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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第二章 『出会いから、五年ほど過ぎて……』
47/165

47=〈二人で……魔法の手〉

少し長文です。

     ☆ ★ ☆ (20)


 この時代は男女ともに髪を伸ばして後ろで一つに結んでいた。中にはその髪を上に上げて垂らさないようにしている人もいた。長めで結んでいる人や短めで結んでいる人もいた。


 ゴードン様に聞くと、子供は男女問わず、十五歳前後で髪を伸ばして後ろに結ばなくてはいけないそうで、その髪型を見て大人の仲間入りをしたことを判断するらしく、子供が産まれると女性は髪を上にあげ、その髪の上がり具合で女性のことを判断すると言われた。


 私の時代の言葉でいうと『成人式』みたいなことだと思い、見た目よりも一目瞭然の判断基準であり、そう思い女性のことを市場で観察していると、見た目はまだ子供みたいな女の子でも髪が上がっていたりして、その家族の色んな事情があるのだと思ってしまった。


 私が最初にケルトンと出会ったときは髪が短く刈れ、それから長く伸びれば同じように切ってあげ、今ではケルトンも髪を伸ばして後ろで縛る歳になったのだ。


 私はケルトンには固形石けんを『ミーバ』から取りだして使わせているが、それで体を上から下まで洗わせているけど、もちろん私も使っていて、これは内緒にしなくてはいけないことなのだ。


 私の時代の言葉でいうと『湯船』の存在はない。

 熱いお湯と水を別口に用意して混ぜて体にかける。

 お湯を沸かして用意するのはホーリーの仕事であった。

 私にとってはこれがちょっと面倒であった。

 私は髪を洗うことと、体を洗うことは別々にしていた。


 ゴードン様はあちこちと放浪していた間に、私の時代の言葉でいうと『温泉』である隠し湯の場所を発見したそうで、三人で夜中にソードに乗ってこっそりと利用し、ケルトンと二人でも行ったことが何度もあった。


     ☆ ★ ☆


 ケルトンは私たちには買ってくれたけど自分の物は買おうとしない。だから明日も見学するから今度は自分の欲しい物だけ探しなさいと伝えたけど、これだけ色んな物を見たから、彼も何かしら考えていると思う。


 今日は朝早くから馬に乗りこの市場の外辺部と市場の内部をあちこちと動き回り、私は疲れたので早めに宿に戻ることにして、場所だけはしっかとソーシャルに確認してもらっていた。


 ソーシャルの存在はこのようなときにはとても便利だと思い、迷子にならずに早めに宿に戻れたので、ここには『湯桶(ゆおけ)』と呼ばれるお風呂場があるそうで、ケルトンを先に行かせた。


     ☆ ★ ☆


『ソーシャル、ケルトンにお風呂に行かせたから、トントンによろしく伝えておいてね』

『分かりました』

『今日は歩き回ったから疲れたよ。でもケルトンが独りで買い物ができてよかった。考えると……そういうことは少ししかやらせたことがなかったのよね。明日もここに泊まって市場の中を見学させようと思うのよ。今回はいい体験だと思った。たくさん人がいるし向こうとは違うと思って、私も安心して動き回れたのよね』

『そのようでしたね。西の森に出かける前に経験してよかったと思います』

『市場いる人間をよく観察したみたいね。いいことだと思った。私が教えることはもうなさそうね。これからは自分で何でも考えて行動しなくてはね』


『……そのようですね。リリアも自分のことをよく考えてください』

『了解です。今度の剣の勝ち抜き戦で入れればいいけど、今度からバミスに本格的に勝ち抜く方法を教えてもらいたいな。西の森に出かけて何も起こらないことを期待するけど、何かあって乗り越えられたら私たちは逞しいなるよね』

『バミスがいるから何かあっても大丈夫ですよ』

『そうね。バミスの赤の編み紐のことをよく考えたけど、バミスはバルソン様に信頼されているのね。そう思うとラデンもケルトンの仲間になるのかしら?』

『それはバルソン様が考えることです。リリアはそれに従った方がいいと思います』


 ソーシャルがそう言ったことは、自分でも理解しているつもりだけど、色別の編み紐の制度をもっと詳しく知りたいと思う。


『私の閃きをバルソン様に話そうと思う。でも、先にラデンがバルソン様に連絡するかもね。ソーシャルはどちらが外れると思う?』

『分かりません』

『私はバルソン様には悪いけど、ラデンにブレスを渡した方がいいと思ったのよ。バルソン様はやることがたくさんあり、この城の仕事に束縛されて忙しすぎて自由に動けないようだと思うよ。ラデンはバミスみたいに動けると思うからね。そうするとケルトンのそばにいつもいられるのよ。彼のことは詳しくは分からないけどね』

