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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『色んな人との出会い』
27/165

27=〈双子の妹、ルーシーの存在〉

やや長文です。


シンシア様の視点からです。


気分を変えて、10月は朝の8時に変更します。

     ☆ ★ ☆ (46)


 リリアがいなくなってから、目の前にある二個の赤い実を見ながらずっと朝まで眠れなくて、午前中もボーッと考えごとをしている間に、リリアからもらった二個の赤い実を食べてみると、甘くて瑞々しくておいしいけど、食べると少しは自分の気持ちが変わるかと思ったが、何も変わらなかった。


 私はバルソンからリリアの話しを聞いていたので、もし、彼女がここに来れば冷静に話しを聞こうと思っていたのに、彼女がここに来られた理由を最初に聞きたかったのに、竹の笛が出できたあの袋は何なの? どう考えても信じられない。あのソードと呼んでいたのは何なの? 最後の最後のどんでん返しはいったい何だったのか。


 最初に屋敷を移動すると言った。彼女は突然ここで目覚めたと言った。洞窟で生活をしていたと言った。彼女は自分のことを半分ほど忘れていると言った。自分の歳も知らなかった。


 最初は体が冷えていたけど暖かくなり、死んでいる人間ではなかった。二人とも生きていたしマーリストン様は言葉も話していたし、彼も彼女も自分のこの目で確認できたのだ。


 私はリリアが話した言葉をいろいろ思い出し、マーリストン様のことも思い出して、バルソンのことも考えて、何度も何度も同じ言葉を自分頭の中で復唱する。


 考えて理解できることも少しはあり、今度はそのことだけを考えようと、何度も何度も頭の中で繰り返したけど、マーランド様にもバルソンにも相談できなし、私の頭が変になりそうだけど、今日は存在しない日だと約束したのだ。


     ☆ ★ ☆


 翌日(十二月六日)の昼前に、バルソンの屋敷からシンシア様の部屋へ赤い実が届けられる。


「シンシア様、バルソン様の屋敷から赤い実が届きました」

 パーレットはそう言いながら、彼女は持ち手の付いた竹かごの中に入った赤い実を持ってくる。


「分かりました。バルソンが届けにきたの?」

「いえ、お屋敷の方です」

「それはここに置いてね。ありがとうございました、と伝えてください。それからマーシーとルーシーをここに呼んでくれない?」

「かしこまりました」

「これをパーレットにも一つあげるからこっそり食べてね。甘くておいしいそうよ。誰かに見つかれば私からもらったと必ず言って、そうして私に必ず連絡をしなさい」

「はい、ありがとうございます」


 バルソンから赤い実が届いたので、私は自分の意識をはぐらかすために、彼女たちと会話をしたくて、赤い実を一緒に食べようと思いパーレットに連絡させたけど、何をどう考えも理解できないし、もう考えない方が賢明なのだろうか、と寝不足と考えすぎた頭全体が重くて首も肩も痛いようで、椅子に座っていたがお尻がへばり付いたみたいで足も手にも力が入らず、マーリストン様が私の目の前から消えてしまったような感覚が、また私に降りかかってきたようだ思い、視線だけは入り口の方を見ていた。


     ☆ ★ ☆


「シンシア様、お呼びでしょうか」

 マーシーがそう言った声が入り口で聞こえたので、私の思考は一気に現実に戻り彼女たちの姿を見つける。


「ここに座って、この時間だと東の広場で訓練中だったのね」

 マーシーの視線はいつもと変わらず私を見ていたからそう言ったど、ルーシーの視線はどことなく私を観察するような雰囲気である。


「いえ、ちょうど休んでいました」

「よかった。この赤い実を見て、市場にお忍びで出かけたときにバルソンが見つけたのよ。ほんとうに赤くて名前通りなのね。さっき屋敷の者が届けてくれたから、あなたたちと一緒に食べようと思ったのよ。パーレットにも一つあげたからね。これをどうぞ」

