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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第三章 『出会いから、八年ほど過ぎて……』
65/165

65=〈剣の勝ち抜き戦〉 (3)

少し長文です。

後書き、間違えたので消しました。

     ☆ ★ ☆ (6)


 シンシア様の庭はマーリストン様がゴードン様と一緒に見せてくれると言ったけど、私は待っていなくてもよかったのだろうか。


 自分の足で歩けるなんて信じられない。

 私は独りでここに来ることができた。

 あそこのテーブルまではこんな傾斜になっているのだ。


 幅が五十センチほどの階段が七段あり、土が踏み固めてあり手前には木が横たえて埋め込まれていたけど、その木をよく見ると茶色というよりもやや黒っぽくなり、自然現象にもさらされて、何度も踏み込まれた使用感があり、滑り止めみたいになっていた。


 階段の左右に草が生えていたけど、人間が手を加えた場所とは違う趣があり野生の雰囲気がして、この階段は気取らない庭の前面を強調しているかのような気がした。


 私は一歩ずつかみしめてこの短い階段を登った。


 この庭自体が築山みたいに小高い丘のようになり、テーブルと椅子が設置されていた平らな部分の下は土で、左右にはやや背の高い木の前面に適度な大きさの石が飛び飛びに置かれていた。


 その周りは草なのか特別に名のある植物なのか、自然の成りゆきで生い茂っているみたいで、中央は細かくした石なのか踏み固められたような感じで、その粉砕された白っぽい石の間からも、ちょろちょろと草みたいな緑の色彩感覚があった。


 まさかこの時代に芝生の存在はないだろう。私の目の中に視覚的に飛び込んできた風情は、思っていたよりも素敵な雰囲気だと私の心を満足させてしまい、この庭の存在は今の私の浮き上がった心を落ち着かせてくれた。


「ルーシー、暗くても明るくてもこの庭は素敵ですね」

「はい」

「私はここの椅子に座ってもいいのかしら?」

「はい」

「ルーシーも一緒に座ってね。ここを触って」

 私はそう言ってから、右手をテーブルの上に置く。


「はい」

 ルーシーもそう言って、私の対面の椅子に座りテーブルの上に右手を乗せる。


『マーヤはルーシーの配下だってね。いずれリンリンとコーリンの面倒をみてもらいたいけど、彼女たちのそばに置いてもいいの?』

 私は頭の中で、心の言葉としてそう話してみる。


『はい。マーヤは私の配下の中ではいちばんの剣客です。私はシンシア様からリリア様を守るように言われましたから、リリア様の考えに従います』


 ルーシーはそう言ってくれたけど、私たちの会話はこのテーブルがパイプ役として聞こえているのだと思う。


『ありがとうございます。二人でこうやって話せるから、シンシア様はルーシーを付けてくれたのね。私はシンシア様には感謝しているのよ』

『はい。シンシア様はマーシーが守りますから、私たちも離れることは理解しています』

『ルーシーはずっとシンシア様のそばにいたかったのでしょうね。私の存在で変わってしまうことはとても心苦しい。でもこうなってしまったから、これからはよろしくお願いします。リストン様がここに来れば、私よりも彼のことを一緒に守ってくださいね』


 私は今後のことを考え、お互いに会話する状況を説明したつもりだ。


『はい。私はシンシア様のそばにずっといましたから、シンシア様はどこにいても王子様のことをいちばんに考えていました。リリア様も同じだと思います』

『ありがとうございます。この場所でルーシーと話せてよかった。私はここのことは何も知らない。すべてにおいてルーシーの話しをよく聞くからね。私たちが話しをするこの状態の『合い言葉』を決めた方がいいと思うけど、ここを触るみたいにね』

