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ウサミミと出会った

チュンチュン、チュン


 昔、聞いた話なのだが鳥の鳴く声とは交尾を求める声らしい。朝っぱらからお盛んなことです。人間だったら朝から路上で交尾しようと思う奴はあまりいないからもしかしたら小鳥ってある意味勇者なのかな?


「ふわぁあ・・・、知らない天井・・・」


 おはよう異世界、よくも気持ちの良い朝を作りやがってくれたな。非常に感謝する。もう帰りたくない気がしてきた・・・。


「・・・もう一回寝ようかな・・・。ふかふかベットだし」


 いや、やめよう・・・。そういえば外に幼馴染がいる。少し様子を見ようか・・・。


「でもダルいしなー、朝だし・・・」


 それにあいつは男の子だ。多少は先輩からの無茶振りでもくらわないといけない。どうせあいつは部活でも勉強でもちやほやされてるだろうし。うん問題ない。


「おやすみなs「勇者様ぁああ!!大丈夫っすかぁああ」


 外から大きな声が聞こえた。この声・・・、このウザい喋り方・・・、緑の騎士か。

 何をそんなに驚くようなことが・・・。


 俺はベットから降りドアを開ける。


「・・・うふふふふ・・・・・・・、一枚・・・たった一枚先のドアには・・・うふふふふふふふ」


 すぐに閉めた。幼馴染なんていなかった。目の下にクマを作ってぶつぶつ何か言っている幼馴染が三角座りなんかしていなかった。

 むしろ俺には幼馴染なんかいなかった気がする。うんそうだきっとそうだ。


「さあて、もう一眠r「現実を見てほしいっすぅぅぅぅ」


バッキイイ!


「るっせいな!!どうした!って大丈夫か・・・」


 床には何か物理的な攻撃を受けて気絶したような。そう、まるでドアにでもぶつかったような傷を受けたネコミミでオレンジの髪の男がいたのだ!というか、倒れていたのだ!

 男はやんちゃそうな顔立ちで、緑の鎧を着ている。そしてその手には何枚かの地図を持っていた。


「おお、これはこれは昨日の騎士君じゃあないか。地図を持ってきてくれたのか。いやあありがたい。え、なに?俺の持っている金もあげるって?いやあ、悪いね?なんで心を読まれたかって?君がそんな表情をしているからさ。はははははは!」


 俺は騎士の行為を無駄にしないために騎士の懐から金の入った袋と手から地図を頂く。

 俺も金のやり取りは苦手なんだけどなあ・・・。


「それじゃあ騎士君、ありがとう!なあに大丈夫!懐に入っていた死亡フラグ満タンの結婚指輪らしきものは頂かないから!」


 そういって俺は図書室を目指す。今日の目的を達成するために。






「ふう、ここが図書室か?」


 図書室は何ともこじんまりとした扉だった。木でできた地味な扉で今まで見たような飾りっ気はない。本当にここは図書室か?俺の部屋より小さそうだ。


「まっ、どうでもいいけどな。いざ向かわん、知識の海へ!」


 広い、図書室は広いの一言だ。埋め尽くすようなの本の山にたくさんの積み重ねられた本棚。古い本のにおいが雰囲気を出している。図書室全体にはいくつも階段があり、あちこちに本が浮いている。後ろを見ればそこにあったはずのドアは、はるか先にある。


「すげえ・・・、空間を捻じ曲げたりする魔法ってやつか?」


 図書室は、得体のしれない力によって時間も法則も常識さえも曲げられているように感じた。


ぴょこん


 ん?今何か動いたか?なにやら白く長いようなもの。

 幻覚か?いや、ここは何があってもおかしくない謎空間・・・、まさか魔物か!?


ぴーん!


 やっぱり!あった!なんか伸びてるし!

 よく見るとそれは・・・、ウサミミ(・・・)だったのだ。


「これは・・・、まさかうわさに聞く・・・!」


 ウサミミと言うことは、魔物か・・・・、獣人さん!