 私はそう言いながら彼女たちに一つずつ手渡して、私の視線は彼女たちを見ずに赤い実を見ている。


「ありがとうございます」

 マーシーはそう言ってルーシーは頭を下げる。


「ほんとうに甘くておいしいわね。あなたたちも遠慮しないで食べてね」

 私は一口食べてからそう言う。


「はい」

 二人は同時に返事をして食べ始める。


「真ん中に大きな種があるわね。甘くておいしいわね」

「ほんとうにおいしいですね」

 マーシーがそう言うと『おいし……』とルーシーもそう言う。


「どう、最近は変わった様子はない?」

「特に変わった動きはありません」

 マーシーはそう言ってからも赤い実を口にしている。


「ない」と、ルーシーもそう言ったのである。


「少しでも何か感じるとすぐに知らせてね。バルソンと相談して早めに手を打つからね。今日は後から私も体を動かしてみようかな? 相手をお願いできるの?」

 自分の体力の限界を感じていたけど、自分のことより急に二人を呼び出したことへの不信感を拭うようにそう言ってしまう。


「承知しました」

「はい」と、今度は二人はずれながらも返事をしてくれる。


「私は王子様の誕生をお祝いした日から、少しずつ前向きに考えられるようになったからね。心配をかけたわね。生きている可能性があると考えられるようになったのよ。自分自身がしっかりしなくてはいけないと思うようになったのよ。あなたたちにお祝いしてもらい気持ちが吹っ切れた。私はとても感謝しているのよ」

「いえ、そのように言っていただきありがとうございます」

 マーシーはそう返事をしてくれる。


「……パーレットとあなたたちには感謝しているから、ずっと私の側から離れないでね」

 私は思わずそう言ってしまい、二人に不信感を与えてしまうかもしれない、と思い残りの赤い実を一気に食べる。


「もちろんです。シガール様には私たちに剣の道を導かせてもらい、子供の頃から大変お世話になりました。私たちはこの命に代えてシンシア様をお守りします」

 マーシーはそう言うと『守る』とルーシーもそう言ってくれる。


「二人ともありがとう。今度お忍びで出かけたら何か一緒に食べようか。市場ではこんなにおいしいものがあるなんて知らなかったからね。今まで市場の物はほとんど食べたことがなかった。今度はおいしいものを食べさせてくれる場所をバルソンに頼んでおくからね」


 あくまでもこの赤い実を一緒に食べることを、食事のことを強調して話してしまう。でも……二人は何か感じているよね。


「はい、よろしくお願いします」

 マーシーはそう言ったと同時に『はい』とルーシーがそう言うと、

「ルーシー、今日はよくおしゃべりしていますね」 

「はい」 と、ルーシーがそう返事をすると、 

「シンシア様には大変失礼かもしれませんが、ルーシーの言葉が王子様の誕生のお祝いをしてから少し増えました」

「よかったわね。ルーシーには何か感じるものがあるのね」

 私はマーリストン様のことを考えて何気なくそう言ったつもりだけど、一瞬考えたようにルーシーが『ある』とそう言うので驚く。


「えっ、ルーシー、何を感じるの?」

 マーシーは驚いてそう聞いみたいだけど、ルーシーが『生きて……』と小声で答えるのだ。


「えっ、誰が生きているの?」

「王子……」

「うそっ、ほんとうに?」

 私は驚いて、マーシーの言葉よりも先にそう言ってしまう。


「ルーシー、いつからそう思ったの?」と、マーシーがそう尋ねると、

「近い……」

「シンシア様、最近思ったと言っています」と、マーシーはそう説明している。


「えっ、最近とはどういうこと?」

 私がそう聞くと『市場……』とルーシーがそう答えるのだ。


「市場で王子様を感じると言っています。最近ではなくて距離の近さですね」

「えっ、市場に王子様がいるということ?」

 私がそう聞くとルーシーは頭を下げる。


「シンシア様、ルーシーの閃きは当たります。確認してはいかがでしょうか?」

「ルーシー、このことは誰にも話してないわよね」

 私は声の響きでそう言ってしまうと、『はい』と彼女は口から言葉を発するのだ。


「ルーシーは私以外にはほとんど会話はしません。だから誰も知らないと思います。私も初めて聞きました」

「ルーシー、ありがとう。私が捜したいけどここからは動けないわね。バルソンに連絡して内密に確認させるからね」

 私は驚きを隠してそう言うと、ルーシーは頭を下げている。


「私たちが捜してもよろしいでしょうか」

「バルソンが動いてあなたたちが動くと怪しまれるから、このことは三人の秘密でお願いね」

 私はそう言う以外に言葉はない。


「シンシア様、バルソン様とバミス様がいらっしゃいました」

 パーレットがそう伝えてくる。


「えっ、ちょうどよかった。あなたたちは下がって、頼んだわよ」

「はい。赤い実をありがとうございました」

 マーシーがそう言うとルーシーは頭を下げている。

 