『カーラと言って近くの壁を触ってはいかがでしょうか』

『外にいて壁がなかったらどうするの? 近くに人がいる場合といない場合もあるのよ』


 私はそう言ったけど、何か方法を考えなくてはいけないと思う。


『リリア、今からブレスを一つ『ミーバ』に出します。彼女の右手に付けてください』

 突然ソーシャルの言葉を聞いて驚く。


『……ルーシーの右手に付けるの?』

『そうです。彼女がブレスを右手に付けるとお互いに言葉が聞こえます』

 ソーシャルがそう説明したのだ。


『うそっ、信じられない』

『私を大いに利用してください』


 私は今回の剣の勝ち抜き戦には『ミーバ』を持って来た。

 ゴードン様の屋敷にしばらく戻れないと思ったからだ。

 たたんで上着の合わせの中に押し込んである。


 私はそれを取りだして自分の太ももの上に置き、そして『ミーバ』の紐をゆるめてブレスを取りだすと、そのブレスは私と同じような、幅が一センチほどの濃い黄色みを帯びた黄土色をして、その輪が開いている。


『ルーシー、今日から私のことを守ってもらうために、私の仲間としての証を譲り渡そうと思います。突然だけど右手を出してくれない?』

『えっ、私の右手ですか』


 ルーシーがそう言って、テーブルの上に置いてある右手を前に差し出したので、ルーシーの右手の手首にブレスを両手で持っていき輪をくっつける。


『ルーシー、ここから手を放して私に話しかけてみて』

『リリア様、聞こえますか』


『……聞こえる』

『信じられません。私も聞こえています。どうしてですか』

 彼女は目を見開いてそう尋ねる。


『……説明ができないけど……それはカーラと同じだと考えてね。そうすると意味が理解できるのではないかしら』

 私はそう言ったけど、私だって理解できないのだから、それ以外の言葉はないよね。


『はい。リリア様の言葉を信じてそう考えます。ありがとうございました』

 ルーシーはそう言ったけど、彼女の視線は右手のブレスに向かっている。


 彼女のブレスも隠すようにしなくてはいけないと思い、深いベージュ色の女性用のリストバンドを二つ『ミーバ』にお願いしてから取りだす。


『二人だけの秘密ができましたね。これからもよろしくお願いします。これで私と同じように隠してね』


 私はそう言ってから、彼女の右手にリストバンドも指の方からはめてあげ、予備として汚れていた場合に取り替えるようにと説明し、もう一つを彼女の目の前のテーブルの上に置いたけど、不思議だけでは済まされれないような現実感だ。


 ルーシーもマーシーもパーレットも今日はお揃いのベージュ色の上下を着ていたが、勝ち抜き戦で男女問わずに家臣の見ていると、色んなバリエーションに富んだ上下の服を着ていたけど、形は同じようだけど仕事の内容で変わるのかな。自分の好みの色なのかは知らないけど、その立場で色が違うのだろうか。


 今まで聞いたことがなかったな、というよりも考えたこともなかったけど、制服みたいな物が城から与えられるのだろうか。それともそれを自分のお金で買うのだろうか。


 右手にブレスをつける意味があったなんて知らなかったし、左手だけでも意味がありそうな気がするけど、私たちのソードは左手から出るのだと考えられる。子供たちと話せることは理解していたが、左足にも何か別の意味がありそうだな、ソーシャルは何でもできるのかしら?


 シンシア様の部屋の正面の入り口は、夜は鍵を閉めるのかもしれないけど、今日は引き戸の入り口は開いていて、衝立みたいな屏風みたいな物で中が見えないようにしてあったけど、私をこの正面の入り口から迎え入れるのを、シンシア様は長らく待ち構えているような気がした。


 薄い紫色の中に水色と黄色の縦の格子の入った広い布で隠してあり、タペストリーみたいだとも思い、中央にあるかと思っていたやや大きなテーブルは左側に設置されて、椅子が三脚ずつ置かれていたけど、入り口に近い方に残りの椅子なのか四脚並べてストックされていたよな、とこの椅子に座ってから、ルーシーと話ながらも私の頭の中は、シンシア様の部屋の様子を視覚として捕らえていた記憶が蘇っていた。



     ☆ ★ ☆ (7)


