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青空同盟  作者: 紅和
らいおんのたてがみ
22/53

意地悪な運命


 2年生という響きと、3年生という言葉の響きは全然違う。

 いい加減着慣れた制服を着ながら思った。


 目に見えて何か変わったなんてことはありえないのに、何度も鏡で自分の姿を映してみたり。

指定のカバンも靴も、すごく変な感じだ。


「いってきます」


 いつもよりも、少しだけ早く家を出る。変な感じは外にでても同じ。ガラにもなく、近所の人と挨拶を交わしてみる。



 ……できればずっと、『受験生』にはなりたくなかったけれど。







 学校に着くとすぐに、新しいクラスが掲示板に貼り出されているのがわかった。

 群がっている制服の中に入り込んで見上げる。


 1組から3組までが理系のクラスで、残りは文系。あんまり大きくない学校だから、クラス数は6つしかない。


 私は一応文系で、だから上半分の名簿は関係ない。……それでも、何となく1組から順番に目をとおした。


「あ、俺2組だわ」


 そんな声が聞こえてきたとき、ちょうど私も2組の名簿を見ていた。

 声のせいで、別にどうでもいい男の名前が目に付いた。


『冴島健史』


 小さく書かれているのは、理系の2組。


 ふーん、そうか。あいつは理系なんだ。

 本を読む奴をよく見ていたから、何となく文系っぽいと思っていた。……どうでもいいけど。


 そのままずーっと目だけを動かして、やっと自分の名前を見つけた。

 掲示板の右下、6組。

 それなら、1組からじゃなく6組から見ればすぐだったな、いまさらそんなことを考える。

 自分のクラスメイトはどうでもよかった。どうせ、仲がいい人なんかいないんだから。




 人ごみの中からどうにか抜け出して、ポケットに手をつっこんで歩き出した。危ないってわかっていても、ついやっちゃう私の癖だ。


「またお前と同じクラスかよ」


「嬉しいくせにー」


 そんな会話を聞きながら、3年6組の靴箱で靴を履き替えて、廊下を歩いていく。新しい教室は1階だ。

 移動教室は大変だけど、朝の眠いときに階段を上がらないでいいのは楽。


 あっというまに教室にたどり着いた。扉をあける。

 同じ制服をきているのに、なぜか去年とはちょっと違う空気。

……ここで一年間過ごすのか……漠然とそう思いながら、教室の中へ一歩踏み入れた。そのまま自分の席まで歩いていこうとしたのに、覚えている顔が2つあって……立ち止まってしまった。


 元彼と、元友達。



……ここで一年間過ごすのか……。

 さっきよりもその実感がわいてきて、深くため息をついた。



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