「パーレット、こちらにお通しして」

「かしこまりました」と、パーレットがそう言う。


 この部屋を訪れる人たちは、パーレットが必ず部屋の外で取り次ぎをしていて、彼女たちはバルソンに挨拶をして下がってい行く。


「大事なお話しのところ申しわけありません」

「バルソン、今日はありがとうございました。こちらに座ってください。バルソンが赤い実を届けてくれたから三人で食べていたのよ。大した話しではないから、ひとりで食べるよりもいいかのと思ったのね。ほんとうにおいしかったです」

「このかごはゴードン様の手作りで、シンシア様に差しあげるようにと預かりました。この赤い実は私の屋敷でも評判がよかったです。今日はバミスが話しがあるからと連れてきました」

「えっ、何の話しなの?」

 私はがそう言ったけど、バミスを見てあの話しかと思う。


「バミスが王子様を見つけられなくて、責任を取って城でのお仕えを辞めて、ひとりで捜しに行くと言っています。引き止めてもらえませんか」

「えっ、ひとりで捜すの?」

「はい。私はシンシア様のお言葉に反して、王子様を見つけることができなくて責任を感じています。だから……このまま引き続いてひとりで捜そう思います」


「……そうですか。今までありがとうございました。バミスの気持ちは固いのでしょう? ここを去ることに悔いは残りませんか。それを確認したい」

「はい。悔いはありません」

「分かりました。私には引き止める言葉がない。少ないけどこれを渡すから、当座の費用にしてね」


 この部屋での会話は、外に控えている者たちにも多少なりとも聞こえている。


「はい、ありがとうございます。この前もありがとうございました。必ずシンシア様に吉報を届けられるように探したいと思います。今しばらくお待ちください」

「分かりました。体に気をつけてね。無理はしないようにお願いします」

「はい。ありがとうございます」

「今までご苦労さまでした」

「はい。今までありがとうございました」

「私はバルソンに少し話しがあります」

「はい。私はこれで失礼します」と、バミスそう言って部屋を出ていく。


「バルソン、今から庭で話してもいいですか」

「分かりました」


     ☆ ★ ☆


「ここに座ってください。ルーシーを知っているでしよう。ルーシーは感が鋭いのよ。さっき王子様が市場にいると話したのよ。小さいときから不思議な子だったと父から聞いたことがあるの、どうしたらいいのかしら?」

「そのようなことが分かるのですか」

「そうよ。バルソンから聞いた話しみたいに、リリアと似たところがあるのね。ルーシーはマーシーだけとしか話さない。話してもほかの人には意味が分からない。二人でしか意味が通じないのね」

「だからいつも何も話さないのですね。不思議に思っていました。いつも二人で一緒にいるし、私もそこまでは知りませんでした」

「そのことを知っている人は少ないのよ。あの二人は顔があまり似てないけど一緒に生まれたのよね。それを私の父が内緒で小さいときに別々に育て、父は女でも剣を学んだ方がいいと思っていたでしょう。だから彼女たちにも学ばせたのよ」

「なるほど、それであの二人を側近にしているのですね」

「彼女たちが剣の勝ち抜き戦に参加したときに、私が王様にお願いしたのよ。あの二人は腕がいいのよ。でもルーシーの方が上ね。彼女たちの力はいつも全部出し切ってないのよ。私がそうするように話したからね。パーレットもそうなのよ。あの三人は私のことを信じて守ってくれています。だから……王子様のお祝いをしたと話したでしょう。私自身は二人のお祝いをしたつもりだけどね」


「……そういう意味だったのですね。今まで知りませんでした」

「最初はほかの屋敷にいたからね。バルソンがここに来てからだと思ったけど、彼女たちとは四、五年ほど一緒に住んでいたのかしらね。でも一、二年ほどしか個人的には話してなかったけどね」

「だから私が気づかなかったのですね。外では会いましたが、お屋敷の方には足が遠のいていました」


「……そうね。懐かしい話しよね。……さっきマーシーも気づいたと言ったから、ほかの人間は知らないと思います。内緒にするように話したからね。バルソンに内密に捜してもらうと説明したのよ」

