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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第二章 『出会いから、五年ほど過ぎて……』
52/165

52=〈リリアとケルトンの立場〉

     ☆ ★ ☆ (26)


「ケルトン、お待たせ。トントンとは話したの?」

「寝るときにはいつもお願いしますが、最近はトントンとはあまり話しません」

「そうなの? 私は暇な時間はソーシャルと話しているけどね」

「俺は色んなことが考えられるようになったから、前みたいに話さないことにしました」

「そうなの? ソーシャルは友だちだと思っているから、ソーシャルからいつも自分のことを考えてくださいと言われるけど、一度も命令とかされたことはないよ。私がケルトンのことばかり考えていると注意はされたけどね」


 私はそう言ってトントンを切らないように説明したつもりだが、彼にも自分なりの考えがあって切ったことも私は理解しているので、私も切ったことがあったからだ。


「リリアはそんなに俺のことを考えてくれているのですか」

「私はケルトンを彼女に返すことだけを考えているのよ。向こうのことは私には理解できないからね。お返ししたら二人が考えてくれると思うよ」

「俺はリリアとは離れるのですね。最近は一緒にいることが少ないです。離れているとそばにいたいと思います」

「それは私のことが心配なのよ。私はケルトンのことは心配してないよ。もう何でも自分で考えることができると思っているからね。逞しくなったのよね」


「……ありがとうございます。俺はリリアのことが心配なのですね」

「それ以上の感情は持たないようにしてくれる。頼んだわよ。今度からコーミンと一緒に話しなさい。さっきゴードン様も話したけど、友だちは一生の宝になるとコーミンに説明していたよ。コーミンに聞いてみたら? 友だちは大事なのよ」

「分かりました。リリアと俺は大事な友だちなのですね」

「そうよ。ゴードン様はリズが大事な友だちだと説明していた。彼女たちはリズの存在は知らないと思うけど、説明しても理解できないでしょうね」

「そうですね。アートクの市場で俺は変わってしまったのですね」

「私もアートクの市場で色んなことに気づいた」

「俺は彼女とリリアの存在が同じだと思っていたけど、違うとはっきり分かりました」


 彼がそう言ったから、いつかは聞く言葉だとは思っていたのだ。


「……それは大人になった証拠よ。大事なことなのよ。誰しもその違いを理解して大人になるのよ。ケルトンだけではない。バルソン様でもバミスでも、男はそこを乗り越えて大人になるのよ。彼女が城では試練が待ち受けていると話したでしょう。次の段階ではそこを乗り越えなくてはいけないからね。バルソン様やバミスとの違いは向こうに行ってから始まるのよ。ケルトンの立場があるからね」


 私はそう説明したけど、自分でそう話していても何が違うのかなんて、私は女だからはっきり分からない。今まで生きてきた中での知識を集約しても、男の立場と王子様の立場、この時代の立場がよく分からない。


「俺の立場ですね。彼女から産まれたからそうなるのですね」

「そうよ。ほかの人間もそれなりの試練が待ち受けている。市場の子供たちもそれなりの試練がある。皆はそれを乗り越えて幸せに生きていけると思う。自分だけだとは思わないでね。私のことを考えてみてよ。この先どうして生きていけばいいのか分からない。そう思わない? これはケルトンにしか話せないことです。ほかの人は理解できないのよ。私も自分の試練に立ち向かうからケルトンも頑張ってね。それ以外に言葉はない。今まで頑張ってきたからこれからも頑張ろうね」

「リリア、二人で一緒に頑張ろうねとは言ってくれないのですか」

「別々の立場で頑張るしかない。二人で一緒には頑張れない」

「俺はよく考えたけど、リリアのことが好きです。いつもそばにいてほしい」


 彼の口からプロポーズ的な言葉を直説言われたけど、私がここ数日いない間に、彼も色んなことを考えたのだ。


「その言葉は聞かなかったことにする。二度と言わないで、その気持ちはずっと前から理解しているから、これからも理解し続けるから頼みましたよ」


「……分かりました。どうしようもないのですね」

「そういうことよ。私はしっかり理解しているからね」

「リリアは何でもはっきり言いますから、リリアはバミスのことが好きなのですね。俺も理解していますよ」


 彼がそのような言葉まで使うとは、私はほんとうに驚く。


「それに関しては何も言えない。ケルトンがそう考えたならそれが正しい。そう考えなかったらそれが正しい。ケルトンが考えたことが正しいのよ。私はよく考えてといつも言っているでしょう。私は考えることのできる人間になったと思っているからね。アートクの市場で私たちは変わってしまったのよ」


