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召喚の不思議

 お久しぶりの投稿・・・。

「おはよう、アイリス」


「おはようございます。早いですね」


 図書室(アイリス専用)には、ふわふわと浮いた椅子やらソファやらティーポットやらの中に二人の人影がある。

 勿論、アイリスと俺だ。

 ちなみに現在、朝7時くらい。アイリスはパジャマのままで修行に来るには早すぎたようだ。


「朝ごはんは食べてきたんですか?」


 アイリスは自分の朝食を用意しながら俺に尋ねた。


(あれ?ここ図書室だよな?なんでコップにお皿にベーコンやパンもあるんだ?)


 ちょっと疑問を持ちつつも答える。


「ああ大丈夫だ。ちょうど栄養ドリンクもってたからそれ飲んだ」


「食べてないですよね、それ。一緒に用意しますから。食べましょう」


 アイリスが指を少し動かすと図書室の奥から次々と皿やコップが飛び出てくる。


「これってどうやってるんだ?」


 やっぱり気になって聞いてみる。


「これですか?これは、条件魔法です」


 そういって、アイリスはてきぱきとぷかぷか浮いている食器を机に置いて飲み物をコップに入れたりいつの間にか程よく焼けいい香りを出しているベーコンを皿に乗せたりした。

 これで、あっという間に二人分の朝食が完成。それにしてもこの世界の食べ物は俺の世界のものとよく似ている。


「さあ、朝食が冷めないうちに食べましょうか」


 アイリスは椅子に座り箸を持って朝食を食べようとする。中世のような国なのに変なところで日本ぽいな・・・。


「え?いやちょっと待て。だからこれどうやってんだ?」


 すると、アイリスは不思議そうな顔でもう一度いう。


「これですか?これは、条件魔法です」


「え?いや?え?そうじゃなくてな」


 会話がかみ合わない。俺とアイリスどちらも似たような顔になる。


「俺がいいたいのはな、この条件魔法、どんな条件で、こうなるのか、知りたいんだ」


「・・・、ああ!そういうことですか!」


「おお!分かってくれたか!」


 二人で、顔を見合わせて笑いあう。


「すいません。人と話すのって久しぶりなので・・・。人と話し方忘れてたみたいです・・・」


 一気に空気がクールダウンと重くなったように感じた。

 しまった、地雷を踏んだようだ。


「ア、アイリス!これ上手いな!このベーコンどうやって作ったんだ!?」


 とにかく、話を必死で変える俺。アイリスの地雷を踏まないように話題を変える。


「え?ああ、それはですね・・・」


 よっしゃ!うまく逸らした!思わず心の中でガッツポーズ。

 だが、


「外でモンスターを狩ってきたんです」


「え?いや?え?そうじゃなくてな」


 同じような会話が続いたのは言うまでもない。







「ごちそうさまでした」


 と、手を合わせて食後の挨拶をした。


「なんですか、それ?」


 片づけをしながらアイリスは手を合わせた俺を指さして尋ねてきた。


「あれ?この世界にはないのか?まあ、食後の挨拶だな。いただきますは、食前の挨拶で作ってくれた人や食材になった動物への感謝ってところかな」


「へー・・・、いいですね。それ」


「この世界にはそんな挨拶ないのか?」


 すると、アイリスは苦笑いを浮かべながらいう。


「あるにはあるんですが・・・。めんどくさいんですよ。食べることは神に感謝だとかなんとか。とても長いんです。私は絶対使いませんね」


「ああ、そりゃめんどくさいな」


「それに比べて『いただきます』や『ごちそうさま』っていいですね。なーんにもしていない神に感謝じゃなくて作った人や食材に感謝」


 アイリスは嬉しそうに笑う。


「どうせですから今日は異文化交流、というか異世界交流しましょう。自分の世界のことを教え合いませんか?」


 ちょうど食器も片づけ終わったところでアイリスが提案した。

 確かにこの世界のことを知っておいた方が俺には都合がいいことも多いだろう。


「ほう、いいんじゃないか?」


「それでは、何から話しましょうか?」


「うーん、やっぱり召喚についてかな」


「召喚、というと?」


「なんかさ、おかしくないか?こんなに都合よく事が運ぶのって。

 なんで、俺ら普通に話せてるんだ?

 なんで、食べ物も似たようなものがあってしかも、害がないんだ?

 なんで、この世界の空気とかも害がないんだ?

 とまあ、都合がよすぎやしないか?」


 アイリスは細長い足を組み、口に手を当てて考える。

 何故、何故、何故、考え始めたらきりがない。

 偶然だとは、思えない。異常なのだ。


 考えがまとまったのか、アイリスは口に当てていた手を降ろし、足を組み直す。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「さぁ・・・、不思議ですね・・・」


 思わず椅子からずっこける。椅子が浮いていなくてよかった・・・。


「神妙そうな顔していうことじゃねえよ!」


「あはははは、大丈夫ですか?仕方ないですよ。わからないものは分からないんですから」


 アイリスは少しおどけたように手をひろげ、ついでに耳も同じようにして言う。


「召喚なんてそんなものと思えばいいんじゃないですか?」


「ええええ・・・」


「まあ、可能性としてはですが・・・、条件魔法を発動させたとか?」


「条件魔法を発動?誰が?」


 だがそれは、魔力にさまざまな条件を付けてこそ発動する魔法だ。何より、作ったのはアイリスでそれを知っているのは俺とアイリスだけのはず。


「ええ、そうです。まあ、正しくは『無意識』に発動したですが」


「無意識に?」


 全く話が読めない。どういうことだ。


「さっきの誰がしたと言う質問の答えは、『たくさんの人』ですね。この場合の『たくさんの人』は『勇者の召喚を願う人々』です。『勇者の召喚を願う人々』には、たくさんの願望があると思うのです。

 たとえば、単純に力の強い勇者、魔力の多い勇者、上手く魔法を使う勇者、頭のいい勇者、美人の勇者、イケメンの勇者・・・、その中でもこんな願いがあったかもしれません。同じような言葉をしゃべる勇者、同じような環境で生きられる勇者とか・・・」


「!つーことは・・・」


「ええ、そのつーことはですね。『人々の願い』が条件魔法でいう『条件』魔力はおそらく召喚陣。これで無意識に発動です」


「いや、でもおかしいだろ。この世界にどんだけ人がいるか知らんがその大勢の人の願いは様々だろ。曖昧だった魔法が明確になるどころかゴチャゴチャになるだろう」


「まー、だから不思議って言ったんですよ。私も分かりません。それに、条件魔法って言ったって詳しくわかんないんですから。本当はすっごく危険なんですよ。むやみに人に教えようと思いませんもん。・・・下手に魔力低いと死にますし」


 そういって、アイリスは宙に浮いているベットを呼び寄せてごろんと寝っころがる。


「え、ちょっと待て。俺の魔力低かったらどうなってたの。ねえ」


「さ、さあ!?知りませーん!」


 ぴゅーっと言う擬音が似合う動作でベットに乗ったアイリスは図書室のはるか上に飛んで行ってしまった。

 そして上から、


「着替えるのでーー!一応出てってくださーーーーい!」


「一応って何だーーーー!俺は男だぞーーー!」


「じゃあ出てってくださーーーい!」


 ぐっ・・・、うまく外に出るように誘導されてしまった。






 ちなみにあとからもう一度異世界交流を行ったときアイリスを問い詰めると


『魔力あったし、大丈夫かなっ♪て思ったんです』


 大丈夫かな♪にはイラッときたが、一応確信があって教えてくれたらしい。

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