契約って重要
「勇者様が二人?」「なんと美しい女性だ・・・」「どちらが勇者様だ・・・」「ふん、あれが勇者?剣も持てないような腕をしている」
俺はたくさんの人々の話し声の中目を覚ました。俺の体の上ではキリが気絶している。
現状確認、まずは気絶したキリ、は俺を追いかけてきたのだろう。次に周りを見ると目の前に真っ白な服を来た戸惑ったような顔の少女。その後ろには神官のような服を着た男や女がこちらを見ている。他には赤や青などいろいろな色の鎧を来た集団に、うさん臭そうな目を向けるイケメン、にやにやと笑うデブ共・・・。そして最奥には豪奢な服をきて王冠をかぶった初老の男・・・。
場所の確認、大理石でできた床や大きな柱、真っ赤な絨毯にきらびやかな装飾。天井には大きなシャンデリアが飾ってある。そして床に大きな《魔法陣》・・・。なるほど、ね(・・・)
おそらく、なのだがここは王の謁見の間で白い服の少女は俺たちの召喚主。その後ろの神官だか僧侶か知らんが何か宗教団体で白い服の少女を中心としている。赤や青の集団はこの国の騎士団、鎧の色は部隊か何かかな?うさん臭そうな目を向けるイケメンはまだわからないが、確実に俺達に敵意を向けている。ニヤニヤとしたデブは俺たちがどの程度使えるか想像しているようだ。そして初老の男は王さんって所か。
「キリ、起きろ」
ペチンとキリの頬を叩いて起こす。
キリは目をこすってあくびをする。のんきなやつだ・・・。ちなみに今の動作で何人かの女性が鼻血を吹き出し倒れた。
「おはよう・・・おねえちゃ・・・ハッ!!」
覚醒したようだ。それなら早く俺の上からどいていただきたい。
「だ、大丈夫!?光に呑まれて・・・それで・・・!」
「あいあい、大丈夫だからどけ」
キリは、下に俺がいるのに気付いたのかすぐに俺の体からよける。
何故か顔を真っ赤にしている。
「ご、ごめんね・・・」
「別に大丈夫だよ。そんなことより、ここがどんなところか説明してもらおうかな?そうだなあ・・・、んじゃ、そこのあんた」
俺は白い服の少女を指さす。少女はいきなりで驚いているようだ。いや、言葉がわからない可能性がある。
「ぶ、無礼者!この私に気安く話しかけるのではありません!!」
よかった、よかった、言葉は通じるようだ。これなら俺の言ってみたい言葉ランキングのベスト10の言葉を言えそうだ。
俺は目の前の少女の耳に口を近づけ言葉を紡ぐ。
「なめてんじゃァねえぞ糞ガキッ。礼儀がなってねェんだよ。ケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろうかァ?あァ?」
思った通り少女はピシっと背筋を伸ばガタガタと震える。
「も、申し訳ありませんでした!」
ついでに頭も下げる。あはは・・・悪いことした気☆分!
「正・・・何言ったの・・・?」
「んー?秘密」
だって、恥ずかしいしな。
「さて、さっさと説明してもらおうか?」
「わ、私はマリア・スカーレットですわ!あなた方が召喚した理由は魔王を倒させるため、この世界を守るためですわ!」
ふん、『守るため』ねえ・・・。あくまで自分たちは悪くないと・・・。
「俺が聞いてるのは、そういうことじゃない。お前らがなんで俺らを呼んだのかなんて道端に落ちている石ころと同じくらい興味ないことだ」
周りがざわつく、何人かが怒りをこめてこちらをにらむ。他の奴らに腕をつかまれて動けないみたいだが俺に飛びかかろうとしている奴までいる。
キリはこの状況について行けずオロオロしている。
「だってそうだろう?こっちの意思も聞かないで拉致して訳も分からない世界に放り出されて挙句の果てにこの世界を守れ?馬鹿じゃねえのか?なんで俺らがお前ら言うこと聞かねえといけないんだよ、理不尽だろう」
「貴様!言わせておけば!!!」
真っ赤な鎧の騎士が飛び出してくる。
「やめい!!」
初老の男が赤い鎧を叱咤する。その声に男は悔しそうにこちらをにらみうつむく。
なにこれ俺が悪いの?