 マーリストンとシューマンが二人で会話をしている。


「シューマン、やっとここまで来てよかったな」

「ケルトンは余裕の展開だと思うけど、俺は六戦目が危なかったよ」

「そうか。リリアから頼まれたことがあるから俺の話しを聞いてくれないか」

「えっ?」


「……私は今まで二人の女性に命令されたことがある。私はその命令に従うつもりだ。今から私はシューマンに命令する。死ぬ気になって最後まで勝ち残ってくれ」


 マーリストンは考えたあげくに、自分のことを『私』と呼び『命令』という言葉を使ってそう話し出す。


「何で俺がケルトンに命令されなくてはいけない。命令されなくても死ぬ気になって最後まで勝ち残るつもりだよ」

 彼はそう言ったものの、ケルトンの意外な言葉に驚いている。


「その気持ちを二倍にしてやった。俺のほんとうの名前を聞きたいと思わないか」

「えっ、どういう意味だ?」


 シューマンはそう言ったものの、自分にも名前が二つあるのでそのことが知られてしまったのだろうか、とも思う。


「俺のほんとうの名前を聞きたいなら、ひとりでも多くの人間をたたきつぶせ。俺が相手になっても勝ち抜くつもりになってくれ。王様を守りたいなら最後まで勝ち残ってくれ」

「俺は最初からそのつもりだけどな。ケルトンが相手になっても俺は勝つつもりだよ。俺はある人から王様を守れと言われたからな。だから死んでも勝ち残るつもりだ」


 彼はそう言ったけど、ケルトンの言葉遣いが変化したのが妙だと思い、それでも自分の意志表示は最大限にしたつもりだ。


「今の王様はたくさんの人間が守っている。次の王になるべき王子は数人の人間しか守っていない。その意味が分かるか」

「えっ?」


「この試合が終われば俺のほんとうの名前を教える。ずっとそばにいてほしい。そのことを言いたかった。リリアからそのことを伝えていいと言われた」

「えっ?」


「最後まで勝ち残ったら王様に会うことができる。しかし誰かの下に付かなくてはいけない。その人によっては今後どうなるか分からない。シューマンを俺のそば付かせたい。だから最後まで勝ち残ってくれ。この意味が分かるか」

「えっ?」


「何も考えないで勝ち残ることだけを考えてくれ。俺には守らなくてはいけない人間がたくさんいる。シューマンにも一緒に守ってもらいたい。だから勝ち残ることだけを考えてくれ」


 シューマンは彼の言葉をつなぎ合わせて考えている。


「……ある人から王子様がいなくなった話しを聞いたことがありますが、それがケルトンなのですか。そう考えると今まで不思議に思っていた話しのつじつまが合います。私の名前が違うこともご存じですか」

 シューマンは理解したごとく、言葉遣いが変わっている。


「えっ、それは知らない。リリアもバミスもシューマンだと言っていたけど……」


「……この試合が終われば……私の名前を教えます。その代わりにケルトンの名前を教えてほしいです」

「分かった。二人で最後まで勝ち残ろう」


 ケルトンは力強くそう言うと、『私は最後まで勝ち残るつもりです』とシューマンも力強く応えていた。



     ☆ ★ ☆ (8)


 この庭の右斜め奥にはカーラが存在している。何度も通った空間だった。この庭の横幅は彼女の客間の部屋と同じ幅だ。その前面に庭を造ったのだ。木が何本も植えられた場所と空間が巧みをこらした設定になり、このような場所で色んなことを話せば内緒話しもできると思う。


 この四角いテーブルも椅子も小高い丘の上の平らな場所に設置してあり、ルーシーが指定したこの椅子の隣は、正面にシンシア様の部屋が見下ろせる場所にある。そこの椅子だけ背もたれに蝶の浮き彫りが彫刻されていたので、私はシンシア様の椅子から見て右側に座っている。


