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青空同盟  作者: 紅和
おりがみのふうせん
8/53

きっと気のせいだと思う

 昼休み。

 屋上の扉を思い切り開けた。

 手には大量の千代紙、それからはさみとノリと紙袋。


『これでよろしくね』


 いつの間に買ったのか、木本さんに渡されたカラフルな千代紙。

 押し付けられてしまって、断ることもできなかった。


 グループを引き連れてこっちへきたときの、あの勝ち誇ったような顔が思い浮かんだ。

 はっきり言って、嫌いだ。木本さんたちは。たぶん向こうも同じだと思うけど。



「……もう。何なのよ」


 ためいきをついた。幸せが逃げていきそうなぐらい。


「牛」


 相変わらずいる、生徒会長。もとはといえばこいつのせいだ。


 ……手に持った物が、妙に重くて、もう一度ためいきをついた。





 余裕の表情で本を読んでいる冴島を睨みながら、定位置になりつつある隅っこに腰を下ろした。

 千代紙を何枚か取り出して、はさみで8本に切っていく。

 単純な作業。切って輪にして繋いでいく。



 静かな屋上。

 ゆっくりと流れる時間。

 手を動かしながら冴島の方を向くと、奴はブックカバーつきの分厚い本を読んでいた。題名も内容も知らないけれど、難しいに違いない。

そういうのが嫌味なほど似合うんだから。





 私が奴を見ていても、奴は私の方を見ない。





 …………一瞬馬鹿な考えが浮かんできて、あわてて目を手元に戻す。

 きっと木本さんたちのせいで、気持ちが暗くなってるんだ。


 はさみを握る手に力を込めた。













 お腹が鳴った。

 昼休み終了10分前。

 ひたすら動かしていた手を止めて考えてみる。そういえばお昼ご飯を食べていなかった。

 木本さんに渡された千代紙にある意味夢中で、屋上に弁当を持ってくることすら忘れていた。

 馬鹿みたい。


 別に食べなくても、たぶん平気だとはおもうけれど。『授業中に腹が鳴る」っていうのはちょっといただけない。

 結構長くできた鎖と、切った千代紙を丁寧に紙袋に入れて、当たらないようにはさみとのり、袋に入ったままの千代紙も入れる。それから、屋上を出た。

 冴島は一度もこっちを見なかった。



 少しだけ、悲しくなった。

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