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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『色んな人との出会い』
28/165

28=『カーラ』との最初の出会い

やや長文です。

     ☆ ★ ☆ (47)


 夜になり部屋でランタンをつけてケルトンと話しをしながら、私は彼にチョコを食べさせると、とても甘くておいしいと言われたので、これを食べると元気が出るので疲れたときに食べるといいと話し、ここでは剣の練習をする前に、準備運動とか軽めの運動をするのか聞いてみると、最初は走ると言われた。


 私は棒を振り回すよりも、馬屋の竹で足腰を鍛えた方がいいと話し、両足を適当に開いて無造作に構えるのではなく、前後に構えた方が素早く動けること説明したが、いざ命をかけて戦う場面になれば、そんな動きばかりもしてられないと思うけど、何をするにも基本というものがあると説明する。ケルトンがひとりではしっかりやらないような気がしたので、明日からは二人でやろうと伝えた。


 ケルトンにもゴードンにも、市場の奥にあるマークと名付けた樹のことを話し、西の屋敷の奥に大きな樹があると聞いたので、今夜はシンシア様の部屋を探しに行くときにその樹にも挨拶をすると話し、最初のリズみたいに上空から真下に降り、中程の枝から話しかけてみると伝え、この時代の人間が上空まで注意を払うとは考えられない、と思い十時ごろに出かけた。


    ☆ ★ ☆


 今夜は昨日みたいに寒くはなく、西の屋敷の先にある大きな樹をぼんやりと確認できたけど、この辺りはかがり火もうっすらし過ぎて暗く、樹の手前には黒っぽい建物がずっと続いているような気がするが、真上から下に降り中程の幹の上から話しかける。


『初めまして、私はリリアです。聞こえますか』

『えっ、リリアなの? 昨日マークから(かぜ)()が届いたのよ。ほんとうにこんなに早く来てくれるなんて信じられない』

 かわいい女の子のような声がしたから驚いてしまう。


『今夜は内緒でこの城を冒険するために来ました。だからここにも寄りました』

 私はここに来た目的をそう話すと、

『ありがとう。私にも名前をつけてくれるの? そのことをいちばんにお願いしようと思ったけど、私の友だちがカーラと名付けてくれたのよ』

『えっ、友だちというのは……人間ですか」

 私が驚いてそう尋ねると、

『そうです。名前はルーシーといいます。彼女だけとは話せたからね。城の中のことも少しは知っているのよ。このことはお互いに内緒にしようと話したけど、私はルーシー以外とは話せない。でも……風の音で伝えてないから仲間は知らないのよ』


『……ルーシーとほんとうに話せるの? 城で仕事をしているのですか』

 好奇心がそそられてそう尋ねると、

『シンシア様に仕えていると言っていたけど誰だか分からない』

『うそっ、ほんとうにシンシア様とそう言ったの?』

 さっきよりも驚きが深くなりそう聞くと、

『その人を知っているの?』

『少し知っています』

『ルーシーの話したことは間違いないのね。前にシンシア様の王子様がいなくなってとても悲しんでいるから、見るのがとても辛いと話していたよ。でも自分は王子様が生きていると感じるけど、それを話しても誰も信じてくれないと言っていたよ』


 突然彼女はこういうことを話しすのだ。ルーシーはブレスを持っているのだろうか、と驚きながらも片手では聞こえないと思い、どういうことなのだろうか。


『カーラと話しができるなら私と同じですね。私もルーシーと話しができるのかしら?』

 話すことに興味が向いてしまいそう尋ねてしまう。


『分からない。ここにはめったに来ないからね。来たときにはまとめてたくさん話すのよ。私は聞き役になるのね。仕事をしているから時間がないのでしょうね。私も彼女と話せて楽しい。それでリリアと話しがしたいと思っていたのよ』

 カーラからそう言われてしまう。


『ありがとうございます。ルーシーが来たら私のことは話さないでください。お互いに内緒にしなければ、私のことを不思議な人間だと思うでしょうね。私も聞かなかったことにします』

『そうね。彼女に悪いものね。でも、私と話せる人間がいるなんて考えないと思うよ』

 彼女がそう言ったから、確かに私も考えないと思う。


『……確かにそうですね。今夜はこの城を冒険する予定なので、今度は城の中の話しをたくさん聞かせてくださいね。私がここに来るときは、ほかの人に見つからない夜ですからね』

