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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『色んな人との出会い』
13/165

13=〈ソーシャルの言葉とおまけの『ミーバ』〉

少し長文です。

     ☆ ★ ☆ (22)


『ソーシャル、リズは近くじゃないと聞こえなかったね』

 ゴードンもケルトンも馬車から離れていないので、視線は周りを見ていたが馬車の上で彼女にそう話しかける。


『そのようですね』

『この辺りに大きな樹はあるのかしら? この道沿いにはないのよね。トーリスのこの家の位置を覚えられるの?』

『はい。洞窟から北東に向かっています』

 彼女がそう言ったから、方位まで理解できるのだと思ってしまう。


『……分かりました。一つ聞いてもいいの?』

『はい』

『ソーシャルと私は同じ時代に生まれたの?』

『いいえ』

『そうなの? ソーシャルは私が『ミーバ』と名付けた袋の意味は知っているの?』

『知りません。私はリリアとケルトンの存在だけしか分かりません』

 彼女は淡々とそう言ったのである。


『ケルトンみたいに他にソードを持っている人間はいるのかしら? ネックレスは二つあってゴードンに渡せたけど、もう一つブレスがあるでしょう? ゴードンみたいに右手にブレスをしている人間を探さなくてはいけないのかしらね?』

 ケルトンは私と同じ状態になったけど、もう一つブレスが残っているのがとても気になる。


『私がケルトンにネックレスをさせたのは、リリアのそばにいるケルトンの位置を確認するためです。ケルトンが二つもネックレスをすれば変に思うといけないので、リリアにもしてもらいました。左手のブレスと一つのネックレスで百パーセント確認できます』

 彼女はそう説明してくれたけど、ケルトンがひとりでソードに乗るときにはソーシャルがそばにいるけど、私がひとりで乗れば彼のそばには誰もいなくなるので、彼女はそれを心配しているのだろうか。


『なるほど。ケルトンの位置確認をしてくれたのね。ありがとうございました』

『リリアがリズと話しができることは知りませんでした』

 彼女が突然話しを外したから、私は驚く。


『これは私のブレスだけの問題ではないのね』

『そのようです』

『私がリズと話しができる意味が分かるの?』

『それは私にも分かりません。リズの生命力のパワーのせいかもしれませんね』

『なるほど。こちらの問題ではなくてリズのパワーなのね?』

『それも正しいかどうかは分かりません』

 彼女がそう言ったけど、私がリズと話せることは想定外のことなのだろうか。


『なるほど。私はいろいろ思い出したり考えたりしたけど、なぜ……私はこの時代に来たの?』

 私が今までいちばん不思議である質問を、今回は思いきって尋ねてみる。


『私は自分のご主人様が亡くなられた場合は、新しいご主人様を探す旅に出ます。それは時空を超えていつの時代に行くのか分かりません。私がリリアの時代に訪れるのと同時にリリアが上から落ちてきて、偶然にもソードに上手い具合に座りました。私はリリアの周りの音を確認すると、崖の上から飛び降りたと判断しました。下には波しぶきの音が強くて風も強かったです。それから一気に時空を超えてここに到着しました。たぶん、その時代ではリリアは死亡したことになっているでしょう』

 彼女は私たちの出会いをそう説明してくれたけど、私は彼女のことにも驚いたけど、彼女と出会った自分の状況に驚愕する。


『私が自殺したの? 何で? 意味不明よ?』

 私は立て続けに質問してしまう。


『私は偶然にもリリアを見つけましたから、リリアの前の名前も理由も知りません。リリアのいた時代を確認することはしていません。私はそのブレスを両手につけた人間をご主人様として、その命令に従うように(いにしえ) の時代から存在しています。だから……私はそのブレスをリリアの手首につけて新しい私のご主人様にしました。私がリリアと名付けました』

 彼女が驚くべき説明をしてくれるので、私の思考が付いていけない。


『……それでは、私がケルトンと出会ったのはどうして?』

『リリアが目覚める前に人間が近づいて、リリアに気づくこともなく走り去りました。でも、その後を追うように別の人間が近づいて来ました。だから早く目覚めさせました』


『……それからは成り行きでこうなってしまったのね。

『そのようです』

『だから……私のそばにいるケルトンに、最初はネックレスで次はブレスにしたのね。なぜブレスがもう一つあるの?』

『私はこの時代に来たときに、過去の時間にブレスを二つ飛ばしました。偶然にもそれがゴードンだったのです。ブレスを一度触れ合わせるとすべてにおいてパワーの弱い方が外れます。ゴードンよりもケルトンの方がパワーが強かったのですね。しかし……ケルトンのことを考えると正しい選択だったと思います』

