双子の約束
Wing 双子の約束
「それじゃあ、伝助はこの世界の常識も分からないのか?」
山道を歩きながら月華は伝助に質問した。レイズと日華は歩くペースが早く、姿が豆粒くらいの大きさにしか見えないほど距離が開いている。それでも、月華と伝助は急ごうとせず、自分のペースで歩いている。
「この国、シェルアータって言うんだっけ?」
伝助は荷物を少し月華に持ってもらいながら山道を進む。
「そっ。ここはシェルアータ国。王国だ。っていっても王なんて見たことないけど・・・。」
「どうして?」
「王の話しよりこの国のことを簡単に説明しないと・・・この国の人口の七割は獣人族で二割は小人族、残りの一割が普通の人間、つまりあんたみたいなやつ。んで、獣人族の四割が鳥人族。大きな翼と尾と鋭いくちばしを持ってる。その鳥人族がこの国の政治とか法を定めてる。ここまでは話し分かる?」
「なんとなくは・・・。」
「じゃ、話し進めるけど、王もその鳥人族から決められる。今の王は匿名で、仮面を付けてて顔も分からない。」
「それって本当に王様?」
「この国じゃ当たり前なのよ。王が仮面被るなんて。あたしは認めたくないけど・・・。とにかく、その王がこの国を支配してる。あたしは王を憎んでる。」
月華は足を止め、俯いて歯を食いしばった。
「魔女狩りされたから?・・・・レイズが言ってた。」
「・・・・そっ。王が命じたの。魔女を殺せって・・・。8年前だから、あたしと日華は6歳だった。あたしたちは、遠くまでおつかいに行くように父上と母上に言われた。遠すぎるから日華は駄々をこねてた。そしたら、父上が日華の頬を叩いた。だから、日華は泣きながらあたしとおつかいに言った。
「あと少しでお家に着くから、ちゃんと歩かなきゃ。」
あたしは、転んで座り込んでる日華に手を差し伸べた。
「もう歩けないもん。足が痛いんだもん〜!」
日華の足は泥だらけで血も出てた。
「じゃあ、おんぶしてあげるから、これ持ってて。」
あたしは、おつかいで買った荷物の入った風呂敷を日華に渡して、おんぶしてあげた。あたしの家には下駄しかなかったから二人とも下駄で、あたしの足も草に切られてボロボロだった。
「・・・月華、焦げ臭くない?」
始めに気付いたのは日華だった。
「・・・そう言われれば・・・ん?あれ!!煙が上ってる!あたしたちのお家からだ!!」
あたしは日華をおんぶしているのも忘れて必死に家に駆け寄った。
「・・・・・家が・・・。」
あたしたちの着いた頃には家は崩れかけ、原型を留めていなかった。
「父上、母上はどこ?!」
「たぶん、お家の中・・・。」
「じゃあ、助けに行かなきゃ!!」
日華が炎の渦巻いてる家の中に入ろうとした。
「待って!!」
ガッ
あたしは日華の腕を掴み、入ろうとする日華を力ずくで止めた。
「もう、助からないよ。火事が起こる前から死んでるから・・・。」
「なんで?なんで分かるの?!」
「微妙に油の臭いがするし、犯人の残した血の跡が足跡と共に残ってるから・・・。」
「なら、この足跡を追おうよ!そしたら、犯人が見つかるじゃない!!」
「だめだよ。きっと途中で消されてるし、父上と母上を殺した相手だ。あたしたちも見つかったら確実に殺される。」
「じゃあ、どうすればいいのよ!!」
日華はパニックになってしゃがみ込んだ。
「生きよう・・・日華。この前行った小人の村があるだろ?あそこなら匿ってくれる。それに、あの芸者小屋は裏では情報屋をしてるらしいから、父上と母上を殺した犯人のことが分かるかもしれない。ね、行こう。ここに居たらいけない。生きなきゃ。日華はあたしが必ず守るから・・・・・ぜったいに。」
あたしは日華の震えている身体を抱き寄せて、落ち着かせた。
たぶん、父上も母上も魔女狩りのこと知ってておつかいに行かせたのね。・・・・あたしは、あのスマラの村を出るのは本当はいや。日華を危険な目に合わせるかもしれない。でも、約束したんだ。ぜったいに守り抜くって。」
月華はギュッと手を握った。
「・・・・。」
伝助は悲しそうな表情を浮かべている。
「お二人さーーん!氷で道が塞がってるとこ、見つけたのーー!早く来て頂戴!!」
レイズが口に手を当てて叫んだ。
「分かったー!!」
伝助も叫んだ。
「この氷なんだけど、溶かせる?」
レイズが氷をコンコンッと叩いた。
「これぐらいのなら・・・。みんな、ちょっと下がってて。」
月華の指示通り、みんな下がった。
「ファイア!!」
月華は杖に念じ、唱えた。すると、火が現れ、みるみると氷を溶かしていった。
「これで通れるわ!」
レイズが言った。
「じゃあ、あたしたちはこれで帰らせてもら・・・・」
「きゃぁっ!!」
いきなり大きな魔物が現れて、日華を攫っていった。
「日華!!」
月華たちは後を追い掛けた。
To be continued