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青空同盟  作者: 紅和
ぞうさんのながいはな
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心が重くなる言葉

 一月が過ぎるのは早い。

 この間新しい年になって、学校が始まって、地震があった日を過ぎて……いつのまにか、もうすぐ二月というところだ。


 三年生の受験で、すこしぴりぴりとした雰囲気の学校。

 私たち二年生も何となく笑えない。


「じゃあ、今から配るから、よく考えて明後日までには出すように」


 ロングホームルームで、担任が進路についての説明をした。

 前からまわってくる『進路志望調査書』と書かれた紙。教室の中がざわつく。

 行きたい大学や就職先の大体をもう決めなきゃいけないなんて。あと一年もないという先生の言葉が急に現実味をおびた。


「えーどうしよー」


「どこにしようかなあ」


 隣近所の席の子の喋り声が聞こえてくる。

 シャーペンを動かす音も聞こえて、ああ、みんな決まってるんだな……なんて思う。


 そんな私の紙は真っ白。


 正直に言うと、先のことなんて何も考えていない。

 三年で科目をいくつか選ばなきゃいけないから何か決めておかないと、っていうのはわかっているけれど。でも、自分が何をしたいのかわからない。



 結局チャイムが鳴っても、私の紙は真っ白なままだった。











「さむっ」


 この前もらった鍵を初めて使って屋上の扉をあけた。冴島は来ていないみたいだ。


 さすがに寒くて、もってきていたマフラーをあわてて巻いた。お弁当を教室で食べてきてよかったと思う。 ……たとえちょっと気まずくても。

 木本さんとは、あの一件以来何もない。喋りもしないし、いたずらされることもなくなった。ただのクラスメイトだ。おまけに席替えがあったおかげで、木本さんのお友達とも席が離れた。これでまた近くなっていたら、この寒い中お弁当を食べなきゃいけなくなるところだった。


「どうしよっかなあ……」


 悩みは、昨日また新しくできた。  柵にもたれかかって、紙をポケットから出して眺めてみる。『進路志望調査書』とだけ書かれた紙は、味気ないくせに重い。

 ここへ来たら何か答えが見つかりそうな気がしていた。根拠はないけれど。


「……そんなに簡単なわけないか」


 冬だってせいか、屋上から見える景色はどこか寂しい。私以外の誰も来る気配のないこの場所で、答えが見つかるはずもなく。

 味気なく書かれた『進路』という文字を、意味もなく指でなでてみたりした。



 チャイムが鳴るまであと十五分。しばらく寒風に吹かれてみよう。



 もしかしたら何か見つけられるかもしれないなんて、甘い期待に身を任せて。



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