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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『色んな人との出会い』
6/165

6=『フォール』との最初の出会い

少し長文です。


今後は、五千文字以上、六千文字未満は『少し長文』と言う言葉を、

前書きに書こうと思います。

     ☆ ★ ☆ (8)


『ソーシャル、一つ聞きたいことがあるけど、ソーシャルはケルトンのソードと会話はできるの? 名前はトントンです。話せるならもう帰るからと伝えて、もし二人で話せるならこのことはケルトンには内緒にしてね』

『今からやってみます。少しお待ちください』

『お願いします』


     ☆ ★ ☆


『トントン聞こえますか。私はリリアのソードで名前はソーシャルです』


『初めまして、ソーシャル。ケルトンから名前を聞きました』


『初めまして。もう帰るからとリリアが言っています。二人で話せることはケルトンには内緒にするように言われました』


『分かりました。俺はリリアと話しができるのでしょうか』


『それは分かりません。あとで試してみましょうか。そうすると私もケルトンと話しができるわね。私たちが話しができてよかったです。別々の場所にいても連絡が取れることが分かりました。これからいろいろ役立ちそうね』


『そうですね。ケルトンはソードに乗るのが上手ですよ』


『ひとりで乗ったり二人で乗ったりと、私にたくさん乗って練習したからよ』


『だからバランスを取るのも上手なのですね』


『そのこともリリアに伝えます。ケルトンのことをよろしくお願いします』


『分かりました。ケルトンに戻るように伝えます』


『私もリリアに二人で話せたことを伝えます』


『分かりました。すぐ戻ります』


     ☆ ★ ☆


『リリア、トントンと話せました。ケルトンには内緒にすることを伝えました。彼がリリアと話せるのか試したいと言っていますが、お願いできますか。ケルトンはバランスを取るのが上手だと言っていました』

 彼女がそう伝えてくれたから、これで彼がひとりで乗っても心配ないと確信する。


『二人で話せてよかった。ケルトンのことが心配だからね。私がトントンと話せなくてもソーシャルがケルトンの居場所を確認できれば安心だからね。私もバランスがいいと思った。今度は立って乗ることを練習したいけど、私にできると思う?』

 私が向こうに行けば、乗り方を変えた方がいいと思いそう尋ねる。


『それこそバランスの問題ですね。時が経てばできるようになると思いますよ』

 彼女がそう言ってくれたから、練習すればできるようになるとは思うけど、難しい問題だよな。


『ここに来て低空飛行で練習したいな。時と場合によっては横になる練習もしたいし、今までと違い色んな可能性を試したいわね』

『今までたくさん練習したのですぐ上手になると思いますよ』

 彼女がそう言ってくれて、私たちの練習の成果を認めてもらったようで嬉しい。


『ありがとうございます。二人が話せると助かります。大人あれば心配はしないけどまだ十歳だからね。トントンにケルトンと会話をさせて正しい方向に導いてもらいたいです。何気なく南の城のことを聞いてもらいたいけど……そのことも伝えてね』

『分かりました。やんわりと聞くように伝えます』

 彼女がそう言ってくれる。


     ☆ ★ ☆ (9)


「リリア、遅くなりました」

 彼は戻ってからソードを降りながら言葉ではそう言ったけど、一瞬消すことをためらったみたいで、彼の態度からして自分のソードに乗れたことがよほど嬉しかったみたいだ。


「練習はたくさんできたの? 私たちはもう帰るから二人に挨拶をしてからね」

 私は彼の保護者みたいな言葉を使ってしまったけど、これからは彼の姉に徹しようと思う。


「リズ、今日はありがとうございました。私も声が聞こえるようになって嬉しかったです。これからもよろしくお願いします」


『ほんとうによかった。それ以外に言葉はないわね。また明日ね』

 リズがそう言ってくれ、私もほんとうに嬉い。


「ゴードン、右手のブレスをありがとうございました。私もリリアと同じにソードが現れました。さっきはひとりで乗ってとても楽しかったです。すべてゴードンのお陰です。ほんとうにありがとうございました」

 彼はゴードンに対してそう言ってから頭をぺこりと下げる。


「俺の孫はたいしたものだな。リリアに今後のことを聞いてくれ」

「えっ、私がゴードンの孫になるのですか」

「そうよ。明日から孫になり一緒に住むことになったのよ。後で説明するからね。ゴードン、明日から私たちのことをよろしくお願いします」


     ☆ ★ ☆


 私たちは二人と別れてから、ケルトンが自分のソードに乗っている間にトントンに話しかけたけど、残念ながらお互いに聞こえない。ケルトンに話しをするために空中で私のソードの後ろに移ってもらう。


