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魔法とは

 図書室というかアイリスの私室で俺たちはふわふわと浮いたソファに座り向き合っていた。このソファ、なかなか乗り心地がいい。


「さて、まずは何を教えましょうか?」


「魔法で!」


 俺はアイリスの問いに速攻で答える。

 ビバ魔法、愛してる。ファンタジーな世界だしせっかくだから魔法を覚えたい。


「ま、魔法ですね・・・。了解です」


 俺のテンションに少しアイリスは引いている。


「えー、ゴホン。まず・・・、そうですね。魔法で大事なことはなんだと思います?」


「大事なこと・・・?魔力とか威力とか?」


「正解に近いです。けど、もっと別のものです」


 アイリスは、ウサミミで三角を作る。器用っすね・・・。


 大事なことか・・・うーむ・・・。

 俺が口に手を当てて考えているとアイリスがじっと見てくる。そ。そんなに見ないで!


「わかりませんか?正解は、イメージです」


「いめーじ?」


「ハイ、イメージ。大きな魔法はいろいろ複雑な設定がありますが基本的に魔法と言うものは曖昧なのです。世界がゆがんで魔法ができるのか、それとも新たに作られているのか、はたまた命を削っているのか、いろいろな考え方があります」


「よくわからんな」


「そうです、よくわからないから魔法なんです。まあ、要するに妄想すればするほど強い魔法ができることですね」


 アイリスは両手を横に開きながらウサミミで「?」のような形を作る。本当に器用なやつ。

 妄想って・・・。いや、でもよくわからんならそんな感じなのか?


「それでは、さっそく妄想、もとい魔法を使ってみましょう。まずは魔力を感じることからです」


 魔力を感じる?

 アイリスはソファに乗りながら俺に近づき両手を握る。

 ア、アイリスさん・・・、積極的ですね・・・!


 そんなバカなことを考えていると、アイリスが「はいや!」と言う掛け声をかける。


 その瞬間、体中の血管に電流が走るような感覚が走る・・・!!!


「グヲおあぁぁアぁぁっっッ!!!」


 痛い!熱いッ!!痛い!!!ぁぁあっついいい!!!!!

 血が沸騰しているのかとさえ思う。


「もうちょっと頑張ってくださーい・・・ね!」


「アアあああぁァァアアッッッ!!!」


 アイリスがもう一度強く手を握ると今度は血が凍るような感覚がする。

 

 寒い・・・、寒い、寒い、寒い、寒い!!!!冷たい!

 俺は体を温めようと抱きしめる。だが、体の中から凍っていくような感覚が押し寄せる。


「最後です!最後ですよ!頑張ってください!!」


 これで・・・、最後なのか・・・?

 俺の体は限界が近かった。これ以上は本当に死んでしまうかもしれない。


 ズン!と体の中の血がドロドロとした鉄に変わったかと思った。

 燃え上がるような熱さはない、凍りつくような寒さもない・・・、だが重い!


「ぐ・・・うぁいあああ・・・・・・」


 息が・・・詰ま・・・って・・・。死ぬ・・・。


「はい!終わりです!」


 アイリスがそういうと同時に体の異常が収まった。そして異常が収まった代わりに体の中に力の流れを感じる。


「どうですか?なんかグアーってなるでしょう!」


 アイリスが無い胸を張りながら俺に訪ねる。いや待てよ、ないことはないんだ。あるけど見えにくいだけであって・・・、てのはどうでも・・・良くないが今は考えることじゃない。


「はぁ、はぁ・・・、な、なんかグアーってならんが。体に何か流れるような感覚がするな・・・。ゲホッ、何をしたんだ?」


「私の魔力を流して、黒田さんの中に最初からあった魔力を無理やり体に感知させたんです」


 そうか・・・、さっきの死ぬほど痛い感覚は無駄じゃなかったのか・・・。


「って、無理やり?」


「無理やりですよ?」


「危なくないの?」


「・・・・・・」


 アイリスは、一度かたまり、すぐにぷいっと横を向く。


「顔そらしやがった!絶対危ない方法じゃねーか!」


 アイリスは横を向いたまま口笛まで吹き始めた。


「仕方ないですよ、私この方法しか知りませんしー」


「お前、そんなんで本当に魔法使えるの!?」


「私のは我流だからいいんですぅー。他とは違うんですぅー」


「もうちょっと!もうちょっと慎重な教え方にしてくれ!我流とか危ない気がするんだが!」


 アイリスの若干投げやりな態度が恐ろしく感じる。

 我流って怖い。何十年、何百年も研究されている魔法なら問題点や危険な禁術とかも見つかって注意できそうだが、我流なんてどんな危ないことがあるかわからない。


「大丈夫ですって!私は“まだ”死んでませんから」


「死ぬ可能性あるの!?」


「・・・さあ?」


 これだから我流は怖い・・・。


「要するに使えりゃそれでいいんです!いいんですよ!教えますから!早く座って!」


 俺はアイリスの気迫に押され空飛ぶソファに座りなおす。


「さて!先ほど私は魔法は曖昧だと言いました。ですから魔法を使うとき昔は何度も誤爆したり暴走したりとかなり危険なものだったそうです。まあ、それでも魔法はつかえたから良かったらしいんですが。」


 魔法って本当に危ないな・・・。よくそんなものを使える。


「そこで、人々が開発したのがこのような魔法陣です」


 そういって、アイリスはポケットから何枚か紙を取り出す。紙には複雑な文字や記号が書かれている。それは俺とキリがこの国に誘拐された時に見た魔法陣に似ていた。


「私は一般の魔法にはあまり詳しくないんですが、これが、なかなか便利でして、魔法を使ったときに産まれる被害をこれで無くすというものです」


「ん?どういうことだ?」


「ですから、さっき言いましたよね?‘魔法を使うと誤爆したり爆発したり……でも、魔法はちゃんと使えると。’それなら自分じゃなくて別のものが魔法を使えば自分に被害ないじゃん・・・ってことで魔法陣に魔法に必要な詠唱や自分の魔力を入れた魔法陣が使われるようになりました」


 なるほど・・・、よく考えたもんだ・・・。


「ちなみにこの魔法陣が開発される前は金持ちが自分の奴隷に魔法を使用させたりしたそうです。魔法陣は魔法を使いやすくすると同時にたくさんの人々を救ったのですね」


 アイリスは、魔法陣をひらひらと振りながらソファに寝っころがる。


「それで?その魔法陣を使った魔法とお前の我流はどう違うんだ?」


 アイリスはソファに転がりながら魔法陣をぽいっと投げ飛ばす。

 そして、不敵に笑いながら言う。


「私の魔法は、こんな魔法陣なんてものを使わなくてもいいんです。まあ・・・、しいていうなら『条件魔法』ってとこですかね?」

 しのむん様より誤字指摘ありがとうございました。


 後半の方のアイリスのセリフで


魔法を使うと誤爆したり爆発したり、でも魔法ちゃんと使えると。

→‘魔法を使うと誤爆したり爆発したり……でも、魔法はちゃんと使えると。’

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