「彼女の言うことはもっともじゃ。我らは自分たちの世界の都合で彼らを呼んだ、いや、攫った。これは許されることではない・・・」
「ですが・・・!」
「異世界の者よ、本当にすまない。どうか話だけでも聞い頂きたい・・・」
王は頭を下げ、しわがれた声で俺に頼む。その様子を見て他の何人かの家臣も頭を下げる。
「はあ・・・、ここがどんなところか聞きたいのは俺も同じだ。聞くだけだからな、聞いた後に決める」
「ぼ、ぼくも誰かが困っているのにそれを無視するこてゃはできません!」
キリ、お前は主人公だな、ほんとに・・・。噛んだけど・・・
王の話によるとここは、アリデクロスと言う世界らしい。この世界には古くから魔法があり人間や獣人やエルフのような妖精たちと共に暮らしてきたらしい。
だがある日突然、魔物が活性化し始め《魔王》と名乗るものが現れた。魔王は知識がある魔物《魔人》を集め国を作った。魔王は魔人や魔物を従え次々と小さな国を侵略していった。
だが、いくつかの大国は魔王に対抗することができ侵略されなかった。その国々と現在は同盟を組んでいる。
そして、その国々で魔王を討伐するため勇者を召喚が決定して今俺たちがここに居る。
「な、なんてことだ!分かりました!僕gもがが」
俺はいきなり話に乗ろうとする馬鹿の口をふさぐ。
「アホ。俺らはただのガキだ何もできん」
「で、でも!」
「そのあたりは、問題ないはずですわ!おとぎ話では召喚された勇者は大きな力が宿るという伝説ですわ!」
そんな、古臭いおとぎ話信じるわけがないだろう。それを信じて俺らに死ねってか?
ドゴオオオン!!
「すごいよ!正!見て!力が上がっている!」
バカが居ました。バカの足元を見ると魔法陣の床にクレーターが完成していた・・・。思わず口をあんぐりと開ける・・・。
「なるほど・・・確かに力は底上げされているようだな」
ちなみにバカの手は素手で地面を殴ったためぼたぼたと血が流れている。本当に・・・しょうがない奴だ・・・。
俺は制服を脱ぎシャツの袖を破り、キリの手に巻いてやる。
「あ、ありがとう・・・」
「はあ・・・、何も考えずにおかしなことをするな・・・」
さて・・・、話を戻すとするか。
「ええっと・・・、どこまで話したかな・・・。ああそうだった勇者ね。いいよ、引き受けよう」
周りから歓声が上がる。
「我々は助かるのだ!」「遂に・・・ついに・・・仇が」「勇者様ばんざい!」
「あー、なんか勘違いしているみたいだけどこれ契約だから。ちゃんと対価は貰うぞ」
周りから歓声がやんだ。そんな中、白い服のガキンチョが口を出す。
「ふざけないでください!わたくし達は死ぬかもしれないのですよ!そこに契約だなんて!」
それに赤い鎧も続く、
「その通りだ!王よ、こいつは詐欺師です!」
何、こいつ等ばかなの?脳みそ入ってますか?もしかして味噌が入ってるんですか?
「はあ・・・、おいそこの・・・緑の騎士あんたの仕事はなんだ?」
緑の騎士は頭をかきながら前に出てくる。そして思い出すような動作をする。
「えーっと、自分達、騎士団は民を守るのが仕事っす。自分のような騎士は基本的に魔物討伐とかゴミ拾いとか町の人にあいさつしたり、学校帰りの子供の見守ったりするっす」
仕事の幅広いな騎士団。
「次に神官のお兄さん」
人のよさそうな顔の神官のお兄さんは出てきて答える。
「うん、そうだねぇ・・・。僕らの仕事は教会の宣伝とか、マリア様のお世話とか、協会の掃除とか、その他諸々だよ」
「それじゃ聞くけど給料もらってる?」
「「そりゃもうがっぽりと」」
二人は口をそろえていった。
「それもふまえて、もう一度聞く。契約に対価が必要だと思う奴は挙手」
「うむ、当たり前だ」「給料ないってかわいそう」「必要でしょう、守ってもらうのですし」
結果は満場一致だった。