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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第二章 『出会いから、五年ほど過ぎて……』
40/165

40=〈バミスとの会話〉

前回の続きです。

     ☆ ★ ☆ (12)


「私はバミスに大事な話しがあります。いつも二人でゆっくり話せないからね。バミスが私の話しをしなくなったから、彼は自分のことで喧嘩でもしたのかと心配したそうよ。でも何かしら感じているのかもしれないわね。彼の心の中までは見えない。今まで私よりもバミスの近くにいたでしょう。彼にもその変化が分かったみたいな気がしたのよね。気をつけてね」

「分かりました」


 彼は一言しか言わなかったけど、ケルトンは私の言葉遣いや態度でも気付いたかもしれないのに、バミスだけの責任ではないのに、その言葉しか使わなかったのは、彼の優しさだと思ってしまう。


「大きくなったからほかの話しをするように、シンシア様やバルソン様に言われたと思うとごまかしたけど、彼も色んなことが考えられるようになったち。自分のことを考えると微妙なお歳ごろのことが分かるでしょう? 私は男ではないから分からないのよ。私は母親の存在ではないと思うけど、半分はそういう感じだと思っていたからね」

「分かりました。今までこんなことは話したことがありませんでしたね」

「だって、彼がいつも私のそばかバミスのそばにいるから話せないでしょう」

「そうですね。最初にそのことを話し合えばよかったのですね」


 彼がそう言ったけど、まさかこういう状況になるなんて考えてもなくて、これから先のことを考えるとまた何か起こりそうな気もするけど、未来はどうなるか分からない。その場その場で考えていくしかないだろうな。


「最初は子供だけどもう一人前の男だと思います。私が彼女よりもバルソン様の指示に従いたいと話すと、彼もそう考えていたと言ったのよ。彼も色んなことが考えられるようになったのね。バルソン様の指示に従うことはバミスはどう思うの?」 

「俺はバルソン様を尊敬しているから、バルソン様の指示に今まで通りに従います」

「分かりました。バルソン様は彼女の意見も取り入れて考えてくれると思います」

「俺もそう思います。真面目な話しですが、俺は前からリリアを尊敬しています。最初は二人でたまにしか話さなかったけど、トントン屋敷ではリリアのことをしっかりしていてたくましい女性だと思っていました。ケルトンの話しを聞いてもそう感じていましたよ」


 今まで聞いたことのないような話しを急にしたから驚く。


「たくましいとは聞いてないけど、彼から尊敬の言葉はずいぶん前に聞きました」

「そう思っていた気持ちがいつしか変わり、ずっと自分の気持ちが話せなくて、俺の態度に出てしまったのですね。自分でも気づきませんでした。俺は単純ですから申しわけありません。この場で謝らせてください」

「謝ることではないと思うけど、私は今まで彼のことしか考えてなかったからね。私の気持ちに気づかせてくれたバミスにはとても感謝しているのよ。ありがとうございました」


 私はあの時のことを思い出してそう言ったけど、私が馬屋に行きあの話しをしなければ、彼の気持ちを聞くこともなかったし、私の言葉で彼の心が切羽詰まっていたようで、でも……自分の気持ちに気付かせてくれた彼には感謝している。


「こちらこそ。俺は一つ質問してもいいですか」


「……はい」

「俺はリリアのことを誰にも話してないのに、なぜ……バルソン様は気づいたのでしょうか」


「……私は何も話してないわよ。バルソン様に会う機会がないでしょう」


 ここで聞かれるとは考えてもなくてそう言ってしまったけど、シンシア様とバルソン様のことを考え私から話したことなので、二人のことは死んでも隠さなくては、また……隠し事ができてしまって辛いよね。


「……この前ゴードン様と三人で話しましたよね」


「……それでは、バミスとバルソン様とゴードン様が一緒に会って話しをすると、バミスはそのことをその場で言えるの?」

 自分の言葉を覆い隠すように、そう強調して言ってしまう。


「……考えるとそうですね。それは言えませんね」

「同じことじゃないの、私だって言えないわよ」


 私はやんわりとそう言ってしまったけど、この言い方が彼にとってはきつい言い方なのだと思い、自分でもそのことはよく理解しているけど、今回のことはそれ以外に言葉がない。


「リリアと話していると俺はいつも負けていますね」


「……私の言い方がきついのよね。はっきり物事を話すからいけないのよね。それは……自分でもよく分かっているから……」


 私はそう言ってから、自分の視線を下に落としてしまう。


「俺は今のリリアが好きですから……そのままでいいですよ」


 彼の声の響きはとても優しく聞こ、『話せなくてごめんなさい』と心の言葉で自分にそう言ってしまう。


「……ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」

 私は顔を上げて清らかな彼の瞳の中を見つめてそう言う。


「……こちらこそ。俺はバルソン様に内緒にしているのが心苦しかったからよかったですよ」

「私も同じよ。シンシア様にも話してくれると思うわね。驚くでしょうね」


 私はそう言ったけど、この複雑な関係を話せないから申し訳なくて、自分の心にふたをしてそう言ってしまう。


「そうですね。俺の話し方や態度で気づいたのでしょうね。俺も気をつけます」

 彼がそう言ったから、あくまでも自分の落ち度だと言っている彼の言葉を聞くのが辛い。


「さすがバルソン様ですね。このことはケルトンには内緒でお願いします」

 こういうことは他人様に言うべき内容ではないと分かっているとは思うけど、ついそう言ってしまう。


「はい。俺も話さない方がいいと思います」

 彼は自分の意見を言うこともなく、そう返事をしてくれたようだ。

 

