表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第三章 『出会いから、八年ほど過ぎて……』
67/165

67=〈王子様の復活〉 (1)

明けまして、おめでとうございます。


     ☆ ★ ☆ (10)


「控え……」

 ルーシーが私を見てそう言うと、

「今から王様の広間の控えの部屋へ移動します」

 マーヤがルーシーの言葉を汲み取ったようでそう説明してくれる。


 私が何も話さずマーリストン様を見ていたことに、彼女たちは気を効かせてくれたみたいで、彼が歩きだしたのを合図のように言葉をかけてくれたみたいだ。


 マーヤは三年近くルーシーの側近として行動を共にしていたので、シンシア様やマーシーの次に、ルーシーの発する言葉の意味を考えられるようになり、そのことは彼女との出会いのときに、シンシア様から提示された一つの条件のような課題であり、彼女はルーシーの行動を見守る中で、だんだんとその意味が理解できるようになったそうだ。

 

 ルーシーが先頭を歩き、マーヤが私の後ろを歩く。私たちは中央広場の側面を進んでいるみたいだ。そのことだけは何も知らない私でも分かる。


 今までの活気あふれた雰囲気とはがらりと変わり、城の人間が四、五人塊となり移動している様を遠目で数組確認することができたが、家臣が密集している場所も存在するとは思うけど、今私たちが歩いている通路は人通りがないのと同じだ。


『ルーシー、誰もいないとここは静かだね』

 私は心の言葉で話しかける。二人は部屋の中と違い何も話さないのよね。雰囲気が違う。ただ淡々と歩いているのだ。


『シンシア様の部屋以外では、そば仕えの者から必要以外のことを話しかけてはいけません』

 彼女がそう言ったからとても驚く。


 シンシア様の部屋以外の場所で、彼女には気軽に話してはいけないというとになる。部屋を出ると気を付けなくてはいけない。彼女は私に警告をしてくれたのだ。さすがルーシー、私は何も知らないので頭が下がります。


『……分かりました。決まり事があるのね。でも私たちが心の言葉で話すことは誰も聞こえないので例外になるでしょう? シンシア様の部屋で話していると思えばいいからね。そのことを私から命令してもいいの?』

 彼女の律義そうな性格を考え軽めに命令の言葉を使う。


『ありがとうございます。その命令に従います』

 彼女がそう言うのでビックリしたけど、それくらいことを言わないと、彼女は気さくに話しかけてくれないような気がするのだ。


 なるほどね、私から話しかける分には構わないようだ。そういう大事なことは早く話してくれればよかったのに、立場的に大義名分があるのね。


 ルーシーから色んなことを聞き出す言葉も大変だと思い、建物の外や中の通路を歩きながら、彼女は心の言葉で私が必要としている言葉を投げかけてくれた。


 シンシア様の部屋を出るとこの体勢で歩く。迷子になると大変だものね。今の私には当然当然。


 先頭から二番目が枢要人物だからさり気なく顔を見る。ばしっと見てはいけないのね。ふむふむ、でも狙われやすいよな。


 そば仕えの人数で立場が違う。偉そうな人にはたくさんいるということね。映画の世界から考えても読書した記憶から考えても、常識的に考えてもそうなることが少し分かるような気がする。


 各要所には男女別に控えの部屋がある。男尊女卑なのだろうか。確かに必要なことだとは思うが、仕える相手が違うからなのだろうか。


 南の屋敷の中ではその控えの部屋しか知らない。南の屋敷?? これは聞いたこともない言葉だ。要チェック。


 王様の広間には剣の勝ち抜き戦以外には入ったことがない。中央広場まで勝ち残った男女はその部屋に入ることができる。シンシア様が王様の部屋へ行くときには、控えで待っている、と有意義なルーシーの話しが私の脳みそに記憶された。

 

