無線01
モノはかなりヤサぐれた表情で、親しげに話す七尾を見ていた。ただ見ているだけでは飽き足らず、真っ直ぐターゲットに向けて歩いてゆく。
「シラギ」
「んぇ??」
「とぼけた顔でよくもまあ……うらぁぁぁぁぁッ!!」
「うぎゃッ!?」
突然炸裂したモノの軽銃弾が、その距離わずかに5mの七尾のみを目がけて一気に駆け抜けた。そしてかすかに軌道を変えたものの、見事に命中。
「い――――っ痛い! ひっ酷いじゃないですか! このようなことをしてなにが喜ばしいのですか!」
「喜ばしいだと? ああ、そうだな。そなたをBからC階級に落とす絶好の機会なのだからな。言っておくが、我は容赦せぬぞ」
「もっ、申し訳なかったです! この通り! 謝りますから!」
「……そなたにはプライドというものがござらんのか。見よ、そこの子が物珍しそうに見ているではないか。少しはサービスしてやったらどうだ」
七尾はずっと隣で会話を見守っていた女の子を見た。さっきのラムネをお礼にくれた子だ。
「サービスっていいますが、具体的に何をすればいいのですか」
「決まっておるだろう。ほら、出てきたようだぞ」
「何が……」
言って七尾は商店を振り返った。そこには大勢の不良が群がっていた。桜高のジャージを引き裂いた、ズタボロな格好をしている。
なるほど、こいつらを更生させろというのだな。
七尾は女の子にラムネのビンを預けて笑った。
「おにーちゃん、あの人たちと、たたかうの?」
「うん。大丈夫。お兄ちゃん強いから!」
七尾はそれを言った後、少しきまり悪くなってモノのほうを向いたところ、彼女は話を聞いていないようだった。
「よし、行ってくるね」
「うん……気をつけてよー?」
七尾は不良集団と向き合った。余裕で20人は超えているだろう。その中の1人が、店のレジだと思われる四角い箱を持っているのが見えた。
「んだ、てめェ……やんのか? オラァ!!」
「上等です! オレの能力をなめないでください」
「てめェ、どこのどいつだァアアアアア!!」
「教えてあげましょうか?」
言って、一歩進む七尾。
「桜日高等学校」
進み、懐からビカビカ光る棒を取り出す。怖気づいたのか、じりじりと後退する不良団。
「管理団体」
棒からバチバチ・ビキビキと音が鳴り始める。男たちは顔面蒼白だが、まだ罵倒をやめない。もっとも、七尾にその声が聞こえているかどうかだが。
「Bクラス……七尾シラギ」
金色に光り輝いた光線が、レーザーをぶち破って地面にこぼれだす。
「一挙……攻撃!!」
地面に零れ落ちた蛍光色の光が、クモの巣状になってじわじわと広がっていく。その光は、やがて男どもの足もとまで浸食し始めた。
「うぉああああああッ!!!な、なんだこの痛みはァアアアア」
「3」「2」「1」
「ど、かーん?」
七尾のカウントがゼロになった時、男たちにからみついていた光が一斉に弾け飛んだ。
そして、その男どもが盗んできたと思われる品だけが地面にぽつぽつと残されていた。男どもの姿はなぜか見えない。
女の子が耳をふさいで近寄って来た。
「おにーちゃん、うるさかった……」
「あ、ご、ごめんねっ!」
「ううん、へーき。すごいカッコよかったよ!」
「ありがとう」
「でも、あの人たちどこ行っちゃったの?」
「警察署に飛ばしてやったよ。ちょっとカツ入れてやんないとだからね」
「ふぅーん」
その会話の様子を遠くから見ていたモノは、嫌味な笑みをたたえながらマントをはおった。
「七尾シラギ、B階級任務続行を認める」