたようにそう言ったので、増して彼を様付けで呼んでいる。彼の立場は重要なポストなのだと思う。


 私は彼の後ろ姿だけを見ながら歩き、私の後ろにも人の気配が少しだけあったような気がしたが何ごともなく、頭の中ではソーシャルと話しをして、私の周りは隙間だらけの移動であったような気がするが、二人でひと言も話さなかったしね。


「はい。この度はマーリストン様の帰城、おめでとうございます。ほんとうに背が高くて逞しくなり、私も驚きました」

「ありがとうございます。すべてここにいるリリアのお陰です。リリア、ドーラン様は王様の側近で赤の編み紐なのよ」


 彼女がそう説明したから驚いてしまい、この色は身分証明書みたいな存在になると、今の私でも理解できる。

 

「申しわけありません。そのような方だとは存じませんでした。大変失礼しました。ご挨拶が遅れましたが、私はリリアと申します。これからもよろしくお願いします」

 私が慌てて彼の方に体ごとむき直しそう言うと、

「リリア様、こちらこそよろしくお願いします。私は王様から今日話しを伺いました。私は王様と一緒に剣の勝ち抜き戦を見させていただきました。動きがよくて素晴らしかったです。あのような声を聞いたのは初めてのような気がします」


 彼の感想めいた話しを聞き、私は気恥ずかしくなる。


 何か説明しなくてはいけない状況で、王様には面、胴、小手とあのように話したけど、ここの人たちには関係のない言葉ではあるが、あの言葉で私の体がよけいに目覚めたようで、最後の最後に勝ち残ることができ、私のよいジンクスやモットーの言葉として、自分の部屋に飾りたい気分だ。


 いい大学を出て頭の良さを強調することではなく、実力勝負で自分本来の技術とか能力とか才能が、この時代には反映されているようで、剣道を習っていてよかった。父に感謝しなくてはいけないな、と一瞬向こうに意識が飛んだけど、二人とも元気なのだろうか。


「……もう必死で自分でもよく分かりませんでした」


 私はそう言ってしまったけど、彼のその言葉を聞く限りでは、私に対する第一印象はよかったみたいだ、とか思ってしまう。


「シンシア様、マーリストン様は私のことは覚えているのでしょうか」

「今夜は自分の部屋にもう入ったと思います。明日伺ってみましょう。わざわざありがとうございました。王様にもよろしく伝えてください」


 シンシア様がそう言ってくれたけど、彼はまだ何か話したそうな気がしたけどな、八年間のブランクがあったので、その前のことを含めてそう聞いたのだろうか。内容が意味不明。


「……よろしくお願いします。では失礼します」

「ありがとうございました」

 私がそう言うと、彼は部屋から出ていく。


「リリア、今夜は遅くなったけど奥で話しを聞きたいわね」

 彼女がそう言って奥へ向かったので、私も着いていく。


 彼女は王様とセミル様との話しを聞きたいのだ。私たちはいつものごとく部屋にある椅子に対面同士で座る。今夜の私たちは堂々と普通の声でこの部屋で話せる感動も味わいたい。でも、二人で話す内容は内緒話だよね。


「セミル様には何も聞かないと話したけど……その……どうだったの?」


 彼女はセミル様の話しの方を最初に持ち出したけど、王様と話しをするよりも彼女との会話が少ないのだろうか。二人で腹を割って話すことがなかったのだろうか。何とも言えない立場で、私はどう話しを運んだらいいのだろうか。


「お二人とも私が想像していた人とは違いました。だからどうなってしまったのだろうか、と私の方が困りました」


 私はほんとうに予想外の二人の会話にたじろきそう言ってしまい、この気持ちは嘘ではない。


「リリアはマーリストン様のことばかり考えていたからね。私はリリアがここに来てから考えればいいと思い、二人のことは詳しく話してないのよ。それでなくても今まで大変だったからね。私の気持ちも察してね」


 彼女はそう言ったけど、私のことを気遣ってくれ、皆で話さない方がいいと相談したのだろうな。


「分かりました。リストン様が自分で考えられるようになれば、この城に残るのも出るも自由にさせたいと話すと、セミル様はマージュン様の考えを直接聞いてみるとおっしゃいました」

「えっ、そういう話しをしたの?」

「はい。マージュン様は体が弱いので、今の王様みたいにこの城を導くよりも、静かに好きなことをさせてもいい、と考えているそうです」

「セミル様はそういうことをおっしゃったの?」

「はい。シンシア様がマーリストン様を産むときは大変だったと聞いて、セミル様もマージュン様を産むときも大変だったとおっしゃり、私にも二人だったから大変でしたね、と言われました」


 私はその順番で話しを進めたけど、彼女がいちばん聞きたい情報だと思い、知っている項目があるかもしれないけど、そう教えてあげる。


「……そう。私たちはリストン様がマーリストン様の子供であると認めてもらうために、リンリンの話しもしたのよね」

「はい。リンリンのことは隠した方がいいとおっしゃいました」


 セミル様は子供たちのことはシャーニンにも内緒にすると言われたけど、彼女から話すことを禁止されたわけではない。


「私も隠した方がいいと思います。でも……姫様ですからね」


 彼女がそう言った声の響きは、王位継承は王子の特権であり、姫様には関係がない、と言っているのだろうか。王子様と姫様の立場は違うのかな。私にとっては二人とも自分の子供だけどな。城の立場として子供に対する意識が違うのだ、とか思ってしまう。

 