『ルーシー、バルソン様が来たみたいよ。私たちの会話はシンシア様にも内緒ね。私が折りを見て話すからね。また私たちの不思議だと驚かれるわね』

 私がそう言うと、ルーシーは椅子から立ちあがり私の後ろに回る。


『はい。私はリリア様と話しができてほんとうに感謝しています。それ以外は考えません』

『考えても理解するのが難しいのよね。私もよく分からないしね』

 私がそう言うと、シンシア様とバルソン様とマーシーがここまで登ってくる。


「リリア、ルーシーとは話しができたの?」

「はい。ここを触ってできました」

「リリア様の不思議ですね」


 バルソン様は理解しているかのような声の響きに感じてしまう。シンシア様が自分の椅子に座り、バルソン様は私の対面の椅子に座ると、マーシーはシンシア様の後ろに立つ。


「今日のリリアの戦いぶりを二人に聞いたけど、よくあんなに動けると思ったのよ」

「頭で考えるよりも体が勝手に反応しました」

 私が二人を順番に見ながらそう言うと、

「マーリストン様の動きもよかったと報告を受けましたが、あんなに動くと体力が持たないような気がします。大丈夫なのですか」

 バルソン様が私を見てそう言ったから、

「マーリストン様には秘密の言葉を教えてあるので大丈夫だと思います」

「シューマンも最後の八人に残ったそうですよ」

 バルソン様はそう教えてくれる。


「ほんとうによかったです。シューマンにも秘密の言葉を伝えるように、マーリストン様にお願いしましたから、彼は優秀です。バミス様も飲み込みが早いと言っていました。彼も目指すものがあるみたいですね」

 私がバルソン様を見てそう言うと、

「その話しはお聞きになりましたか」

「何も聞いていません。マーリストン様も何かありそうだと言っていましたが、シューマンはそのために頑張っているみたいですね。何か目標があることは素晴らしいことですね」


 私はそう話す意外に言葉がないようだ。私にはバルソン様の考えていることが分からないけど、何か意味あってのことだと思う。


「バルソン様、マーリストン様とシューマンが早いうちに対戦することがあるのですか」

「私には分かりません」

「たぶんないと思いますね。バルソンはそうした内容は言えないのよ」

 シンシア様が私を見てそう言ってくれる。


 シンシア様も立場的に答えてはいけないような気がするけど、私が心配するといけないから彼女は話してくれたのだと思う。ここには五人しかいないが、彼によけいなことを聞いてしまい反省する。


「そろそろ中央広場に行きましょうか」

 突然バルソン様そう言って話題を変えるようだと思ったが、あの場所は中央広場と呼ばれているのだ。


「リリアも一緒に見ていいと王様から許可をもらったのよ」

 シンシア様からそう言われたから、

「ほんとうですか。ありがとうございます。とても嬉しいです。お会いする機会があれば王様にお礼を言いたいです」


 私は嬉しくて早口でそう言ってしまった。私は見られないと思っていた。二人で頼み込んでくれたのかな。何だか話しの分かる王様なのだと思い、私の印象がさっきよりも過大評価され、嬉しくて顔がにやけてしまったようだ。


 子供たちにも今日の現場概況を報告することができる。彼らの試合を見ることで新たに何か思いつくかもしれない。彼の意欲的なシリアスな局面が見られるのだ。


 対戦状況において、いずれ周りの人間から影の言葉を聞くことになっても、私の言葉を信じてもらいたいし、どんな現状になっても彼のことを褒め称えなくてはいけない。勝っても負けてもどんな対戦になるのか、私の脳裏に焼き付けられる。


     ☆ ★ ☆


 中央広場の前に設定された少々高くなった場所から王様の左側で、シンシア様やバルソン様の後ろの場所で、私はマーシーやルーシーと並んで立って見ることができるのだ。


 右側には東の屋敷に関係している人たちがいます、とルーシーが内緒で教えてくれ、このような時にはとても便利だと思い、すべてにおいて東西に別れているのだ、とも思ってしまい、東西の派閥があるからこそこの南の城は繁栄してきたのだろうか。


 セミル様は剣の勝ち抜き戦には興味がなくいつも観戦はしないそうで、セミル様は穏やかな人だけど、その周りの人間に悪知恵が働くようだ、と前にシンシア様が話してくれた。


 そのような城の中で、私とリストンは生きなくてはいけない。彼がこの城に入ればソーシャルに念入りに周りを確認してもらいたいし、ソーシャルは私と三人の子供をどうして一緒に守れるのだろうか。


 ソーシャルは『コンピューター』なのだろうか。今までその言葉は思い出さなかったけど、でもソードは出せないと思う。ソーシャルはいったい何なのだろうか、と会場に向かう道すがら色んなことを考えていた。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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