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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第二章 『出会いから、五年ほど過ぎて……』
49/165

49=〈バルソン様への報告〉

少し長文です。

     ☆ ★ ☆ (23)


 私は暗くなってから独りでバルソン様の屋敷へソードへ向い、最初は前かがみになり下を向いていたが、途中から目を閉じてソーシャルに急いでもらった。


 風を切って進んで行くので、下を向いても目を開けているのが辛くて、プールやバイクで使うゴーグルみたいな物が必要だと思った。


 夜中にバルソン様の屋敷に着いたけど、シンシア様の部屋と同じように、直接バルソン様の部屋の中に入っていいく……いいのかな。


「バルソン様。バルソン様」

 私は直接ベッドの布団の上から彼を揺り動かう。


「えっ、誰だ?」

「バルソン様、リリアです。起きてください。リリアです」


「えっ、リリア?」


 バルソン様の声は、顔だけ暗闇の中で私の方を向いたみたいで、私はランタンをリュックに入れてあったから取り出す。私は立っていたので、電源を入れて光源を落とし、彼に向かって右手を下の方に伸ばしてランタンで灯した。


「トントン屋敷に行ったのではなかったのか」


 彼のこのような話しぶりでは、まだ頭がしっかり目覚めていないと思い、彼は寝たままで自分の両手を布団の中から出す。


 彼は自分の頭の中を活性化させるがごとく、自分の顔を叩いて気合いを入れているみたいで、まだこのランタンには意識が向いてないようだ。


「お休みのところ申し訳ありません」

「リリア様……」


 彼はやっと意識を取り戻したみたいでそう言って、上体を起こして枕の方へと体をずらす。私の顔を確認するかのごとく、ランタンの明かりの向こうにある彼の目は、私にはっきり気付いたようだ。


「……その明かりは」

 彼はそう言って、やっとこのランタンの存在に気付いたみたいだ。

 

「これは気にしないでください。私の不思議だと思ってください。ケルトンにも同じ物を渡してあります」


「……分かりました。手で持って熱くないですか」

「触ってみてください。熱くないです」


 私はそう言ってから、彼に確認してもらうために差しだすと、彼は右手を伸ばして受け取り、左手で持ちかえて眺めているようだ。


「この説明を聞いても私は理解できないでしょうね」

 と、彼がぼそりとそう言ったから、

「はい。申し訳ありません」

「向こうに椅子がありますから座ってください」


 彼がそう言ってくれたので、私は振り向いて椅子をベッドのそばに持ってきて座る。


「このような夜更けに何かあったのですか」


 彼はそう言いながらも、布団の上にランタンを置いて左手で押さえ、私に返す素振りではないので、私もそのままにしている。


「昨日はアートクの市場のフェスクラップにぶつかり、宿泊先を探していると泥棒を捕まえました。そこでラデン様と出会い部屋を紹介してもらいました。その時に彼が紫の編み紐に気付き、夕方私たちに手合わせの連中を向かわせて、それは何事も起こりませんでした。その後、私たちの前に現れて話していると、ケルトンがバルソン様とバミスを呼び捨てにしたから不審に思われたようで、それにバルソン様を含めて私のことを尊敬しているとケルトンが話したので、今夜はその状況を確認するために、ラデン様が早馬でここにいらっしゃると思います」


 私は一気に早口でそう説明をする。


「そのようなことになったのですか」

「それからもう一つ重要なことが、ケルトンがラデン様の右手にブレスがあることを見つけました」

「ラデンの右手にブレスですか」


 彼の言葉は小声でも驚いているような声の響きだ。


「それで、話しの成り行きで私の左手のブレスを見せました。バルソン様にブレスを渡したことはケルトンも知りません。彼は自分のブレスを外してくれる人が現れると話しました。これはバルソン様も知らないことだと説明しました。もしブレスの話になってもバルソン様は何も言わないでください。そのことも説明しようと思い、彼が来る前に急いでここに来ました。これも私の不思議だと思い気にしないでください」

 私は最後に不思議の言葉を使ってそう説明すると、

「分かりました。彼は独りですか」

「はい。私が大丈夫だと思わなければ一緒に連れてきています。これも私の不思議だと思ってください」


「……リリア様は不思議の塊ですね」


 彼がこのような言葉を使ったので、それ以外の言葉がないよな、とか思ってしまう。


「ありがとうございます、というのも変ですが、二人であの部屋からいなくなれば、それこそ大変です」


 私は時間のことも気にして急いで話し、それ意外の言葉は考えられない。


「……確かに」

「ラデン様は誠実な人柄のように思います。バミスと同じ立場で彼を守ってくれるのでしょうか」

「ラデンが緑の編み紐になればここに戻そうと考えていました。リリア様は私が考えていることを、どうして前もって気づいてしまうのですか」

「えっ、どういうことですか」

「シューマンのこともです。探し出しました。シューマンを友達として彼のそば置きましょう。バミスと三人でよろしくお願いします。バミスがいなくなることも考えて、ラデンも彼のそばに付けますから」

