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青空同盟  作者: 紅和
おりがみのふうせん
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心当たりはないのに

 月に一度の生徒総会。

 猫を被った冴島が、少しずつ近づいてきている文化祭について話している。

 屋上では空気を共有しているのに、今は違う。遠い。


 最近の私は少しおかしい。情緒不安定ってやつみたい。……秋だからかな。



 さわやかに話をする冴島が、一瞬だけこっちを見たような気がした。











「ねえ、テーブルクロスはどうする?」


「んー……こう、なんていうか……落ち着いた感じのやつかな」


 文化祭まであと一ヶ月ぐらい。その前にはテストもあるのに、教室の中はもうすっかりお祭りモードだ。

 体育祭はほったらかしだけど。


「こっちの作業、あと二人ぐらい手伝ってー!」


 委員長と文化委員、それと普段からクラスを仕切っている人たちが中心で、かなりこだわって準備を進めている。


 やっぱりついていけない。先生にもあきれられるほどのこのテンションには。

 一人で鎖を作る。家でも暇があればやっているせいか、もう大分長い。このぶんだと、結構早く解放されそうだ。

 持ってきている大きい紙袋の3つ目がもう一杯になってしまった。

 少し、嬉しくなった。




「杉田さん」


 来た。クラスの仕切り役、木本さん。


「何?」


 名前を呼ばれたら、返事をしないわけにはいかない。


「鎖、どれくらいできた?」


 相変わらず嘘っぽい笑顔。それから思っていたとおりの質問。


「んー、もうちょっとで足りるかな」


 絶対足りる。毎日こつこつ作ってきたんだから。


「……鎖はね、余分に作っておいて欲しいの」


 この人は意地が悪い。まわりくどい言い方ばっかりしてないで、はっきり言えばいいのに。


 『ぎりぎりまで作れ。もちろん一人で』って。

 それにしても、ここまで嫌われるようなことをした覚えはない。疑問だ。


「うん、じゃあ作っておく」


 変に突っかかると後に何をされるかわからない。

 ため息は我慢だ。今だけ。











 今日が終わった。

 残っていてもすることがないから、鎖のできたぶんはロッカーに入れてさっさと帰ることにする。もちろん、文化祭の準備で残る人もいるけど……気が早すぎると思う。



「むかつくのよね」


 歩いていると後ろから聞こえてくる、たぶん誰かの悪口。


「何であんなに、いるだけでむかつくんだろ」


 木本さんの声だ。男子の前では決してださない地の声。


「杉田さんでしょー?」


 誰かが私の名前を出した。わかりきってる。


「当たり前じゃない」


 振り向いたらダメだ。さっさと帰ろう。




 靴箱に入れてあった靴の中に、けしカスがたくさん入れられていた。




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