 ソーシャルが自分で考えることが正しいと私に話してかけてくれた言葉を、私はそのまま使ってしまう。


「ブレスをつけたラデンにも会いましたからね」

「そうね。彼の存在はバミスと同じになりそうね。それはバルソン様が考えることだから、ケルトンは何も考えなくてもいい」


 またソーシャルが話してくれた言葉をそのまま言ってしまう。ソーシャルの言葉が私の心を埋め尽くしているのだろうか。ソーシャルから見れば、私とケルトンが同じ立場なのだろうか。


「分かりました。俺の周りに色んな人が増えていきますね」

「そうね。皆はケルトンの仲間になると考えてよ。そのことはよく考えた方がいいと思う。皆はケルトンに従っていくわけだからね」


 私はそう言ってしまったけど、彼は色んな状況を自分なりによく考えていたのだとつくづくそう思う。


「リリアの話しはよく分かりました」

「でも……これは私の意見だからほかの人は知らないわよ。バルソン様と同じ考えかどうかも分からないし、バミスも違う考えかもしれない。でも……皆はケルトンに従っていくのよ。それはずっと変わらない。命令するときでも相手を思いやる気持ちが大事です。自分のことばかり考えてもだめね。ほかの人のことばかり考えてもだめなのよ。王になれば南の城を守らなくてはいけない。ほかの人の意見もよく聞いてケルトン自身が判断するのね」

「それは大変なことですね。この俺にできるのですか」

「マーリストン様はできるのよ。私は信じているからね」


 私ははっきりマーリストン様の名前を使って言い切る。


「……ありがとうございます。私は城に入ったらマーリストンです」

「そうよ。名前が二つあるのよ。私にも名前が二つある。私たちは似たもの同士なのね。そうだ、西の森には行かないことにした。ミントの屋敷にはご挨拶に行こうと思っているけどね。明日は朝一番でトントン屋敷に移動する。ミーネとコーミンを連れていくのね。ゴードン様は後から来るから頼んだよ。今は私の弟だと思っています」


 自分でそう言いながら、私たちは似たもの同士なのだ、とつくづくそう思ってしまう。


「……分かりました」

「この前は彼女が側室の話しをしたから真面目な話しになったけど、今日は彼女たちが来たから真剣な話しになったね。今までとはお互いに違うということがはっきりした。側室の話しは理解しているの?」


 ついこの言葉が飛び出したけど、彼の心の中も正直に聞いた方がいいと思う。


「はい。何となく分かりました」

「そう。彼女が禁止したことは約束したのだから守ってね。それと私とも約束してください。それがお互いのためだと思います。王様の一言は誰にもくつがえすことができないのよ」


 私ははっきり説明したつもりだ。


「分かりました。リリアと約束します」

「ありがとうございます。私と話しがしたければフォールがあるからね。私たちはカーラの上で会えるのよ。覚えておいてね。ゴードン様がケルトンのことを剣が強くて礼儀正しくて、そして尊敬できると話したのよ。コーミンがケルトンを尊敬できると言ってたよ」


「……ゴードンが俺のことを尊敬できると話したのですか」


 ケルトンがそう言ったときの顔の表情は、驚きの方が(まさ)っているようだ。私もゴードンからそう言われたときに、とても嬉しかったからね。


「そうよ。私も尊敬している。そのことも忘れないでね」

「ありがとうございます。俺は前からリリアのことは尊敬していますよ」

「ありがとうございます。彼女たちのことだけど、女性は竹の里のからは外に出られないそうよ。里につながる道が一本しかないから見つかるそうよ。男は出入りが自由だけどあそこの決まりがあるのね。彼女たちをフォールで連れてきたことは、私たちだけの秘密。ミーネとコーミンもその意味を知ったのよ。ケルトンのフォールは隠さなくてはいけない。だから……今回のことはケルトンには内緒にしたのよ。その意味も理解してね」