『そのようですね。まだ時間があります。もう少し様子を見てからブレスの話しはした方がいいと思います』

『向こうに戻ったら西の森に出かける前に話してみる。もし、ブレスを渡せたとしてもソードの存在はしばらく隠した方がいいと思う。それはソーシャルに任せたからね。トントンと話し合ってね』

『やってみないと分かりませんが、そのことは私が管理しますから大丈夫です』

『今までソード同士のつながりを詳しく聞いたことがなかったけど、ソーシャルとトントンは同じなの?』


 私は思いきってそう聞いてみる。


『……違います。トントンが私の管理下にあることだけは覚えておいてください。私がブレスを飛ばしたのです。バルソン様の配下にバミスがいるように、私の配下にトントンがいると考えるといいかと思います。今ではソードの世界も『裏事情』ができました』


『……なるほどね。そう言ってもらって安心した』

『人間は自分のことをいちばんに考えて行動をすると思っていました。今までのリリアの行動を見ているとケルトンのことばかりを考えています。自分のこともよく考えてください。このようなことまでご主人様にお話しするとは……これは私の不思議ですね』


 ソーシャルにそう言われたけど、守るべき存在があったからこそ自分のことが考えられたかもしれない。ケルトンと出会わなかったら生きていけなかったかもしれない、とそう思ってしまう。


『……自分のことは考えているよ』

『少ししか考えてないような気がします』


『……そうね。ケルトンのことばかりを考えているわね』

『ケルトンが城に入った後のことは考えていますか』


 ソーシャルにそう指摘されたけど、成るようにしか成らないよな。城の中のことが分からないしな。今考えられることは二人で城の中に入ることだけである。


『あまり考えてない。私は城の中の状況が考えられないからよ。後はシンシア様とバルソン様が考えればいいと思っているからね。私はケルトンを城の中に戻すことしか考えてない。シンシア様が私の立場は王子様を救った英雄になると言ったけどね』

『ここはリリアのいた時代とは違います。剣客は権力の象徴です。まして王子様を救った英雄にでもなれば、大いにそのことを利用しなくてはいけないと思います。私がご主人様に話すことではないです』


 ソーシャルは自分から話すことではない、ときっぱりそう言われたけど、誰も知らないソーシャルを利用することは、今までもしてきたことだし、自分自身で許容範囲に入っているけど、彼を助けた現状を利用して、城の中で作り出される自分の立場は嘘っぽくて許せないよね。


『私に何をしろと言いたいの?』

『自分で考えてください』

『私はケルトンを城に戻すことしか考えられないけどね』

『戻した後のことを考えてください』

『それは彼が城に入らないと分からないことでしょう?』


「リリア、戻ってきました。今度はリリアが行ってください」

「分かった。退屈しないようにトントンと話してね」

「はい。リリアもソーシャルと話していたのですか」

「そうよ。市場の話しをしていたのよ。楽しかったね」

「はい。初めて買い物もできて嬉しかったです」

「明日も行こうね。あさってトントン屋敷に行けばいいからね」

「はい」

「じゃ、行ってくるね」

「はい」


     ☆ ★ ☆


 私はソーシャルの言葉を考えていた。私の得られるかもしれない権力を利用する。今まで考えてもなかったことだ。それを利用して何をすればいいのだろうか。


 私の力でバミスの位置づけを向上させた方がいい、とそう言っているのだろうか。バミスはそのようなことは望まないと思うけど、私は誰に相談すればいいの?


