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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『色んな人との出会い』
31/165

31=〈シンシア様とマーリストン様のスキンシップ〉



     ☆ ★ ☆ (53)


 私たちはシンシア様の部屋へ訪れる前にカーラの樹に寄り道をして、私はケルトンには何も言わせずに、彼女にルーシーが来たのかと尋ねると、彼女は久々にやって来たと言い、ルーシーは私と出会ったことをとても喜んでいたそうで、私のことをルーシーに少し説明したと言ったので、お互いに信頼関係を築くことが大事だと思い、これで彼女は私の存在を信じてくれたと思う。


 私がシンシア様の部屋に入るときには、明かり取りの窓がありそこをナイフで外からこじ開けて入ると彼に説明していたので、二人でソードのままで入るのは無理だと考え、カーラの樹までは二人で乗っていたが、それから別々に乗ることにした。


     ☆ ★ ☆


 ソーシャルに人の気配を確認してもらい、上空から素早く真下に降りてこじ開けて、ケルトンを先に入れて天井すれすれで待たせてから私も中に入り、静かに下に降りてソードを消し、私は入り口の引き戸をそっと開ける。


 引き戸のずれる音が聞こえたのであろうか、部屋の中から『コトッ』と小さな音が聞こえて、彼を衝立の向こうに先に行かせようと思い、一瞬止まっていた彼の背中を押す。


 私が見ると、今夜の彼女は今まで椅子に座っていたのだろうか。私たちが来ることを待ち望んでいたかのように、蚊屋のそばにあるテーブルの椅子の横に立っている。


「マーリストン」

 シンシア様は小さな声でいいながら、彼のそばに走り寄り一瞬のうちに彼を自分の腕の中に抱きしめる。


 しばらくの間、二人は無言のままで抱き合っていた。


 私が説明をしたことが瞬時に起こってしまい、私は後ろを振り向き見ないようにと心に決めていたが、その感動の場面に見入ってしまい、その場を動けずに後ろを振り向けなかった、というよりも、私の前頭葉がよく見て記憶として残せ、と私の心に訴えたようで、親は子供がいちばん大事だ、と私の頭の中にその声が響くのだ。


 彼女の顔は私の方に向いていたが、光源が向こうで暗くてよく見えなくて、涙を流していたかもしれない。最初は動きのなかった彼女の両手は彼の背中をさすり、次に頭をなでてと動き出し、彼の存在を確認しているようだった。


 二人の周りには必ず家臣が控えている。

 こういう行為は今までなかったような気もする。

 私には城の中の状況が分からない。

 自分の子供とのスキンシップは必要だ。

 今夜はお互いに取り乱してもいいのだ。

 彼女の今までの思いが一気に張り裂けたみたいだと思う。


「お騒がせしました」と、しばらくしてケルトンが先にそう言う。


「ご無事で何よりでした。少し背も伸びたしたくましくなりましたね」

 彼女はやっとその腕を外してその言葉を使う。


「ありがとうございます。リリアが私を助けてくれました」

「リリアとはこの前お話しして王子様のことを頼みました。椅子に座りましようね」

 彼女がそう言ったから、彼女の対面に彼が座りその横に私が座る。


「ありがとうございます。私はリリアのことを信じていますから、そのことを直接お話ししようと思いました。私は仲間と金貨も手に入れました」

 彼がそう言ったから、打ち合わせというのか少し話しを二人でしたけど、その言葉を使ってくれてよかったと思う。


「手に入れた理由は聞かなかったけど、私もリリアのことは信じているからね。彼女の不思議も見せてもらったし、でも……これはちょっと信じられないわね」

 彼女はとても優しそうな声の響きでそう言う。


「はい。私はすべて知っていますからご安心ください。リリアはすごいです。私はリリアの言葉をシンシア様の言葉と思います」


「……そうしなさい。私はマーリストン様のそばにはいられないからよかった」


 彼女は手短な言葉でそう言ってくれ、自分もそばにいたいが城の規律によりそばにいられないことを加味するように、私の存在をほんとうに認めてくれたようにも聞こえ、その言葉を聞いてとても嬉しい。


