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青空同盟  作者: 紅和
どれみふぁそのうた
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勝負の始まり



 8月というものは、言うまでもないことだけど。


「……暑い」


 絶対に『暑い』って言葉は使わない! そんな私の誓いは外に出た瞬間に破られた。

 夏休み。受験生にとっての、二回目の勝負の季節。

 学校の図書室に行って勉強しようかな、なんて制服を着て勉強道具を持って外に出たのはいいけれど、その思いすらあっけなくしぼんでしまいそう。

 ……家族に宣言した手前、いまさら戻れやしないんだけど。


「よし!」


 自転車にまたがった。照りつける太陽光線を跳ね返す勢いで、ペダルを踏む。



 私の夏は、まだ始まったばかりだ。







 暑すぎるのも嫌だけど、涼しすぎるのも、それはそれで困ったもんだと思う。


 問題集に手をつけ始めてから、何度目かのため息。思っていたよりも人が少ない図書室はクーラーがよく効いていて、汗だくのときは本当にものすごく気持ちよかった。

 その極楽も、ほんの10分足らずで終わってしまって。今は、人工的な寒さが気持ち悪い。冬の澄んだ寒さを思い出して、現実に、またため息。


 何となく体に悪そうな空気を吐き出すクーラーを、それでも使ってしまうのは、これってある意味タバコやお酒や麻薬と同類だ。やめられない止まらないってやつ。……うん。


 そんなことばっかり考えていて、問題集はちっとも進まない。もしかしたら、家にいたほうがはかどっていたかもしれない。

 ……私の片道40分は何だったんだろう。

 静かな空間に漂いながら、またまたため息を吐いた。




 やりたいことは、だんだん定まってきた。大学も、自分なりにいろいろ調べたりしている……これでも、がんばってると思う。だけど、決められない。

 もうあと半年しかないのにって、わかってはいるんだけど。

 一人で空回ってる自覚はある。やらなきゃいけないことはたくさんあるのに、ほら、今みたいにぐるぐる同じことを考えてる。




 ……だめだ。完全に勉強から意識が離れてしまったらしい。

 できるだけ空気を揺らさないように、そっと立ち上がった。すぐ帰ってくるつもりで、勉強道具はそのままにして。

 気分転換。……行く場所は、ひとつしかないんだけど。







 相変わらず重いドアを開けて外に出ると、とたんにぬるい風に包まれた。図書室から廊下に出たときもそうだったけれど、今も、なぜかほっとする。


 誰もいない屋上。持ってきていたペットボトルから、お茶を飲んだ。炭酸系は別に嫌いじゃないけど、あんまり飲まない。

 知らないうちに、喉がかわいていたらしくて、喉を通っていくお茶が心地よかった。



 どこからか聞こえてくるセミの鳴き声は、うるさいって思うほどでもない。



 柵に手をかけて、目を閉じた。

 夏っぽい空気が流れていく。




 一瞬だけ、この暑さの中に溶けてしまいたいって、そんなことを思った。



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