「ケルトン、さっきは三人で話したのね。今から滝の近くにある大きな樹のそばに行くから、リズは(かぜ)()で遠くにいる仲間と話しができるのよ」

 私は前方の木々の合間を抜けるような、視覚としては微妙な傾き加減の体勢を保ちながらながらそう説明する。


「風の音の意味は分かりませんが、樹の仲間と話しができるのですか」

「私たちも話しができるかもしれない。今から確認しに行くからね。でも、ケルトンは黙って私の話しを聞いてくれる?」

 私はそう説明したけど、意味の分からない樹と話すとしても、彼の存在は隠さなくてはいけないし、リズがどこまで私たちのことを話したかは分からないが、私だけが話せばいいと思い、相手がケルトンのことを聞けばその時に話しをさせればいい。


「分かりました」

「それとね、ゴードンのお手伝いをするために、明日は日の出とともにリズの赤い実を拾いに行くからね。今夜は早く寝てよ。私たちは赤い実を拾い終われば、二人でほかの人間に見つからないようにソードに乗ってゴードンの馬車を追いかけるからね。彼は南の城の近くに屋敷を手に入れたそうよ」

「えっ、南の城の近くに行くの?」

 彼は反射的にこの言葉を使ったようだけど、後ろに乗っているから顔が見えないけど、とても驚くような声の響きだ。


「いつかはここから離れなくてはいけない。私たちはゴードンの孫として生活することにしたのね。その意味が理解できるでしょう? すべて彼にお願いしてあるからね。大きな樹が近くにあればリズとも話しができるそうよ。風の音がリズに伝えてくれるのよ」

「そういうことができるのですか」

「やってみないと分からないけどね。私は一つ聞いてもいいの? 私は今まで南の城のことは知らなかった。ゴードンとリズに少し聞いてみたのよ。ケルトンは剣の使い方は知っているの?」

「はい、教えてもらいました」

「やはりね。ゴードンに誰か教えてくれる人を捜してほしいとお願いしたからね。自分の身は自分で守らなくてはね。その意味が理解できるしょう?」

「はい。ありがとうございます」

「私にはその状況が理解できない。言葉が悪いけど……ケルトンは南の城ではすでに死んだことになっていると思います」

 私は死亡したとはっきり伝えてしまう。


「……私もそう思います」

 彼のそう言った声の響きは、自分の状況を理解しているかのように聞こえたけど、彼も色んなことを考えているのだな、と思ってしまう。


「城壁の外や市場にケルトンがいても誰も疑わないような気がするのね。もし何かあれば私たちはゴードンの孫で、姉の私もいるから心配しなくていいからね。その意味が理解できるでしょう? もっと大人になるまで隠れなくてはね」

 私は城の近くでの現状をそう説明してしまう。このまま城に戻ればまた命を狙われるかもしれない。季節が冬に向かっているようで、寒さが嫌いな私は洞窟にずっと住めない。


「はい。私もそう思います。いつもありがとうございます」

 彼がそう言ったから、自分の立場を考えていたのだと思うけど、私にはその状況が分からないし、彼は何も話さないのだ。


「私はなぜケルトンの命が狙われたのか南の城で調べてみたい。夜であれば人に見つかる可能性が少ないと思う。そこで聞きたいのだけど、誰か信用のできる人をひとりでいいから紹介してくれない? その人に連絡を取りたいけどな」


「……よく考えてみます」

「ケルトンは南の城のことを私には何も話さないから、今まであえて私も聞かずにいたけど、ゴードンと出会って状況が変わったのよ。その意味が理解できるでしょう? 私たちはここにはずっといられない。私はこの機会を利用した方がいいと思うけどね」


「……私も今までよく考えました。リリアにはとても感謝しています」

「ありがとう。今度からトントンと色んなことを話しなさい。南の城の王子様は素晴らしい仲間を手に入れたのよ。城壁の外や市場の人たちの暮らしぶりを見学しなさい。そうすると、大人になれば『偉大な王様』と言われるようになるわね」

 私は彼の感情の変化を期待して『偉大な王様』の言葉を強調して告げる。


「ありがとうございます」

「私たちは三人で話しがまとまったからね。ケルトンの将来がどうなるかということね。私たちの期待はずれになるようなことはしないでね」

 今後のことを事細かに三人で検討したわけではないが、心情的に彼の将来を考える共通の意識が芽生えたと、私はそう思えるので言葉として伝えてしまう。


「……はい。分かりました」

「もう少しで着くからさっきのことを忘れないでね。私だけで話すからね」

「分かりました」


     ☆ ★ ☆ (10)