「シンシア様はコーリンのこともご存じですよね。マーリストン様の姫様です。彼はコーミンのことが好きだから『正室』にすると言いました」


 私は姫様の立場を理解してもらえるように、コーリンの話しも持ち出す。


「……そう、二人で話し合ったのね」

「はい。リンリンもコーリンもマーリストン様の姫様です。だから、私はマーリストン様にリストン様のことだけを考えるので、コーミンが正室になり私が側室になれば、リンリンとコーリンを一緒に育ててほしいとお願いしました。そうすれば、東西が仲良しであることをこの城の人たちに理解してもらえる、とも話しました」


 この話しは彼がシンシア様に自分から話すと言われていたけど、私はこの場で話してしまい、彼から直接に聞いた場合に彼女が動揺しなくていい、と思うからだ。


「……分かりました」

 彼女はそれしか言わない。


 彼女は私の言葉に驚いた様子がなかったので、少なからずそういう気持ちに気づいていたのだ、と思いながらも、マーリストン様の考えもこの際だから理解してもらいたいな。


「お二人が周りの人たちが思っているほど、険悪ではないと私は気づいたので、私はコーミンとコーリンとリンリンはゴードン様の屋敷で、このまま静かに過ごした方がいいと思います」

「えっ、そういうことを考えたの?」

 今度の彼女の言葉は驚いている。


 私の心は強風が吹きまくっても、さざ波のような揺れにまで持ちこたえられたのだから、これからの自分の感情は彼女の出方次第だと思う。


「はい。リストン様はマーリストン様の王子様ですから、五歳になるとこの城に入れます。リストン様がマーリストン様の考えを引き継いで大きくなれば、後は自分で考えればいいと思います。正室に迎えた方に王子様が産まれれば、リストン様は外からこの城を守っていけばいいと思います」


 セミル様にも話したけど、私は同じ言葉を伝える。


「そういうことを考えているの?」

 今度の彼女の言葉は先ほどよりもやや冷静であるようだ。


「はい。私たちは今まで自由に生きてきました。この城の行く末も大事ですが、大きくなれば自分で考えることができます。そこまで私はリストン様の自由を奪いたくはありませんが、マーリストン様の王子様である以上は、私だけの考えでは済まされないと思いますが」


 私はこの時代の因習や風習やしきたりなどは少ししか理解できないけど、すべてを自分なりに考え彼らの将来も考えて、この言葉を使う。


「リストン様は王様の孫であり私の孫です。そしてマーリストン様の王子様です。リリアがそこまで考えているとは驚きました」


 彼女はそう言ったけど、自分の子供だもの考えるのは当然のことよね。私がこちらの生活習慣に合わせなくてはいけないとことは重重承知はいしているけど、八年の歳月が過ぎたとは言え私だけだったらいいけど、何も理解してない子供たちのことを考えるといたたまれない。


「だから、私はどうなってしまうのか……分からなくなりました」


 私はそう言ったけど、リストン様を守るという、共通の一点張りであることだけは考えられる。それ以外のことが明確に分からない。私の考えと三人の考えの接点がほかにもあるのだろうか。それを日本人としての私の知識で取り込んでもいいのだろうか。


「リリアが分からなくてどうするのよ。しっかりしなさい。今までのリリアはどうなってしまったのですか。リストン様をその次の王にする気持ちで頑張りなさい。私たちの方が困ります。そういう話しを王様にすればマーランド様も困りますよ」


 彼女がやや厳しい顔尽きてそう言う。ということは、リストン様がこの城の王になることはもう決まっていることなの? それを三人で話し会ったということなの? と受け止められる言葉である。話しをずらして後からよく考えようと思う。


「マーランド様はセミル様もシンシア様もほんとうに好きだと思いました」

「えっ、そういう話しもしたの?」

「話しの流れでそう思いました」


「……マーランド様はリリアのことも好きだとおっしゃったのね」

「えっ、そういうことはありません」

「そう思っても不思議ではないと思うけど、バルソンもそう言ったのでしょう?」

「えっ、そういうことはありません」

「セミル様もリリアのことは嫌いじゃないと思います。リリアと直接話すとあなたのことが理解できるわよね。この私がそう思っているから間違いない。信じてもらえたかどうかは分からないけど、私も色んなことを説明したしね」


 今度は一気に話題が変わり、私の方が押しまくられ焦ってしまう。


「……私には意味が理解できませんけど」


「……マーリストン様もリリアのことが好きなのね。リリアの存在でここは変わっていくと思います。私はそのことに期待しているのに、もう少ししっかりしなさい」


 励まされているのか怒られているのか、と思われるような言葉ではあるが、具体的に話してくれると何かしら考えられるけど、私に何を期待しているのよ、と私は言いたい。


「シンシア様の口からそのようなことを聞くとは信じられません」


 としか今は言葉がないけど、三人は仲良しで色んなことを話しているかもしれないけど、もう三人の言葉の意味が信じられない。


「私がリリアの不思議を信じられないのと同じなのよ。でも、私はリリアのことを今まで信じてきたからね。しっかりしなさい」


「……申しわけありません」


 私はつい謝罪の言葉が飛び出したけど、何で私が謝らなきゃいけないのよ、と考えてしまう。


「マーリストン様がいちばんリリアの不思議を知っているとは思うけど、少なからず私とバルソンも知っているのよ。そのことは王様には話せない。マーリストン様が次の王になり、リストン様がその次の王になるくらいの力を発揮しなさい。私たちはリリアの存在に期待をしています」


 彼女からそう言われてしまったけど、頭の中がかき氷を半分ほど食べ、その後ぐちゃぐちゃに混ぜくったような状況であると考えられる。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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