「失礼します。お食事をお持ちしました」


 二人の女性がトレーと呼ぶべきかお盆のような物を両手で持ち、陶器みたいな小皿の中の食材が配色豊に飾られて、私が見たこともない料理を私たちの眼の前に一膳ずつ並べてくれる。


 私たちはバルソン様がいなくなっても隣通しに座っていた。


「ありがとうございます」


 私は彼女たちが配膳してくれたのでお礼を言ったけど、彼の顔を横からちらっと見ると、目の前の料理を食い入るように見つめていた。


「……すごいですね。俺よりもリリアに対する感謝の気持ちですよ」

 彼女たちがいなくなり彼がそう言ったから、

「私たちが彼をここまで導いた感謝の気持ちなのね。剣が強くないと人は集まらないと聞いたから、そう思うと……私よりバミスのお陰だと思います」

 私は目の前にある華やかな料理を見つめながらそう言うと、

「そんなことをリリアに言われると俺は照れますよ。今度は俺と真剣に手合わせお願いします。俺は負けませんからね。リリアも真剣にお願いします」


 彼は私が料理を見ておいしそうだと夢心地の世界に浸っているのに、一転するかような現実過ぎる言葉を使ったので、ムードないよなーとか思ってしまう。


「分かりました。いつかはやらなくてはいけないことね。ケルトンともやるわね」

 私は頭の中を切り替えて彼の瞳の中を見つめてそう言うと、

「はい。俺もケルトンと真剣に戦ってみます。俺は二人には負けそうですね」

 そう言って彼が謙遜じみた言葉を使ったから、

「私たちがバミスに勝つわけがないでしょう。負けることは当然だと思うけど、毎回その中から何かをつかみ取れれば最高ね。今回の勝ち抜き戦みたいに……お互いに成長していきたいからね」


 私は偉そうな言葉を使ってしまう。


「今度からはケルトンとは真剣に戦うことにします」

「えっ、今まで真剣ではなかったの?」

「そういうわけではないですが、教える立場でしたから意味合いが違います」


「……私も真剣に戦ったことがないからどうなるのかしら?」

「俺が思うにはケルトンよりもリリアの方が強いと思いますよ」

「えっ、そうなの?」

「はい。基本がケルトンよりもできていると思います」

「えっ、そうなの?」

「はい。全体的に見ているとそのような感じがします」


 彼は私のことを思いそう言ってくれるのだろうか。私がバミスやケルトンに勝つことはないけど、でも、彼から上辺だけでもそういう言葉を使ってもらえると、少し脳天気な私はとても嬉しい。


「バミスはなぜそのことが分かるの?」

「えっ、俺は今まで剣の道を励んできたからです。自分の体験上で感じたことです」

「なるほど、バミスもバルソン様みたいに剣客なのね。おいしそうだから暖かいうちに食べましょう」

「はい。その前に」


 バミスは私の方に体ごと向けてそういいながら、彼は自分の右手を私の首筋に回すと同時に、彼の視線が私の瞳の中を覗き込み、今度はその視線が私の唇に動き、彼の唇がそっと私の唇をふさいだので目を閉じてしまう。


 私たちは食事中も色んな話しをしていたが、バミスのことは大好きだけど、私たちがこの先どうなるか分からないので、私はどうしてもソードと『ミーバ』の話しはできなかった。


 このソードに乗れることは私たち五人の秘密なのだ。『ミーバ』の存在はシンシア様と三人での秘密である。ソーシャルとトントンの存在はゴードン様と三人の秘密である。


 バルソン様の左手にブレスを譲り渡したことは、私たち二人だけの秘密であり、右手にブレスをつけた人間は必ずケルトンの近くに現れそうな気がする。


 私の仕事は彼をシンシア様に帰すことだけを考えればいい。後はシンシア様とバルソン様が考えてくれればいい。マーリストン様の意志もその内に出てくると思う。


 私がこの時代から消えてしまえばバミスがいちばん哀しむと思うけど、このソードは南の城の伝説として語り継がれて行くのだろうか。ソーシャルが過去にさかのぼってこの伝説を作ったのだろうか。


 彼と話しながらも私の頭の中ではこういう思考が氾濫していたが、そのことがとても心苦しかったけど、今夜の私はとても素直な気持ちになったようで、彼の逞しい腕の中に抱かれ二人で朝を迎えることになった。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


次回の11月2日の金曜日からは、朝、6時の予約投稿になります。

因みに、12月3日の月曜日からは、7時からの予約投稿にしてあります。

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