無線08
side.冷杏
こちら冷杏。
現在、得体のしれない洞窟の中へ踏みこんでいる。
ちなみに私は青梅殿に玉露を鎮静化させよと命じられた。
「だがしかし」
身勝手に立ち入ってからこんなことを言うのもなんだが、こんな薄暗い洞窟に果たして奴が忍び込んでいるのだろうか。
気配を極限まで消すくせに、派手な喧嘩が大好きな玉露のことだ。きっと獲物になりそうな何かを求めて喧騒の上空をさまよっているに違いない。
「私は青梅殿の元に、対象を連れて帰ればいいだけの話なのだ」
無駄なことをせず、さっさと任務を遂行するまで。
私は思いながら、ただ真っ直ぐに――――洞窟の中を歩いて行った。
言っていることとやっていることが矛盾している? ああ、そうかもしれない。
だけどな……。
身体が勝手に動いてしまうのだ!
「まったく、好奇心とは怖いものですな。まるで自制がきかない……」
青梅殿にはまったく申し訳がたたないが、そちらには私と同じくらい優秀な人材がたくさんいらっしゃる。
私1人がどうこうしていたって、こちら側の勝利は決まったも同然のこと。
玉露の目的はおそらく、青梅どのを討って手柄にし、それを最高幹部に差し出し、願わくばその座を奪い取ることだと思われる。
青梅殿はお強い。あの瞳には揺るぎない強い自信と誇りが見受けられる。自分のプライドをしっかりと持ち、決してその力を過信しない。
彼女こそが真の強者だ。
「……と、私は思うのですがねぇ」
私は一体、今現在何をやっているのやら……。
つづきます。
もしかしたらこの回は後ほど少し文追加するかもしれません。