 彼女が自分のそばに私を付かせる理由をもっと詳しく聞いてみようか。バミスより私の方が上の位置づけになれば、私たちはどうなるのだろうか。


 権力を利用するなんて今の私には考えられないし、今度の剣の勝ち抜き戦までにゆっくり考えよう思い、城に入ってからでも遅くはないと思った。


 私は久々に湯船に入ったような気がした。

 この前はいつ頃温泉に行ったのだろうか。

 今日は四月の十日だ。

 この時代にいると日付の存在が消えている。

 私の中では時計の存在も消えている。

 四月一日からの日記めいたことでも書こうかな。

 今までそんなことは考えたこともなかった。

 今回の剣の勝ち抜き戦から日付を戻してみようかな。


     ☆ ★ ☆


「ケルトン、戻ったよ」

「リリア、さっき食事をいつ持ってくるか聞かれました」

「分かった。今から知らせてくるから待ってね」

「はい。お腹が空きました」


 食事が運ばれてきたけど、この前バミスと食べた食事よりは何とも言いがたく見劣りがしたので、バルソン様はほんとうに奮発してくれたのだと思い、デザートとして今夜は『ミーバ』にパイナップルの缶詰をお願いした。


 何度か彼にも食べさせたことがあった。甘くておいしかった。冷やせばもっと引き締まっておいしいと思ったけどね、冷たい水が流れていた洞窟の小川が懐かしい。

 

 今までバミスと三人だったから何も考えることはなかったけど、今夜はケルトンと二人である。


「食べてすぐ寝るのは体によくないというけど、今日は何だか疲れた。歩きすぎたのかもね。お腹も一杯になったしもう寝ようか」

「リリア、奥に布団が一つしかないですけどなぜですか」

「えっ、さっきはソーシャルと話していたから気づかなかったけど、食事が終わったことを伝えてもう一組用意してもらうように話すからね」


 立ちあがりながらそう言って隣の部屋を見ると、ほんとうに大きめの布団が一組みしかない。


『ソーシャル、参ったわね。さっきは気づかなかったのよ』

『そうですね。私も布団のことは考えませんでした』

『トントンには何も話さないようにお願いね』

『分かりました』


 最初に私の弟だと説明したのに、ラデンは何も説明しなかったのだろうか。それとも食事が終われば持ってくるのだろうか。


 まぁ、お風呂にも入れて食事もできて、泊まる場所がないよりはましだけど、最後の手段にはこの場所も考えていた私ではあったけど、最後の最にうっかりしたのだ。


「失礼します。お食事は終わりましたか」と、外から声がする。


「えっ、はい。終わりました」

 私はそう返事をしたけど、何とタイミングのいい声かけだろうか。


「ここを片付けたら後で、こちらの部屋にお布団をご用意します」

「ありがとうございます。ちょうどよかったです。私たちは明日もここに泊まりたいと思いますが、よろしいですか」

「分かりました。そのようにご用意させていただきます」

「明日の食事は朝だけで、夜は外で食べよと思います。そのようなこともできますか」

「はい。かしこまりました。そのように伝えておきます」

「ありがとうございます」


 お布団の件も何事もなく済んだけど、奥の布団は大きいのでケルトンに使ってもらうことにして、私はここで寝ることにする。私としては靴を脱いで座ることが出来ただけでも、何だかホッとする空間であった。


     ☆ ★ ☆


「リリア、起きていますか。リリアのことが気になって眠れない」


『ソーシャル、どうすればいいの?』

『この前みたいに自分で考えください』


「指輪を握りしめても気持ちが収まらない。リリアのそばで一緒に眠りたい」


『ソーシャル、どうすればいいの?』

『ケルトンの心を落ち着かせるなら無視するか一緒に眠ることです』

『彼も男なのよ』

『リリアに話しかけるのでまだ子供です。大人はそのようなことは言わないと思います』


『……なるほど。少し話しを聞いてみる。これは切ってもいいの?』

『分かりました』

『布団を横に持ってこさせるね』


「リリア、起きていますか」

「えっ、どうかしたの?」

「眠れないから一緒にそばで寝たいです」

「布団ごとこっちに持って来なさい」

「ありがとうございます」


     ☆ ★ ☆


「ここにいても眠れそうにないから向こうに行きます。リリアも眠れないのですか」

「そういうことでしょう。ソードは切ってね」

「切りました」


 彼はそう言ったけど、こっちに来る前に切ったのだろうか。


『リリア、トントンと話せません』

『分かった。私も切る』


「そっちの布団でこの前みたいに話しをしてあげるからね」 

「はい」


     ☆ ★ ☆


『ソーシャル、私の魔法の手で気絶してしまったので、私も寝るから後はよろしくね』


『……分かりました』


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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