 私はそう説明したけど、竹の里においての男の立場と女の立場の違いは、彼に理解できるのだろうか。


「分かりました。リリアは俺のことを考えて何でも独りで行動するのですね」

「そうよ。だからソーシャルに自分のことを考えてねって注意されるのよ。ケルトンも独りで考えずにトントンに相談してください。相談の内容によっては友だちのトントンと思ったり、彼女やバルソン様だと思ってもいいから、何でも相談すれば答えてくれるのよ。独りで考え込まないでね。私はケルトンが独りで考え込むことだけが心配なのよ」


 私はそう言って、今度は現実的な言葉で説明したつもりだ。


「……分かりました」

「私はソーシャルとトントンがお互いに話しができると説明したでしょう。ケルトンが城に入り私と直接話す時間がなくても、二人を通して私たちは話しができる。この前の剣の勝ち抜き戦のときに、東西に別れても二人は話しができた。私はソーシャルとトントンの話しは信じて聞けるのよ。ケルトンもそう思ってね」


 私は強調してそう説明してしまう。


「俺はもう一度この話しを聞いて安心しました。よかったです。リリアは俺のことをいつも考えて話してくれるから、この前もその話しを聞いたけど、今日ははっきり理解できました。俺もトントンとソーシャルのことは信じていますから、友だちですよ」


 彼の口からはっきりと友達と言ってくれ、仲間という言葉よりも親しみが感じられ嬉しい。


「私も安心しました。何でも自分で理解しなくてはいけませんね」

「今までありがとうございました。俺は彼女とリリアのことだけ考えて必ず王なりますから安心してください」

「二人よりも三人いた方がもっと力が発揮できると思うよ。コーミンはかわいい妹ができたと思っているからね。その数が多くなれば多くなるほど力を奮い起こせると思う。皆を守ってくれることを信じているからね」

「ありがとうございます。コーミンと友だちになれと言っているのですね」

「そうよ。コーミンはゴードン様の孫なのよ。家族なのよ。私たちはこの屋敷にも住まわせてもらっているのよ。私たちはゴードン様のお世話になっているのよ。ましてケルトンの仲間をたくさん作ってくれたのよ。ケルトンの財力はあの金貨だけど、それだけでは人は動かない。ゴードン様の仲間が人を動かしてくれる」


 私はしつこいくらいに説明してしまったけど、独りでは何もできないとまた思ってしまう。


「はい。俺もそのことは前から理解しています」

「そうよね。今さらいうことでもなかった。私もゴードン様の力に感謝していることを言いたかったのね。最初は彼女たちと仲良くしてもらうために話そうと思ったけど、こんな話しになっちゃったわね」

「いえ、俺はリリアと話していると楽しいですから、俺を男として思って話してくれているし、マーリストンの名前も使ってくれて嬉しかったです」

「ありがとう。コーミンに剣を教えてあげてね。男として彼女に尊敬してもらいなさい。ケルトンにはそれができます。自分に自信を持つことがいちばんです。お互いにたくさん話し合ってね」


 今夜の夕食は時間が遅くなったけど楽しくて、コーミンもケルトンに気軽に話しかけていたから安心した。ケルトンも私が話した意味を理解していると思った。


 ゴードン様は夕食が終わって彼女たちと部屋に入ったので、さっきもそうだけど、色んなことを話したと思うし、客間が二つあるから二人でも話しができると思った。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


関係ない話しですが、8月1日から今回分まで4ヶ月間、

一気に予約・再投稿をしました。


どこで止めようかと思ったけど、4ヶ月も先まで続くなんて、

私としては、知る人ぞ知る、出来事かな (^_^;)

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