 彼女がそう説明してくれるけど、大人と子供のパワーの違いは信じられない。どう考えてもゴードンの方が力強さが感じられるけど、見た目のパワーとは違うのだろうか。


『それでは……もうひとりは右手にブレスをつけている人間がいるということね』

『そうです。私が最初にブレスを飛ばした理由は、私のご主人様が悪用することを防ぐためです。私はリリアにブレスをつけましたが、リリアのことを何も理解してなかったです。私はご主人様の命令には従わなくてはいけません。その人間がどう変わっていくか判断できません。それを正しく導くために違う人間の存在が必要です。最初は会話のみでソードの存在は教えません。リリアの場合は時間がなくて教えました。でも、リリアは正しい心を持っていたので助かりました』

 彼女はブレスのことだけではなく、私のことを正しい心を持っていると評価してくれ、嬉しい反面ほんとうに驚く。


『……それでは、私がその人間を見つけてこのブレスを渡してもいいのね』

『それは違います。その人間をリリアと私が見極めて、正しい人間だと判断できると渡してもいいと思います』

『分かりました。一度触れ合わせると……パワーの弱い方が外れるということね』

『そうです』

 彼女がそう言ったから、私の意識の中ではケルトンから少し話しを聞いたバルソンのことが、ずっと頭の中にこびりついている。


『私はケルトンが話してくれたバルソンを見つけます。ケルトンの今後の話しを聞いてから、彼が正しい心を持っていた場合には、そして南の城の王に導いてくれると判断した場合には、彼にこのブレスを渡してもいいの?』

『はい。リリアが正しいと判断すれば私も賛成です』

『ありがとうございます』

『私のご主人様がパワーを悪用するのを防ぐために、二人の存在を作り出したのですから、今回は正しい心の持ち主で、まして、私には意味不明ですがリズとも話しができるご主人様の力になりたいと思います』

『ありがとうございます』

『ここまで私の存在を理解していただいたリリアですから、私は先ほどは知らないと話しましたが、あの袋の意味も説明してもよろしいですか』

 突然彼女がそう言ったので、これまた驚いてしまう。


『……やはり、ソーシャルが出してくれるのね』

『私が出しているのではありません。ちょっと『おまけ』をしたのです』

『えっ、『おまけ』なの。私たちは『ミーバ』のお陰で命拾いをしたのよ。ソーシャルに感謝以外の言葉はないです。ケルトンも同じだと思います。ありがとうございました』

『いえ。ここはあまりにも過去に来てしまい大変驚きました。それで、リリアが閃いた言葉をあの袋の大きさの中に存在させるようにしました』

 彼女はそう説明してくれたけど、『ミーバ』はすでに目の前にあり頻繁に利用しているから違和感がなく、私はあの樹の根元にどれほど横たわっていたのだろうか。両手のブレスはどうやってくっつけたのだろうか。そっちの方が気になってしまう。


『意味が分かりました。今まで無分別には使ったことはないけど、この時代のことも考えケルトンにはゴードンに内緒にするように説明しました。彼は賢いから私の話したことを理解していると思います』

『私もそう思います。トントンの話しではあのナイフはとても喜んだそうですよ。ソードのこともです。この時代には立場的に剣は必要だと思います』

 彼女がそう話したから、この時代設定がどうだか分からないが、自分を守るために武器が必要なのだろうか。


     ☆ ★ ☆


『私は色んな状況で言葉が閃くのね。これはソーシャルが教えているの?』

『違います。私はリリアの頭の中で考えていることまでは分かりません。それでほかの二人の存在を作ったのですよ』


『……そうよね。ソーシャルがリズと話した言葉は聞こえなかったのよ』

『私もリズが話した言葉は聞こえませんでした。リリアの頭の中でその声が響くのでしょう? フォールの話しも聞こえませんでした。私が話そうとすれば……相手は聞こえるかもしれませんね』

 彼女はそう説明するが、ほんとうのことを話してくれているのだろうか。


『……そうかもね。でも、ケルトンはフォールの言葉が聞こえると言っていたのよ』

『これはリズと同じで樹のパワーですね。私も信じられません。私は永い時間この世に存在していますが、過去には前例がないと思います。私も不思議です。この言葉が私にも適用されるとは……ほんとうに不思議ですね』

