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青空同盟  作者: 紅和
ぞうさんのながいはな
17/53

わからないことだらけ



「冬は寒いなあ」


 昨日のあのウワサはどうなったんだろうって、少し心配しながらも、私はまた屋上にいる。


「沖縄じゃねえんだから、当たり前だ」


 今日は冴島も来ていた。


「うるさいわねえ……あ、ちょっと、こっち来ないでってば」


 日なたを陣取って、冴島には寄らないように言った。

 ウワサをしずめるため。私の平和を守るため。


「俺だって寒いんですけど。自己中な杉田葵さん?」


 隙あらばこっちに来ようとする奴を威嚇する。

 もとはと言えばこいつのせいで巻き込まれたんだから。


「寒いなら中に戻ればいいんじゃないかしら? 冴島健史くん」


 今ならまだ何とかなるはずだ。今日学校にきても、靴箱や机やロッカーは悲惨なことにはなっていなかった。

 今ならまだ、あのウワサから逃げられる。

 あとは昨日の女の子が否定してくれていれば万事解決。


「そのセリフ、そっくりそのまま返しますよ、杉田葵さん」


「あんたが戻ればいいでしょ!」


「短気は損気」


「うるさい!」


 で、あの子たちはこんな奴のどこがいいんだろう。

 嫌味ったらしくて根性悪で、猫かぶりなこいつのどこを好きになる?


「……じろじろ見るなよ」


「見てない!」


……どこがいいの?











 放課後の職員室。

 忘れていた。提出期限が今日だってことを。


「進路、決まってないのか?」


 ああ、あのウワサのせいで忘れたんだった。


「出してないのは……あー、お前だけだな」


「はあ……」


 放課後の職員室に、呼び出されてしまった。

 目の前に立っているのは担任。呼び出されたところで、進路が決まるわけじゃないけれど、ここで無視してもいいことがないのでやめておいた。


「もうそろそろ決めないと、3年がきついぞ」


 私だって早く決めてしまいたい。


「進路は早めに決めておいたほうがいいぞ」


 15分経過。繰り返される同じようなセリフは、そのたびに私の心を重くする。



「まだなら今日はいいけど、来週までには出せよ」


「はあ……失礼しました……」


 やっと解放されたときには、もうこれ以上ないくらいの疲れ。


「どうしよう……」


 ポケットの中に手を入れて、握り締めた紙。それはもう既に折り目がついてぐちゃぐちゃになっている。


 先のことなんて見えない。

 どうすれば決められる?



 カバンが、いつもよりも重かった。



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