「困りましたね。私の手の者を動かさなくてはいけません。バミスを少し動かすことにしますか」

「でもバミスはここを辞めるのでしょう。先に話したかったけど、明日来てくれればバミスにも話せたけど」

「分かりました。私が何とか考えます。シンシア様はご心配のないように、リリア様はまだいらっしゃいませんよね」

「もし来るとしても暗くなってからでしょうね。昼間では考えられないでしょう」


「……私もそう思います。あれからまたよく考えましたが、信じられないの言葉以外の表現がありません。彼女の不思議は特別なのでしょうか」

「私がそれを見ても、その言葉以外に考えられないと思います。彼が大きくなるまで守り通してくれることを信じたいわね」

「私も同じ考えです。バミスは自分の近辺整理が整ってないので、二、三日はシーダラスの屋敷にいることになっています」

「分かりました」

「あまり長く話しても、これで私は失礼します」

 彼はそう言って立ちあがろうとしている。


「シンシア様、王様がお見えになりました」

 パーレットが庭へ出る入り口でそう叫んでいる。


 それと同時に王様は部屋の中に入ってきている。


「えっ、王様ですか。パーレット、ご無礼のないようにね」

 私も少し大きな声で返事をしたけど、

「バルソンか、シンシアと大事な話しなのか」

 王様は庭のテーブルが見える位置から話しかけてくる。


「いえ、私の配下の者に王子様の探索をさせていました。半年もの間捜しきれずに、責任を取って王様のお仕えを辞退してひとりで捜すというので、私はシンシア様に引き止めてもらおうと思い、お願いに上がりました」

 彼が立ちあがってそう言うと、

「やはり捜しきれなかったのか。残念だった。シンシアの気持ちを思うと私も辛い」

 王様はそう言いながら私の左側に座る。


「私も手を尽くしましたがとても残念です。先ほど配下の者は戻りましたので、少しここでお話しをさせていただきました。それでは私は失礼します」

「分かった。ご苦労だったな。たまにはシンシアの話し相手になってくれ。頼んだぞ」

「はい。そのお言葉に感謝します。それでは私は失礼します」

 彼はそう言って部屋の中へ戻っていく。


 その入り口には、王様の側近であるドーランと配下の者が二人控え、三人ともバルソンに軽く頭を下げている。


「王様、今日は何かご用ですか」

「近くを通ったから少し顔を見ようと思った。マーリストンの探索はその後どうなったのかと思ったからな。直接シンシアに話しを聞きに来たのだがとても残念だ。しかし、思ったより元気そうでなによりだ。私はどこかで生きていると信じたい」


「ありがとうございます。私も必ず生きていると思います。私が諦めればマーリストンがかわいそうです。いつでも帰って来られるように、彼の部屋はそのまま残しておきたいと思いますが、よろしいでしょうか」

「シンシアの好きにすればいい。部屋の中で泣いて悲しまないように頼むぞ。私には慰める言葉がない。何かあれば部屋に尋ねてきなさい。私も諦めずに生きていると信じよう」

「ありがとうございます。今日も散歩の途中ですか」

「まぁそんなところだ。今日はこっちの屋敷の探索だな。さっきセミルの部屋にも寄ってきた。セミルも心配していたぞ。向こうも探しきれないと言っていたが、こっちはどうかと思って寄ってみた」


「……ありがとうございます。バルソンの配下の者たちが探しだしてくれると信じています」

「私もそう思うことにしよう。今度は気晴らしに屋敷に戻ってはどうかな?」

「ありがとうございます。近いうちに帰らせていただきます」

「この庭は相変わらず手入れがいいな。庭師の名前は何と言ったかな、忘れてしまった」

「ガービルと申します。私が連絡してたまに屋敷から来てもらっています」

「そうか、今度会ってみようかな?」

「ありがとうございます。バルソンに王様の予定を聞いて連絡しますので、よろしくお願いします」

「前から思っていたが、部屋で考えごとするよりもここの方が落ち着きそうだな。寝転んでもよさそうな気がするが……」

 そう言った王様の言葉を聞いて、私はお疲れのようだと思う。


「前もって連絡していただけるとご用意します。雲の流れをご覧ください。天気のいい日は青い空の中に雲があると色んな形をしています。私もたまにひとりで雲を見ながら考えごとをします。流れの速いときと遅いときがあり、見ていると飽きることがありません。私も今度横になって見てみましょう」

「そうか……今日は流れが遅いな……今度は二人で寝転んで見てみるか」


 王様は空を見上げながらそう言ったので、私も同じ方向の空を見上げて、私たちはしばらく黙って雲を見ているのだ。


「それでは私は帰る。気持ちを強く持つようにな」

 彼の方から先に言葉を発している。


「はい。今日はありがとうございました」


 私は彼の落胆した言葉を聞いていただけに、彼に対する後ろめたさを感じているので、いつか彼だけには話さなくてはいけない。今日はもう考えすぎて疲れたので、これから少し横になろうと考えた。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


関係ない話しですが、私のファンである仲間由紀恵さんに、

男の子の双子が産まれました。

とても遅かりし祝辞ですが、おめでとうございます。


双子の存在は、このストーリーでも意味合いが強ーーい!

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