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青空同盟  作者: 紅和
あかいそらのしろいくも
6/53

赤い空に浮かぶのは白い雲

 思い切り、涙まで流して心の底から笑ったら、何だかすごくすっきりした。

 今まで引きずってた気持ちは何だったんだろう。馬鹿馬鹿しいって、このことだ。


「病院行ったら?」


 やっと笑いが収まったとき、冴島がぼそっと呟いた。


「余計なお世話よ!」


 たまにはいいのよ、たまには。



『生徒会長、冴島。今すぐ職員室まで』



「呼び出されてるよ。猫かぶり生徒会長君」


 私の精一杯の嫌味を、奴は軽くかわして屋上を出て行った。やっぱり、むかつく。



 屋上に、一人残った私。六月の空気は気持ち悪いけれど、それも今は気にしない。


「たまには、いいか」


 5時間目はさぼることにした。

 とりあえず今は、生ぬるい風に身を任せてみるのもいいと思うし。


「暑い……」


 辛うじてあった日陰に入っても、やっぱり暑かったけど。









「失礼しました」


 よりによってさぼった授業が、厳しいので有名な佐藤の数学だったなんて。

 7時間目のあと、職員室に呼ばれて怒られた。延々30分続いた説教は、何を言いたかったのかさっぱり不明。

 だって最後のほうは「最近の若者は」って話だったしね。


 時計を見ると、5時。教室まで鞄を取りに行って靴を履き替えて外に出ると、もう夕方のはずなのに暑い。まだ空は青くて、ああ夏だなって思う。

 校庭の方からも体育館の方からも、青春の声が聞こえてきた。

 鞄を右手から左手に持ち替えて校門を出た。




 いつもとちょっと違う道に入ると、『美容院 アバランシュ』なんていう変な名前の美容院を見つけた。そこで思い出す。


「失恋したら髪を切るとか、よく言うよね」


 そんな言葉にのったわけじゃない。ただ、暑苦しいから切ってもいいかな、って思っただけ。


 髪型は、美容師さんにお任せ。







「だからってこんな短く……」


 お金を払って外に出て、思わずつぶやいてしまった。何度触ってもショートカット。今まで肩より長かったのが嘘みたい。


『こんな感じでよろしいでしょうか』って聞かれて、いいえ、なんて答えられるはずもなく。ショートカットにしたのは、たぶん小学生のとき以来。妙に頭が軽くて、すごく変な感じ。頭を洗うのが楽そうなのはいいけれど。




 ふと見上げると、ようやく赤く染まり始めた空。今夜も雨は降らなさそう。梅雨のはずなのに、雨が少ない。この分だと、明日も晴れそうだ。





 まだ慣れない髪を触って、雲の流れにそってゆっくりと、家に向かって歩き始めた。






<シリーズ1 あかいそらのしろいくも 完>





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