第十二話 どしゃ降りの雨の夜
弟さんがお茶を入れ直して帰って来た。
【弟】「どうぞ・・・」
【京介】「ありがとうございます」
先程と比べて弟さんの表情が少し曇っている。
何故だろう?
その時弟さんがいきなり俺に話し掛けて来た。
【弟】「僕に何かしてほしい事があるんですよね?」
【京介】「えっ?え!」
俺はいきなり核心をつかれたので驚いてしまった!
何故俺の考えてる事が分かったんだ?
【弟】「僕は兄と同じ能力を持っているんですよ。
貴方の考えてる事も大体はさっしがつきます」
そうだった!俺の心を読めなきゃ、記憶なんて消せる事なんて出来ないもんな・・・
どうせ隠しても分かるんだ!
俺はお願いしてみた。
【京介】「あの?」
【弟】「はい?」
【京介】「僕の眠っている記憶を呼び戻してほしいんです!」
【弟】「眠っている記憶ですか・・・」
【京介】「はい!」
弟さんは何故か俺の向かいに座り、恭平の事を語り始めた。
【弟】「僕の兄は名医でした。それもとびきり。精神科においては世界でも三本の指に入るでしょう」
【京介】「はあ・・・」
俺は何故弟さんが恭平の事を語り出したのか、意味が解らなかった。
【弟】「あの事件が起こるまでは・・・」
【京介】「あの事件?」
【弟】「私達には父がおりました」
そうだよな・・・何故か仏壇は無かったけど。
【弟】「酷い父で、いつも酒を呑んでは母や僕にあたってきました」
そうか・・・苦労したんだな。
【弟】「その事件が起こった夜はどしゃ降りの雨だった。
僕は勉強し医者を目指していました。
兄は村から出ていって東京で、医者として活躍していました。」
どうなるんだ?これから・・・
【弟】「いつもの様に僕が自分の部屋で勉強していると、物凄い物音が聞こえてきました!
僕が物音がした居間に行ってみると、母が父に殴られて血だらけになっていたのです!」
【京介】「!!!!!!」
【弟】「僕は必死で父を止めましたが力が及ばず吹っ飛ばされてしまいました。
母は怯えて震えています。
父がまた母の髪を掴み引っ張り上げた瞬間!」
【京介】「ゴクッ・・・」
【弟】「・・・気が付いたら僕の目の前には、頭から血を流し倒れて動かなくなっている父がいました・・・」
【京介】「ま、まさか・・・」
【弟】「僕の右手には、いつも父が仕事で使っていた頭の大きなハンマーが握られていました」
【京介】「無我夢中でやったんですね・・・」
【弟】「ええ・・・横を見ると目を見開いて、ただ怯えている母の姿がありました。
僕の後で物音がしたので振り向くと、そこには驚いて立ち尽くしている兄がいました」
【京介】「実家に顔見せに来たんだろうな・・・」
【弟】「そうでした。兄は東京で医者として成功した事を話すため実家に顔見せに来たのです。
まさか自分の弟が父を殺した現場を見るなんて夢にも思わなかったでしょう・・・」
【京介】「確かに・・・」
【弟】「兄は咄嗟に僕を抱き締め言いました。
後は兄ちゃんに任せろ!お前は何も心配しなくていいんだぞ、と・・・」
【京介】「兄に助けられたんですね・・・」
【弟】「ところが母がおかしくなり僕に向かって、人殺し!・・・と、叫び始めたんです!」
そりゃあそうだろな・・・いくら酷い夫でも目の前で殺されればな。
【弟】「兄は母に無理矢理睡眠剤を注射しました」
【京介】「なっ!」
【弟】「そして兄が僕に向かって言いました。
今から母さんの記憶を消す!
準備するから手伝ってくれと・・・」
【京介】「まさか!記憶を消す治療をして医師免許を取り上げられる原因となった患者というのは・・・」
【弟】「母です・・・」
俺はショッキングな事ばかり聞かされて、ただ驚くばかりだった・・・。