『太陽の光を感じなくなると来るのね』

『そうです。太陽の光を感じなくなれば『夜』です。そう思ってください』

『分かった。私の名前はリリアが名付けてくれたと、ほかの仲間に風の音で伝えてもいいのかしら?』

『もちろんです。素敵な名前だと思います。人間に名前があるのと同じでお互いに話しやすいですから、ルーシーも私と同じ考えだと思いますよ』

 私は名前の由来のようなことを話してしまう。


『ルーシーには姉がいてマーシーというそうよ。二人で一緒に産まれたって最初のころに話してくれたのよ。二人でいつも一緒にいると話していた。ルーシーはマーシー以外とは会話ができないんだって、だから、私と話すときは言葉にしなくていいから、たくさん話しができてとても嬉しいと言っていたのよ。私にはその意味が分からないけどね。リリアには理解できるの?』


『……双子なの? 人間同士の会話ができないということなのかしら? でも……マーシーとは話せるのでしよう?』

『マーシーは自分のことを知っているから、一言だけ話すと意味を理解してくれるそうよ。ほかの人は理解できないと言っていた。私はそういう風には思わないけどね』

 彼女がそう話したから、今まで以上に驚いてしまう。


『口から言葉を出して話せないということなの? それでカーラと頭の中で私みたいに話せるのかしらね。そうすると、私はルーシーと言葉にしなくても話せるのかもね?』

『分からない。私はルーシーと話しができるから楽しいのよ。ほかの人とは話せないからね。今日からリリアとも話せてとても嬉しいです』

『私もです。これから城のことをたくさん聞かせてくださいね』

『はい。私の話しを聞いてもらえるのが楽しみです』


 ルーシーが話した城の内情が聞けるかもしれない。

 ルーシーの話した情報は信憑性があると思う。

 カーラはとてもかわいくて気さくな樹だと思う。


 今夜は行くつもりではなかったが、シンシア様に会ってその名前を聞いてみようと思い、私はシンシア様の部屋へまた行くことにした。


     ☆ ★ ☆ (48)


 私が部屋にそっと入っていくと、テーブルの上の灯心がうっすらと燃えていて、部屋の中が真っ暗にならないようにそういう工夫がしてあるのだろうか。


「シンシア様、リリアです。シンシア様、リリアです」

 小声で蚊屋の中でそう言って、彼女を揺らす。


「えっ、リリアなの?」

「はい。聞きたいことがあったのでまた来ました。少し寄り道をしていたので遅くなり申しわけありません」

「さっき横になったつもりだったけど寝ちゃったみたいね。今夜は昨日みたいに寒くはないけど、また布団の中に入りなさい。私は考えないつもりだったけど、最後の場面には度肝を抜かれたのよ」

 彼女がほんとうに驚いたみたいにそう言ったから、

「いえ、今日は外でお話しします」

「立って話すことになるから、私は気にしないから入りなさい」

「えっ、でも」

 私はそう言ったけど、中に入るのをほんとうにためらったが入ることにする。


「ありがとうございます。昨夜はお騒がせしました」

「騒ぐどころか凍りつきました。なぜそういうことができるの? 今度はそれをいちばんに聞こうと思ったけど説明できるの?」

 シンシア様は早口でそう言うのだ。


「申しわけありませんができません。そういう『物』だと思ってください」

「彼もソードを持っていると言ったけど、彼も自分のに乗れるの?」

「いえ、彼は子供ですから大人になれば乗れるかもしれません」

「なるほど、それには二人乗れるということね」


「……はい。そういう理由で……今度は彼と二人できます。いつがよろしいですか」

「まだ考えてないけど、私はバルソンから聞いた話しではなくて、自分の目の前で起こったから……今朝方までよく眠れなかったし、でも……考えても理解できないし、どうすればいいのかしら? バルソンが半分しか理解できないと話したけど、その意味がよく分かったみたいよ」


