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紡ぐ箱  作者: もちづき
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8/13

黄金の真実

波に揺られ何時間も船に乗っていると当然娯楽は使い尽くし暇を持て余すようになっていた。

そのころには船に慣れないタリアは船酔いを起こしベッドの上で倒れていた。

「大丈夫か?とりあえず食べ物だけは置いておくからな」

カイはそういってパンを置いて去っていった。

礼も言えずただぐったりしているしかないタリアにはパンすら口にできる状態ではなかった。

それからさらにしばらくした後に船内放送がかかる。

「まもなく、エルドレアに到着します。船員全員準備をしてください。くれぐれも低い”価値”を付けられないよう気を付けてください」

物騒なアナウンスだ。

しかしその物騒さを物語るような出来事が過去に起きているからこその放送である。つまり気の付けようがないのだ。

さらにしばらくして船は港へ到着し、船に乗っている客たちは船から降り始めていた。

相変わらずベッドでぐったりしているタリアを、カイが引きずり出す形で連れ出していった。

吐き気と視界のゆがみでぐらぐらしつつもかろうじて礼を言うタリア。

「こういう時は陸に上がればいくらかマシになったりするもんだ。ついてこい」

二人は船を降り、やっと黄金郷と呼ばれ続けていた島、エルドレアへ到達した。

そこからが、難題だった。

「みなさまごきげんよう。今からあなた方の目的をお聞きいたします、私たちには嘘は通じませんのでそのつもりで」

港に現れた女性───藤色の髪と目に巻かれた黒い布が目を引く女性がそこにいた。

船から降りた人たちは各々に理由を述べる。

女性はただひたすらに何もせず、話を聞いているだけだった。

その中でカイは口を開いた。

「俺に”価値”を付ける必要はないだろ?」

その声に女性はピクリと反応した。

「その声は───カイ様ですか?」

「そうだよ。今はお前が取り仕切りをやってるんだな、花蓮」

花蓮と呼ばれた女性は笑みを浮かべてこう返す。

「私も南條の女ですから。母から”価値”の付け方くらいは教わってます」

「お前の母さんは引退したのか?」

「いえ、あの方は処刑するには不向きなので”価値”の裁定に徹しています」

花蓮は手に持っている杖を少し引き延ばす動作をした。

「そういえばお前の杖はそうだったな。とりあえず俺とこいつ……つっても見えないか、スルーさせてもらえないか?」

「構いませんよ。何やら訳ありのようですし。では邸宅でお待ちください、私はこの方たちの”価値”を見定めてから向かいますので」

「わかったよ。あんまりやりすぎんなよ」

カイはそういってそっと邸宅へと向かっていった。

「ねえ、あの人は何なの?」

タリアがカイに問う。

「あいつは花蓮。南條家っていうこの島を取り仕切ってるお嬢様ってやつだ。ただあいつの母さんもそうだがそろって目が見えない。そこからついた二つ名が”盲目の領主”だよ」

「ってことは……」

「そう。黄金郷のデマが流れるのとあの一族が外敵を排除し始めた時期が一致するんだよ。本人の口から出てたように”処刑”してるんだよ。”価値”がないと判定すればな」

ひえっ、とおびえるタリア。それを意にも介さず前を進むカイ。

「邸宅には少なくともアイツの母親……栞さんがいるはずだ。話ぐらいは聞いてくれるだろう」

そんな話を続け目的の邸宅へとたどり着いた。

門をたたく前に門が開き、中へと入っていった。

玄関先までたどり着くとそこには花蓮と似た姿をした女性が立っていた。

「いらっしゃい。”価値”の選定はちゃんとできているようね」

「選定を始めてから大陸じゃ黄金郷扱いされてるし二度と帰ってこれないなんて噂が立ってますけどね」

「あら、それならここも平和を保ててちょうどいいわ。ところでそちらは?」

目元を黒い布で覆って視界がないはずなのにその視線はタリアをとらえていた。

「私はカイについてきただけって言うか……」

「そう。選定に受かってるなら何も言わないわ。ところで用があってきたんでしょう?」

核心を突くように言い放つ。

「相変わらず察しが早い。実はあるものを渡されてそれが大陸の怪物を倒す大事なパーツなんです」

「ラウスの話は聞いているわ。都市機能壊滅は災難だったわね」

「それを使えば一時的に怪物の動きを止められる、二度目の爆発を防ぐことができるんです」

「なら使えばいいじゃない」

「そのパーツが使用中視界を奪われる欠点があって相談しに来たんです。視覚に頼らない戦い方を教えてほしい」

カイは決意のこもった声でそういった。

「わかったわ。選定が終わるまでは私が相手をしましょう。きっと私より花蓮の方が強いから」

わかりました、といって邸宅の戦闘ができる広間まで向かい、カイはそっと頭に巻いたバンダナを目元まで降ろした。

「意外と見えないってつれぇな……」

目元まで下ろしたバンダナで前が見えなくなった状態で苦戦するカイ。

「まず気配を察知し動きを予測します。最初は攻撃しないから、まずは当ててみて」

「はい!」

カイの盲目の特訓は始まった。

これがつらく厳しい試練になるとも知らずに。


───ヴァリスが目覚めるまでまだ少し時間はあるようだ。


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