「えっ、バミスがいなくなるとはどういうことですか」と、私は早口で言ってしまう。


「リリア様が城から外に出ればバミスを付けますから、外で子供たちに剣を教えるように言いました」

「えっ、意味が分かりません」

「私も前もって先々まで考えました。リリア様が城から出てもバミスとは一緒にいられます。城に残るのも出るのもリリア様の自由です。私たちはそこまでは拘束しません。彼をここまで導いてくれたのですから、私たちは感謝の気持ちでいっぱいです。リリア様のことを私たちは考えました」

「えっ、バミスと一緒にいられるということですか」

「バミスと幸せに暮らしてください。私はこの城から出ません。私たちと同じにはならないようにしてください」


「……彼女からもそう言われましたけど……」と、私はシンシア様の言葉を思い出す。


「彼が確実に王になると、リリア様はどうなさるおつもりですか」

「えっ、別に何も考えていません」

「彼女もそれを心配しています。城の内情はリリア様には合わないと思います。東西の権力争いの問題だけではなく決まり事もたくさんあります。ほかの権力闘争も多々あります。その中にいてはリリア様の天真爛漫な気持ちが変わってしまうと思います。彼には彼女だけを守ってもらいます。若い彼が立場的に二人の女性を守ることは難しいです。私も二人の女性を守りきれない。バミスにリリア様を守るように話しました」

「そのようなことになるのですか」


 私はケルトンと同じ言葉を使っていたけど、その言葉の裏には説明ができない事情がたくさんありそうな気がする。


「内情を詳しく知れば外に出られなくなる可能性もあります。私の力が及ばなくては守れません」

「彼が王になれば、早めに城を出た方がいいと言っているのですね」

「はい。そのことはリリア様のためだと思います」

「彼女が側室の話しを彼に禁止しましたが、そのことを言っているのですね」

「はい。王様の言葉は誰にもくつがえすことはできません。私もリリア様を守ることはできません。決定する前に城から出られた方がいいと思います」

「彼女と同じことになるのですね。それを断ってただ単に消えてしまえば、私の周りの人たちに迷惑がかかるということですね」

「はい。前もってご理解ください」

「分かりました。シンシア様もそのようなことになってしまったのですね」


 私はつい言ってしまう。


「私たちのことはもう終わってしまったことですから、リリア様のことはこれからどうなるかは分かりません。今の彼はそのような気持ちがなくても男と女の問題は難しいです。今後はどうなるか分かりません。彼女もそれを心配しています」

「よく分かりました。この話しを前もって聞けてよかったです。私も自分のことをよく考えます。今まで彼のことしか考えてなかったようです」

「私たちもそのような気がしました」


『リリア、誰か来る』

『分かった』


 私は自分の口元を右手で押さえて左手で外を指差し、私はランタンを素早く奪い取ってスイッチを切り、一瞬私の方が早かった行為ではあったが、彼もその意味が理解できたようだ。


「旦那様、お客さまがいらっしゃいました。お部屋の方へお通ししました。旦那様、お客さまがいらっしゃいました。お部屋の方へお通ししました」


 入り口の前で男性の言葉が聞こえる。


「……分かった。すぐに行くと伝えてくれ」

「かしこまりました」

 彼がそう言って下がって行く気配がする。


「私が戻るまでお待ちください」

 バルソン様はさっきよりも小声でそう言うのだ。


「はい」

 私がそう言うと、彼は上着をはおって部屋を出ていく。


『ソーシャル、どうなってしまったの?』

『リリアが城に入ってからのことを二人で考えたのでしょう』

『そういうことになるわけね』

『それは私にも分かりません』


     ☆ ★ ☆


「ラデンか、こんな夜更けに何かあったのか」

「はい。バルソン様は紫の編み紐が付いた短い剣を作られましたか」


「……そうか、あの二人に出会ったのか」

「やはりほんとうなのですか」

「お前もリリア様の不思議に出会ったのか」

「えっ、はい。ケルトン様のお話しはほんとうなのですね」

「彼が何か言ったのか」

「バルソン様もバミス様もリリア様を尊敬していると言いました」

「深く考えるな。二人の話しには間違いはない」


「……分かりました。今夜はその意味を知りたくて早馬を飛ばしてきました」

「ラデン、よく聞けよ。今度の剣の勝ち抜き戦が終われば必ずお前を城に呼びもどす。もう少し我慢してくれるか。お前をなぜアートクの市場に行かせたのか理由も話せる日が来る。それまで待て」