 南の屋敷はそれほど重要な場所なのだ。王位継承とか特別な宴会とか開くのかな、とか向こうの知識でそう考えてしまう。


『南の屋敷に近づくのは……好きではありません』


 部屋へ到着する前に、彼女から爆弾発言的な言葉を聞き、私はまた驚く。こちらの屋敷は摩訶不思議な世界なのだろうか。東の屋敷の正室、西の屋敷の側室関係の存在は、何とはなしに知り得ているが、分解すると奧が深いのだろうな。


     ☆ ★ ☆


 迎えの者が来て、皆の名前が呼ばれて縦一列になる。男女別の控えの部屋から、私たち八人が動きだす。王様の広間の入り口から男女の二列が縦長に集まる。


 私の隣にはマーリストン様がいて、横幅は三人ほどしか通れないような入り口が開けられ、係りの者が先頭を歩き私たちは中に入る。

 

 正面に向い部屋の左右には十人ほどが椅子に座わり、この城の重役たちが並んでいるのだろうかと思う。その椅子の後ろと椅子の手前にも二列になり立っている人たちもいる。


 先頭だしきょろきょろと周りに頭を動かして見るわけにはいかず、ぐっと胸を張って正面を見て頭を下げないように、威厳をもって存在感をアピールしなくてはいけないと思い、私たちはゴードン様の家族や子供たちを犠牲にして、やっとたどり着いた晴れ舞台なのだ。


 先頭を歩く私たちは、階段が五段ある壇上の手前五メートルほど前で止まるように言われ、正面には王様の座るであろうと思われる椅子が、威厳よく置かれている。


 黒っぽい木で作られているような頑丈そうな四角い椅子の上には、赤い布に刺繍が施されているような、やや厚みのある座布団見たいな物が置いてある。


 その椅子の後ろには屏風のようなの衝立があり、椅子が邪魔して左右しか見えないけど、白っぽい生地の中に河の流れのような流水系の絵柄のような気がする。


 四角いフレームの中に大きな鳥が半分ほど羽を広げて描かれていたけど、鷲なのか鷹なのか、その鳥の足元と左右に城のような絵が三つ描かれ、この距離では小さくてよく見えず、椅子の背面の壁に上から提げられているのではなく、固定されているみたいだ。


 燭台だけは、王様のやや前の天井から低めにシャンデリアのように垂れ見栄えがよかったけど、きんきらきんに煌びやか部屋だと想像していたが、至って飾り気のないシンプルな部屋だが、部屋の中は明るい。

 

 私の後ろにはマーヤとクーリスがその隣にいる。その次にシューマンとローランがいる。その後ろにはパージュが並んだみたいだ。


 私の右側にマーリストン様がいて、その右側にシンシア様やバルソン様がいることを考えると、左側は東の屋敷の人たちだと思うがそれも定かではない。


 私の斜め左前の上座に座っているのが初めて見るセミル様だと思い、シンシア様が少しだけ話したように、風貌からしてもとても穏やかな人のようだと感じる。


 私はどちらかと言えばせっかちの類だから、お貴族様の優雅な生活は合わないような気がするが、中身の性格は話してみないと分からない。セミル様が『静』だとすると、シンシア様は『動』と表現してもよさそうな雰囲気がする。


 私はセミル様と目が合う。私は軽く頭を下げて挨拶をする。彼女も頭を下げたような視線を下げたような気がする。彼女の視線がマーリストン様に移りシンシア様に移動したような気がするけど、この会場がわさわさとした小声で充満しているから、私はしばらくの間色んなことを考えることができた。


 王様が右側の入り口から現れると、今までの騒音が嘘のように止まり、王様が椅子に座り話しを始める。


「毎回剣の勝ち抜き戦では剣客が登場します。今回はその戦いぶりに少し感動しました。この最後まで勝ち抜いた二人のことを私の口から皆に説明しましょう。私はずいぶん前にこの二人の報告は受けていました。ここで新たに目の前で会うことができ、私は嬉しく思います。


