魔物の洞窟
Wing 魔物の洞窟
「日華、すぐに助けるから。」
険しい山道を月華、レイズ、伝助は進んでいく。
「本当にこっちであってるの?見失っちゃったし、道もないし・・・。」
レイズが先頭を進んでる月華に訊いた。
「間違えてない。」
月華は自信があるようだ。
「なんでそんなこと分かるのよ?」
レイズは反抗的な態度だ。
「教えてくれるから。」
「誰が?」
「日華が。」
「・・・・・。」
レイズの反抗的な態度が一転して大人しくなった。
「あたしと日華は以心伝心してる。だから、どんなに離れていても、どんな状況でも心の中で会話できるんだ。」
月華は草木を掻き分けてどんどん進んでいく。
「どうやらあの洞窟が魔物の住処らしい。たぶんあのぐらいのでかさなら魔術を使える魔物だろう。あたしだけで行くから、ついてくるなよ。」
月華は一人でさっさと洞窟へ入っていった。
「可愛くない子ね。ほっときましょう!氷は解けたんだし、私たちも先を急がないと・・・。」
レイズはそう言い、伝助を連れて洞窟から離れていった。
「魔女 ヲ 食ベレバ 魔力 ガ 増エル」
魔物はそう言い、日華を足のつま先から丸飲みしようとした。
「サンダー!!」
「 !! 」
日華を掴んでいる魔物の腕に雷が落ちた。
「日華を守りに来た。さっさと日華を放せ。」
魔術を唱えたのは駆けつけた月華だった。
「ウルサイ!! 魔女 ヲ 食ベテ 強ク ナルンダ!!」
「ぷっ!!あはははっ!!!」
冷静だった月華が突然腹を抱えて笑い出した。
「何 ガ オカシイ?!」
魔物が問いただす。
「だってそんなの無理だもの!!ぷははっ!!」
「何故 ダ?」
また魔物が問いただした。
「だって日華は魔女じゃないもの!くくくっ・・・」
月華が必死に笑いを堪え始めた。
「魔女 ジャ ナイ??」
「白魔術はたしかに使えるけど魔女じゃないよ!だって、男の子だもの!!あははははは!!」
「 !! 嘘 ダ!!」
「あたしんとこじゃ子供の頃に男が女の格好するのは当たり前!それに女の方が何かと都合がいいんだよ!そのおかげで芸者小屋にも入れたしね!そうだろ、日華?」
「まあね・・・。」
日華は男とばれて顔が少し赤くなっている。
「あ〜あ、笑えた!んじゃ、余計なことはこれくらいにして日華を返してもらわなきゃ。」
「ホール!!」
ガラッ・・・
魔物が叫ぶと、月華の足元のすぐそばに、深い穴ができた。というより、もはや崖である。足を滑らせると落ちて、死んでしまうだろう。
「やっかいな魔術を使う奴だな・・・。」
月華の額に一筋の汗が垂れた。
「ホール!!」
魔物がまた叫んだ。
シュッ ガラッ・・・
月華は華麗に左へ避けた。
「もう見切った。おまえの魔術なんて簡単に避けられるわ。」
「ホール!!」
シュッ ガラッ・・・
魔物と月華は魔術をしては避け、魔術をしては避けを繰り返していった。
「もうおまえの魔力は限界のはず・・・それに、おまえの魔術のおかげで穴だらけのフィールドになった。あたしは穴と穴との間を通れるがでかいおまえには通れない。つまり、おまえの方がこのフィールドじゃ不利だ。」
月華は足の動きを止めた。
「ウッ・・・・ド!!」
魔物が最後の力を振り絞り、叫んだ。すると、木の蔓が現れ、月華に絡まり、身体の自由を奪った。
「くそ!そんな魔術覚えてたのか!」
どんなに足掻いても身動き一つできない。
「オマエ ハ 魔女 カ? 女 カ? 食ベル ト 強ク ナル カ?」
ズシズシという足音を響かせながら、魔物が月華に近寄ってくる。
バンッ!!
「 !! 」
魔物の背中に銃弾が当たった。
「助太刀に来たわよ!私は嫌だったけど。」
レイズがキリッとした顔立ちで魔物に銃口を向けている。
ザシュッ・・・
「日華、大丈夫か?」
伝助が日華を掴んでいた左腕を剣で切り落とした。
「はい、大丈夫です。それより、月華を。」
シュッ シュッ
伝助は、月華に絡まっていた蔓を切った。
「レイズ、両方助けたから退散だ・・・・!!」
バンッバンッバンッバンッ
伝助がレイズの方を見ると、何発も撃たれ、魔物は弱っていた。
「これで終わりだ・・・。」
レイズはそう言うと、魔物の頭に押し当てた銃の引き金を引いた。
バアァァ・・・・ンッ
魔物はピクリとも動かなくなった。
「殺すことはないだろ?!」
伝助が怒った。
「生かしていれば、また被害が出るだけよ。」
レイズはそう言い残し、さっさと洞窟から出て行った。
「助けてくれてありがとうございました!」
洞窟の出口で日華が伝助とレイズにペコリとお辞儀した。
「・・・・・・・・・・ありがとな。」
月華もお礼を言った。
「・・・・・・・・あのさ、日華と話し合ったんだけど、助けてもらったお礼にセシディアまで送ってやるよ。恩はちゃんと返さないとな。」
月華は照れくさそうに言った。
「セシディアの街の中に入ってしまったらうちらは魔女なので捕まってしまいます。だから、街の近くまでなら・・・。また氷などの障害物ならうちらがいればどけれるし・・・。」
「たしかに、まだ障害があるかもしれないし・・・・いいわ。ついて来たいならついてきなさい。」
「旅の仲間は多い方がいいしね。」
月華と日華の考えにレイズも伝助も賛成のようだ。
「ああ、そうでした。もし、怪我などをしたらうちに言ってください。うちは白魔術師ですから。」
日華が優しく言った。
「じゃ、行くわよ!!」
レイズたちは洞窟を離れ、セシディアを目指して歩き始めた。
To be continued