無線07
side.七尾シラギ
はぁーまったく。オレの人生は災難が多い!
なにも先輩を探しに行かなくても……。あ、いや。先輩だからこそ探しに行くのか?
どちらにせよ、身に降りかかってくる危険は免れないということだ。
「確かこのあたりだな」
オレは一旦浮遊を止め、地上に降り立った。土の湿った感触がどうにも心地悪い。
青梅さんによると、このあたりは無線も繋がらないらしいから、気をつけなければ。
ん? 待てよ。無線が繋がらないってことは、連絡手段が途絶えたってこと……だよな。
「オレ早速ピンチじゃんかぁあああ!!」
どうする、オレ。どうするどうする。まだ死にたくないよー!
??「発狂なさって、どうしたのですかおチビさん」
「……へっ??」
そこに立っていたのは、黒い影。勿論人間なのだが、ひとかたまりの黒い影のように見えた。
「七尾殿ですね。大丈夫ですか」
「烏羽……〆離さん??」
「ええ。援護に参りました」
「えっ。あの……オレ――――の?」
「他に誰がいるというのですか。お馬鹿ですね」
〆離さんってこんなに優しい人だったっけ。
「それで――――青梅さんは今……?」
「ああ、モノさんは大丈夫です」
「本当ですか? さっきは貴方が1人で保護していたのではないんですか?」
「ええ、いかにも」
「今はどうなんですか。玉なんとかって奴に狙われているのでしょう?」
「玉露は戦闘ではC階級トップクラスですが、S階級トップレベルのモノさんに匹敵するとはとても思えません」
「しかし、青梅さんはお怪我をされていると……」
ドスッ
『!?』
ふたりの話を遮るようなタイミングで、空から何か棒のようなものが降ってきた。
「なんでしょう、これは」
「さあ。何か薄く文字が書いてありますね」
「読んでみましょうか。ええと……」
竹壱
戦慄がはしった。
それは、酒井囲雄の唯一の武器だった。
驚きと不安の要素はそれだけではない。
「これ……血、ですか?」
「そのようですね」
「無事、ですよね」
「おそらく」
「まだこの地にいますよね?!」
「……大丈夫でしょう。彼は、そう簡単に死なない」
不安は募る。
気がついた頃には、オレは〆離さんのボロボロの腕に抱かれていた。
「カコオさんは、まだ二酸化炭素を放出しています。急ぎましょう」
「……はい」
お願いです。生きていてください。
つづきます。