表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『色んな人との出会い』
32/165

32=〈一気に駆け抜けた過去〉 (1)

 ☆ ★ ☆ (前編) (十一歳頃)


 ケルトンがシンシア様と会ってから四ヶ月が過ぎたころに、私たちはバミスが探しだした新しい屋敷に移動した。私たちはここを『トントン屋敷』と呼ぶことにした。


 トントン屋敷はゴードンの屋敷から、朝一番に馬で出発すれば夕方遅くに到着する距離感覚で、その途中には商店や飲食店が立ち並ぶ、アートクの市場と呼ばれる大きな繁華のような場所があった。


 ここはコントールの里と呼ばれて東西に広がり、トントン屋敷は北側の外れだがこの里の中心には近かくて、北側と言えば、向き的には南の城に近い方角であり、ここは山と山の間にできた盆地のような位置づけで、屋敷の北側には高い山があり、城に行くには西の方から迂回しなくてはいけない。


 里の東側に幅が四、五メートルほどの河が流れ、水流が少し早くて水も豊富できれいで、東西を貫くように人工的な川が作られ、里の南北にも二メートルほどの水路が一本ずつ引かれ、そこからまた枝分かれをして里の中をその水が巡り、この屋敷から五分ほど南側に離れた場所にその水が流れ、この屋敷には井戸があるけど井戸のない家もあり、井戸はブルーネンと呼ばれている公共の場に掘られている。


 この屋敷は正門と周りの塀は高くてしっかりと造られていて、一メートルほどの石垣の上には、一メートルほどの竹が塀の役目をして屋敷を取り囲み、正門を入ると部屋がすべて丸見えで、屋敷の造りはこじんまりすっきりしていたが、バミスがバルソンやシンシア様と相談してこの場所に決めたと思う。


 高い塀で囲まれたこの屋敷は、コの字を描くように対面に三部屋ずつあり、コの字の開いている部分に門があるとすれば、門とは反対側の壁に沿って奥行きのある馬屋があり、馬屋の左側には裏門があり、裏門に近い場所が台所と食事をする部屋である。


 ここの使用人は『カリーン』という名前の女性であり、バミスが見つけてくれて住み込みだ。彼女は体型的に女性にしてはがっちりとしていてたく剣も使えるそうで、彼女は私の身長よりは十センチほど低いので、百五十五センチほどだと思う。年齢は二十四歳だ、とバミスが私に教えてくれた。


 彼女はここの人たちとは違い、瞳は薄茶色だがその周りは薄い緑色をして、最初は少し異風な気がしたが、話してみると陽気で明るくて、彼女の過去は知らないけど、バミスが探しだしたから間違いないとは思うけど、でも、たまにぼーっしているような、何かを考えているような、少し陰りがあるような気がする。


 カリーンは台所の隣に自分の部屋があり、裏門と反対の並びは門に近い方がバミスの部屋で、ケルトンが真ん中を使い、その隣が私の部屋になる。ゴードンの屋敷は十部屋あるがここは六部屋しかなく、中庭はあったが裏庭はなくて、ゴードンの屋敷の半分ほどの広さで、食事をするも部屋あるが、もう一部屋は誰も来ることのない客間として利用することにした。


 彼らは雨が降らない日はほとんど毎日馬で外出して、たまに三人でも出かけていたけど、カリーンがこの屋敷にいることも含めて、私たちの人間関係が噂話にならないように注意をしていたが、近所の人々の目線が私たちに向くこともなく、この屋敷は位置的にも目立たないたたずまいだと思う。


 ゴードンの屋敷には馬屋の隅に高い樹があり、私の部屋の明かり取りの窓から外に出やすかったけど、この屋敷には背の高い木がなくてすべて低木だが、その代わりに、馬屋の裏手である塀の向こうは、森のような雰囲気の木々が生い茂り、調べてみたけど、この近辺にはリズと話せるような大きな樹がなかった。



 ☆ ★ ☆ (中編) (十五歳頃)


 ここに来て四年目を過ぎたころから、バミスの態度が少し変わったような気がしていたので、今日はそのことを尋ねてみようと朝からずっと思っていた。


 ケルトンが部屋に入ると、彼はたまに馬屋の奥の方で棒を振っていたので、今夜は思い切って彼に尋ねようと馬屋を覗きにいく。


 私が入口からそっと入ると彼は入口を背にして棒を振っているが、しばらく私に気づかずに、その動きが止まるまで待っているけど、彼は何を考えているのだろうか。


「バミス、私は聞きたいことがあります」

 彼の動きが止まったので、私は近づきながら声をかける。


「えっ?」


 彼がそう言って振り向いたその顔は、驚いたというよりも茫然としていて、私がここで彼に話しかけるのは初めてのことである。


「最近私のことを避けているような気がするけど、バルソン様に何か言われたの?」

 私が彼に近づいてそう言うと、

「えっ、そのようなことはないです。バルソン様には関係のないことです」

 彼はすぐ反応したかのようにそう言ったから、

「私に何か言いたいことがあれば……直接私に言ってね。そうしないと意味が分からないのよ。何か不愉快な態度や気に障る言葉を言ったかしら?

