意地悪な運命
2年生という響きと、3年生という言葉の響きは全然違う。
いい加減着慣れた制服を着ながら思った。
目に見えて何か変わったなんてことはありえないのに、何度も鏡で自分の姿を映してみたり。
指定のカバンも靴も、すごく変な感じだ。
「いってきます」
いつもよりも、少しだけ早く家を出る。変な感じは外にでても同じ。ガラにもなく、近所の人と挨拶を交わしてみる。
……できればずっと、『受験生』にはなりたくなかったけれど。
*
学校に着くとすぐに、新しいクラスが掲示板に貼り出されているのがわかった。
群がっている制服の中に入り込んで見上げる。
1組から3組までが理系のクラスで、残りは文系。あんまり大きくない学校だから、クラス数は6つしかない。
私は一応文系で、だから上半分の名簿は関係ない。……それでも、何となく1組から順番に目をとおした。
「あ、俺2組だわ」
そんな声が聞こえてきたとき、ちょうど私も2組の名簿を見ていた。
声のせいで、別にどうでもいい男の名前が目に付いた。
『冴島健史』
小さく書かれているのは、理系の2組。
ふーん、そうか。あいつは理系なんだ。
本を読む奴をよく見ていたから、何となく文系っぽいと思っていた。……どうでもいいけど。
そのままずーっと目だけを動かして、やっと自分の名前を見つけた。
掲示板の右下、6組。
それなら、1組からじゃなく6組から見ればすぐだったな、いまさらそんなことを考える。
自分のクラスメイトはどうでもよかった。どうせ、仲がいい人なんかいないんだから。
人ごみの中からどうにか抜け出して、ポケットに手をつっこんで歩き出した。危ないってわかっていても、ついやっちゃう私の癖だ。
「またお前と同じクラスかよ」
「嬉しいくせにー」
そんな会話を聞きながら、3年6組の靴箱で靴を履き替えて、廊下を歩いていく。新しい教室は1階だ。
移動教室は大変だけど、朝の眠いときに階段を上がらないでいいのは楽。
あっというまに教室にたどり着いた。扉をあける。
同じ制服をきているのに、なぜか去年とはちょっと違う空気。
……ここで一年間過ごすのか……漠然とそう思いながら、教室の中へ一歩踏み入れた。そのまま自分の席まで歩いていこうとしたのに、覚えている顔が2つあって……立ち止まってしまった。
元彼と、元友達。
……ここで一年間過ごすのか……。
さっきよりもその実感がわいてきて、深くため息をついた。