 彼女は昨夜からの自分の状況を説明してくれたみたいだけど、確かに眠れないほど驚くとは思うが、私としても見せたかったわけではないのだ。


「バルソン様は剣のことは知っています。でも乗ることまでは知りません。シンシア様には、私のことを理解してもらうためにお見せしました。ここにひとりで来られる理由も話さなくてはいけないと思い、内緒にすることばかりでは、私のことを信じてもらえないと考えました。最初は剣だけだと思いましたが、でも……ここにひとりで来て帰らなくてはいけません。彼もここに来なくてはいけません。これをお見せした方が手っ取り早いと思いました」

 私は順番に言葉を並べてそう説明する。


「あなたの気持ちも分かるけど、私の胸中は大変だったのよ。赤い実もあったし朝まで眠れなかったのよ。お昼から少し眠ったけどね。それでマーリストン様を助けてくれたのね。私もたくさん考えたけど、バルソンには説明できないわね」

「はい。そういうことです」

「あなたがここで目覚めて、すぐこれに乗って彼を助けたということね」

「はい。間違いありません。私は考える余裕はありませんでした。彼を助ける運命だったと思います」


「……あなたが説明できないことは、すべてこのことで理解すればいいということなのね」

 彼女がはっきりとそう言ってくれたから、私はホッとする。


「はい。バルソン様には理解できないことです」

「バルソンは信じられないと言ったけどね。それ以外にほんとうに言葉はないわね。私は何だか分からない。またリリアと話せてよかった。あなたが目の前にいるからね。私たちの会話は現実に話しているし……夢ではないのよね」

「はい。私は彼に出会ってゴードンにも出会い、お二人にも出会う運命だと思いました」

 私は運命という言葉を強調して使いそう説明する。


「人との巡り合わせで運命とはいい言葉ですね。私が王様に出会ったのも運命なのね。出会わなかければ彼はいなかったから、私は違う人と一緒にいたのね」

 彼女の声の響きは、しみじみそう言うように聞こえる。


「バルソン様と一緒にいたということですか」

 彼女に失礼ではあるがそう聞いてしまう。


「……そうね……分からないけどね。私も彼もそれを望んでいたかもしれない。でもね、私たちの運命はこうなってしまったのよ」


 彼女はバルソンのことを思い、当時のことを振り返るようにそう説明してくれたと思う。二人の出会いは分からないが、王様と知り合う前の話しをしているのだと思い、彼女と彼のつながりは子供のころからあったのだろうか。


「分かりました。私の運命はこうなってしまったので、私は彼と共に生きていくつもりです。彼がここに戻ることができれば、シンシア様に必ずお返ししますので、それまで私と一緒にいさせてください」

「もちろんよ。彼が今ここに戻ってくれば、また同じようなことが起こるかもしれない。私はまた苦しむことになるからね。それは二度と味わいたくはない。あなたが守ってくれると言ったので、その言葉を信じて任せます。後五年ほど待てばいいことだからね。今まで近くにいてもたまにしか話せずに、ほとんど陰で見ているだけでした。そう思えば辛くはないわよ。どこにいても生きていれば必ず会えると思うからね」


 彼女の切ない想いを聞くことができ、それまで私が必ず守ってみせる、と心に誓う。



「話しは変わりますが、シンシア様の近くにルーシーとマーシーという人がいるのですか」

 私は話題を切り替えようと思いそう尋ねてみる。


「いるわよ。どうして知っているの?」

「これも私の不思議だと思ってほしいです。申しわけありません」

「分かりました。リリアはほんとうに不思議なのね」

 彼女から真剣そうな眼差しでそう言われてしまう。


「ルーシーは言葉が話せないのですか」

「そのことまで知っているの?」

「私の不思議と思って、彼女と話しをさせてもらえませんか」

「彼女はマーシーとしか話さないのよ」

「彼女は頭の中でたくさん話しています。それを周りの人たちが気づかないだけです」

「どうしてそれが分かるの?」

「これも私の不思議だと思ってください」

「私はあなたのことは信じているけど、あなたの不思議はとても不思議なのね」


 彼女から変な言い回しでそう言われてしまう。


「その言い方も不思議ですが、どこかで会わせてもらえませんか」

「困りましたね。リリアは市場までしか来られないからね……そうだ、バルソンから赤い実を貰ったから、それを私の屋敷に届けさせるようにしましょう。ゴードン様にもよろしく伝えてください。あのかごは彼の手作りだそうね。素敵なかごでした。それに入れて二人で明日持って行かせましょう。朝から行かせるけど会うのはお昼前でもいいのかしら?」