「……はい……何か意味があるのですね。私は知りませんでした。申しわけありませんでした」

「二人に何か起こったのか」

「私が紫の編み紐を確認するために手の者を差し向けました。申し訳ありませんでした」

「分かった。手出しはしなかったのだろうな?」

「はい。私の手の者がリリア様の気迫に少々驚き手が出せなかったそうです」

「それほどすごかったのか」

「はい。ケルトン様はリリア様の言葉を聞いて変化したそうです」


「……よく分かった。あの二人に何かあったら助けてやってくれ。頼んだぞ」

「はい。承知しました」

「二人とも見えない剣客になられたのか。ところでラデンは剣をどちらの手で持つ?」

「えっ、こちらの右手で持ちますが」

「そうか。私も王様も剣は左手だ。右手でも使おうと思えば使えるけどな」


「……まさか……」

「お前が何を考えたかは知らないが、そのことは口に出すな。頼んだぞ」


「……はい。承知しました」

「今度は緑の網ひもに挑戦しろ。分かったな」


「……はい。ありがとうございます。私も確認ができてよかったです」

「お前はこのまま市場へ戻れ。今夜は話せてよかった。ご苦労だったな」

「はい。ありがとうございます。それでは失礼します」


     ☆ ★ ☆


「リリア様、お待たせしました。お二人は誰にも見えない剣客になられましたか」

「えっ、そういうことはないです。私たちは経験不足です」

「なるほど。私は彼のブレスを確認しました。先にお話しを聞いていてよかったです」

「私が思った通りに来ましたね。彼のことを考えると来ると思いました」

「これもリリア様の不思議ですか」

「私には分かりません。先ほどの側室の話しですが、私が彼に前もってその意味を教えてもよろしいですか。今の彼は私の言葉を信じます。バミスは何も話してないようですが、側室の位置づけを彼に話してもよろしいですか」


 私はそう尋ねてみたけど、私が話せばケルトンは理解してくれるかもしれない。


「これは彼女に相談してみないと……申し訳ないですが私には判断できません」

「彼女はこの前彼に話しましたが深くは話していません。彼女の考えはあそこまでだと思います。バルソン様はどうお考えですか」

「これはリリア様のことですから、私はリリア様がご自分で考えてもいいと思います。私たちにはどうすることもできません」

「分かりました。バミスのことは隠しますが自分で考えて彼に話します」


「……分かりました。彼女に伝えましょう」

「これは今までの中でいちばんの難問です。もし彼が理解した場合でも私は城から出た方がいいのですね。私は必ず城から出ますからご心配なく」

「分かりました。出られなくなる前に出た方が賢明だと思います」


「……分かりました。最近の彼の言動は男になったと思います」

「自分のことを考えてもそのような年齢になったと考えられます」


 バルソン様がそう言ったから、微妙な年齢的なことを考えてくれたのだろうか。


「今度はバミスに冗談でもいいですから、女性のことを話させてください。今まで話したことはないような気がします。私もそのことをバミスに話してもよろしいですか」

「バミスには口止めしていました。リリア様には大変お手数をおかけします」

「シューマンの方が女性には詳しそうですね。彼の友だちができてよかったです」


「……そうですね。自分のことを考えると友だちとの会話は必要です。お互いに剣の励みにもなります。リリア様とは立場が違いますので、私も早く気づけばよかったです」


「……私はいつも彼の前を歩いていました。これからは後ろを歩こうと気づきました」

「彼の後ろですか。彼が王になれば私たちも後ろを歩かなくてはいけません。そのようなことまで教えていただき、今後ともよろしくお願いします」

「私はあの市場でそのことに気づきました。自分で何でも進んで考えてもらおうと思いました。今日は彼の後ろをずっと歩いて好きに行動させました。彼も色んなことを考えられたと思います」


「……分かりました。よろしくお願いします。今度は朝までご一緒したいですね」

「えっ……はい、よく考えておきます。それでは戻ります」


 一瞬私は言葉に詰まり、自分の咄嗟に出た言葉にも驚く。


 彼がこの部屋に戻ってきてからテーブルを挟んで椅子に座り、ランタンはテーブルの上に置いて小声で話していたけど、彼はどうしてそのような言葉を使ったのだろうか。

 彼はそれを望んでいるのだろうか。

 私もそれを望んでいるのだろうか。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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