 彼女はそう言ったけど、私は彼女の素早い受け答えに操られているみたいで、どこまでが真実なのだろうか。


 彼女を疑うと切りがないけど、彼女に翻弄されるかもしれないとも思い、私とソーシャルは次元が近そうな気がするけど、今の私には分からない。


『なるほどね。ソーシャルにも不思議があれば、私たちは人間としての仲間ですね。会話ができれば友だちだと思って話せますよ』

 彼女の話しが何処までが真実か分からないけど、滝の裏側に行くことが分かり、危険だと感じたのか『ソード』の存在も教えてくれたし、私たちのことを気にかけてくれていることだけは理解できるようだ。


『ありがとうございます。リリアは今までのご主人様とタイプが違うようです。過去のご主人様はだんだん意識の中で消え去っていますが、今までの中ではいちばん親しみやすいような気がします』

 この意識の言葉も理解しがたいが、親しみやすいと言われると嬉しいけど、彼女の考え方が少し理解できるようだ。


『ありがとうございます。でも、私の過去はどうなっていたのかしらね?』

 私はポロリとこの言葉が出てしまい、ひょんなことで言葉が頭に閃くのだけど、自分自身のことは靄がかかったように、はっきりとは思い出せない。


『その時代を調べてからここに来ればよかったですね。失敗しました』

『ソーシャルに命を助けてもらったかね。ほんとうに感謝しているのよ。過去はそのうち思い出すわよ。気にしなくていいからね。色んな言葉を思い出しているから自殺かどうかも分からない。誰かに突き落とされたかもしれないしね』

『それも考えられますね』

『私はケルトンのためにナイフを想像したけど、私が剣なんて使えるのかしら?』

 こちらもポロリと言葉が出てしまい、映画の世界のアクション女優のようなことができるのかしら、とか思ってしまう。


『私も分かりません。ケルトンが練習するときに一緒に使やってみたらどうですか』

『なるほどね。私も一緒に習ってみるね。今までこういう風に突っ込んだ会話は、ソーシャルと話したことがなかった。私はどこまで聞いていいのか悩んだのよ』

『いつかはお話ししなくてはいけないことですが、こういう早い時期に話したとは……これは私の不思議なのですね』

 彼女はまた不思議の言葉を使うけど、私にはすべてが不思議だらけなのだが、私の不安要因が少しは改善されるようだ。


『私はケルトンのためにこれからは生きていくからね。ソーシャルの話しを聞いてもその気持ちは変わらなかった。なぜだか……私たちは出会ってしまったのよ。今度はバルソンを探し出して話しを聞くように頑張るからね』

 私は力強く言葉を伝えたつもりで、お金も当座の食べ物も心配しなくていいし、住む場所も確保できるようだし、これから先はどうなるのか分からないが、まずはバルソンを探し出して話しを聞くことが先決だと思う。


『そうですね。その方がいいと思います』

『ゴードンのお屋敷に行くのも楽しみだからね』


 私はここに来てからどれほどの月日が経ったのだろうか。太陽もあれば月も同じようにある。懐中時計は出したが、その時に閃いたカレンダーも出せばよかったのだ。ここに四季があるかどうか分からないが、だんだん寒くなっているように感じる……私も失敗した。


 ソーシャルは過去や未来に自由に行けるのかしら? そういうすれば、元の世界に戻れるということ、でも、死亡……なのね。この言葉にはショックが大きい。私はケルトンとゴードンにすでに出逢ったので、突然……消えられない。自分の将来よりもケルトンの未来を考えた方がいい……よく分からない。


 ソーシャルが教えてくれたおまけの『ミーバ』の存在を、いかに利用するのかを考えた方がよさそうだ。言葉として伝えると袋に入る大きさであれば何でも取り出せるし、どのようなお屋敷かも分からないけど、私たちの手元には金貨という強い味方もできた。


 その屋敷を起点として別の家を手に入れてもいいとも考えられる。不安でもあるがゴードンの屋敷に行くことを気楽に考えよう。ソーシャルが話した『おまけ』という言葉の表現も変だとは思うけど、私に対する気遣いも感じられ、そのおまけに私たちは大いに助けられたのだ。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


『ミーバ』は、ミステリーバッグの略称のつもりです。

要するに、私の大好きな大きい布製の『リュック』です。

これが少し、魔法っぽいかな……、後から考えると……。

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