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青空同盟  作者: 紅和
あかいそらのしろいくも
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終わりなんてそんなもんだ

 がやがやとうるさい教室。グループがいたるところにできている。


「ねえ、席借りてもいい?」


 今日は教室で食べようと思っていた。

 食べる準備はできていたのに、木本さんが声をかけてきた。優しく、もうしわけなさそうしているけれど、隠しきれていない「何でここにいるのよ」っていう雰囲気。


「ごめん、今日はここで食べるから」


 ちょっとだけ「悪いな」ってきもちから謝ってみた。別に好きで木本さんのお友達と近くの席になったわけじゃないけれど。


「いつも外に行くのに、何で今日はここ?」


「え?」


「いつもここで食べないくせに、急にそんなことされると困る」


 そういわれても……ここは私の席なんですけど。


「他に椅子、余ってないんだけど」


 …………いやだな、この空気。

 女子のネチネチは苦手だ。関わるのどころか、見ているのも苦手。


「わかった、じゃあ、どうぞ」


 強くいえなくて、結局席をゆずった。

 せっかくだしたお弁当ももう一度しまう。



 やだなあ……木本さんも、自分も。









 重い扉を開けた。3回目。


「また来た」


 やっぱりいる、生徒会長。できればいないでほしかったのに。


「あんたの所有地じゃないでしょ」


 そう言って、柵のほうまで歩いて座る。さっき食べ損ねたお弁当の包みを開いて、今度こそ食べ始めた。

 ……卵焼き、ちょっと塩辛い。



 雲の流れがやけにゆっくりとしていて、ずっと見ていたら寝てしまいそうだな……なんて思っていたとき、中庭から不意に聞こえてきた声。


「はい、あーん」


「あーん……お、うまい」


 私が一番求めていない声たちだった。

 テレビの占いでは、確か昨日も今日も「運勢は好調」だったのに……まだ立ち直れていない思考回路の隅っこでそんなことを考えたりする。

 なんとなく冴島のほうに目をやると、奴は今日も本を読んでいた。振り向く気配はない。

 その姿になぜかほっとしてため息を一つ吐き出した。


 お弁当に入っていた梅干の種を意味もなく転がして、目はぼーっと雲の流れを追う。

 テレビの占いは、あてにならないことを覚えておこう。









 いきなり。勢いのいい水音とともに、さっきから甘い雰囲気を出していた声が、驚きのそれに変わった。

 反射的に冴島が座っていたところを見ると、いない。

 カタン、と音がした左を見てみると、そこには青いバケツを持った冴島。



「もー最悪!!」


 怒りの声が聞こえる。


「何したのよ……?」


「何って。置いてあったバケツに雨水たまってたから、花に水をやろうと思っただけ」


 私の問いかけに、冴島は普通に言った。




「うわーびしょぬれだよ……なんだよ、ったく……」


「やーん。お化粧がー……」




 下から聞こえる、元彼氏とその今の彼女の声の具合と、この、青いバケツを持ったまま立っている生徒会長と。




「……何やってんのよ……」


 むしょうに笑いがこみ上げてきて、笑った。

 久しぶりにお腹を抱えて笑った。



 笑い涙もあることに、初めて気がついた。

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