 この二人の名前はマーリストンとリリアです。マーリストンは西の屋敷の王子です。皆が知っている通り、十歳の頃に突然西の屋敷からいなくなりました。しかし、私の目の前にいるリリアがマーリストンを助けてくれたと、先ほど本人の口から聞きました。私がシンシアに渡した短剣も見せてもらいました。彼女からマーリストンに渡してあるという話しも聞いていました。


 そのことはシンシアとバルソンからも報告を受け、私も知っていました。しかし、実際に本人を見なくては信じられない話しです。今ここで二人を見ることができ、この話しが真実であることを確認しました。マーリストンはセミルにその短剣を見せなさい。私がシンシアに渡した短剣であることをセミルに確認してもらいなさい」


 王様は明確に説明しているかのように、ゆっくりとはっきりした口調で、前面にいる家臣を見回すように視線を動かし、マーリストン様で刹那止まり私も見て、それからセミル様に視線を移しながらそう言う。


「はい」

 彼はそう言って、懐から箱を取りだし彼女の前へ移動する。


「この短剣をご確認ください。私がシンシア様からいただきました」

 彼がそう言って、彼女の前面でふたを開け白い布に包まれ短剣を取りだす。


「確認させていただきます」

 彼女はそう言ってから、すべてを見極めるかのように、その短剣を両手で回転させながらしばらくじっと見ている。


「間違いありません。私が王様から拝見させていただいた短剣と同じです。よくご無事で何よりでした。ほんとうに背が高くなりましたね」

 彼女が彼をしばらく眺めてからそう言うと、周りから微かなどよめきがまた起こる。


「はい。ありがとうございます」

 彼はその短剣を受け取り箱にしまい、しっかり自分の懐の奧に入れたようで、私の隣に戻ってくる。


「静かにしなさい。王様の御前です」

 セミル様が突然大声で一括したから驚いてしまい、彼女の方を見てからシンシア様を見ると目が合ったと同時に、左右の話し声がぴたりと止まる。


「私はマーリストンを王子だと認めます。セミルも異存はありませんね」

 王様がそう発言すると、

「はい。確かにマーリストン様だと確信しました」

 セミル様はそう言ってくれたのだ。


 八年ほどの歳月が流れていても、大人びた彼の顔を見ていても、間違いないと判断できそうだが、ドッペルゲンガーのような酷似した人間を探し出し、代理と仕立てる輩もいるかもしれない。シンシア様からいただいた短剣は、家臣の前ではより強固な証拠として完璧な物だと思う。


「リリアはマーリストンを助けてここまで導いたと聞きましたが、マーリストン、ほんとうのことですね」

「はい。間違いありません。私のそばに一緒にいて私を育ててくれました。そして、私をここまで導いてくれ、私に剣も教えてくれました」

「剣客のリリアに教えてもらえれば剣客に育つと思います」

 王様がそう言うと、

「はい。後ろにいるシューマンもリリア様に剣を教えていただき、私と同じでここまで勝ち抜きました。私だけではありません。今まで私の唯一の友達です」

「マーリストンの友達か……シューマン、私の前に来なさい」

 王様がそういうと、

「はい」と、彼は返事をして前に進み出る。


「先ほどクーリスに負けたのはシューマンだったのか、クーリスは青の編み紐だから手強い。しかし、試合の内容は見応えがあった」

 王様は彼の存在を認めてくれたような発言をしたので、私もホッとする。


「ありがとうございます。私の完敗でした。しかし、マーリストン様はクーリス様に勝ちました。私はマーリストン様を尊敬できると確信しました」

 彼がそういう言葉を使うと、

「シューマンはマーリストンのそばにいて彼を守りなさい。私が命令します」

「ありがとうございます。マーリストン様をこの命をかけてお守りします」

 シューマンはそう返事をしている。


 彼の右手は胸の前の方に持っていったみたいだ。よく見えなかったけど敬礼みたいな動作なのだろうか。うーん、そういう動作も私は知らないけどな。バルソン様からシーダラスの屋敷で教育を受けたのだろうか。男と女の立場で違うのだろうか。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

今年もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