 獣人なんて初めて見る・・・、楽しみだな・・・。俺はオレンジの髪のネコミミの獣人なんかこれっぽちも見たことない、獣人さんは初めてみる。うん、初めて・・・。


「えーっと、誰かいますか?」


ぴょこん!ぴょこん!


 いる!確実に反応している!

 体隠してウサミミ隠さずの状態からがさごそと音をたて、本の山から出てきたのは女の子だった。ウサミミの。


「人に名前を尋ねるなら自分から、がマナーだと思うのですが?」


 高く澄んでいて鈴のような音の声だった。

 女の子は美しかった。今までに出会ったどんな女の子よりも綺麗で可愛くて美しい。


 綺麗な顔立ち、真っ白で絹のような髪、目は紅くまるでルビーのようで、肌は雪のように白い。歳は俺より少し年下くらい。着ているドレスは地味な感じだが、彼女が着ることにより、どんなに装飾をした服よりも、どんなに高い服よりも美しく感じる。


 そんなことを考えて、途端に顔が熱くなる。体の奥底から、なにかこみ上げるような気分。こんなのは初めてだと思ったり・・・。


「く、黒田正平だ。黒田が性で正平が名だ」


「そうですか。私はアイリス・カメリアです」


 彼女はウサミミを動かしながら答える。

 あまり表情は変わらない。そういう子なのか、それとも俺がいることが不快なのかは、わからない。


「え、えっと!な、なにしてるんだ?ここで」


「本を、読んでいます」


「そ、そりゃそうか!まあ、そうだよな!」


(何聞いてんてんだぁァぁぁぁぁ!当たり前だろうがああ!)


 俺は悶えた。うずくまって悶えた。悲しくなるくらいに悶える。

 彼女、アイリスは不思議そうに俺を見る。そ、そんな目で見ないでくれ・・・。


「そ、それにしても!ここは本が多いな!本の海に沈んじゃってブックブックってな!」


 ・・・・・・空気が、死んだ


(やらかしたああああああああ!!!終ったぁぁぁぁぁぁぁ!!)


「ふふふ・・・、変な人ですね」


 わ、笑った!口に手を当てて笑ってくれている!しかもウサミミもブンブン振って!

 何となく、俺もつられて笑う。


「ふふふ・・・、ここに本が多いのは私が集めて改造したんです。図書室を」


「図書室って・・・全部かよ!?」


「はい、もとは小さな本棚が一つしかなかったのですが空間魔法でいじったり、召喚魔法で家から本を持って来たり、本棚と階段も手作りですよ」


「手作りって・・・!どんだけかかったんだよ・・・」


 少なくともこの量は一年や二年で終わる量じゃない・・・。

 しかも手作りで階段なんて・・・。


「そうですね・・・、一か月ちょいです」


「はぁ!?一か月ぅう!?」


「いやあ・・・、階段に使う素材がなかなか狩れなくて・・・」


「素材を狩るって?」


「クリスタルドラゴンを討伐したんですよ」


 よ、よくわからんがすごいことは分かった・・・。

 この子は魔術の腕がいいのだろうか?


「なあ!初めて会ってこんなこと頼むのは、おかしいと思うんだが、俺に戦い方を教えてくれ!」


「戦い方、ですか?」


 アイリスはかわいらしく小首をかしげる。


「ああ、俺はここに来るのは初めてなんだが、てか異世界から来たんだけど・・・。戦い方とかもなにもわからないんだ」


 ああ、自分が何言ってるかわけわからん。無茶苦茶恥ずかしい。

 何考えてんだ俺。自分らしくない。


 アイリスは下を向き少し考える素振りをする。

 そして、顔を上げてにっこりと笑って手を出した。


「アイリス・カメリアです。いいですよ、私が教えてあげます」


 彼女の笑った顔は輝いていて、太陽のようだった。

 俺は差し出された手を見て同じように笑ってつかむ。


「黒田正平だ。よろしく。」

「性別は男だ」


「マジですか!?」

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