「初めまして、私はリリアと言います。聞こえますか」

 私が太い枝の上に足だけ置いて、ソードの上にまたがってからそう言う。


『聞こえているぞ。俺にも人間の言葉が聞こえている。赤い実のリズから風の音が届いたが信じられないな。この辺りじゃ俺くらいしか聞けないと思うがな』

 彼は自分の近況をそう説明してくれるようだ。


「私も聞こえいています。お話しできてよかったです。リズの仲間とお話しができることが分かりました。とても嬉しいです」


『俺の言葉が聞こえるとは信じられんな。リリアは人間なのに鳥のように空を飛べるそうだな。そのことも信じられないが、俺たちには風の音で判断するしか方法がない。俺たちには仲間もいるし人間よりも遠くのことが理解できるぞ』


「ほんとうに遠くのことが理解できますね。私もリズの仲間と話しができるようになりとても嬉しいです。遠くの話しも聞くことができますね」


『リズがゴードンと話しができるようになったから、お礼に滝の言い伝えを教えてほしと頼まれた。ここの滝は奥行きがあり財宝が隠されているそうだ。昔の人間が隠したという言い伝えがある。以前に比べると水の音が大きくなったような気がするが、よく見て流れの少ない場所を選ぶといい。鳥のように飛んで中に入ると見つけられるかもしれない。言い伝えだからないかもしれないが、調べてみたらどうかな?』

 彼はそういうことを話してくれるのだ。


「ほんとうですか。もし財宝が見つかるとどうすればいいのですか」

 私は彼の言葉にとても驚き、すかさずそう尋ねる。


 財宝か、考えると私たちにはお金がないし、『ミーバ』から取り出すことばかりを考えてもだめだな。ここにありそうな色んな物を取りだして売ってもいいのかな。ここでの金銭感覚が分からないし、結局、私には何も分からない。そのことをゴードンに聞いてもいいのだろうか。


『俺たちには財宝なんか関係がない。リズもそう言っているぞ。リズとはいちばん近くにいるから風の音ですぐに話しができる。『南の森』の俺たちの中では赤い実のリズがいちばん樹齢が長い。リズと相談して決めてもいいが自分のためでもほかの人間のためでも、自分の好きなように利用すればいいと思うがな』


「ここは南の森と呼ばれているのですか。私は初めて知りました。ここでは赤い実のリズは女王様みたいな存在なのですね」

 私はリズの樹が予想以上に大きな樹だと思いそう言ってしまう。


『なるほど。ここは東西の森に比べるといちばん大きな森だと言われているが、ほんとうに女王様とはいい言葉だ。今度は俺が風の音として、リリアと話せたことと一緒に女王様の言葉を伝えよう』


「ありがとうございます。そうすると、赤い実のボブは西の森の王様ですね。リズが名前を付けたと話してくれました。今度は近くで話しがしたいです。でも……西の森がどこにあるか知らないです。私に教えてください」

 次の話題としてボブのことをそう話したが、ゴードンが彼に会いたいと言ったので、ここで教えてもらえればリズに聞く必要がない。


『ボブのことも知っているのか。この言葉も一緒に伝えよう。ゴードンのことは俺たちの仲間は知っているぞ。俺がこの言葉を風の音で伝えると、鳥のように空を飛べるリリアの存在は人気者になるな。西の森の場所は説明できないが、俺たちの仲間が順番に行き先を示してくれると思うぞ。リズが説明できるかもしれないな』

 今度の彼はそういうことを話してくれる。


「分かりました。私はあなたのこと『フォール』とお呼びしてもよろしいですか。今閃きました」

 ここは滝の近くにあるのでそう言ったけど、名前を考えるならこの言葉がぴったりだ、とここに来るまでに考えていた。


『俺に名前を付けてくれたのか、強そうな響きだな。フォールか、ありがとう』

「とんでもないです。こちらこそ言い伝えを教えていただきありがとうございました。今から滝の中に入ってみます」


『危険なこともあるかもしれないから気をつけてな。俺には王様の存在は遠すぎるから近くの女王様の家来ということだな。リリアの話しは楽しいな。この会話は風の音とは違う響きだ。今日は名前をほんとうにありがとう。今度またゆっくり話そう』


「はい。ありがとうございました。フォール、またお話しを聞かせてくださいね」


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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