 私はとてもそのことが気になるのよ」

「えっ、そのようなことはありません。俺の気持ちの問題です」

 彼は自分気持ちだとそう言ったので、命令とかされていないような気がする。


「……私はよく考えたけど理由が分からないの。どうして?」

 私は思いきってそう尋ねてみる。


 すると彼は、私のそばに歩み寄り『俺がリリアを守る』と突然私を抱きしめるのと同時にその言葉を使う。


 一瞬我を忘れて何も考えられなくなり、私はそのままの状態で、出し抜けにとられた彼の言動は、私の頭を一瞬空白にさせる。


「……ありがとう」


「……もう少しこのままで」

 バミスはさっきよりも力強く抱きしめ、私の耳元でその言葉が聞こえる。


 私は無意識の中で『はい』と返事をしたみたいで、気づくと、私は彼の腰に両腕をからませている。私はどうなってしまったのだろうか。


 彼の力強い腕の中で、彼の息遣いと早まる鼓動を感じている。彼も私の高鳴る鼓動を感じたに違いない。彼はずっと私を抱きしめている。どれくらい時間が経ったのだろうか。


「急に頭が変になって自分の気持ちを抑えきれなかった」


 彼は少し気持ちが落ち着いたのか抱きしめる力を弱める。


「……私が早く気づけばよかった。バミスをずっと苦しめていたのね」


「……そのようなことはありません。申しわけありません」

 彼は私から一気に離れてからそう言う。


「……私は自分の気持ちに気づきました。本心に気づかせてくれて、ほんとうにありがとうございました」


「……俺はずっとリリアのそばにいたいと思って……こんな大事なときに何てことをしたんだ」

 彼がそう言ったから、彼の気持ちを考えると一瞬次の言葉が出ない。


 不意打ちを食らった彼の行動ではあるが、この四年近い間に彼のことがとても気になっていたことは確かだ。彼の性格は真面目すぎて律儀である。


 二人でいるときはどうだか分からないけど、呼び名はケルトンとは言っているが、彼に対して王子様だとして自覚して話しているようだし、と思っていたので、それと同時に私が彼を助けた意識が強いだけに、相変わらず最初のころのように、私には敬語のような言葉で話してかけていた。


 私がケルトンのことばかりを考えていたから、自分の正直な気持ちにブロックをかけていたようで、そのことが彼の言動で、私の体の中から一気に目覚めてしまったようだ。


「……少し歩きましょうか……何か考えられるかもしれません」


 私からそう言って二人で入り口の方に歩きだす。ここにいるより歩いた方が何か考えられそうな気がして、じっとしていられない衝動に駆られて、私はどうしていいのか分からない。

 

「申しわけありませんでした」 と、彼は後ろからそう謝ってくるのだ。


 私は彼の前をゆっくり歩いていて裏門から外に出る。裏門を出るまでソーシャルのことをすっかり忘れていたので、それからソードを切った。


 彼はずっと私に思いを募らせていたの?

 その気持ちで私を避けるようになったの?

 彼もどうしていいのか分からなかったの? 


 私もバミスを異性として感じていたの?

 私は自分の気持ちを今まで押し殺していたの?

 私は彼に抱かれたいと思っているのだろうか。


 私は自分の正直な気持ちを考えると、頭の中が鳴門の渦巻きのようにくるくると回って混乱しているが、その時ふとバルソン様のことが頭を横切り、二人の気持ちが痛いほどに分かった。


 私はケルトンのことばかりを考えていたけど、バミスのことが好きだったのだ、と今はっきり気づき、私は唐突に後ろを振り向きバミスの顔を一瞬見上げてから、自分の方から彼に抱きついていた。



 ☆ ★ ☆ (後編) (十六歳頃)


 シンシア様とケルトンの出会いから早くも五年の歳月が経った。私はその間に自分で確認したり人の話しを聞いたりして、南の城の情報も手に入れたつもりだけど、そのことが正しいかどうかは分からない。


 ゴードン様は冬場の赤い実の時期には、城の近くの屋敷で生活をしているから、私たちも孫としてお世話になり、暖かい時期は山の家で、大小様々なかごや小物作りに精を出しているそうで、私たちは暖かくなればトントン屋敷に移動して、ゴードン様とは別々に生活をしている。


 私たちは年間を通して三ヶ所の家を行ったり来たりして、ゴードン様の屋敷に行くときは馬で移動し、バミスがいなければ山の家へは途中までは馬で行き、チャイールの里で馬を預けてソードで移動をしたが、トントン屋敷から馬で出かけなくては、カリーンの手前があるので気を使う。


 ゴードン様の山の家には、この時代に存在しない物は発見できなかったけど、屋敷の彼の部屋には入ったことがないし、仕事部屋でも何も見つけられない。そことはどうでもよくなり、ゴードンの人脈という力強い仲間を知ることができ、彼の存在は私が考えていた以上にケルトンに力を与えてくれるようだ。


 ケルトンは出会った頃に比べると顔つきも男らしくなり、 私は百六十三センチだけど私よりも背が高くなって、 十六歳でバミスと同じくらいの背の高さになり、今では百七十センチほどである。向こうの知識では、まだ二、三年は伸びると思い、生活環境がよかったのかもしれない。バミスが馬で色んな場所に連れだしているようで、彼に任せていればいいと思った。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