「はい。リリアを信じていただきありがとうございます」

「私が王様からいただいた短剣は見てくれたの?」

「はい。私がなくすと大変ですから預かってもらいます」

「分かりました。王様がマーリストン様だと認めてくれる大事な証拠だからね。その方がいいわね」

「はい。必ずここに戻ってきます。お約束します。リリアとゴードンに明るいときにシンシア様の庭を見せると約束しました」


「……私の庭で……三人に会える日が楽しみね。その日を待ち望んでいるからね」

「はい。バルソンもリリアのことは信じているのでしょうか」


 彼がそう言ったから、バルソンのことを心配しているのだと思い、今まで一度も私の前では口に出していない言葉だ。


「バルソンの話しも聞いたから間違いないと思います」

「分かりました。よかったです」

「バルソンとリリアは命をかけて私たちのことを守ってくれるのよ」

「はい。私が大きくなれば、今度は私が命をかけてお守ります」


 彼がそう言ったから、彼のたくましい言葉を二人で聞くことができ、自分の立場をしっかりと理解できているのだとも思い、ほんとうにここに連れてきてよかったと思う。


「ありがとうございます。私はその言葉を信じていますからね。私は母としてマーリストンに初めて命令します。リリアとバルソンのことを大事にしなさい」

「はい。私はシンシア様とリリアとバルソンを大事にする……その命令に従います」

 彼がシンシア様の名前もそう言ったので、私は勘極まってしまう。


 この言葉は彼の本心だ、と私はほんとうそう思い、私は二人だけにさせてあげたいとも思うが、私には行く場所がないので、何か起こればすぐ対応ができないし、ルーシーのことをいつ切り出そうかと思っている。


「ありがとうございます。そうだ、竹の笛のことは覚えていたの?」

「はい。私の蚊屋の横にあるかごの中のいちばん下に入っています。これもありがとうございました。リリアが紐をつけてくれました。これを握れば気持ちが落ち着くとリリアが教えてくれたから、何かあればこれを握りしめようと思います」

 彼はそう言いながら、胸元の紐を取りだして見せている。


「私もありがとうございました。これです。明るい場所で見ると素敵ですね」

「どういたしまして。いつも私がそばにいると思ってくれればいいからね」

「はい。これを提げているといつもシンシア様とリリアが私を守ってくれ、いつもそばにいると思います。ありがとうございました」


「……そうね。いつもそばにいなくてもそばにいるのよ。かごの中の竹の笛はいつも私のそばに置いておくからね。マーリストン様だと思っていつも見ているわね」

「はい。ありがとうございます」

 

「シンシア様、話しは変わりますが、私はルーシーと話すことができました。彼女には王子様のことを話し、マーシーには話さないと約束してくれました。彼女の心の言葉は普通の会話と同じでした。彼女がいればシンシア様とすぐに連絡が取れると思います。少し離れても同じ物を触っていれば、私たちは会話が可能だと思います」


「……これは……あなたとルーシーの不思議なのね」

「はい。そう思っていただけたらと思います。でも……彼もその不思議が使えますから、お互いに話しができると思います」

「うそっ、マーリストン様にもできるの? これが……この前以上の新しい不思議なの?」


 彼女がそう言ったときに、彼女を見ていると瞼がいちだんと大きく見開いて、彼の顔を見ているようだ。


「……はい。でも……このことは考えても理解できないと思います。お互いの頭の中で感じることですから目に見えることではありません。私たちも説明もできないです」

「目に見えなければ私には分からないわね。マーリストン様にもあるとは信じられない」


 彼女はそう言ったけど、彼の顔を見ないで私の瞳の中を見つめていて、彼のことをよろしくお願いします、と言っているかのようだ。


「だからリリアはすごいのです。私も説明ができません」

「私も考えられないけど、その言葉の意味が少し分かったような気がする」


 彼女はそう言ったけど、先ほどと違い彼の顔を見ている彼女の視線は、私には何とも表現に苦しむ。母親としての眼差しのようだと思う。


「ありがとうございます。私がすべて知っていますからご安心ください」

 彼が何度かその言葉を使ってくれるから、私も心が安らかになる。


 私がソードに乗れることを話していたから、彼は色んなことをシンシア様に話しているけど、話せることと話せないことを考えているとも思い、こことは違い自由で楽しかったと強調して色んなことを話している。


 彼女はたまに相づちを打ちながら静かにその話しを聞いて、お互いに小さな声でひそひそ話しではあるけど、二人の笑顔は最大級のものだと思い、私は二人の会話を聞いているけど余計なことは言わずに、ソーシャルとも話しをしながら楽しい時間は過ぎていく。


     ☆ ★ ☆


『ソーシャル、二人を会わせることができてよかったね。今まで二人だけで話す時間はなかったみたいね。今までの彼女は自分の子供というよりも、この城の王子様として話していたみたいね。今夜は自分の子供として話せたと思ったのよ』

『そのようですね。ケルトンもたくさん話せてよかったです。彼女もリリアのことは信じてくれますよ』


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


いつの時代でも、親子の会話と触れ合いは大事!


そのために、今後のリリアは東奔西走し飛び跳ねるのかな?

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