「はい。私もその方がいいです。馬車を西の門の馬車置き場に停めますから、私は馬車の上で待っています。近くに来たら馬から降りて地面に座らせてください。合い言葉は『カーラ』とルーシーの頭の中で言わせてもらえますか」

 私たちだけが知っている言葉を使えば、彼女も多少なりは理解できると思うし、私がその言葉を先に言ってもいいと思う。


「座って頭の中でカーラと言葉にしないでいうの?」

「はい。彼女にはその言葉の意味が分かると思います」

「うそっ、それってルーシーの不思議なの?」

 彼女は小声でも少し大きな声でそう言ったから驚いてしまう。


「はい。それとルーシーの手で地面を触らせてください」

「信じられない。でもルーシーは感が鋭いから、彼が市場にいると言ったのよ」

 彼女はまた驚いた表情でそう教えてくれる。


「これは内緒の話ですが、彼がいなくなっても、ルーシーはずっと生きていると思っていたそうです。彼を感じていたけど誰にも話せなかったそうです」

「うそっ、誕生のお祝いをすると言ったのもルーシーが最初だったのよ。マーシーが説明してくれたのよ。そのことを私に話したかったのね。だから……今日は何か感じるものがあるのねと私が言うと、『ある』とはっきり言ったのよ。マーシーも知らなくてそれで分かったのよ。あなたがなぜ二人のことを知っているのかも分からないけどね」


 彼女はそう言って、核心的な言葉も使っていると思う。


「申し訳ありません。ルーシーと話しをさせてください」

「わかりました。二人で私の屋敷に行かせましょう。今度からはルーシーの話しをしっかり聞くようにするからね」

「ありがとうございます。その代わりに馬車の近くで話しても、そばには寄らせないでください。誰が見ているか分からないからです。私たちは離れていてもいいと思います」

「意味がよく分からないけど、リリアのいう通りにさせるからね。合い言葉は『カーラ』なのね」

「はい。よろしくお願いします。今度来たときにはお話しできるかもしれません」

「またリリアの新しい不思議に出会うのね。昨夜以上のことはないでしょう?」


 彼女が軽くそう言ったので、ソードに乗ることを考えているのだとは思うけど、ソーシャルのことは話せないし、彼のことも話せないし、説明しようがないな。


「考え方の違いかもしれませんが、もっと驚くかもしれません」

 また彼女を驚かせないように、そう言って念を押す。


「うそっ、まだそういう力を持っているの?」と、逆にまた彼女を驚かせてしまう。


「はい。お話しできなかったら申しわけありません」

「リリアの話しは信じようと思っているけど……私にはどうしても考えられない。バルソンの言葉と同じでね、信じられないの言葉しか思いつかないわね」


 私はまたシンシア様を驚かせてしまい、まさかルーシーがシンシア様の近くではなくそばにいたなんて、これも運命なのだと思う。


 ルーシーは言葉としての会話が苦手だから、『心の言葉』としてカーラと話しができるようになったわけで、マークとも話しができるかもしれないな。機会を見つけて教えよう。


 今夜は彼女の話しに私も驚いて、ルーシーの話しになり彼女を驚かせ、彼を連れていく日を聞き忘れたし言いそびれてしまい、彼女は私のことに意識が集中して聞き忘れたのだろうか。


 彼が生きていることを自分の目で確認できたから、私の『不思議』の方に意識が飛んだのだろうか。


 彼女はお疲れのようであさっての夜に会うようにしようと思い、そのことをルーシーが話せたら一言でいい、『明日』と言わせればそれで意味が分かるのだ。


 私はカーラとルーシーとまた新しい『出会い』が始まり、カーラからルーシーが話したこの城の話題が聞けると思う。言葉に出さなくてもルーシーの『心の言葉』も聞けるような気がした。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


西の門の市場の奧にある『マーク』、西の屋敷の奥にある『カーラ』の名前と、

『南の森』の滝の近くにある『フォール』の名前は、登場頻度が少ないです。


しかし裏では、リズからの『風の音』の言葉が届いているようです。



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